Artist: Michael Jackson
Album: Forever, Michael
Song Title: One Day In Your Life
概要
1975年発表のモータウン期最後のソロ・アルバム『Forever, Michael』に収録された珠玉のバラードである。米国での初出時は大きな反響を呼ばなかったが、エピック移籍後の『Off The Wall』の大成功に乗じる形で1981年に全英シングルチャートで再発され、見事マイケル初の全英1位を獲得するという数奇な運命を辿った。変声期を終えた16歳のマイケルの、ビロードのように滑らかで哀愁漂うテナー・ボイスが堪能できる。表向きは去りゆく恋人への忘れえぬ愛を歌う失恋ソングだが、「今は僕を必要としていなくても、いつか必ず思い出すはずだ」というフレーズは、決別を目前に控えた育ての親・モータウンへの惜別と、自らの才能が時代を超えて普遍的な愛となることへの圧倒的な自己確信のメタファーとして、ポップ史に深く刻まれている。
和訳
[Verse 1]
One day in your life
君の人生のいつか、ある一日に
You'll remember a place
ある場所の記憶が蘇るはずだ
Someone touching your face
誰かが君の頬にそっと触れたことを
You'll come back and you'll look around you
君はふと立ち止まり、自分の周りを見渡すだろう
※「You'll come back(君は戻ってくる)」は物理的な帰還ではなく、意識が過去の温かい記憶へ回帰することを指す。無数の大人が交差するショービジネスの中で、真の愛情(頬に触れるような無防備な優しさ)を与えてくれた存在をいつか必ず追憶するという、早熟な青年の諦念と祈りが込められている。
One day in your life
君の人生のいつか、ある一日に
You'll remember the love you found here
ここにあった愛を、きっと君は思い出すはずだ
[Chorus]
You'll remember me somehow
どういうわけか、僕のことを思い出すだろう
Though you don't need me now
今はもう、僕のことなんて必要としていなくても
※「今は僕を必要としていない(Though you don't need me now)」という一節は、マイケルとジャクソン・ファミリーに対するモータウンの当時の冷遇(自作曲の録音拒否やプロモーションの縮小)という現実の文脈と痛烈にシンクロする。単なるラブソングを超え、アーティストとしての誇りを胸に古巣を去る青年の、静かで残酷な別れの宣告として機能している。
I will stay in your heart
僕は君の心の中にずっと留まり続けるよ
And when things fall apart
そして、君の何もかもが崩れ去ってしまったときには
※「things fall apart(物事が崩壊する)」という絶望的な状況。後年、世界中がスキャンダルや分断という「崩壊」に直面した際、人々がマイケルの遺した音楽という「愛」に再び救済を求めた歴史的事実を鑑みると、この歌詞は鳥肌が立つほどの予言的な響きを持っている。
You'll remember one day
いつかある日、君はきっと思い出すはずさ
[Verse 2]
One day in your life
君の人生のいつか、ある一日に
When you find that you're always waiting
自分がいつも何かを待ち焦がれていることに気づいたとき
For a love we used to share
かつて僕らが分かち合った、あの愛を求めて
※「we used to share(かつて分かち合った)」という表現から、二人の関係がすでに過去のものであることが明白となる。声変わりを越え、青年特有のメランコリーを獲得したマイケルのボーカルは、失われた時間への郷愁をこの上なく美しく彩っている。
Just call my name and I'll be there
ただ僕の名前を呼んで、そうすれば君のそばに行くから
※ジャクソン5の金字塔的ヒット曲「I'll Be There」への意図的なオマージュ(セルフ・リファレンス)である。無邪気な少年時代に歌った「僕がそばにいるよ」という約束を、青年へと成長した彼が再び同じフレーズで、しかしより深い哀愁と自己犠牲の念を込めて歌い直している点に、ポップミュージック史における壮大なドラマが隠されている。
[Instrumental Break] [Chorus]
You'll remember me somehow
どういうわけか、僕のことを思い出すだろう
Though you don't need me now
今はもう、僕のことなんて必要としていなくても
I will stay in your heart
僕は君の心の中にずっと留まり続けるよ
And when things fall apart
そして、君の何もかもが崩れ去ってしまったときには
You'll remember one day
いつかある日、君はきっと思い出すはずさ
[Verse 3]
One day in your life
君の人生のいつか、ある一日に
When you find that you're always lonely
自分が常に孤独に苛まれていることに気づいたとき
For a love we used to share
かつて僕らが分かち合った、あの愛を求めて
Just call my name and I'll be there
ただ僕の名前を呼んで、そうすれば君のそばに行くから
※楽曲の最後を締めくくるこの一言は、去りゆく者から残される者への「究極の赦し」である。契約やビジネスの対立を越え、あるいは肉体的な別離を越え、音楽という魂のレベルにおいて「いつ呼んでくれても君を救済する」という、マイケル・ジャクソンの神性(アガペー)が完全に確立された歴史的瞬間を刻んだアウトロである。
