Artist: Michael Jackson
Album: Bad
Song Title: Smooth Criminal
概要
1987年発表のアルバム『Bad』に収録され、マイケル・ジャクソンのキャリアにおいて最も象徴的なショートフィルムとダンス・パフォーマンスを生み出した歴史的傑作である。当初は「Al Capone(アル・カポネ)」というタイトルで制作されていた本作は、アニーという女性がアパートで襲撃されるサスペンス映画のような暗い物語を描いている。幾度も繰り返される「Annie, are you okay?(アニー、大丈夫かい?)」というフレーズは、心肺蘇生法(CPR)の訓練用マネキン「レサシ・アン」に呼びかける言葉に由来している。マイケルの心音をサンプリングした特異なビートと、シンクラヴィアによる鋭角的なベースラインが、逃げ場のない緊迫感を構築している。映画『ムーンウォーカー』内で公開されたショートフィルムでは、フレッド・アステアの映画『バンド・ワゴン』へのオマージュを捧げつつ、特許を取得した伝説の「ゼロ・グラヴィティ(斜め45度に傾くダンス)」を披露。視覚芸術とポップミュージックの融合を極限まで推し進めた、彼の「完璧主義」の到達点である。
和訳
[Intro]
Ow!
Ow!
Cha!
Cha!
Shoo-ca-choo-ca!
シュー・カ・チュー・カ!
※自身の口でビートを刻むボイス・パーカッション。サンプリングされた心音とともに、聴く者の心拍数を強制的に引き上げる特異なイントロダクションである。
[Verse 1]
As he came into the window
奴が窓から侵入してきた時
Was a sound of a crescendo
クレッシェンドのように音が迫り来た
※「彼(侵入者)」の視点と「第三者」の視点が交錯する映画的なカメラワーク。暗殺者の足音が漸強(クレッシェンド)して迫り来る恐怖を、楽曲のビート自体が増幅させている。
He came into her apartment
奴は彼女のアパートメントに入り込み
He left the bloodstains on the carpet
カーペットに血痕を残した
She ran underneath the table
彼女はテーブルの下へ逃げ込んだが
He could see she was unable
奴には彼女が逃げ切れないことが分かっていた
So she ran into the bedroom
そして彼女はベッドルームへと走り
She was struck down, it was her doom
打ち倒された、それが彼女の運命(最期)だった
※「doom(破滅、死、悲惨な運命)」。ポップソングとしては異例なほど直接的で残酷な暴力描写。マイケルが好んだ1930年代のギャング映画やフィルム・ノワールの美学が色濃く反映されている。
[Pre-Chorus]
Annie, are you okay?
アニー、大丈夫かい?
※心肺蘇生法(CPR)の訓練用マネキン「レサシ・アン(Resusci Anne)」に対する声掛け「Annie, are you okay?」をそのまま借用したポップス史に残るリフレイン。マイケルが実際にCPRの講習を受けた経験から着想を得ている。
So, Annie, are you okay? Are you okay, Annie?
ねぇアニー、大丈夫かい? 無事なのかい、アニー?
Annie, are you okay?
アニー、大丈夫かい?
So, Annie, are you okay? Are you okay, Annie?
ねぇアニー、大丈夫かい? 無事なのかい、アニー?
Annie, are you okay?
アニー、大丈夫かい?
So, Annie, are you okay? Are you okay, Annie?
ねぇアニー、大丈夫かい? 無事なのかい、アニー?
Annie, are you okay?
アニー、大丈夫かい?
So, Annie, are you okay? Are you okay, Annie?
ねぇアニー、大丈夫かい? 無事なのかい、アニー?
[Chorus]
Annie, are you okay?
アニー、大丈夫かい?
Will you tell us that you're okay?
無事だって僕たちに教えてくれないか?
There's a sound at the window
窓辺で物音がして
Then he struck you, a crescendo, Annie
そして奴は君を打った、迫り来る音とともに、アニー
He came into your apartment
奴は君のアパートメントに入り込み
Left the bloodstains on the carpet
カーペットに血痕を残した
And then you ran into the bedroom
そして君はベッドルームへと走り
You were struck down
打ち倒されてしまった
It was your doom
それが君の最期だったんだ
[Post-Chorus]
Annie, are you okay?
アニー、大丈夫かい?
So, Annie, are you okay? Are you okay, Annie?
ねぇアニー、大丈夫かい? 無事なのかい、アニー?
Annie, are you okay?
アニー、大丈夫かい?
So, Annie, are you okay? Are you okay, Annie?
ねぇアニー、大丈夫かい? 無事なのかい、アニー?
Annie, are you okay?
アニー、大丈夫かい?
So, Annie, are you okay? Are you okay, Annie?
ねぇアニー、大丈夫かい? 無事なのかい、アニー?
[Refrain]
You've been hit by—
君は襲われたんだ—
You've been hit by—
君は撃たれたんだ—
A smooth criminal
滑らかで手口の鮮やかな犯罪者に
※タイトル「Smooth Criminal」。血痕を残す凶行に及びながらも、その手口が「smooth(滑らか、スマート)」であるという矛盾。犯罪の残酷さと、それを遂行する悪党の洗練された身のこなしという、マイケルが惹かれた「悪の美学」を象徴する言葉である。
Ow!
Ow!
[Verse 2]
So they came in to the out way
それで救急隊は出口の方向へと駆け込んできた
It was Sunday, what a black day
それは日曜日だった、なんて暗く悲惨な日だ
※安息日であるはずの日曜日(Sunday)が、最悪の事件が起きた暗黒の日(black day)へと反転する。平穏な日常が突如として暴力によって破壊される不条理を描いている。
Mouth-to-mouth resuscitation
口対口の人工呼吸(マウス・トゥ・マウス)
Sounding heartbeats, intimidations
鳴り響く心音、そして脅迫の恐怖
※楽曲の冒頭にサンプリングされた心音(マイケル自身の心拍数)と直接リンクする。CPRによる蘇生措置の切迫感と、依然として現場に漂う犯罪の恐怖(intimidations)が交錯する緊迫のシーン。
[Pre-Chorus]
Annie, are you okay?
アニー、大丈夫かい?
So, Annie, are you okay? Are you okay, Annie?
ねぇアニー、大丈夫かい? 無事なのかい、アニー?
Annie, are you okay?
アニー、大丈夫かい?
So, Annie, are you okay? Are you okay, Annie?
ねぇアニー、大丈夫かい? 無事なのかい、アニー?
Annie, are you okay?
アニー、大丈夫かい?
Annie, are you okay? Are you okay?
アニー、大丈夫かい? 無事なのかい?
Annie, are you okay?
アニー、大丈夫かい?
So, Annie, are you okay? Are you okay, Annie?
ねぇアニー、大丈夫かい? 無事なのかい、アニー?
Annie, are you okay?
アニー、大丈夫かい?
So, Annie, are you okay? Are you okay, Annie?
ねぇアニー、大丈夫かい? 無事なのかい、アニー?
[Chorus]
Annie, are you okay?
アニー、大丈夫かい?
Will you tell us that you're okay?
無事だって僕たちに教えてくれないか?
There's a sound at the window
窓辺で物音がして
Then he struck you, a crescendo, Annie
そして奴は君を打った、迫り来る音とともに、アニー
He came into your apartment
奴は君のアパートメントに入り込み
Left the bloodstains on the carpet
カーペットに血痕を残した
And then you ran into the bedroom
そして君はベッドルームへと走り
You were struck down
打ち倒されてしまった
It was your doom
それが君の最期だったんだ
[Post-Chorus]
Annie, are you okay? Annie, are you okay?
アニー、大丈夫かい? アニー、大丈夫かい?
Are you okay, Annie?
無事なのかい、アニー?
[Refrain]
You've been hit by—
君は襲われたんだ—
You've been struck by—
君は撃たれたんだ—
A smooth criminal
滑らかで手口の鮮やかな犯罪者に
[Interlude]
Choo-cha, choo-cha
チュー・チャ、チュー・チャ
Ow!
Ow!
Okay, I want everybody to clear the area right now!
よし、全員ただちにこの現場から離れるんだ!
※警察の無線や現場指揮官の怒号のサンプリング。楽曲のリアリティを高め、リスナーを事件の目撃者として物語の内部へと強制的に引きずり込む音響演出である。
[Breakdown]
Ow!
Ow!
Hoo!
Hoo!
Hoo!
Hoo!
Hoo!
Hoo!
Hoo!
Hoo!
Ow!
Ow!
[Chorus]
Annie, are you okay? (I don't know)
アニー、大丈夫かい?(分からない)
Will you tell us that you're okay? (I don't know)
無事だって僕たちに教えてくれないか?(分からない)
There's a sound at the window (I don't know)
窓辺で物音がして(分からない)
Then he struck you, a crescendo, Annie (I don't know)
そして奴は君を打った、迫り来る音とともに、アニー(分からない)
He came into your apartment (I don't know)
奴は君のアパートメントに入り込み(分からない)
Left the bloodstains on the carpet (I don't know why, baby)
カーペットに血痕を残した(なぜなんだ、ベイビー)
And then you ran into the bedroom (Help me)
そして君はベッドルームへと走り(助けて)
You were struck down
打ち倒されてしまった
It was your doom, Annie (Doggone it)
それが君の最期だったんだ、アニー(なんてことだ)
※「Doggone it(ちくしょう、なんてことだ)」。過酷な現実に対する嘆きの表現。マイケルの代名詞的フレーズの一つ。
Annie, are you okay? (Doggone it, Annie)
アニー、大丈夫かい?(なんてことだ、アニー)
Will you tell us that you're okay? (Doggone it, Annie)
無事だって僕たちに教えてくれないか?(なんてことだ、アニー)
There's a sound at the window (Doggone it, Annie)
窓辺で物音がして(なんてことだ、アニー)
Then he struck you, a crescendo Annie (Hoo! Hoo!)
そして奴は君を打った、迫り来る音とともに、アニー(Hoo! Hoo!)
He came into your apartment, (Doggone it)
奴は君のアパートメントに入り込み、(なんてことだ)
Left the bloodstains on the carpet (Hoo!)
カーペットに血痕を残した(Hoo!)
And then you ran into the bedroom (Hoo! Hoo!)
そして君はベッドルームへと走り(Hoo! Hoo!)
You were struck down (Doggone it)
打ち倒されてしまった(なんてことだ)
It was your doom, Annie (Ow!)
それが君の最期だったんだ、アニー(Ow!)
[Outro]
Ow!
Ow!
Ow!
Ow!
Shoo-cha-choo, shoo-cha-choo!
シュー・チャ・チュー、シュー・チャ・チュー!
Ow!
Ow!
Ow!
Ow!
※楽曲を通して繰り返される必死の問いかけ「Annie, are you okay?」に対し、アニーからの返答は最後まで一切ない。ポップス史に輝くこの究極のダンス・アンセムは、実はヒロインが救われない絶望的なバッドエンドで幕を閉じるという、極めてダークで完成されたノワール作品なのである。
