UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Cleanin’ Out My Closet - Eminem 【和訳・解説】

Artist: Eminem

Album: The Eminem Show

Song Title: Cleanin’ Out My Closet

概要

本作は2002年リリースの歴史的アルバム『The Eminem Show』に収録された、エミネムのキャリアにおいて最もダークで私的な感情を抉り出した楽曲の一つである。タイトル「Cleanin' Out My Closet(クローゼットの大掃除)」は、英語の慣用句「Skeletons in the closet(隠された不都合な秘密)」に由来し、自らの内面にあるトラウマや秘密を白日の下に晒すという宣言である。本作の最大のテーマは、実母デビー・マザーズへの強烈な憎悪と決別だ。1999年に彼女がエミネムの歌詞を巡って1000万ドルの名誉毀損訴訟を起こしたこと、幼少期の虐待疑惑、叔父ロニーの死をめぐる暴言など、修復不可能な親子の確執が赤裸々に語られている。なお、エミネムは2013年の楽曲「Headlights」で本作を歌ったことを後悔していると告白し、母親へ謝罪を捧げたことで、本作以降のライブではこの曲を封印している。ヒップホップ史に残る、狂気と哀しみが交差する生々しいドキュメンタリーである。

和訳

[Intro]

Where's my snare?
スネアはどこだ?
※エミネムの完璧主義とレコーディングのリアルな現場感を演出するイントロ。スネアドラムの音がモニターから欠落しているというテクニカルなトラブルをそのまま曲の冒頭に使うことで、「作られたショー」ではなく、これから語られる内容が一切の虚飾を削ぎ落とした「生のドキュメンタリー」であることをリスナーに強烈に印象付けている。

I have no snare in my headphones
ヘッドフォンからスネアの音が聴こえねえぞ

There you go
おっ、来たな

Yeah
イェー

Yo, yo
ヨー、ヨー

[Verse 1]

Have you ever been hated or discriminated against?
誰かに憎まれたり、差別されたりしたことはあるか?

I have, I been protested and demonstrated against
俺はあるぜ。抗議運動を起こされて、デモ行進までされたからな
※エミネムの過激な歌詞(女性蔑視や同性愛嫌悪などと捉えられた表現)に対し、GLAAD(同性愛者に対する中傷を監視する団体)や女性権利団体などが連日激しい抗議デモを行った事実を指す。

Picket signs for my wicked rhymes, look at the times
俺のヤバいライムに対してプラカードが掲げられる。時代を見てみろよ

Sick is the mind of the motherfuckin' kid that's behind
その裏にいるクソガキの頭ん中は完全にイカれちまってるんだ

All this commotion, emotions run deep as oceans, explodin'
この大騒ぎの裏で、海より深い感情が渦巻いて、爆発しそうになってる

Tempers flarin' from parents, just blow 'em off and keep goin'
親どもの怒りが燃え上がってるが、そんなのシカトして前に進むだけだ

Not takin' nothin' from no one, give 'em hell long as I'm breathin'
誰の指図も受けねえ。息をしてる限り、あいつらに地獄を見せてやる

Keep kickin' ass in the morning and takin' names in the evenin'
朝からぶちのめして、夜には標的のリストを作ってやる
※「kick ass and take names」は「片っ端から倒して、その名前を記録していく(徹底的に叩きのめす)」という意味の英語の慣用句。軍隊やストリートの抗争などで使われる表現で、自分を批判する偽善的な社会や親世代に対する徹底抗戦の構えを示している。

Leave 'em with a taste as sour as vinegar in they mouth
あいつらの口ん中に、酢みたいに酸っぱい後味を残してやるよ

See, they can trigger me, but they'll never figure me out
ほら、連中は俺をキレさせることはできても、俺の正体を見破ることは絶対にできねえ

Look at me now! I bet you're prolly sick of me now
今の俺を見てみろよ!きっと俺のことがウンザリするほど嫌いなんだろ

Ain't you, Mama? I'ma make you look so ridiculous now
なあ、母さんよ?今からあんたを徹底的に笑い者にしてやるよ
※これまで社会や世間のアンチ(haters)に向けて語っていた矛先が、突如として彼にとっての最大のアンチでありトラウマの元凶である「母親(Mama)」へと向けられる、身の毛のよだつような視点変更。

[Chorus]

I'm sorry, Mama
悪かったな、母さん
※極めてアイロニカルな謝罪。「I'm sorry」と言いながら、これから世界中に彼女の最も醜い秘密を暴露するというサイコパス的なアプローチである。

I never meant to hurt you
あんたを傷つけるつもりなんてなかったんだ

I never meant to make you cry
あんたを泣かせるつもりもなかった

But tonight I'm cleanin' out my closet (One more time)
でも今夜、俺は自分のクローゼットを大掃除するんだ(もう一度な)
※曲のタイトルにもなっているライン。「クローゼットの掃除」は、前述の「Skeletons in the closet(隠しておきたい醜い秘密)」を外へ引っ張り出し、清算するというメタファー。

I said I'm sorry, Mama
悪かったって言ってんだろ、母さん

I never meant to hurt you
あんたを傷つけるつもりなんてなかったんだ

I never meant to make you cry
あんたを泣かせるつもりもなかった

But tonight I'm cleanin' out my closet (Ha)
でも今夜、俺は自分のクローゼットを大掃除するんだ(ハッ)

[Verse 2]

I got some skeletons in my closet and I don't know if no one knows it
俺のクローゼットにはヤバい秘密(死体)があって、誰もそれに気づいちゃいない

So before they throw me inside my coffin and close it, I'ma expose it
だから俺が棺桶にブチ込まれて蓋を閉められる前に、そいつを全部暴露してやる

I'll take you back to '73
1973年まで時計の針を戻してやろう
※エミネムの誕生日は1972年10月17日。1973年は彼が生まれてまだ数ヶ月の乳児だった時期を指す。

Before I ever had a multi-platinum-sellin' CD
俺がマルチプラチナを売り上げるCDを出すずっと前の話だ

I was a baby, maybe I was just a couple of months
俺は赤ん坊で、おそらく生まれてまだ数ヶ月だった

My faggot father must've had his panties up in a bunch
俺のオカマ野郎の親父は、ビビり散らしてパニックになってたに違いないぜ
※「panties in a bunch」は「つまらない事で過剰にパニックになる、ヒステリーを起こす」という意味のスラング。エミネムの実父ブルース・マザーズは、エミネムが生後半年ほどの時に家族を捨ててカリフォルニアへ逃げている。責任から逃げ出した父親への怒りである。

'Cause he split, I wonder if he even kissed me goodbye
だってアイツは逃げ出しやがった。別れのキスすらしなかったんじゃねえか

No, I don't, on second thought, I just fuckin' wished he would die
いや、気にもしねえか。考え直してみりゃ、アイツなんかただ死ねばいいとしか思ってねえよ

I look at Hailie, and I couldn't picture leavin' her side
ヘイリーの顔を見ると、あの子のそばを離れるなんて俺には想像もつかねえ
※無責任な実父と、愛娘ヘイリー(Hailie)への愛情を注ぐ自分自身との鮮やかな対比。彼にとって「親になること」は、自分のような思いを子供にさせないための個人的な復讐でもあった。

Even if I hated Kim, I'd grit my teeth and I'd try
たとえキムのことが憎くても、歯を食いしばって頑張ったはずだ

To make it work with her at least for Hailie's sake
少なくともヘイリーのためだけにでも、彼女との関係を何とかしようってな
※「キム(Kim)」はエミネムの元妻。二人はDVや浮気など泥沼の愛憎劇を繰り広げたが、それでもエミネムは娘のために家庭を維持しようと(自身の父親とは違って)努力したと主張している。

I maybe made some mistakes
俺もいくつかミスを犯したかもしれない

But I'm only human, but I'm man enough to face 'em today
でも俺だってただの人間だ。今なら自分の過ちと向き合う男らしさがある

What I did was stupid, no doubt, it was dumb
俺がやったことは間違いなくバカげてたし、愚かだった

But the smartest shit I did was take the bullets out of that gun
でも俺がやった一番賢い選択は、あの銃から弾を抜いたことだ
※2000年に起きたナイトクラブでの暴行事件への言及。妻のキムが他の男(ジョン・ゲレラ)とキスしているのを目撃したエミネムは、持っていた銃(弾は抜かれていた)で男を殴打し、逮捕された。もし銃に弾が入っていれば殺人罪で終身刑になり、娘と一生会えなくなっていたはずだと回顧している。

'Cause I'da killed 'em, shit, I woulda shot Kim and him both
だって俺はあいつらを殺してただろうからな。クソ、キムもあの男も両方撃ち殺してたはずだ

It's my life, I'd like to welcome y'all to "The Eminem Show"
これが俺の人生だ。「ザ・エミネム・ショー」へようこそ
※銃撃未遂や家庭崩壊といった自身の生々しい人生の破綻さえも、大衆に消費される「エンターテインメント(ショー)」になっているという自嘲的なアルバムタイトルの回収。

[Chorus]

I'm sorry, Mama
悪かったな、母さん

I never meant to hurt you
あんたを傷つけるつもりなんてなかったんだ

I never meant to make you cry
あんたを泣かせるつもりもなかった

But tonight I'm cleanin' out my closet (One more time)
でも今夜、俺は自分のクローゼットを大掃除するんだ(もう一度な)

I said I'm sorry, Mama
悪かったって言ってんだろ、母さん

I never meant to hurt you
あんたを傷つけるつもりなんてなかったんだ

I never meant to make you cry
あんたを泣かせるつもりもなかった

But tonight I'm cleanin' out my closet (Uh)
でも今夜、俺は自分のクローゼットを大掃除するんだ(アー)

[Verse 3]

Now, I would never diss my own mama just to get recognition
なあ、俺はただ目立ちたいって理由だけで自分の母親をディスったりは絶対にしねえ

Take a second to listen 'fore you think this record is dissin'
この曲が単なるディスだと思い込む前に、少し耳を貸してくれ

But put yourself in my position, just try to envision
俺の立場になって、ちょっと想像してみてくれよ

Witnessin' your mama poppin' prescription pills in the kitchen
自分の母親がキッチンで処方薬をガバガバ飲んでるのを目撃するんだ
※母デビーが精神安定剤(バリウムなど)や鎮痛剤の処方薬依存に陥っていた事実の暴露。エミネム自身も後に深刻な処方薬依存症に苦しむことになり、皮肉にも母親と同じ轍を踏むことになる。

Bitchin' that someone's always goin' through her purse and shit's missin'
誰かがいつもバッグを漁ってて、物が無くなってるってギャーギャー喚いてる姿をな
※薬物乱用による典型的な被害妄想(パラノイア)の描写。家庭内の異常な緊張感をリスナーに追体験させている。

Goin' through public housing systems, victim of Münchausen's Syndrome
公営住宅を転々としながら、ミュンヒハウゼン症候群の犠牲者として生きる日々
※「代理ミュンヒハウゼン症候群」の指摘。親が周囲の同情を引くために、意図的に子供を病気(または病気であるかのように)仕立て上げる精神疾患。エミネムは幼少期、健康であるにも関わらず母親から「お前は病気だ」と信じ込まされ、不必要な治療や薬を与えられていたと主張している。

My whole life I was made to believe I was sick when I wasn't
俺は病気じゃないのに、これまでの人生ずっと自分が病気だと思い込まされてきたんだ

'Til I grew up, now I blew up, it makes you sick to your stomach, doesn't it?
俺が大人になって、今じゃ大成功(ブレイク)した。それを見てると胃が痛くなるほどムカつくんだろ?

Wasn't it the reason you made that CD for me, Ma?
母さん、それが俺宛てのあのCDを作った理由なんじゃねえのか?
※エミネムが大ブレイクした後、母デビーは息子との和解を装い便乗商法的に「Dear Marshall」というCDをリリースした。エミネムはこれを「金と名声への執着」であるとして強烈に嫌悪した。

So you could try to justify the way you treated me, Ma?
そうやって俺への酷い扱いを正当化しようとしたんだろ、なあ母さん?

But guess what, you're gettin' older now, and it's cold when you're lonely
でもな、あんたも年を取ってきてる。孤独ってのは冷たいもんだぜ

And Nathan's growin' up so quick, he's gonna know that you're phony
ネイサンもあっという間に大きくなってる。あいつもあんたが偽物だってことに気づくはずだ
※ネイサン(Nathan)はエミネムの異父弟。エミネムは母親のネグレクトや異常な環境から彼を救い出すため、法的手続きを経てネイサンの親権(保護責任)を獲得している。

And Hailie's gettin' so big now, you should see her, she's beautiful
ヘイリーも今じゃすごく大きくなった。見てみりゃいいさ、本当に美人なんだ

But you'll never see her, she won't even be at your funeral (Haha)
でもあんたは一生あの子に会えねえよ。あんたの葬式にすら、あの子を絶対に行かせねえからな(ハハ)
※孫娘(ヘイリー)への接触を永遠に禁じるという、母親に対する究極の精神的報復。葬式にも参列させないという冷酷な宣言は、彼が受けた傷の深さを物語っている。

See, what hurts me the most is you won't admit you was wrong
ほら、俺が一番傷ついてるのは、あんたが自分の非を絶対に認めようとしないことなんだよ

Bitch, do your song, keep tellin' yourself that you was a mom!
クソアマ、自分の曲でも歌ってろ。自分は立派な母親だったって自分自身に言い聞かせてな!

But how dare you try to take what you didn't help me to get?
なのに、俺が手に入れるのを手伝いもしなかったくせに、どうしてそれを奪い取ろうなんて図々しい真似ができるんだ?
※1999年、母デビーが『The Slim Shady LP』の歌詞で名誉を傷つけられたとして、実の息子であるエミネムに対し1000万ドル(約11億円)の損害賠償を求めて訴訟を起こした事件を指す。育児放棄をしていたくせに、成功した途端に裁判で金を巻き上げようとする母親への激しい怒り。

You selfish bitch, I hope you fuckin' burn in Hell for this shit
この身勝手なクソアマ。こんな真似しやがって、マジで地獄の業火に焼かれればいい

Remember when Ronnie died and you said you wished it was me? (Hehe)
ロニーが死んだ時、あんたが「お前が死ねばよかったのに」って言ったのを覚えてるか?(ヒヒッ)
※ヒップホップ史上で最も悲痛で残酷なラインの一つ。ロニー(Ronnie)はエミネムにヒップホップを教えた最愛の叔父であり、1991年に自殺している。エミネムが絶望の淵にいた際、実の母親から「ロニーの代わりにお前が死ねばよかった」と吐き捨てられたというトラウマを暴露している。直後の笑い声(Hehe)が、完全に心が壊れた状態を表現しており鳥肌が立つ。

Well, guess what? I am dead—dead to you as can be
じゃあ教えてやるよ。俺は死んだんだ。あんたにとっては、完全に死んだ人間同然さ
※「お前が死ねばよかったのに」という呪いの言葉に対し、「ああ、あんたとの関係において俺は完全に死んだ(絶縁する)」という言葉で結んでいる。なお、この凄惨な決別から11年後(2013年)、エミネムは「Headlights」という楽曲でこの言葉を取り消し、母親への深い愛情と許しを歌うことになる。その結末を知った上で聴き直すと、本作がいかに張り裂けそうな悲しみの中で書かれたかが伝わってくる。

[Chorus]

I'm sorry, Mama
悪かったな、母さん

I never meant to hurt you
あんたを傷つけるつもりなんてなかったんだ

I never meant to make you cry
あんたを泣かせるつもりもなかった

But tonight I'm cleanin' out my closet (One more time)
でも今夜、俺は自分のクローゼットを大掃除するんだ(もう一度な)

I said I'm sorry, Mama
悪かったって言ってんだろ、母さん

I never meant to hurt you
あんたを傷つけるつもりなんてなかったんだ

I never meant to make you cry
あんたを泣かせるつもりもなかった

But tonight I'm cleanin' out my closet
でも今夜、俺は自分のクローゼットを大掃除するんだ