Artist: Michael Jackson
Album: Thriller
Song Title: Human Nature
概要
1982年発表の歴史的アルバム『Thriller』に収録された、都会の夜の孤独と官能を描いた至高のシンセ・ポップ/R&Bバラードである。TOTOのスティーヴ・ポーカロが作曲し、ジョン・ベティスが作詞を手掛けた本作は、デモテープの段階からマイケルの心を強く捉えた。特筆すべきは、ジャズの巨匠マイルス・デイヴィスが後にカバーしたほど音楽的完成度が高く、洗練されたコード進行と浮遊感のあるシンセサイザーが織りなすサウンドスケープである。マイケルのボーカルは「Why?」という問いかけを通じて、スターダムの頂点に立ちながらも一人の人間として街の喧騒に紛れ込み、誰かと繋がりを持ちたいという切実な渇望(Human Nature=人間の性)を見事に表現している。名声という牢獄から抜け出し、夜のニューヨークの街角で自由を求める青年の孤独な心象風景を切り取った傑作である。
和訳
[Intro]
Why?
なぜ?
※楽曲全体を貫く根源的な問い。スーパースターとしての窮屈な日常に対する疑問とも、人間の本能(性)に対する不可解さへの問いとも取れる、ため息のような囁きである。
[Verse 1]
Looking out across the nighttime
夜の街並みを見渡すと
The city winks a sleepless eye
眠らない街が、その瞳でウインクをしている
※擬人化された「街(city)」。孤独なマイケルにとって、夜の都市そのものが誘惑者であり、生き物のように彼を外の世界へと手招きしている。
Hear her voice, shake my window
彼女の声が聞こえ、僕の窓を揺らす
Sweet seducing sighs
甘く誘惑するような、その吐息で
Get me out into the nighttime
僕をこの夜の中へ連れ出してくれ
Four walls won't hold me tonight
今夜は、この四方の壁に閉じこもってなんていられない
※「四方の壁(Four walls)」は、ホテルのスイートルームや豪邸といった、名声がもたらす物理的・精神的な「隔離(アイソレーション)」のメタファーである。世界的スターとなった彼が、匿名の一個人として自由を渇望する切実な叫びだ。
If this town is just an apple
もしこの街が、ただのリンゴだというのなら
Then let me take a bite
僕にも一口かじらせてくれないか
※「リンゴ(apple)」はニューヨークの愛称(Big Apple)であると同時に、旧約聖書におけるアダムとイヴの「禁断の果実」の暗喩でもある。禁じられた夜の街の誘惑(罪)を味わいたいという、人間の根源的な欲求(Human Nature)を表現している。
[Chorus]
If they say why (Why?), why (Why?)
もし人々が「なぜだ(なぜ?)」と尋ねるなら
Tell 'em that it's human nature
教えてやればいい、「それが人間の性(さが)だからさ」と
Why (Why?), why (Why?), does he do me that way?
なぜ(なぜ?)、なぜ(なぜ?)、あいつは僕をこんな風にするのだろう?
※「he(あいつ)」の解釈は多様であるが、一般的にはマイケル自身を縛り付ける「理性を司るもう一人の自分」、あるいは人間の本能そのものを第三者視点で擬人化したものとされる。コントロールできない衝動への戸惑いが美しいメロディに乗せて歌われている。
If they say why (Why?), why (Why?)
もし人々が「なぜだ(なぜ?)」と尋ねるなら
Tell 'em that it's human nature
教えてやればいい、「それが人間の性だからさ」と
Why (Why?), why (Why?), does he do me that way?
なぜ(なぜ?)、なぜ(なぜ?)、あいつは僕をこんな風にするのだろう?
[Verse 2]
Reaching out to touch a stranger
手を伸ばし、見知らぬ人に触れてみる
※世界中で顔を知られているマイケルにとって、「見知らぬ人(stranger)」とただの人間として触れ合うことは至難の業であった。この一節には、匿名性への憧れと、夜の闇に紛れてこそ得られる束の間の自由への切望が込められている。
Electric eyes are everywhere
エレクトリックな瞳が、そこかしこで光っている
See that girl, she knows I'm watching
あの女の子を見てごらん、僕が見ていることに彼女は気づいている
She likes the way I stare
彼女は、僕のその見つめ方を気に入っているんだ
※スターとファンという関係性ではなく、夜の街角における男女の純粋で官能的な視線の交差。彼が人間としての生々しいリアリティ(性的な魅力)を獲得している瞬間である。
[Chorus]
If they say why (Why?), why (Why?)
もし人々が「なぜだ(なぜ?)」と尋ねるなら
Just tell 'em that it's human nature
ただ教えてやればいい、「それが人間の性だからさ」と
Why (Why?), why (Why?), does he do me that way?
なぜ(なぜ?)、なぜ(なぜ?)、あいつは僕をこんな風にするのだろう?
If they say why (Why?), why (Why?)
もし人々が「なぜだ(なぜ?)」と尋ねるなら
(She's giving in by keeping him a-round)
(彼女は、彼をそばに置いておくことで屈服していく)
※バックボーカルで囁かれるこのフレーズは、衝動に抗えずに誘惑に屈していく人間の心理を描写している。欲望(本能)をそばに置いておくことで、やがてその引力に負けてしまうという関係性のメタファーである。
Tell 'em that it's human nature
教えてやればいい、「それが人間の性だからさ」と
Why (Why?), why (Why?), does he do me that way?
なぜ(なぜ?)、なぜ(なぜ?)、あいつは僕をこんな風にするのだろう?
[Bridge]
I like livin' this way
こんな風に生きるのが好きなんだ
I like lovin' this way
こんな風に愛するのが好きなんだ
※外界から隔絶された「スターとしての昼の顔」ではなく、夜の街に紛れ込み、直感のままに欲望や愛を求める「人間としての顔」。マイケルが自身の抑圧された内面を解放し、本能に従うことの肯定を美しく歌い上げている。
(That way) Why? Oh, why?
(こんな風にね)なぜ?あぁ、なぜなんだ?
(That way) Why? Oh, why?
(こんな風にね)なぜ?あぁ、なぜなんだ?
[Verse 3]
Looking out across the morning
朝の街並みを見渡すと
The city's heart begins to beat
街の心臓が、再び鼓動を打ち始める
※夜の魔法(孤独な自由)が終わり、再び喧騒と現実の時間が始まる。シンセサイザーの音が夜明けの光のように広がり、都市という巨大な生命体が目を覚ます様子を見事にサウンドで表現している。
Reaching out, I touch her shoulder
手を伸ばし、彼女の肩に触れる
I'm dreaming of the street
僕は、あの夜のストリートの夢を見ているんだ
※ベッドの隣にいる女性の肩に触れながらも、彼の心はまだ夜の街角(ストリートでの見知らぬ人との触れ合いや自由)に囚われている。名声という牢獄の中での生活に戻っても、彼が本当に渇望しているのは「無名の自由」であるという哀愁を帯びた結末である。
[Chorus]
If they say why (Why?), why (Why?)
もし人々が「なぜだ(なぜ?)」と尋ねるなら
Tell 'em that it's human nature
教えてやればいい、「それが人間の性だからさ」と
Why (Why?), why (Why?), does he do me that way?
なぜ(なぜ?)、なぜ(なぜ?)、あいつは僕をこんな風にするのだろう?
If they say why (Why?), why (Why?)
もし人々が「なぜだ(なぜ?)」と尋ねるなら
(She's giving in by keeping him a-round)
(彼女は、彼をそばに置いておくことで屈服していく)
Ooh-ooh, tell 'em!
Ooh-ooh、教えてやれ!
Why (Why?), why (Why?), does he do me that way?
なぜ(なぜ?)、なぜ(なぜ?)、あいつは僕をこんな風にするのだろう?
If they say why (Why?), why (Why?), why (Why?)
もし人々が「なぜだ(なぜ?)」と尋ねるなら
Cha-da-cha-sha-sha-sha-sha-sha (Aah-ah)
チャ・ダ・チャ・シャ・シャ・シャ・シャ・シャ(Aah-ah)
※言葉の枠組みを超え、マイケル特有のリズミカルなスキャットへと変化していく。人間の本能(Human Nature)を言葉で説明することを放棄し、音楽そのもの(グルーヴ)で表現する領域へと突入している。
Why (Why?), why (Why?), does he do me that way?
なぜ(なぜ?)、なぜ(なぜ?)、あいつは僕をこんな風にするのだろう?
If they say why (Why? Why?), why (Why? Why? Why?)
もし人々が「なぜだ(なぜ?)」と尋ねるなら
(She's giving in by keeping him a-round)
(彼女は、彼をそばに置いておくことで屈服していく)
Ooh-ooh, tell 'em! (Aah-ah)
Ooh-ooh、教えてやれ!(Aah-ah)
Why (Why?), why (Why?), does he do me that way?
なぜ(なぜ?)、なぜ(なぜ?)、あいつは僕をこんな風にするのだろう?
If they say why (Why?), why (Why?), why (Why?)
もし人々が「なぜだ(なぜ?)」と尋ねるなら
Ooh, tell 'em!
Ooh、教えてやれ!
Why (Why?), why (Why?), does he do me that way?
なぜ(なぜ?)、なぜ(なぜ?)、あいつは僕をこんな風にするのだろう?
If they say why (Why?), why (Why?)
もし人々が「なぜだ(なぜ?)」と尋ねるなら
(She's giving in by keeping him a-round)
(彼女は、彼をそばに置いておくことで屈服していく)
Da-da-da-da-da-da-da-da
ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ
Why (Why?), why (Why?), does he do me that way?
なぜ(なぜ?)、なぜ(なぜ?)、あいつは僕をこんな風にするのだろう?
I like living this way
こんな風に生きるのが好きなんだ
[Outro]
Why? Oh, why? (That way)
なぜ?あぁ、なぜなんだ?(こんな風にね)
Why? Oh, why? (That way)
なぜ?あぁ、なぜなんだ?(こんな風にね)
Why? Oh, why? (That way)
なぜ?あぁ、なぜなんだ?(こんな風にね)
