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Business - Eminem 【和訳・解説】

Artist: Eminem

Album: The Eminem Show

Song Title: Business

概要

本作「Business」は、2002年リリースの大名盤『The Eminem Show』に収録された、ドクター・ドレーとの連携の頂点を示すバンガーである。バットマンとロビンというアメコミの「ダイナミック・デュオ」のメタファーを用い、中身のないリリックやフェイクなラッパーが蔓延るヒップホップ・シーン(=ゴッサム・シティ)を浄化する正義のヒーローとして自らを描いている。コミカルなビートとは裏腹に、エミネムの恐るべきライミング・スキルとドレーの完璧なプロダクションが融合した「本物のヒップホップ」の提示であり、エンターテインメントと辛辣な業界批判を両立させたエミネムの真骨頂と言える一曲だ。

和訳

[Intro: Eminem & Dr. Dre]

Marshall! Sounds like an SOS
マーシャル!SOSが聞こえるぜ
※曲全体を貫く『バットマン』のパロディの幕開け。Dr. Dreがバットマン(またはゴードン市警本部長)、エミネム(本名マーシャル)がロビンという配役である。ヒップホップ界が「助け(SOS)」を求めているという設定。

Holy, wack unlyrical lyrics, Andre, you're fucking right
なんてこった、中身のないクソみたいなリリックだ。アンドレ、あんたの言う通りだぜ
※「Holy 〜」は1960年代のTVドラマ版『バットマン』でロビン(バート・ウォード)が毎回発する決め台詞(Holy smokes! など)のパロディ。「アンドレ」はDr. Dreの本名(Andre Romelle Young)。当時のメインストリームに蔓延していた内容の薄い(unlyrical)ラップへの痛烈なディス。

To the Rapmobile, let's go
ラップモービルへ急ごう、出発だ
※バットマンの愛車「バットモービル」のもじり。

(Marshall! Marshall!)
(マーシャル!マーシャル!)

Bitches and gentlemen, it's showtime
ビッチ共ならびに紳士の皆様、ショータイムだ
※「Ladies and gentlemen」の「Ladies」を「Bitches」に置き換えたエミネム流の毒のある客いじり。「The Eminem Show」というアルバムタイトルの通り、見世物小屋の口上のような演出。

Hurry hurry, step right up
さあ急いだ急いだ、そこのあんたも寄ってきな

Introducing the star of our show
我らがショーのスターをご紹介しよう

His name is (Marshall!)
やつの名前は(マーシャル!)

You wouldn't wanna be anywhere else in the world right now
今この瞬間、世界の他のどこにも行きたくなくなるはずだぜ

So without further ado, I bring to you (Marshall!)
ってことで四の五の言わずにお届けしよう、(マーシャルを!)

[Verse 1: Eminem]

You 'bout to witness hip-hop in its most purest
お前らは今、最も純粋な形をしたヒップホップを目撃しようとしてる

Most rawest form, flow almost flawless
最も生々しい姿で、ほぼ完璧なフロウをな
※意図的に「most purest」「most rawest」という二重最上級(文法的な誤り)を用いることで、ストリートの粗削りな生々しさを強調しつつ、自身の「flawless(完璧な)」スキルとのギャップを楽しんでいる。

Most hardest, most honest known artist
最高にハードで、最高に正直だと知られたアーティストさ

Chip off the old block, but old Doc is (Back)
親父譲りの才能の塊、だが老いぼれドックも(復活だ)
※「Chip off the old block」は「親にそっくりな子」を意味する慣用句。ここではエミネムが師匠であるDr. Dreの才能を受け継いでいることを示している。続く「old Doc」はDr. Dreのこと。「Back」はDreのバックボーカル。

Looks like Batman brought his own Robin
まるでバットマンが自分のロビンを連れてきたみたいだろ
※Dr. Dre(バットマン)と自身(ロビン)の「ダイナミック・デュオ」のメタファーを明言。Dr. Dreのプロデュースのもと、エミネムが相棒として暴れ回る構図。

Oh God, Saddam's got his own Laden
なんてこった、サドダムが自分のビン・ラディンを飼ってるぜ
※9.11テロ(2001年)直後の2002年にリリースされた本曲における、極めて不謹慎かつ危険なパンチライン。サダム・フセイン(イラク大統領)とウサマ・ビン・ラディン(アルカイダ指導者)という当時のアメリカの「二大敵国・テロリスト」を、Dreと自分に見立てている。社会を震え上がらせる脅威としての自己表現。

With his own private plane, his own pilot
専用のプライベートジェットに、専属のパイロット付きでな
※9.11のハイジャックテロを連想させるラインでありつつ、大成功を収めてプライベートジェットを乗り回すラッパーとしてのフレックス(自慢)をかけたダブルミーニング。

Set to blow college dorm room doors off their hinges
大学の寮のドアを蝶番ごと吹き飛ばす準備は完了だ

Oranges, peach, pears, plums, syringes
オレンジ、ピーチ、洋梨、プラム、そして注射器
※エミネムの伝説的なライミング技術(マルチシラブル・ライム)の真骨頂。「hinges(ヒンジズ)」と「syringes(シリンジズ)」で韻を踏むだけでなく、「oranges(オレンジズ)」という英語圏で「韻を踏めない単語(unrhymable word)」として有名な単語を、発音を崩すことで強引に踏んでいる。日常的なフルーツの列挙の最後に「注射器」というドラッグのメタファーを落とす狂気。

Vrinn, vrinn! Yeah, here I come, I'm inches
ブリン、ブリン!おう、俺様のお通りだ、あと数インチで

Away from you, dear, fear none
お前らの目の前だぜ、可愛い子ちゃん。何も恐れるな

Hip-hop is in a state of 9-1-1, so
ヒップホップは今、911(緊急事態)の状態だ、だから
※「9-1-1」は米国の緊急通報番号。ヒップホップ・シーンが商業主義や実力不足のラッパーによって危機に瀕していること、そして先述の9.11テロのメタファーを掛けている。

[Chorus: Eminem & Dr. Dre]

Let's get down to business
さあ、ビジネス(本業)に取り掛かろうぜ

I don't got no time to play around, what is this?
遊んでる暇はねえんだ、なんだこれは?

Must be a circus in town, let's shut the shit down on these clowns
町にサーカスでも来たのか。あのピエロ共を黙らせて、店じまいさせてやろうぜ
※「ピエロ(clowns)」は、実力もなく見た目やギミックだけで売れようとするフェイクなラッパーたちのこと。シーンを「サーカス」と呼び、自分たちがそれを終わらせる(shut down)と宣言している。

Can I get a witness? (Hell yeah!)
証人はいるか?(アーイ!)
※「Can I get a witness?」は黒人教会で牧師が信徒に同意(アーメン)を求める際の決まり文句。ここではヒップホップにおけるコール&レスポンスとして用いられ、観客に同意を求めている。

Let's get down to business
さあ、ビジネス(本業)に取り掛かろうぜ

I don't got no time to play around, what is this?
遊んでる暇はねえんだ、なんだこれは?

Must be a circus in town, let's shut the shit down on these clowns
町にサーカスでも来たのか。あのピエロ共を黙らせて、店じまいさせてやろうぜ

Can I get a witness? (Hell yeah!)
証人はいるか?(アーイ!)

[Verse 2: Eminem]

Quick, gotta move fast, gotta perform miracles
急げ、早く動かねえと。奇跡を起こしてやるよ

Gee willikers, Dre, holy bat syllables!
おやおや、ドレー。なんてこった、バット・シラブル(コウモリの音節)だ!
※「Gee willikers」は古風な驚きの表現(おやまあ!等)。バットマンの相棒ロビンのセリフ回しのパロディであり、自身の複雑なライミング構造(syllables=音節)の神がかり的なスキルの高さを「Holy bat syllables!」と表現している。

Look at all the bullshit that goes on in Gotham
ゴッサムで巻き起こってるクソみたいな惨状を見てみろよ
※バットマンの舞台である犯罪都市「ゴッサム・シティ」を、フェイクが蔓延る現在のヒップホップ業界に見立てている。

When I'm gone, time to get rid of these rap criminals
俺がいなくなった隙に調子乗ってるラップの犯罪者ども、お掃除の時間だ
※前作『The Marshall Mathers LP』(2000年)から本作までシーンから少し離れていた間(When I'm gone)に、低レベルなラッパー(rap criminals)が増長したことを指す。

So skip to your lou while I do what I do best
だから俺が一番得意なことをやってる間、お前らは呑気にスキップ・トゥ・マイ・ルーでも歌ってな
※「Skip to My Lou」はアメリカの伝統的な童謡・遊戯歌。他のラッパーたちの幼稚さを小馬鹿にしている。

You ain't even impressed no more, you're used to it
お前らはもう感動すらしないよな、すっかり慣れちまってるから

Flow's too wet, nobody close to it
俺のフロウは濡れすぎてる(ヤバすぎる)から、誰も近づけやしない
※「wet」はスラングで「素晴らしい、滑らかである」という意味と同時に、銃撃などを意味するバイオレントなメタファーとしても機能する。

Nobody says it but still everybody knows the shit
誰も口には出さねえが、みんな本当は分かってんだよ

The most hated on out of all those who say they get hated on
「ヘイトされてる」と抜かしてる連中の中でも、俺がぶっちぎりで最もヘイトされてるってな
※ヒップホップにおいて「ヘイター(アンチ)がいること」は成功の証として語られがちだが、エミネムは政治家、PTA、同性愛者団体などから社会問題レベルで国家的なバッシングを受けていた。「お前らのヘイトなんて俺に比べたらお遊びだ」という強烈な事実。

In eighty songs and exaggerate it all so much
80曲も使って、あれこれ大げさに誇張しやがって

They make it all up, there's no such thing
全部でっち上げの嘘っぱちだ。そんなもん存在しねえよ

Like a female with good looks who cooks and cleans
ルックスが良くて、料理も掃除もこなす女みたいにな
※他のラッパーたちが曲の中で語るストリートの武勇伝やギャングスタとしてのライフスタイルは、非現実的な「完璧な女」と同じくらい存在しない「作り話(make it all up)」であると痛烈にディスしている。

It just means so much more to so much more
もっともっとデカい意味を持つんだよ

People, when you're rappin' and you know what for
ラッパー自身が「何のためにラップしてるか」分かってる時、リスナーにとってそれはずっと重みを持つんだ
※単に金や名声のために嘘をつくフェイクラッパーとは違い、自分の人生や怒りを「目的(what for)」を持って表現するエミネム自身のスタンスの誇示。

The show must go on; so I'd like to welcome y'all
ショーは続けなきゃならねえ。だから皆を歓迎するぜ

To Marshall and Andre's carnival, come on
マーシャルとアンドレのカーニバルへようこそ、さあ来な

[Chorus: Eminem & Dr. Dre]

Let's get down to business
さあ、ビジネス(本業)に取り掛かろうぜ

I don't got no time to play around, what is this?
遊んでる暇はねえんだ、なんだこれは?

Must be a circus in town, let's shut the shit down on these clowns
町にサーカスでも来たのか。あのピエロ共を黙らせて、店じまいさせてやろうぜ

Can I get a witness? (Hell yeah!)
証人はいるか?(アーイ!)

Let's get down to business
さあ、ビジネス(本業)に取り掛かろうぜ

I don't got no time to play around, what is this?
遊んでる暇はねえんだ、なんだこれは?

Must be a circus in town, let's shut the shit down on these clowns
町にサーカスでも来たのか。あのピエロ共を黙らせて、店じまいさせてやろうぜ

Can I get a witness? (Hell yeah!)
証人はいるか?(アーイ!)

[Verse 3: Eminem & Dr. Dre]

It's just like old times, the Dynamic Duo
昔に戻ったみたいだな、ダイナミック・デュオの復活だ
※「ダイナミック・デュオ」はバットマンとロビンの愛称。エミネムがデビューした『The Slim Shady LP』や『2001』でシーンを席巻した頃のDreとEminemの黄金タッグの再来。

Two old friends, why panic? You already know
昔からのダチ同士さ、何をパニックになってる? お前らも既に分かってるはずだ

Who's fully capable, the two caped heroes
誰にすべてを解決する実力があるか。マントを羽織った二人のヒーローさ

Dial straight down the center, eight-zero-zero
迷わずセンターにダイヤルしろ、800番にな
※「1-800」はアメリカのフリーダイヤルの市外局番。助けが必要なら俺たち(バットマンたち)のフリーダイヤルに電話しろというユーモア。

You can even call collect, the most feared duet
コレクトコールでも構わねえぜ、世間で最も恐れられてるデュエットさ

Since me and Elton played career Russian Roulette
俺とエルトンがキャリアを懸けたロシアンルーレットをして以来のな
※2001年のグラミー賞授賞式における、エミネムとエルトン・ジョンの「Stan」の歴史的デュエットへの言及。エミネムは同性愛嫌悪(ホモフォビア)と猛烈に批判されていたが、ゲイであることを公言している大御所エルトン・ジョンとの共演で世界を驚かせた。双方にとってファンを失うリスク(キャリア上のロシアンルーレット)があったが、見事に勝利を収めた出来事。

And never even see me blink or get to bustin' a sweat
俺がまばたき一つ、汗一つかくのを見たことねえだろ

People steppin' over people just to rush to the set
連中はセットに群がろうと、人を踏み越えて押し寄せてくる

Just to get to see an MC who breathes so freely
こんなに自由に息をする(ラップする)MCを一目見るためにな

Ease over these beats and be so breezy
ビートの上を滑らかに乗りこなし、信じられないほど軽やかにさ

Jesus, how can shit be so easy?
ジーザス、どうしてこんなに簡単にできちまうんだ?

How can one Chandra be so Levy?
チャンドラがどうしてこんなにリーヴィー(離れていく)になれるんだ?
※2001年に起きたワシントンD.C.のインターン生「チャンドラ・リーヴィー(Chandra Levy)」失踪事件の不謹慎な言葉遊び。「Levy」と「leave me(私から離れる)」の音を掛けている。直前の「easy」と「Levy」で韻を踏みつつ、当時のセンセーショナルな未解決事件をジョークにするエミネムらしいブラックユーモア。

Turn on these beats, MCs don't see me
ビートを流せば、他のMCどもに俺の姿は捉えられない
※「You can't see me(お前らには俺のレベルは見えない=敵わない)」というヒップホップ定番のボースティング。

Believe me, BET and MTV
信じてくれよ、BETもMTVも

Are gonna grieve when we leave, dog, fo' sheezy
俺たちが去ったら悲しみに暮れるぜ、マジな話な、間違いねえよ
※BET(ブラック・エンターテインメント・テレビジョン)とMTV(音楽専門チャンネル)という巨大メディアも、エミネムとドレーという最高の視聴率稼ぎがいなくなれば打撃を受けるという事実。「fo' sheezy」はスヌープ・ドッグなどが多用した「for sure(確かに、マジで)」を意味するAAVE(黒人英語)の接尾辞スラング(-izzle系の派生)。

Can't leave rap alone, the game needs me
ラップを放っておくわけにはいかねえ、ゲーム(業界)が俺を必要としてるんだ

'Til we grow beards, get weird and disappear
俺たちがヒゲを生やして、変人になって姿を消すまでな
※エミネムは長年ヒゲを生やさないスタイルだったが、2017年頃から実際にヒゲを伸ばし始め、ファンを驚かせた。このラインは図らずも未来を予言したような形になり、Reddit等のファンダムで後年たびたび話題になった。

Into the mountains, nothin' but clowns down here
山奥に引っ込むまでさ。ここじゃピエロどもしかいねえからな

But we ain't fuckin' around 'round here
だが俺たちはこの辺りでお遊びしてるわけじゃねえ

Yo, Dre (What up?) Can I get a "hell yeah"? (Hell yeah!)
なあドレー(どうした?)「アーイ!」をもらってもいいか?(アーイ!)

[Chorus: Eminem & Dr. Dre]

Let's get down to business
さあ、ビジネス(本業)に取り掛かろうぜ

I don't got no time to play around, what is this?
遊んでる暇はねえんだ、なんだこれは?

Must be a circus in town, let's shut the shit down on these clowns
町にサーカスでも来たのか。あのピエロ共を黙らせて、店じまいさせてやろうぜ

Can I get a witness? (Hell yeah!)
証人はいるか?(アーイ!)

Let's get down to business
さあ、ビジネス(本業)に取り掛かろうぜ

I don't got no time to play around, what is this?
遊んでる暇はねえんだ、なんだこれは?

Must be a circus in town, let's shut the shit down on these clowns
町にサーカスでも来たのか。あのピエロ共を黙らせて、店じまいさせてやろうぜ

Can I get a witness? (Hell yeah!)
証人はいるか?(アーイ!)

[Outro: Eminem]

So there you have it, folks
というわけでお分かりいただけたかな、皆の衆

(Marshall!) has come to save the day
(マーシャルが!)窮地を救いにやって来たんだ

Back with his friend Andre
ダチのアンドレを連れて帰ってきた

And to remind you that bullshit does not pay
そしてお前らに思い出させてやるためさ、クソみたいなフェイクじゃ割に合わないってことをな

Because (Marshall!) and Andre are here to stay
なぜなら(マーシャル!)とアンドレはここに定着して

And never go away
絶対に消え去ったりしないからだ

Until our dying day
俺たちが死ぬその日まで

Until we're old and grey (Marshall!)
俺たちが年老いて白髪になるまでな(マーシャル!)

So until next time, friends
じゃあまた次回まで、仲間たちよ

Same blonde hair, same rap channel
同じ金髪、同じラップのチャンネルで会おうぜ
※バットマンのTVシリーズの次回予告の決まり文句「Same Bat-time, same Bat-channel!(同じバット・タイム、同じバット・チャンネルで!)」の完璧なオマージュ。エミネムのトレードマークである金髪(ブリーチヘア)に置き換えている。

Good night, everyone
おやすみ、みんな

Thank you for coming
ご来場ありがとう

Your host for the evening (Marshall!)
今宵のホストは(マーシャル!)でした

Oh! Heh
おっと!ヘヘッ