Artist: Michael Jackson
Album: Forever, Michael
Song Title: We’re Almost There
概要
1975年にリリースされたモータウン時代最後のソロ・アルバム『Forever, Michael』のリード・シングルである。作曲を手掛けたのは、モータウンの黄金期を支えた伝説的ソングライター・チームのホランド兄弟(ブライアン・ホランド&エドワード・ホランド・Jr.)。当時16歳、変声期を終え、深みと力強さを増した青年期のマイケルの成熟したボーカルが堪能できる傑作である。表向きは「困難を乗り越えて理想の愛へとたどり着こうとする恋人たち」を歌ったラブソングだが、歴史的文脈において本作は極めて重要なダブルミーニングを内包している。当時、ジャクソン・ファミリーは自作曲の権利やプロデュース権を認めないモータウンの徹底した管理体制に限界を感じており、レーベル移籍(CBS/エピックへの移籍)という独立闘争の真っ只中にあった。「もうすぐたどり着く(We're almost there)」という切実な叫びは、搾取的なシステムから脱却し、真の芸術的自由と自己決定権を勝ち取ろうとする若き天才の魂の咆哮そのものなのである。
和訳
[Verse 1]
No matter how hard
どんなに困難に
※直訳の「困難な課題(タスク)」という言葉選びは、単なる恋愛の障壁というより、過酷なショービジネスにおける契約や業界の壁を感じさせる。マイケルが直面していたモータウンとの契約解除という現実的な「タスク」のメタファーとして響く。
The task may seem
思えるような試練だとしても
Don't give up our plans
僕らの計画を諦めないで
Don't give up our dreams
僕らの夢を投げ出さないで
No broken bridges
途切れた橋だって
Can turn us around
僕らを引き返させることなんてできない
※「broken bridges(壊れた橋)」は、過去の人間関係の決裂や退路が断たれた状態を暗示する。ベリー・ゴーディJr.らモータウン首脳陣との関係悪化という後戻りできない現実のなかで、前進するしかないマイケル自身の決意の表れとして極めてリアルだ。
'Cause what we're searching for
だって、僕らがずっと探し求めているものは
Will soon be found
もうすぐ見つかるはずだから
[Chorus]
'Cause we're al-almost there
だって僕らは、もうすぐそこまで来ているんだから
Just one more step (Almost there)
あとたった一歩さ(もうすぐそこに)
Just one more step
あとたった一歩なんだ
Don't give up, we're al-almost there ('Cause we're almost there)
諦めないで、もうすぐそこまで来ているんだ(僕らはもうすぐそこにいるから)
※タイトルでもある「We're almost there」の反復。声変わりを経て厚みを増したマイケルのテナーボイスが、切迫感と希望を同時に表現している。後の『Off The Wall』期で完成する、リズミカルでアタックの強いボーカルスタイルの原型がここにある。
[Verse 2]
(Look at the lovers)
(恋人たちを見てごらん)
Look at the lonely lovers (That didn't make it)
たどり着けなかった、孤独な恋人たちを(たどり着けなかった者たちを)
That didn't make it (The long, hard climb)
途中で力尽きてしまった彼らを(長く険しい道のりを)
※「make it」は「成功する・たどり着く」の意。音楽業界において夢半ばで消えていった数多のアーティストや、モータウン・システムに飲み込まれていったかつてのスターたちへの鎮魂歌のようにも聴こえる深淵なフレーズである。
Life's long, hard climb
人生という、長く険しい道のりで
They just couldn't take it
彼らはただ、耐えきれなかったんだ
Don't let it happen
あんな風にはならないで
To me and you
僕と君だけは
Hold on together, darling
一緒にしがみつくんだ、ダーリン
We'll make it through
僕らならきっと乗り越えられる
Darling, keep on reaching out for me
ダーリン、僕に向かって手を伸ばし続けて
Keep on reaching
手を伸ばし続けるんだ
※「reaching out(手を伸ばす)」という身体的アクションの要求。マイケルが生涯のパフォーマンスで多用した、天空や観客に向かって手を伸ばすアイコニックなジェスチャーと精神的にリンクしており、他者との絶対的なつながりを渇望する彼のパーソナリティが表出している。
Do it for me, do it for me, 'cause baby
僕のために、僕のためにそうしてよ、だってベイビー
[Chorus]
(We're almost there)
(もうすぐそこまで来ている)
('Cause we're almost there)
(だって僕らはもうすぐそこにいるから)
('Cause we're almost there)
(だって僕らはもうすぐそこにいるから)
[Verse 3]
We're so close
僕らはこんなにも近くにいる
I can taste it
その甘さを味わえるほどに
A life so sweet
とびきり甘美な人生の味をね
We can't afford to waste it
それを無駄にするわけにはいかないんだ
※「taste it(味わう)」「sweet(甘美な)」といった五感に訴えかける表現。束縛から解放された真の自由(芸術的コントロール権の獲得)がいかに甘美であるかという、16歳の青年の生々しい渇望がボーカルのニュアンスから滲み出ている。
If you feel your hand
もし君の手が
Slipping from mine
僕の手から滑り落ちそうになったら
Just hold on tighter, darling
もっと強く握りしめてよ、ダーリン
Keep on trying
諦めずに挑み続けるんだ
Baby, do it for me (Let's make this climb together)
ベイビー、僕のためにやっておくれ(この険しい道を一緒に登ろう)
Do it, do it, do it, baby
お願いだ、やっておくれよ、ベイビー
[Chorus]
(We're almost there)
(もうすぐそこまで来ている)
Just one more step
あとたった一歩さ
Don't give up (We're almost there)
諦めないで(もうすぐそこなんだ)
Just one more step
あとたった一歩
Baby, baby, don't give up ('Cause we're almost there)
ベイビー、ベイビー、諦めないで(だって僕らはもうすぐそこにいるから)
Keep on, keep on
立ち止まらずに、進み続けるんだ
Just one more step (We're almost there)
あとたった一歩さ(もうすぐそこなんだ)
'Cause we're almost there
だって僕らはもうすぐそこにいるんだから
[Outro]
Just one more step
あとたった一歩
'Cause we're almost there
僕らはもうすぐそこにいる
We've come too far
僕らは遠くまで来すぎた
To turn around
引き返すにはね
※「引き返すには遠くまで来すぎた」。インディペンデントなアーティストとして自己の美学を貫徹するため、育ての親であるモータウンと決別する不可逆的なルビコン川を渡った彼らの覚悟が、重厚なコーラスとともに歌い上げられる。
Keep on reaching
手を伸ばし続けて
For higher ground
より高みを目指して
※「higher ground(より高い場所)」は黒人音楽特有のモチーフであり、精神的・芸術的な高次元への希求を示す。単なるラブソングの結末ではなく、永遠に完成を求めて「高み」を目指し続けた完璧主義者マイケル・ジャクソンの人生のテーマソングと言える。
We've had our ups
僕らには良い時もあれば
And we've had our downs
どん底の時もあった
Ain't lettin' nothin' in the world, darling
世界中のどんなものにも邪魔はさせないよ、ダーリン
Turn us around
僕らを引き返させることなんて
'Cause we're almost there
だって僕らはもうすぐそこにいる
We're almost there
もうすぐそこまで来ている
We're almost there
あと少しなんだ
Everything we're looking for
僕らが探し求めていたすべてのものが
We're almost there
もうすぐそこにある
Keep on reaching out for me
僕に向かって手を伸ばし続けて
'Cause we're almost there, darling
だって僕らはもうすぐそこにいる、ダーリン
We're almost there
もうすぐそこまで来ている
We're almost there, darling
もうすぐそこなんだ、ダーリン
We're almost there
もうすぐそこにいる
We're almost there
もうすぐそこまで来ている
Ah, we're almost there
あぁ、僕らはもうすぐそこにいるんだ
Babe, we're almost there
ベイビー、もうすぐそこなんだよ
