Artist: Eminem (feat. Paul Rosenberg)
Album: The Eminem Show
Song Title: Paul Rosenberg (Skit)
概要
エミネムの歴代アルバムにおいて定番となっている、マネージャーのポール・ローゼンバーグからの留守番電話メッセージを模した恒例のスキットである。『The Slim Shady LP』から続くこのギミックは、常にエミネムの「その時の問題行動」を客観的な視点から浮き彫りにする役割を担っている。本作『The Eminem Show』では、2000年に起きた銃器の不法所持や暴行事件で有罪判決(保護観察処分)を受けたばかりの彼に対する、ポールの切実かつ現実的な警告が収録されている。レコーディングスタジオの裏で銃を乱射しているという内容は、法的トラブルの渦中にありながらも自暴自棄な精神状態にあったエミネムの危うさを生々しく伝えている。単なるコメディ・リリーフではなく、富と名声を得た一方で狂気と現実の境界線が曖昧になっていくラッパーの姿を描いた、アルバムのドキュメンタリー性を高める極めて重要なピースである。
和訳
[Skit: Paul Rosenberg]
Em, it's Paul, listen
エム、ポールだ、聞けよ
※「Paul」はエミネムの長年のマネージャーであり、Shady Recordsの共同創設者であるポール・ローゼンバーグ(Paul Rosenberg)。エミネムの暴走を止める(あるいは止めようとして失敗する)良心の声としての役割を担っている。
Joel just called me and he told me you're in the fucking back behind his studio, shooting your gun off in the air like it's a shooting range
さっきジョエルから電話があってな、お前があいつのスタジオの裏で、まるで射撃場みたいに空に向かって銃をぶっ放してるって言ってたぞ
※「Joel」はジョエル・マーティン(Joel Martin)のこと。デトロイトにある54 Sound Studioの共同オーナーであり、エミネムの初期からのパブリッシャーである。このスタジオで『The Eminem Show』の多くが録音された。ポールがわざわざ名前を出していることから、エミネムが身内の安全な職場すらも脅かすほどコントロールを失っている異常な状況がうかがえる。
I told you not to fucking bring your gun around like an idiot, outside of your home
家の外に、バカみたいに銃を持ち歩くなって言っただろ
※2000年のナイトクラブでの銃撃未遂事件(ジョン・ゲレラ事件。本作収録の「Soldier」などで詳細に歌われている)により、エミネムは銃器の不法所持で執行猶予付きの判決を受けていた。ここで再び銃器絡みの事件を起こせば確実に刑務所送りになるという、マネージャーとしてのポールの切実な危機感である。
You're gonna get yourself in trouble
また自分の首を絞める(トラブルを巻き起こす)ことになるぞ
Don't bring your gun outside of your home, you can't carry it on you
家の外に銃を持ち出すな、携帯すること自体が違法なんだ
Leave your fucking gun at home
そのクソみたいな銃は家に置いておけ
※『The Marshall Mathers LP』収録のポールのスキットは「歌詞が過激すぎる」という警告だったが、本作では「現実世界での銃器使用」という実刑に直結する生々しい警告へとエスカレートしている。さらに、このスキットの直後に収録されている名曲「Sing for the Moment」では、銃を撃つ若者の心情やエンターテインメントの影響力が歌われており、アルバムのストーリーテリングとして完璧な伏線となっている。
