Artist: Michael Jackson
Album: Forever, Michael
Song Title: Dapper Dan
概要
1975年発表のモータウン期最後のソロ・アルバム『Forever, Michael』に収録された、アーリー・ディスコとファンクが融合した隠れたダンス・トラックである。当時16歳のマイケルが、片田舎からやってきた天性のダンサー「ダッパー・ダン(粋なダン)」を演じ、フロアの熱狂を支配していく様を描く。「ダッパー・ダン」とは元来、1920年代から30年代のハーレム文化において「粋で洗練された男性」を指すカルチャー用語(あるいはアフリカ系アメリカ人の伝承的アーキタイプ)だが、本作ではインディアナ州ゲーリーという田舎町から世界を制したマイケル自身のルーツと痛快に重なり合う。また、特筆すべきは「ディスコティックの王になる」という予言的な歌詞と、女性コーラスによる「セクシーだ」という歓声である。かつての愛らしいチャイルド・スターはここで完全に死を迎え、肉体的なグルーヴと官能性を纏った「大人のエンターテイナー」への脱皮を宣言している。数年後の『Off The Wall』で世界のダンスフロアを完全制覇する「キング・オブ・ポップ」の助走が、この野心的なファンク・ビートに確かに刻み込まれている。
和訳
[Intro]
Do it, do it, he can do it, watch him do it
やれ、やれ、彼ならできる、彼がやるのを見てな
I got rhythm and a whole lot of soul
俺にはリズムと、ありったけのソウルがあるんだ
※「僕(I)」の一人称が、かつての可愛らしい「I」から、自信に満ち溢れた力強い「俺(I)」へと変貌を遂げている。幼少期からモータウンで叩き込まれたブラック・ミュージックの魂(ソウル)とリズム感を武器に、大人のアーティストとしてシーンに乗り込んでいく強烈な自己主張である。
(He can dance) I can shake it, baby (He can dance)
(彼は踊れるわ)俺は体を揺らせるんだ、ベイビー(彼は踊れるわ)
[Verse 1]
I'm just a little country boy
俺はただの田舎の少年さ
Harmonica in my hand
片手にハーモニカを握りしめたね
※「田舎の少年」という設定は、鉄鋼の町インディアナ州ゲーリーから身一つで大成したマイケル自身の生い立ちと重なる。「ハーモニカ」はブルースやソウルのルーツを象徴する楽器であり、華やかなディスコ文化の中に突如現れた「本物のソウルの継承者」としてのルーツを強調する見事なメタファーだ。
I got soulful rhythm in me
俺の中にはソウルフルなリズムが流れている
I'ma get down, dancing man
派手に踊ってやるぜ、俺はダンシング・マンさ
[Chorus]
Shalalala, boom, boom
シャラララ、ブーム、ブーム
My name is Dapper Dan, ah
俺の名前はダッパー・ダンさ、あぁ
※「ダッパー(Dapper)」は「粋な、小綺麗な」という意味。ハーレム・ルネッサンス期から黒人文化において「お洒落で洗練された男」の代名詞として使われてきたアイコン的名称を名乗ることで、田舎者でありながら天性のスター性を持つ主人公の圧倒的なカリスマを表現している。
Shalalala, boom, boom
シャラララ、ブーム、ブーム
I'm a dancing man, ah
俺はダンシング・マンさ、あぁ
[Verse 2]
I'm gonna be king of the discotheque
俺はディスコティックの王様になるんだ
※「ディスコの王(king of the discotheque)」になるという、ポップカルチャー史上極めて重要な予言的フレーズ。このわずか4年後、彼は『Off The Wall』で本当に世界のダンスフロアの「王」として君臨し、さらにその後に「キング・オブ・ポップ」の称号を手にする。16歳の青年の野心が、すでに歴史の必然として響いている。
That's where I can be found, ha
俺を探すならそこに来な、ハッ
Master of the rhythm beat, oh
リズムとビートのマスターさ、oh
I've got the fastest feet around
この辺りじゃ、俺のステップが一番速いぜ
※ジェームス・ブラウンの影響を色濃く受けた、超人的なフットワークへの自信。後のムーンウォークやスピン、そして『Billie Jean』のパフォーマンスへと繋がる、彼自身の肉体を最大の楽器として扱う「身体性への絶対的なプライド」が読み取れる。
[Chorus]
Shalalala, boom, boom (Shalalala, mmm)
シャラララ、ブーム、ブーム(シャラララ、うーん)
My name is Dapper Dan
俺の名前はダッパー・ダンさ
(Shalalala, mmm)
(シャラララ、うーん)
Shalalala, boom, boom (Shalalala, mmm)
シャラララ、ブーム、ブーム(シャラララ、うーん)
I'm a dancing man, yeah (Shalalala, ooh)
俺はダンシング・マンさ、そう(シャラララ、ooh)
[Hook]
(Do it, do it) Hey (Let's do it, do it)
(やれ、やれ)ヘイ(さあ、やれ、やれ)
Get up on the floor
フロアに上がれよ
(Do it, do it) Dance what you wanna (Let's do it, do it)
(やれ、やれ)好きに踊りな(さあ、やれ、やれ)
Let's dance, dance with me (With the dancing man)
踊ろうぜ、俺と一緒に(ダンシング・マンと一緒にね)
[Bridge]
I like the way he shakes it
彼の体の揺らし方、たまらないわ
I like the way he shakes it
彼の体の揺らし方、たまらないわ
I like the way he moves it
彼の身のこなし、最高ね
Ooh, he sexy
Ooh、彼ってセクシーだわ
※マイケル・ジャクソンのキャリアにおける重要なターニングポイント。女性コーラスからの「セクシー」という視線(フィメール・ゲイズ)を浴びることで、「可愛い子役」から「官能的な魅力を持つ大人の男性アーティスト」へとパブリック・イメージを上書きしている。後のセックス・シンボルとしての彼の誕生を告げる記念碑的なコーラスである。
[Hook]
(Do it, do it) Do it, do it, I can do it, watch me do it, I can dance, dance, dance (Dance)
(やれ、やれ)やるぜ、やるぜ、俺ならできる、見てな、俺は踊れる、踊れる、踊れるんだ(踊って)
(Do it, do it) Do it, do it, I can do it, let me show you I'm a dancing man (Dance)
(やれ、やれ)やるぜ、やるぜ、俺ならできる、俺がダンシング・マンだってことを見せてやる(踊って)
[Verse 3]
I got rhythm and a whole lot of soul
俺にはリズムと、ありったけのソウルがある
I can dance, ah (Dance)
俺は踊れるんだ、あぁ(踊って)
I got music and I know how to use it
俺には音楽がある、そしてその使い方も知っている
※「音楽の使い方を知っている(I know how to use it)」という自己確信。モータウンの作家陣が用意した楽曲を歌うだけの操り人形を卒業し、自らが音楽を主導的にコントロールするプロデューサー的視点、あるいは「天才的な表現者」としての芸術的主導権(クリエイティブ・コントロール)を握ったことを示す強烈なパンチラインである。
I can sing, ah (Dance)
歌うこともできるのさ、あぁ(踊って)
[Hook]
(Do it, do it) Do it, do it, I can do it, do it, do it, watch me do it
(やれ、やれ)やるぜ、やるぜ、俺ならできる、やるぜ、やるぜ、俺のステップを見てな
(Do it, do it) Do it, do it, I can do it, watch me do it, I can dance, dance, dance
(やれ、やれ)やるぜ、やるぜ、俺ならできる、俺が踊るのを見てな、踊れる、踊れる、踊れるんだ
[Harmonica Solo] [Bridge]
I like the way he shakes it
彼の体の揺らし方、たまらないわ
I like the way he shakes it
彼の体の揺らし方、たまらないわ
I like the way he moves it
彼の身のこなし、最高ね
Ooh, he sexy
Ooh、彼ってセクシーだわ
[Outro]
(Do it, do it) Do it, do it, I can do it, watch me do it, I can dance dance dance (Dance)
(やれ、やれ)やるぜ、やるぜ、俺ならできる、見てな、俺は踊れる、踊れる、踊れるんだ(踊って)
(Do it, do it) Do it, do it, I can do it, let me show you I'm a dancing man (Dance)
(やれ、やれ)やるぜ、やるぜ、俺ならできる、俺がダンシング・マンだってことを見せてやる(踊って)
(He's the dancing man, he's a singing man) (Dance)
(彼こそダンシング・マン、彼こそシンギング・マン)(踊って)
(Do it, do it) Do it, do it, I can do it, do it, do it (Let's do it, do it)
(やれ、やれ)やるぜ、やるぜ、俺ならできる、やるぜ、やるぜ(さあ、やれ、やれ)
Watch me do it, do it, do it, I can do it, watch me do it, I can dance dance dance (Dance)
俺のステップを見てな、やるぜ、やるぜ、俺ならできる、俺が踊るのを見てな、踊れる、踊れる、踊れるんだ(踊って)
※「Do it」「Watch me」の執拗なまでの反復。息継ぎも忘れたような激しいボーカル・デリバリーは、ジェームス・ブラウンのライブ・パフォーマンスにおける肉体的な疲労とトランス状態(エクスタシー)を音声のみで再現している。フロアの熱気を一身に集め、誰も彼を止めることができないダンス・バトルの頂点に立つマイケルの姿がまざまざと視覚化される、圧巻のアウトロである。
(Do it, do it) Do it, do it, I can do it, let me show you I'm a dancing man (Dance)
(やれ、やれ)やるぜ、やるぜ、俺ならできる、俺がダンシング・マンだってことを見せてやる(踊って)
(He's the dancing man, he's a singing man) (Dance)
(彼こそダンシング・マン、彼こそシンギング・マン)(踊って)
