Artist: Michael Jackson
Album: Invincible
Song Title: The Lost Children
概要
2001年発表のアルバム『Invincible』に収録された、マイケル・ジャクソン自身の作詞・作曲・プロデュースによる心温まる、しかし深い悲哀を帯びたバラードである。世界中で行方不明になっている子供たち、そして愛や家庭を知らずに育つ「失われた子供たち」へ捧げられた本作は、彼が長年抱き続けてきた児童保護への強い使命感の結晶だ。ピーターパンの「ロスト・ボーイズ」のメタファーも内包されており、子供たちの純粋さを守り抜こうとするマイケルのイノセンスへの執着が表れている。森の中で遊ぶ子供たちの無邪気な声で終わるアウトロは、彼らが永遠に安全な場所(ネバーランド)で守られていることを願う祈りのようでもある。
和訳
[Verse 1]
We pray for our fathers
私たちは父親のために祈り
Pray for our mothers
母親のために祈る
Wishing our families well
家族の幸せを願いながら
We sing songs for the wishing, of those who are kissing
愛し合う人たちの願いのために、私たちは歌を歌う
But not for the missing
だが、行方不明になった者たちのためには歌わない
※「missing(行方不明の者)」。社会が一般的な家族の幸せや身近な愛(fathers, mothers, kissing)ばかりに目を向け、見知らぬ「失われた子供たち」に対する関心を払っていないという、現代社会の無関心と冷酷さを鋭く告発している。
[Chorus]
So this one’s for all the lost children
だからこの歌は、すべての失われた子供たちのために
This one’s for all the lost children
この歌は、すべての失われた子供たちのために
This one’s for all the lost children
この歌は、すべての失われた子供たちのために
Wishing them well
彼らの無事を願い
And wishing them home
彼らが家へ帰れるようにと願って
※「lost children(失われた子供たち)」。物理的に行方不明になった児童(誘拐や家出)だけでなく、虐待や貧困によって「子供らしさ(童心)」を奪われたすべての子供たちを意味するダブルミーニングである。J.M.バリーの『ピーター・パン』に登場する「ロスト・ボーイズ(迷子たち)」のモチーフも深く投影されている。
[Verse 2]
When you sit there addressing
あなたがそこに座り、語りかけ
Counting your blessings
自分に与えられた恵みを数え
Biding your time
ゆったりと時を過ごしている時に
When you lay me down sleeping
あなたが私を寝かしつける時
And my heart is weeping
私の心は涙を流している
Because I'm keeping a place
だって、私は彼らのための場所を空けて待っているのだから
※「lay me down sleeping」は子供向けの伝統的な就寝時の祈り(Now I lay me down to sleep...)を連想させる。恵まれた環境で眠りにつく子供の視点から、そうではない子供たちへと思いを馳せることで、絶対的な保護と愛情の不平等を浮き彫りにしている。
[Chorus]
For all the lost children
すべての失われた子供たちのために
This is for all the lost children
これはすべての失われた子供たちのための歌
This one’s for all the lost children
この歌は、すべての失われた子供たちのために
Wishing them well
彼らの無事を願い
And wishing them home
彼らが家へ帰れるようにと願って
[Bridge]
Home with their fathers
父親のいる家へ
Snug close and warm, loving their mothers
暖かく心地よい場所で、母親に愛される家へ
I see the door simply wide open
扉は大きく開かれているのが見えるのに
But no one can find thee
誰も君たちを見つけ出すことができない
※「no one can find thee(誰も君たちを見つけられない)」。社会の保護システムや大人たちの目からこぼれ落ちてしまった子供たちの絶対的な孤独。温かい家庭(home)の扉は概念としては開かれているにもかかわらず、そこへたどり着けない無力な命に対するマイケルの深い悲哀が表現されている。
[Chorus]
Let's pray for all the lost children
さあ、祈ろう、すべての失われた子供たちのために
Let’s pray for all the lost children
祈ろう、すべての失われた子供たちのために
Just think of all the lost children
ただ思い浮かべてほしい、すべての失われた子供たちのことを
Wishing them well
彼らの無事を願って
This is for all the lost children
これはすべての失われた子供たちのための歌
This one’s for all the lost children
この歌は、すべての失われた子供たちのために
Just think of all the lost children
ただ思い浮かべてほしい、すべての失われた子供たちのことを
Wishing them well and wishing them home
彼らの無事を願い、彼らが家へ帰れるようにと願って
[Outro]
Eighty-five, ninety, ninety-five, one hundred
85、90、95、100
Here I come, ready or not
もう行くよ、準備はいいかい
Last one into the forest is a rotten apple
森に入るのが一番遅かった子は、腐ったリンゴだぞ
It's so quiet in the forest
森の中はとても静かだね
Look at all the trees
見て、たくさんの木々を
And all the lovely flowers
そして、可愛い花たちを
It's getting dark
暗くなってきた
We better go home now
もうお家に帰った方がいいよ
※かくれんぼで遊ぶ子供たちの無邪気な声のサンプリング。マイケル自身の子供であるプリンスとパリス、そして友人アルド・カシオの息子の声とされる。「We better go home now(お家に帰った方がいいよ)」という無邪気な言葉は、帰るべき「家(Home)」を持たないLost Childrenの現実との残酷なコントラストを生み出し、同時に彼らが森(ネバーランド的な安全な場所)で永遠に守られているかのような幻想的な余韻を残して楽曲の幕を閉じる。
