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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Whatever Happens - Michael Jackson (feat. Carlos Santana) 【和訳・解説】

Artist: Michael Jackson (feat. Carlos Santana)

Album: Invincible

Song Title: Whatever Happens

概要

2001年のアルバム『Invincible』に収録された、ラテン・ロックの巨匠カルロス・サンタナとの奇跡的なコラボレーション楽曲である。テディ・ライリーらのプロデュースによる哀愁漂うスパニッシュ・ギターと、マイケルの切迫したボーカルが映画のワンシーンのような緊張感を生み出している。歌詞は、何らかの重大な危機(予期せぬ妊娠や犯罪など様々な解釈が存在する)に直面し、不安に押し潰されそうになる男女の緊迫したドラマを描く。サンタナの泣きのギターとマイケルの感情的なシャウトが交差する後半の展開は圧巻であり、困難な状況下でも「決して手を離さない」という無条件の愛と連帯を歌い上げた、キャリア後期の隠れた大傑作である。

和訳

[Verse 1: Michael Jackson]

He gives a nervous smile, tries to understand her side
彼は引きつった笑みを浮かべ、彼女の言い分を理解しようとする
※緊迫した状況下で、男性側が事態を穏便に収めようと無理をして「引きつった笑み(nervous smile)」を浮かべる様子。第三人称(He/She)で語られる物語形式は、「Smooth Criminal」や「Billie Jean」などマイケルの得意とするシネマティックなストーリーテリングの手法である。

To show that he cares
彼女を気にかけていると示すために

She can't stay in the room
彼女は部屋に留まることすらできない

She's consumed with everything that's been going on
起きているすべての出来事に、彼女は心身をすり減らしている
※「consumed(消費される、圧倒される)」。二人が直面している問題が、日常の些細なトラブルではなく、人生を左右するほどの重圧であることを示唆している。ファンの間では「予期せぬ妊娠」「犯罪への加担」「深刻な経済的危機」など様々な考察がなされているが、あえて詳細をぼかすことで普遍的な愛の試練を描いている。

She says, "Whatever happens, don't let go of my hand"
彼女は言う、「何が起きようとも、私の手を絶対に離さないで」と

[Verse 2: Michael Jackson]

"Everything will be alright", he assures her
「すべて上手くいくさ」と、彼は彼女を安心させる

But she doesn't hear a word that he says
だが、彼女には彼の言葉が一つも耳に入らない

Preoccupied, she's afraid
心を奪われ、彼女は怯えている

Afraid what they've been doing's not right
自分たちのしていることが間違っているのではないかと、恐れているのだ
※ここでの「not right(間違っている)」というフレーズが、二人の抱える問題が法や倫理に触れるような社会的なタブーである可能性を匂わせている。ラテン調のマイナーコードと相まって、逃避行を続ける恋人たちのようなノワール的悲劇性が強調されている。

He doesn't know what to say, so he prays
彼も何と言えばいいか分からず、ただ祈りを捧げる

Whatever, whatever, whatever
何が、何が、何が起きようとも

[Chorus: Michael Jackson]

Whatever happens, don't let go of my hand
何が起きようとも、僕の手を絶対に離さないでくれ
※前段では彼女のセリフであったが、ここではコーラスとして二人の共通の誓い(あるいはマイケル自身の魂の叫び)へと昇華されている。「手を開く(Let go)」ことは繋がりを断つことを意味し、マイケルは一貫して「手を繋ぐこと」に深い連帯と救済の意味を持たせてきた。

See, whatever happens, don't let go of my hand
ほら、何が起きようとも、僕の手を絶対に離さないでくれ

Whatever happens, don't you let go of my hand
何が起きようとも、僕の手を絶対に離すんじゃない

[Guitar Solo]

Don't let go of my hand
僕の手を絶対に離さないでくれ
※ここでカルロス・サンタナによるむせび泣くようなギターソロが炸裂する。マイケルの声にならない悲痛な感情を、サンタナのギターが代弁するかのように情熱的に歌い上げている。

Don't let go of my hand
僕の手を絶対に離さないでくれ

[Verse 3: Michael Jackson]

He's working day and night, thinks he'll make her happy
彼は昼夜を問わず働き、それが彼女を幸せにするのだと思い込んでいる

Forgetting all the dreams that he had
かつて自分が抱いていた夢をすべて忘れてしまって
※問題を解決しようと物質的な豊かさや労働に逃避する男性の悲哀。愛する者を守るために自己犠牲を払うが、それがかえって二人の精神的な距離を広げてしまうという、すれ違いの切なさを描いている。

He doesn't realize it's not the end of the world
これが世界の終わりではないということに、彼は気づいていない

It doesn't have to be that bad
そこまで最悪な状況になんて、なるはずがないんだ

She tries to explain, "It's you that makes me happy"
彼女は説明しようとする、「私を幸せにしてくれるのは、あなた自身なのよ」と
※男性が「解決策」や「物質」で状況を打破しようとするのに対し、女性が本当に求めているのは「彼自身の存在」と「共にいること(手を繋ぐこと)」であるという、男女の愛の本質的なすれ違いと真理が明かされるハイライトである。

Whatever, whatever, whatever
何が、何が、何が起きようとも

[Chorus: Michael Jackson]

Whatever happens, don't let go of my hand
何が起きようとも、僕の手を絶対に離さないでくれ

See, whatever happens, don't you let go of my hand
ほら、何が起きようとも、僕の手を絶対に離すんじゃない

See whatever happens, don't go of my hand
ほら、何が起きようとも、僕の手を絶対に離さないでくれ

See whatever happens, don't you let go of my hand
ほら、何が起きようとも、僕の手を絶対に離すんじゃない

Whatever happens, don't let go of my hand
何が起きようとも、僕の手を絶対に離さないでくれ

Whatever happens, don't you let go of my hand
何が起きようとも、僕の手を絶対に離すんじゃない

Whatever happens, don't you let go of my hand
何が起きようとも、僕の手を絶対に離すんじゃない

Whatever happens, just don't let go of my hand
何が起きようとも、ただ僕の手を絶対に離さないでくれ
※楽曲の終盤に向けて、サンタナの情熱的なギターフレーズとマイケルのフェイクが激しく絡み合う。「Beat It」でのエディ・ヴァン・ヘイレンや「Dirty Diana」でのスティーヴ・スティーヴンスなど、一流のロックギタリストとの共演で数々の伝説を作ってきたマイケルが、キャリアの成熟期においてラテン・ロックの巨匠と生み出した究極のケミストリーである。

[Outro: Carlos Santana & Michael Jackson]

Thank you, man
ありがとう

Thank you, Carlos
ありがとう、カルロス
※全ての演奏が終わり、スタジオで二人の巨匠が互いの健闘を称え合う肉声がそのまま収められている。マイケルの完璧主義的なスタジオ・ワークの中で、このような生々しい人間的なやり取りが残されるのは珍しく、二人のアーティストの間に深いリスペクトと親密な空気が流れていたことを証明している。