Artist: Eminem
Album: The Eminem Show
Song Title: Steve Berman (Skit)
概要
エミネムの歴代アルバムに欠かせない、Interscope Recordsの重役スティーヴ・バーマン(Steve Berman)が登場する恒例のスキット。前作『The Marshall Mathers LP』の同名スキットにおいて、バーマンはエミネムの過激なアルバム内容に対して「こんなレコードはレコード屋に置けない」と激しく説教し、彼をオフィスから追い出した。本作『The Eminem Show』におけるこのスキットは、その「続き」として機能している。今回もバーマンのオフィスに呼び出されたエミネムは、また説教が始まると思い込み、彼が言葉を発し終える前に問答無用で銃をぶっ放す。レーベルの圧力や商業主義に対するエミネムの究極の反抗を示すと同時に、当時の彼が抱えていたパラノイアや暴力的な衝動をブラックジョークとして昇華した、短くも強烈なインタードリュードである。
和訳
[Skit: Eminem & Steve Berman]
This motherfucker, man
このクソ野郎め、マジで
※足音とドアを開ける音。この時点ではスティーヴ・バーマンが電話口でDr. Dre(エミネムのプロデューサー)に対して、エミネムの度重なる問題行動について文句を言っている最中であると推測される。
It's ridiculous, I can't believe it
バカげてる、信じられんよ
※前作同様、エミネムがまた「売れない(または物議を醸す)」曲を作ってきたことへの不満を漏らしている様子。
Oh, hold on a minute
あー、ちょっと待ってくれ
Em (What up?) Have a seat
エム(どうした?)座れよ
※バーマンのオフィスにエミネムが入室する。「What up?(どうした?)」というエミネムのぶっきらぼうな返答から、すでに不穏な空気が漂っている。
Dre, I'll call you back
ドレー、後でかけ直す
What now?
今度は何だよ?
※「また文句か?」というエミネムの苛立ち。前作でこっぴどく説教された因縁があるため、彼は最初から臨戦態勢でオフィスに乗り込んでいる。
I don't even know where to start
どこから手をつければいいのかさえ分からんよ
Okay
そうかよ
I got the album from upstairs
上の連中(経営陣)からアルバムを受け取ったんだが
※「upstairs」はレコード会社(Interscope)の上層部、あるいはA&R部門を指す。
And?
で?
And this is by far the most
これは間違いなく、俺がこれまで聴いた中で最も……
Gunshot
銃声
※エミネムがバーマンの言葉を最後まで聞かずに、隠し持っていた銃をぶっ放す。前曲の「Paul Rosenberg (Skit)」で、マネージャーのポールから「銃を持ち歩くな」と警告されていたにもかかわらず、彼は完全にコントロールを失って重役を撃ち殺す(または重傷を負わせる)という凶行に及んでしまう。
Incredible thing I've ever heard
信じられないほど素晴らしい(Incredible)ものだ
※ヒップホップ史に残る秀逸なブラックジョークのオチ。GeniusやRedditの考察で長年指摘されている通り、実は今回バーマンはアルバムの出来を「これまで聴いた中で最も素晴らしい(by far the most incredible)」と大絶賛しようとしていた。しかし、過去のトラウマとパラノイアから「またボロクソにけなされる」と思い込んだエミネムは、早とちりして彼を撃ってしまったのである。「称賛される準備ができていなかった」エミネムの狂気と、コミュニケーションの致命的なすれ違いを描いた天才的な演出だ。
