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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Dangerous - Michael Jackson 【和訳・解説】

Artist: Michael Jackson

Album: Dangerous

Song Title: Dangerous

概要

1991年発表の歴史的アルバム『Dangerous』のタイトル・トラックにして、最後を飾る傑作である。テディ・ライリーが構築した金属的で硬質なニュージャックスウィングのビートに乗せ、「Billie Jean」や「Dirty Diana」から続くマイケル特有の「ファム・ファタール(魔性の女)」への恐怖と抗いがたい性的欲望が歌われている。特筆すべきは、フィルム・ノワールの探偵を思わせる囁き声のスポークン・ワード(語り)と、旧約聖書からの直接的な引用である。誘惑への屈服と自己破壊の恐怖を極限のグルーヴへと昇華させた本作は、後のMTV・VMA(1995年)などでの完璧に統制された群舞パフォーマンスと共に、彼の大衆音楽における特異なダークサイドを象徴する記念碑的楽曲である。

和訳

[Spoken Intro]

The way she came into the place, I knew right then and there
彼女がその場所に現れた瞬間、僕は直感した

There was something different about this girl
この娘にはどこか違う何かがあるってことを

The way she moved her hair, her face, her lines
髪の揺らし方、表情、その体のライン

Divinity in motion
動くたびに神々しさすら漂っていた
※「Divinity in motion(動く神聖さ)」。危険な女性をただの娼婦や誘惑者としてではなく、抗いがたい神話的な女神のように神格化して描写している。マイケルの女性のセクシュアリティに対する根源的な畏怖が表れた表現である。

As she stalked the room, I could feel the aura of her presence
彼女が部屋を闊歩すると、その存在のオーラを感じ取ることができた

Every head turned feeling passion and lust
誰もが情熱と肉欲に駆られ、彼女の方へ振り向いた

The girl was persuasive, the girl I could not trust
その娘には抗いがたい説得力があり、同時に決して信用できない女だった

The girl was bad, the girl was dangerous
その娘は悪(バッド)で、危険(デンジャラス)だった
※アルバムタイトルであり楽曲のテーマ。前作『Bad』の不良的な「悪さ」から、自身の理性を破壊する「内面的な性的脅威」へと、マイケルが表現するテーマがよりダークにシフトしていることを示している。

[Verse 1]

I never knew but I was walkin' the line (Hee!)
気づかなかったが、僕は一線を越えようとしていた(Hee!)

"Come go with me," I said, "I have no time (Hee-hee!)
「一緒に来て」と彼女は言い、僕は「時間がないんだ」と答えた(Hee-hee!)

And don't you pretend we didn't talk on the phone" (Hee!)
「電話で話したことをなかったフリしないでよ」(Hee!)

My baby cried, she left me standin' alone (Hee! Hee!)
僕の本当の恋人は泣き崩れ、僕を一人残して去ってしまった(Hee! Hee!)
※危険な女の罠(でっち上げられた関係)によって、主人公の純粋な恋人(My baby)との関係が破壊される悲劇。「Dirty Diana」の結末と重なる、彼の猜疑心(パラノイア)と女性への恐怖心を象徴する展開である。

[Chorus]

She's so dangerous
彼女はあまりにも危険だ

The girl is so dangerous (Hee-hee!)
あの娘はあまりにも危険なんだ(Hee-hee!)

Take away my money
僕の金を奪い取り

Throw away my time
僕の時間を無駄にさせる
※「Take away my money, throw away my time」。搾取される世界的スターとしてのリアルな叫び。富と名声を狙って近づいてくる人々に対する強い警戒心が、キャッチーなサビの中で冷酷に歌い上げられている。

You can call me honey
僕をハニーと呼んだっていいさ

But you're no damn good for me
でも、お前は僕にとって百害あって一利なしだ

[Spoken Interlude]

She came at me in sections with the eyes of desire
彼女は欲望の目をギラつかせ、じわじわと僕に迫ってきた

I fell trapped into her web of sin
僕は彼女の罪の蜘蛛の巣に絡め取られてしまった

A touch, a kiss, a whisper of love, I was at the point of no return
一度のタッチ、一度のキス、愛の囁き。僕はもう後戻りできない地点にいた

Deep in the darkness of passion's insanity
情熱という名の狂気の、深い暗闇の中で

I felt taken by lust's strange inhumanity
僕は、肉欲の持つ奇妙で非人間的な力に支配されていくのを感じた
※肉欲(lust)を「非人間的(inhumanity)」と表現するマイケルの哲学。純粋な愛を神聖視する彼にとって、理性を失わせるコントロール不能な性衝動は、人間性を剥奪する悪魔的な力として捉えられていた。

This girl was persuasive, this girl, I could not trust
この娘には抗いがたい説得力があり、決して信用できない女だった

The girl was bad, the girl was dangerous
その娘は悪で、危険だった

[Verse 2]

I never knew but I was living in vain (Hee!)
気づかなかったが、僕は虚しい日々を生きていたんだ(Hee!)

She called my house, she said, "You know my name"
彼女は僕の家に電話をかけ、「私の名前、分かっているでしょ」と言った

(She called me)
(彼女が僕に電話してきたんだ)

And don't you pretend you never did me before" (Don't you, don't you, do it!) (Hee!)
「私と寝たことがないなんて、しらばっくれないでよ」(やめろ、やめろ、やめてくれ!)(Hee!)

With tears in her eyes, my baby walked out the door
目に涙を浮かべ、僕の本当の恋人はドアを出て行ってしまった

(Don't you, don't you, don't you) (Hee! Hee! Hee! Hee!)
(行かないで、行かないで、行かないでくれ)(Hee! Hee! Hee! Hee!)

[Chorus]

She's so dangerous
彼女はあまりにも危険だ

The girl is so dangerous (Hee-hee!)
あの娘はあまりにも危険なんだ(Hee-hee!)

Take away my money, throw away my time
僕の金を奪い取り、僕の時間を無駄にさせる

You can call me honey
僕をハニーと呼んだっていいさ

But you're no damn good for me
でも、お前は僕にとって百害あって一利なしだ

Dangerous
危険だ

The girl is so dangerous (Hee-hee!) (Dog gone!)
あの娘はあまりにも危険なんだ(Hee-hee!)(なんてことだ!)

I have to pray to God
僕は神に祈らなければならない

'Cause I know how lust can blind
肉欲がどれほど人の目を盲目にするか、僕は知っているから

It's a passion in my soul
それは僕の魂を焦がす情熱だ

But you're no damn lover friend of mine
だが、お前は僕の恋人でも友達でも、決してないんだ
※誘惑に溺れそうになる自分を神への祈り(pray to God)で制止しようとする。宗教的な道徳観と、抑えきれない肉体的な衝動の間で引き裂かれるマイケルの内面の葛藤が極限に達している。

[Ad-Libs]

Hee-hee!
Hee-hee!

Ooh!
Ooh!

Ooh!
Ooh!

Hoo!
Hoo!

[Bridge]

I cannot sleep alone at night
夜、一人では眠れないんだ

My baby left me here tonight
僕の恋人は今夜、僕をここに置いて去ってしまった

I cannot cope 'til it's all right
すべてが元通りになるまで、僕には耐えられない

You and your manipulation, you hurt my baby!
お前とお前のその小賢しい操作が、僕の愛する人を傷つけたんだ!
※激しい怒りのシャウト。「manipulation(情報操作、心理操作)」。これは単なる魔性の女への怒りにとどまらず、事実を歪曲して彼の人間関係や名声を破壊しようとするメディアやタブロイド紙の「操作」に対する、社会的なプロテストとしても機能している。

[Spoken Interlude]

And then it happened, she touched me
そしてそれは起きた。彼女が僕に触れたんだ

For the lips of a strange woman drop as a honeycomb
見知らぬ女の唇は、蜂の巣の蜜のように滴り落ち

And her mouth was smoother than oil
彼女の口は、油よりも滑らかだった

But her inner spirit and words were as sharp as a two-edged sword
しかし彼女の内なる魂と言葉は、両刃の剣のように鋭かった
※旧約聖書の「箴言(Proverbs)」第5章3-4節からの直接的な引用。売春婦(見知らぬ女)の誘惑に対する警告の言葉をそのままスポークン・ワードとして用いることで、この楽曲が持つ「罪と罰」のテーマに極めて厳格で宗教的な重みを持たせている。

But I loved it, 'cause it's dangerous
それでも僕はそれを愛してしまった、だって、それは危険(デンジャラス)だから

[Chorus]

Dangerous (Hee!)
危険だ(Hee!)

The girl is so dangerous (Hee-hee, hee!)
あの娘はあまりにも危険なんだ(Hee-hee, hee!)

Take away my money
僕の金を奪い取り

Throw away my time (Oh!)
僕の時間を無駄にさせる(Oh!)

You can call me honey
僕をハニーと呼んだっていいさ

But you're no damn good for me
でも、お前は僕にとって百害あって一利なしだ

Dangerous (Hee!)
危険だ(Hee!)

The girl is so dangerous (Hee-hee!) (Hee!)
あの娘はあまりにも危険なんだ(Hee-hee!)(Hee!)

Take away my money, throw away my time (Dog gone!) (Oh!)
僕の金を奪い取り、僕の時間を無駄にさせる(なんてことだ!)(Oh!)

You can call me honey
僕をハニーと呼んだっていいさ

But you're no damn good for me
でも、お前は僕にとって百害あって一利なしだ

Dangerous (Hee!)
危険だ(Hee!)

The girl is so dangerous (Hee-hee!)
あの娘はあまりにも危険なんだ(Hee-hee!)

Take away my money, throw away my time (Woah!) (Oh, yeah!)
僕の金を奪い取り、僕の時間を無駄にさせる(Woah!)(Oh, yeah!)

You can call me honey
僕をハニーと呼んだっていいさ

But you're no damn good for me
でも、お前は僕にとって百害あって一利なしだ

Dangerous (Hee! Hee!)
危険だ(Hee! Hee!)

The girl is so dangerous (Hoo-hee! Hoo!) (Dog gone!)
あの娘はあまりにも危険なんだ(Hoo-hee! Hoo!)(なんてことだ!)

I have to pray to God
僕は神に祈らなければならない

'Cause I know how lust can blind
肉欲がどれほど人の目を盲目にするか、僕は知っているから

It's a passion in my soul
それは僕の魂を焦がす情熱だ

But you're no damn lover friend of mine (Hoo!)
だが、お前は僕の恋人でも友達でも、決してないんだ(Hoo!)

[Outro]

Hoo!
Hoo!

Hoo!
Hoo!

My baby
僕の愛する人

You been, you take, uh
お前は、お前は奪う、uh

You don't, you don't, don't
やめろ、やめろ、やめるんだ

Mess with my baby
僕の恋人に手出しするな

Hoo! Hoo!
Hoo! Hoo!

Hoo!
Hoo!

Hoo!
Hoo!

Hoo!
Hoo!

Hoo!
Hoo!

Dee-da, dum
ディ・ダ、ダム

Dee-da, dee-da
ディ・ダ、ディ・ダ

Hoo!
Hoo!

Dee-da, dee-da
ディ・ダ、ディ・ダ

Hoo!
Hoo!
※クインシー・ジョーンズの下を離れ、テディ・ライリーと共に完全に新しいストリートのビート(ニュージャックスウィング)を支配したマイケルの、アルバムを締めくくる堂々たるアウトロ。彼自身の声を金属的なパーカッションのように用いる「ヒューマン・ビートボックス」の多用は、彼がポップスの王であると同時に、最高峰のリズム楽器そのものであることを世界に見せつけている。