Artist: Michael Jackson
Album: Dangerous
Song Title: Black or White
概要
1991年に発表されたアルバム『Dangerous』からの先行シングルであり、ポップミュージック史における人種融和の最強のアンセムである。ハードロックとダンス・ポップを見事に融合させた画期的なサウンドに乗せ、彼自身の肌の色の変化(白斑症)に対するメディアの執拗な詮索への回答と、人種差別の撤廃を高らかに宣言している。ジョン・ランディス監督によるショートフィルムでは、マコーレー・カルキンを起用し、当時の最先端であったモーフィング技術を用いて多様な人種が次々と入れ替わる映像的革命を起こした。全世界で同時プレミア放送されて約5億人が熱狂し、音楽と映像の力で人種という概念の壁を物理的かつ精神的に打ち破った、彼のキャリアを代表する歴史的傑作である。
和訳
[Skit: L.T.B. & Andres McKenzie]
(Hey!) What?
(ヘイ!)何だよ?
(Turn it off) But dad, this is the best part!
(消しなさい)でもパパ、ここが一番いいところなんだ!
(Turn it off) No!
(消すんだ)やだね!
(It's too late for this, turn it off)
(こんな時間に遅すぎる、今すぐ消せ)
Dad, this is the best part, come on
パパ、ここが一番いいところなんだよ、お願いだから
(No, turn it off now) No, this is the—, I wanna listen to it, okay?
(ダメだ、今すぐ消しなさい)やだ、これは…僕はこれが聴きたいんだ、いいだろ?
('Cause it's too loud and disturbs the neighbors, turn it off now)
(音が大きすぎて近所迷惑だ、今すぐ消せ)
Right, too late? Sure, eat this
分かったよ、遅すぎるって? なら、これを食らえ!
※マコーレー・カルキン演じるロック好きの少年と、ジョージ・ウェント演じる保守的な父親の対立。ガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュのスタイルを模した強烈なギターリフが鳴り響くこのスキットは、世代間の断絶(ジェネレーション・ギャップ)をロックンロールの力で吹き飛ばす痛快なプロローグである。
[Intro: Michael Jackson]
Aaow! (Ooh)
Aaow! (Ooh)
Aaow!
Aaow!
[Verse 1: Michael Jackson]
I took my baby on a Saturday bang
土曜日の夜、愛する人をパーティに連れ出したんだ
Boy, is that girl with you?
「おい、あの娘はお前の連れかい?」
※異人種間のカップルに対する周囲の奇異な視線や偏見を暗示している。「bang」は喧騒やパーティを意味し、土曜の夜の街角でのリアルな出来事として描かれる。
Yes, we're one and the same
「あぁ、僕らはひとつで、同じ人間さ」
※相手が何人種であろうと「同じ人間である(one and the same)」という絶対的な真理。社会の分断に対する、極めてシンプルかつ力強い回答である。
[Chorus: Michael Jackson]
Now, I believe in miracles
僕は奇跡を信じている
And a miracle has happened tonight, hee
そして今夜、その奇跡が起きたんだ、hee
But if you're thinking about my baby
でも、もし君が僕の愛する人についてどうこう考えているなら
It don't matter if you're black or white, ooh
黒人か白人かなんて、全く関係ないことさ、ooh
※本楽曲の核心的メッセージ。彼自身の肌の色の変化(白斑症)に対するタブロイド紙の心無いゴシップへの反論であると同時に、肌の色で人間を区別する社会のナンセンスさを痛烈に批判している。
[Verse 2: Michael Jackson]
They print my message in the Saturday sun
奴らは土曜のタブロイド紙に僕のメッセージを掲載する
※「the Saturday sun」は、イギリスの大衆タブロイド紙「The Sun」を暗に指している。彼の発言や容姿を曲解し、センセーショナルに書き立てるメディアの傲慢さを名指しで告発している。
I had to tell 'em, "I ain't second to none"
僕は奴らに言ってやらなきゃならなかった、「俺は誰にも劣っちゃいない」と
※「second to none(誰の次でもない=誰にも劣らない)」。人種的マイノリティとして、あるいはメディアの標的として貶められてきた彼が、自らの尊厳と誇りを強烈に主張するパンチラインである。
[Chorus: Michael Jackson]
And I told about equality and it's true
そして僕は平等の真実について語ったんだ
Either you're wrong or you're right, hee
間違っているか、正しいかのどちらかしかない、hee
But if you're thinking about my baby
でも、もし君が僕の愛する人についてどうこう考えているなら
It don't matter if you're black or white, hoo
黒人か白人かなんて、全く関係ないことさ、hoo
[Post-Chorus: Michael Jackson]
Gone wit' ya, babe
あっちへ行きな、ベイビー
Hee-hee
Hee-hee
[Bridge: Michael Jackson]
I am tired of this devil
この悪魔にはもううんざりだ
※「devil(悪魔)」は、人種差別主義者や無責任なマスメディア、そして社会に蔓延するヘイトそのものを指す。
I am tired of this stuff
こんなくだらないことにはもううんざりだ
I am tired of this business
この業界(ビジネス)にはもううんざりだ
Go when the going gets rough
状況が厳しくなったら、さっさと立ち去るんだな
I ain't scared of your brother
君の兄弟だって怖くない
I ain't scared of no sheets
白いシーツだって怖くはないさ
※「sheets(白いシーツ)」は、白人至上主義の秘密結社クー・クラックス・クラン(KKK)が被る白装束を明確に指している。黒人アーティストとして、アメリカの最も深い闇と差別の歴史に対し、一切の恐怖を持たずに正面から立ち向かう歴史的なプロテスト宣言である。
I ain't scared of nobody
僕は誰のことも恐れていない
Go when the going gets mean
卑劣な状況になったら、さっさと立ち去るんだな
[Verse 3: L.T.B.]
Protection for gangs, clubs, and nations
ギャング、クラブ、そして国家の保護(身内を守ること)が
Causing grief in human relations
人間関係に深い悲しみをもたらしている
It's a turf war on a global scale
これは地球規模の縄張り争い(ターフ・ウォー)なんだ
I'd rather hear both sides of the tale
僕はむしろ、双方の言い分を聞きたいね
※プロデューサーのビル・ボットレル(L.T.B.という偽名を使用)によるラップ・パート。ストリートのギャングの縄張り争いと、国家間の戦争や人種対立を同じ「ターフ・ウォー」として俯瞰し、排他主義の愚かさを説いている。
See, it's not about races, just places, faces
ほら、問題は人種じゃない、ただの場所や顔つきの違いさ
Where your blood comes from, it's where your space is
君の血のルーツがどこであろうと、そこが君の居場所なんだ
I've seen the bright get duller
僕は輝かしいものが色褪せていくのを見てきた
I'm not gonna spend my life being a color
俺は「何色であるか」というだけのことのために、自分の人生を無駄にするつもりはないね
※「spend my life being a color(色として人生を過ごす)」。人間を肌の色という記号(color)だけで判断する差別の愚かさを一刀両断する、ヒップホップ史に残る極めて知的で力強いリリックである。
[Chorus: Michael Jackson]
Don't tell me you agree with me
僕に同意するなんて言わないでくれ
When I saw you kicking dirt in my eye (Hee-hee)
僕の目に泥を蹴り入れておきながらさ(Hee-hee)
※表面上は人種融和や平等を謳いながら、裏では差別を助長したり彼を陥れたりする偽善者たちへの痛烈な皮肉。
But if you're thinking about my baby
でも、もし君が僕の愛する人についてどうこう考えているなら
It don't matter if you're black or white
黒人か白人かなんて、全く関係ないことさ
[Post-Chorus: Michael Jackson]
I said if you're thinking of being my baby
言っておくけど、もし僕の恋人になりたいと思っているなら
It don't matter if you're black or white
黒人か白人かなんて、全く関係ないことさ
I said if you're thinking of being my brother
言っておくけど、もし僕の兄弟(仲間)になりたいと思っているなら
It don't matter if you're black or white
黒人か白人かなんて、全く関係ないことさ
[Outro: Michael Jackson]
Alright, alright (Ooh-ooh)
分かったか、分かっただろ(Ooh-ooh)
Alright (Yeah, yeah, yeah), yeah, now
分かっただろ(Yeah, yeah, yeah)、さあ
Alright, alright (Ooh-ooh)
分かったか、分かっただろ(Ooh-ooh)
Shamone, don't (Yeah, yeah, yeah)
さあ来いよ、やめるな(Yeah, yeah, yeah)
Yeah, now, alright, ah
Yeah、さあ、分かっただろ、ah
It's black, it's white
黒か、白か
It's tough for you to beat, yeah (Yeah, yeah, yeah)
君がこれを打ち負かすのは難しいだろうね、yeah(Yeah, yeah, yeah)
※「tough for you to beat(お前が俺を打ち負かすのは難しい)」。いかなる偏見や暴力、メディアの圧力をもってしても、音楽という真実の力で繋がった「人間としての誇り」を屈服させることはできないという、マイケルの絶対的な勝利宣言である。
It's black, it's white (It's white)
黒か、白か(白か)
It's black, it's white
黒か、白か
It's tough for you to beat, yeah (Yeah, yeah, yeah)
君がこれを打ち負かすのは難しいだろうね、yeah(Yeah, yeah, yeah)
It's black, it's white, hoo!
黒か、白か、hoo!
