Artist: Michael Jackson
Album: Music & Me
Song Title: Music and Me
概要
1973年リリースのサード・ソロ・アルバムのタイトルトラックであり、マイケル・ジャクソンの生涯を貫く「音楽との絶対的な絆」を歌い上げた究極の愛の賛歌である。当時14歳、変声期という肉体的な変化やジャクソン5のメガスターダムに伴う重圧の中で、彼にとって音楽は単なる仕事ではなく、唯一の避難所(サンクチュアリ)であり、決して裏切ることのない永遠の伴侶であった。アコースティック・ギターと流麗なストリングスに乗せて歌われるこの私小説的なバラードは、後にメディアの喧騒や孤独な私生活の中で、彼が音楽の中にしか真の平穏を見出せなかった残酷な運命を予言しており、ポップス史において最も美しく、そして切ない自己告白のマスターピースである。
和訳
[Verse 1]
We've been together for such a long time
僕たちはもう、ずいぶんと長い間一緒にいるね
※「長い間」という言葉は、5歳からリードボーカルとしてステージに立ち、普通の子供としての生活を知らずに育ったマイケルの特異な人生を象徴している。ショービジネスという大人たちの過酷な世界において、純粋な「音楽」だけが彼にとって唯一の安らぎであり、幼なじみのような存在であったことが痛切に伝わる。
Now, music, music and me
音楽、そう、音楽と僕の二人きりで
Don't care whether all our songs rhyme
僕たちの歌で、綺麗に韻を踏めるかどうかなんて気にしない
※商業的なヒットや定型化されたポップスのルール(韻を踏むこと)への無関心を示唆している。モータウンの大量生産的なヒットファクトリーから脱却し、自らの魂から湧き出る自由な表現を渇望し始めていた思春期のマイケルの、アーティストとしての自我の目覚めが垣間見える。
Now, music, music and me
今はただ、音楽、音楽と僕だけがいればいい
[Verse 2]
Only know wherever I go
ただ一つ分かっているのは、僕がどこへ行こうとも
We're as close as two friends can be
僕らは、これ以上ないほど親密な親友同士だってことさ
※絶頂期のジャクソン5として世界中をツアーで飛び回っていた彼だが、熱狂的なファンや取り巻きに囲まれながらも常に深い孤独を抱えていた。どんな国、どんな状況に置かれても「音楽だけはいつもそばにいてくれる」という事実が、彼の孤独の深さを逆説的に浮き彫りにしている。
There have been others
他の人たちもいたけれど
But never two lovers
まるで恋人同士のように惹かれ合うのは
※後年「僕の恋人は音楽だ」と公言し、生涯を通じて芸術にすべてを捧げたマイケルの人生観そのものである。人間関係における裏切りやメディアの偏見に傷つけられるたび、彼は「決して裏切らない恋人」である音楽の世界へと深く潜り込んでいくことになる。
Like music, music and me
音楽、音楽と僕だけなんだ
[Verse 3]
Grab a song and come along
歌をひとつ掴んで、一緒においでよ
You can sing your melody
君自身のメロディを歌えばいいんだ
※ここでマイケルは、自分と音楽の閉じた世界からリスナーへと優しく手を差し伸べている。音楽を通じた他者との繋がりや、誰もが心の中に自分だけの美しい音楽(魂)を持っているという、後の『Heal The World』などに通じる普遍的なヒューマニズムの萌芽が見られる。
In your mind, you will find
君の心の中にも、きっと見つかるはずさ
A world of sweet harmony
甘く美しいハーモニーに満ちた世界がね
[Verse 4]
Birds of a feather, we'll fly together
同じ羽を持つ鳥のように、僕らは一緒に飛んでいくんだ
※「Birds of a feather flock together(類は友を呼ぶ)」ということわざの引用。マイケルと音楽が不可分の存在であり、同じ魂(羽)を共有していることを示している。彼自身の類まれなる身体性と声帯そのものが「音楽」という概念と完全に融合し、はるか高み(のちのキング・オブ・ポップとしての頂点)へと飛翔していく未来を予言するような、極めて美しいメタファーである。
Now, music, music and me
音楽、そう、音楽と僕
Music and me
音楽と僕とでね
