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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Johnny Raven - Michael Jackson 【和訳・解説】

Artist: Michael Jackson

Album: Music & Me

Song Title: Johnny Raven

概要

1973年リリースのサード・ソロ・アルバム『Music & Me』に収録された、ビリー・ペイジ作詞作曲による異色のソウル・ナンバーである。一箇所に定住せず、愛する女性を残して次なる空へ飛び立っていく自由奔放な放浪者「ジョニー・レイヴン」の生き様を描いている。特筆すべきは、当時わずか14歳で、父親ジョセフ・ジャクソンやモータウンという巨大なビジネス機構の徹底的な管理下にあったマイケルが、「生まれつきの野生(Born to be wild)」「籠の鳥にはなれない」と歌うその強烈な皮肉と隠されたメタファーである。変声期特有の切迫感のあるボーカルが、抑圧された天才少年の「自由への渇望」や、後に自らの足で新たなエンターテインメントの頂きへ飛び立とうとする独立心と見事に重なり合い、単なる架空のプレイボーイの物語を超えた私小説的な響きを生み出している。

和訳

[Intro]

(He's born to be wild)
(彼は生まれつきの野生児さ)
※ロックの名曲「Born to Be Wild」を彷彿とさせるこの導入は、厳格なモータウンのシステムや父親の支配下で「完璧な優等生」を演じることを強要されていたマイケルの、内なる反骨精神を逆説的に浮き彫りにする。架空のキャラクター「ジョニー・レイヴン」を演じることで、彼自身が現実では決して手に入れられない「野生(自由)」を仮構しているのだ。

[Verse 1]

Free and untamed
自由に、誰にも飼い慣らされずに

That's how I've grown
そうやって僕は生きてきた

(He's Johnny Raven)
(彼こそがジョニー・レイヴン)

Settling down ain't my nature
落ち着くなんて、僕の性に合わない

Roots I'll never own
根を下ろすことなんて、一生ないだろうね
※「Roots(ルーツ/根)」を持たないという宣言。ジャクソン5としての過酷なツアー生活で文字通り「根無し草」のようなホテル暮らしを続けていた彼の実体験と重なる。同時に、一つの音楽ジャンルやレーベル(モータウン)に縛られることを良しとしない、後の彼のアーティストとしての越境性(クロスオーバー)を予見させるラインである。

(He's Johnny Raven)
(彼こそがジョニー・レイヴン)

[Pre-Chorus]

Oh, your smile
あぁ、君のその笑顔

But tell me, ain't your child
でも言っておくよ、僕は君の子供じゃないんだ
※直訳では「君の子供じゃない」だが、これは業界の大人たちや世間から常に「可愛いチャイルド・スター」として扱われ、一人の人間としての成長を否定され続けていたマイケル自身のフラストレーションの代弁として極めて重要である。「子供扱いするな」という思春期の切実な叫びが、恋人に対する突き放した言葉の裏で震えている。

How can you cage a bird
どうして鳥を籠に閉じ込められるっていうのさ

Born to be wild
野生に生きる運命として生まれた鳥をね
※「cage a bird(鳥を籠に閉じ込める)」は、黒人文学を代表するマヤ・アンジェロウの『歌え、翔べない鳥たちよ(I Know Why the Caged Bird Sings)』のモチーフを想起させる。ショービジネスという金色の鳥籠に囚われたマイケルの、自由への痛切な希求が込められた屈指の名フレーズである。

(Born to be wild)
(生まれつきの野生児を)

[Chorus]

I'm Johnny Raven
僕はジョニー・レイヴン

(He's Johnny Raven)
(彼こそがジョニー・レイヴン)

By and by
そのうちに

(By and by)
(そのうちにね)

Oh, I'm gonna leave your nest, girl
あぁ、僕は君の巣から飛び立っていくよ
※「nest(巣)」を去るという表現。これは文字通り、数年後に訪れるマイケルとジャクソン家のモータウン(巣)からの離脱、そしてエピックへの移籍という歴史的転換点への精神的な伏線として読める。

Another nest to try
別の新しい巣を試すためにね

Ooh, Johnny Raven (Oh, Johnny Raven)
あぁ、ジョニー・レイヴン(ジョニー・レイヴン)

Girl, you know I shouldn't have loved you
ねぇ、君を愛するべきじゃなかったんだ

Yeah, but I've got to leave you
そうさ、でも君を残して行かなきゃならない

When my restless heart says fly
僕の落ち着きのない心が「飛べ」と叫ぶときはね

[Verse 2]

Look at you, little girl
君を見てるとさ、可愛い女の子

You feel love so deep, yeah, yeah
君の愛はすごく深くて、本物だって分かるよ

(He's Johnny Raven)
(彼こそがジョニー・レイヴン)

If I could change in a second
もし僕が、一瞬で変われるものなら

I'd change for you like that
君のために、すぐにでも変わってあげたい

Stay right here for keeps
ここにずっと、いつまでも留まるようにね
※自由奔放な放浪者を気取りながらも、心の底では「安住の地」や「変わることのできない自分への葛藤」を吐露している。孤独を愛するのではなく、孤独にしか生きられない宿命を背負ったマイケル・ジャクソンというアーティストの「永遠のパラドックス」が見事に表現されている。

(He's Johnny Raven)
(彼こそがジョニー・レイヴン)

[Pre-Chorus]

But I'm hungry for new thrills
でも、僕は新しいスリルに飢えているんだ

Stray, I will
だから、また彷徨い歩いてしまう

Seems I gotta need one girl
たった一人の女の子を必要としているのに

Never can feel
どうしても、そう感じることができないんだ

[Chorus]

Yeah, I'm Johnny Raven
そうさ、僕はジョニー・レイヴン

(He's Johnny Raven)
(彼こそがジョニー・レイヴン)

By and by
そのうちに

(By and by)
(そのうちにね)

Oh, I'm gonna leave your nest
あぁ、僕は君の巣から飛び立っていく

Another nest to try
別の新しい巣を試すために

Ooh, Johnny Raven (Oh, Johnny Raven)
あぁ、ジョニー・レイヴン(ジョニー・レイヴン)

Girl, you know I shouldn't have loved you
ねぇ、君を愛するべきじゃなかったんだ

Yeah, but I've got to leave you
そうさ、でも君を残して行かなきゃならない

When my restless heart says goodbye
僕の落ち着きのない心が「さよならだ」と告げるときは

Everybody knows my name
誰もが僕の名前を知っている

I'm Johnny Raven
僕はジョニー・レイヴンだからね
※「Everybody knows my name(誰もが僕の名を知っている)」。一匹狼の放浪者であるはずの主人公が発するこの言葉は、現実世界における世界一有名な少年、マイケル・ジャクソン自身のメガ・スターダムと残酷なまでに直結している。名声によってどこへ行っても自由が得られない現実と、名前を知らしめて飛び回りたいという虚構が交錯する不気味な一節だ。

(He's Johnny Raven)
(彼こそがジョニー・レイヴン)

Yeah, yeah, by and by
そう、そのうちにね

(He's Johnny Raven)
(彼こそがジョニー・レイヴン)

Ooh, I'm gonna fly and when you cry
あぁ、僕は飛び立つよ、そして君が泣くとき

(Johnny, Johnny, Johnny)
(ジョニー、ジョニー、ジョニー)

Part of me is gonna die
僕の一部も死んでしまうんだ
※相手を傷つけることで、自分自身の魂(無垢さ)も削られていくという悲劇性。単なる不良少年の歌ではなく、自己犠牲と痛みの上にしか成立しないエンターテイナーとしての宿命を歌い上げる、14歳の絶唱である。

(He's Johnny Raven)
(彼こそがジョニー・レイヴン)

(Ooh, ooh, ooh, ooh)
(Ooh, ooh, ooh, ooh)

Ooh, I'm Johnny Raven
あぁ、僕はジョニー・レイヴン

(Johnny, Johnny, Johnny)
(ジョニー、ジョニー、ジョニー)

Yeah, yeah, by and by
そうさ、そのうちにね

(He's Johnny Raven)
(彼こそがジョニー・レイヴン)

(Ooh, ooh, ooh, ooh)
(Ooh, ooh, ooh, ooh)

Ooh, I'm gonna fly and when you cry, yeah
あぁ、僕は飛び立つよ、君が泣いてしまうとき

(Johnny, Johnny, Johnny)
(ジョニー、ジョニー、ジョニー)

Part of me is gonna die
僕の一部も死んでしまうんだ

(He's Johnny Raven)
(彼こそがジョニー・レイヴン)

(Ooh, ooh, ooh, ooh)
(Ooh, ooh, ooh, ooh)

[Outro]

(Johnny, Johnny, Johnny)
(ジョニー、ジョニー、ジョニー)
※バックコーラスが執拗に名前を呼ぶ中、フェイドアウトしていく。これは主人公を引き留める声であると同時に、マイケルに対し永遠に「僕らの愛する可愛いマイケル」でいることを求める大衆の欲求そのものの具現化でもある。

(He's Johnny Raven)
(彼こそがジョニー・レイヴン)

(Ooh, ooh, ooh, ooh)
(Ooh, ooh, ooh, ooh)

(Johnny, Johnny, Johnny)
(ジョニー、ジョニー、ジョニー)

(He's Johnny Raven)
(彼こそがジョニー・レイヴン)

(Ooh, ooh, ooh, ooh)
(Ooh, ooh, ooh, ooh)

(Johnny, Johnny, Johnny)
(ジョニー、ジョニー、ジョニー)

(He's Johnny Raven)
(彼こそがジョニー・レイヴン)

(Ooh, ooh, ooh, ooh)
(Ooh, ooh, ooh, ooh)

(Johnny, Johnny, Johnny)
(ジョニー、ジョニー、ジョニー)