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Operation: Greenbacks - MF DOOM (feat. Megalon) 【和訳・解説】

Artist: MF DOOM (feat. Megalon)

Album: Operation: Doomsday

Song Title: Operation: Greenbacks

概要

MF DOOMのデビュー作『Operation: Doomsday』に収録された本作は、金(Greenbacks)をテーマにしたアンダーグラウンドの隠れた名曲である。Natalie Coleの1976年のヒット曲「Mr. Melody」から「M-O-N-E-Y never did a thing for L-O-V-I-N(お金は愛のために何もしてくれない)」というフレーズを皮肉めいてサンプリングし、Isaac Hayesの「Joy」のベースラインに乗せて、ストリートの冷徹なハッスルを歌い上げている。本作の最大の特徴は、DOOMが「King Geedorah(キング・ギドラ)」名義でラップしており、彼のリリック全体にわたって「3(三つ首の竜を象徴する数字)」のメタファーが執拗に張り巡らされている点だ。女の数、ヒップホップの要素、グループの人数から武器に至るまで、すべてが「3」で構成される緻密な言葉遊びは圧巻である。後半では盟友Megalon(Tommy Gunn)が参加し、警察(The Beast)の残虐行為とゲットーの過酷な現実を生々しく描写しており、メロウなトラックと暴力的なリリックの鮮やかなコントラストがヒップホップ・ファンを唸らせる仕上がりとなっている。

和訳

[Chorus: King Geedorah, Megalon and samples]

M-O-N-E-Y
金(M-O-N-E-Y)

Yeah, it's good to see you back
イェー、また会えて嬉しいぜ

Never did a thing for L-O-V-I-N
愛(L-O-V-I-N)のためには何もしてくれない
※Natalie Coleの「Mr. Melody」からのサンプリング。R&Bの文脈では「金より愛が大事」という意味だが、ストリートのハスラーであるDOOMたちはこのフレーズを逆手に取り、「愛なんてクソくらえ、金(Greenbacks)こそがすべてだ」という皮肉なメッセージとして使用している。

It's good to be seen back
また顔を見せられて光栄だ

Greenbacks, greenbacks, greenbacks, greenbacks
グリーンバックス、グリーンバックス、グリーンバックス、グリーンバックス
※「Greenbacks」は緑色のアメリカ紙幣(ドル札)、つまり現金のストリート・スラング。

Green stacks, greenbacks, mean stacks
緑の札束、グリーンバックス、ヤバい札束

Never understand what people's heads are in
連中が何を考えてるのかなんて、一生分からねえよ

Mean stacks, greenbacks
ヤバい札束、グリーンバックス

Ask me what I need
俺に何が必要か聞いてみな

[Verse 1: King Geedorah]

A fly tramp, that's what she called me
イケてる浮浪者(トランプ)、あの子は俺をそう呼んだんだ
※DOOMはKMD解散後、業界から追放され、ベンチで寝泊まりするようなホームレス生活を送っていた時期がある。当時のどん底の状況を自嘲気味に、しかし誇り高く語っている。

'Cause I don't wear no Stetson hats like Paul C
だって俺は、ポール・Cみたいにステットソンのハットなんか被ってねえからな
※「Paul C」は1980年代後半に活躍した伝説的なヒップホップ・プロデューサー(Large Professorの師匠)。彼がステットソン製のハットを愛用していたことを引用し、俺はメインストリームの行儀の良いプロデューサーやクラシックなBボーイの型にはハマらないという宣言。

As y'all see, who give a fuck? Who know what is it?
お前らも見ての通りさ、誰が気にするってんだ? これが何なのか誰が分かる?

These styles will be flipped to the absolute exquisite
このスタイルは、絶対的に極上なものへとひっくり返されるのさ

It's like a blizzard, soon as I got home from ATL
まるで吹雪みたいだったぜ、ATL(アトランタ)から帰宅した途端にな
※ホームレス状態だったDOOMは、ニューヨークからアトランタ(ATL)へ一時期移り住み、そこで息子を育てながらストリートで生活していた。ニューヨークへ帰還した際の冷酷な歓迎(吹雪=厳しい状況、あるいはドラッグの隠語)を描写。

Looked into my baby's face, my boo was like, "Well!
愛しい子の顔を覗き込むと、俺のオンナはこう言った。「そうね!

I know your types of clientele! Thoughts, needs"
あなたの客層(オンナたち)のタイプは分かってるわよ! 考えも、求めてるものもね」

As I held her firmly, yet gentle as the soft sea
俺は彼女を強く、だけど穏やかな海のように優しく抱きしめながら

She said, "The one with the horse weave? The pretty one?
彼女は言った。「馬の毛のウィッグを被った女? それとも可愛い子?

Or crazy, had to touch the tattoo through the short sleeve?
それとも、半袖越しにタトゥーを触らなきゃならないイカれた女?

Which one you want?" I'm like, "If there was comp?
どれが目当てなの?」俺は答えた。「もし競合するなら?
※浮気を疑う恋人との生々しい痴話喧嘩。ここで意図的に「3人の異なるタイプの女性」が提示されていることに注目。

Fuck around, a nigga like me probably run up in all three!"
ふざけんな、俺みたいなヤツならおそらく、3人全員ヤっちまうだろうな!」
※ここで「3」という数字が登場する。King Geedorah(三つ首の竜)のペルソナにおいて、DOOMは常に「3」という数字に異常な執着を見せる。女を選ぶ際も1人ではなく「3人まとめて(3つの頭で)」食うというジョーク。

King Geedorah what they call me, either caesar or baldy
キング・ギドラ、それが俺の呼ばれ名さ。シーザーカットか、スキンヘッドのな
※「caesar」は前髪を短く揃えたヒップホップ定番のヘアスタイル。ギドラという怪獣を名乗りつつも、ストリートの黒人の髪型をしているというギャップ。

Probably half-moon since last y'all saw me
お前らが最後に俺を見た時から、おそらくハーフムーン(半月型の生え際)になってるだろうな

On the D-low, I slaughter solo MCs, they paper-thin
隠密行動(D-low)で、俺はソロMCどもを虐殺する。あいつらは紙みたいにペラペラさ

In they Polo, Nautica, or DK men
ポロやノーティカ、ダナ・キャランを着飾ったままな
※90年代後半のヒップホップシーンで流行していた高価なブランド(Polo Ralph Lauren, Nautica, DKNY)を着て見栄を張っているだけの、中身の薄い(paper-thin)ラッパーたちを嘲笑している。ここでもブランド名が「3つ」並べられている。

Amen! It's funny how significance make a difference
アーメン! 意味合いがどう違いを生むかってのは面白いもんだな

Notice parables of three in every other inference
すべての推論に隠された「3の寓話」に気づくことだ
※DOOM自身による種明かし。このヴァースには意図的に「3の法則」が隠されていることをリスナーに提示し、キング・ギドラの3つの頭脳のメタファーであることを強調している。

For instance: "Who wants to battle? On the real?
例えばこうだ。「バトルしたいヤツは誰だ? マジな話で。

Choose your weapon: microphone, beats, or the wheels-of-steel"
武器を選びな。マイクか、ビートか、それとも鉄の輪(ターンテーブル)か」
※ヒップホップを構成する3つの要素(MC、プロデューサー、DJ)。ここにも「3」が提示される。

I own a crown in all three for getting down without a doubt
疑いの余地なく、俺はその3つすべてで王冠(クラウン)を持ってるぜ
※DOOMはマイクを握るラッパーであり、ビートを作るプロデューサーであり、そしてDJでもある。ヒップホップの三位一体を体現する存在であり、それがそのまま三つ首の王(King Geedorah)であるという完璧なコンセプチュアル・ライミング。

I'd like to give a extra special shout out to Jet Jaguar, the sun, moon, and star
ジェット・ジャガー、太陽、月、そして星に特別なシャウトアウトを送りたい
※「Jet Jaguar」はM.I.C.のメンバーの怪獣名。「Sun, Moon, Star(太陽、月、星)」はファイブ・パーセント・ネーションの教義において「男、女、子供(家族)」を意味する象徴的な言葉。ここでも「3つ」の要素がシャウトアウトされている。

The Monster Island Czars, y'all know who you are
モンスター・アイランド・ツァーズ(M.I.C.)の仲間たち、自分たちのことだか分かってるよな

Get that–
稼ごうぜ—

[Chorus]

M-O-N-E-Y
金(M-O-N-E-Y)

Never did a thing for L-O-V-I-N
愛(L-O-V-I-N)のためには何もしてくれない

[Break]

King Geedorah is in the United States
キング・ギドラがアメリカ合衆国に上陸しました

I know!
分かってるよ!
※怪獣映画(おそらくゴジラシリーズ)の吹き替え音声のサンプリング。ヴィランの襲来を告げるニュース速報の演出。

[Verse 2: Megalon]

Coming straight from the black lungs
真っ黒な肺から真っ直ぐにやって来たぜ
※Megalon(Tommy Gunn)のヴァース。大量のマリファナ(ブラント)を吸って肺が真っ黒になっているゲットーの住人の描写。

I rip tracks for all players that pack guns
チャカを携帯してるすべてのプレイヤーたちのために、俺はトラックを切り裂く

Stack ones in packs, done and doing back-to-back runs
1ドル札(ワンズ)を束にして積み上げ、絶え間なく(バック・トゥ・バックで)取引をこなすのさ
※ストリートでの麻薬の密売。高額紙幣ではなく、細かい1ドル札(ones)を大量に稼いで束ねるという、ハスラーの泥臭い現実。

To my peeps that close, so's ya' knows what's up
近くにいる俺のダチたちへ、だからお前らは何が起きてるか分かってるよな

Y'all know the dough's quick, hoes that mess with 5-O shrimp like, "What?"
金(ドウ)の動きが速いのは知っての通りさ、サツ(5-O)やチクリ屋(シュリンプ)とつるむビッチどもは「何よ?」ってな感じだが
※「5-O」は警察(ドラマ『Hawaii Five-O』に由来)。警察に情報を流す裏切り者たちへの警戒心。

Like they wanna shmoosh us, just to packing the pushers
連中は俺たちを押し潰したいみたいだな、売人たちを刑務所にぶち込むためだけにな

I'm packing gat then bust a cap at po-po
俺はチャカを隠し持ち、サツ(ポポ)に弾をぶち込んでやる

If they catch us and try to push us
もし連中が俺たちを捕まえて、追い詰めようとするならな

Since when a MINY nigga don't be taking no shit?
M.I.N.Y.の野郎が、いつから大人しくクソを飲み込むようになったってんだ?
※「MINY」はMonsta Island New Yorkの略。M.I.C.の縄張りであり、自分たちは決して警察や権力に屈しない(don't take no shit)というギャングスタ・アティチュード。

I be that drug dealing nigga that be fucking your bitch!
俺はお前のビッチをヤっちまう、ドラッグディーラーの野郎さ!

[Verse 3: King Geedorah]

What a fella! Like Salt, Pepa, Spinderella
なんてヤツだ! ソルト、ペパ、そしてスピンデレラみたいだな
※伝説的な女性ヒップホップグループ「Salt-N-Pepa」と、彼女たちのDJである「Spinderella」。ここでも「3人組」の法則が守られている。

I came to spark the deaf, dumb and blind like Helen Keller
俺はヘレン・ケラーみたいに、耳が聞こえず、口がきけず、目が見えない連中に火を点け(目覚めさせ)に来たんだ
※ファイブ・パーセント・ネーションの教義において「85%の人間(大衆)は、真理を知らない deaf, dumb and blind(見ざる、言わざる、聞かざる)である」とされる。ヘレン・ケラーの三重苦をメタファーに、無知なメインストリームのリスナーたちに真実のヒップホップを教える(spark)という宣言。

If I'm not with George of the Jungle, if he not with Stella
もし俺が『ジャングル・ジョージ』と一緒じゃなくて、アイツがステラと一緒じゃないなら

Or either Priscilla, I'm doing dips on Godzilla
あるいはプリシラと一緒じゃないなら、俺はゴジラの上でディップス(懸垂/マリファナを吸うこと)をしてるぜ
※1960年代のアニメ『George of the Jungle』の引用。ゴジラ(M.I.C.の盟友MF Grimm)の上でくつろぐ、怪獣王ギドラの姿。ここでもGeorge, Stella, Priscillaという3つの名前が並んでいる。

Though y'all know he don't play, right?
アイツが遊びじゃねえってことは、お前らも知ってるよな?

TNT throws a nigga out a moving van in broad daylight
TNT(警察の戦術部隊)は、白昼堂々、走ってるバンから黒人を放り投げるんだ

And he was shackled by hands and feet
しかも手足に手錠をかけられた状態のヤツをな

Then they say he tried to escape, once his face scraped the concrete
それから連中は、ヤツの顔がコンクリートで削り取られた後で「逃げようとした」なんて抜かすのさ
※ニューヨーク市警などの過剰暴力や黒人に対する残虐行為の生々しい告発。手足を拘束したまま車から突き落とし、顔面がボロボロになっても「逃亡しようとしたから制圧した」と嘘の報告書を書く、システム(The Beast)の腐敗への強い怒り。

Near the curb on Monster Island, 103 Street
モンスター・アイランドの縁石の近く、103丁目でな
※「103 Street」はニューヨークの地下鉄駅(イーストハーレムやコロナなどに存在)。ストリートの具体的な場所を示すことで、この暴力がフィクションではなく日常のリアルであることを強調している。

Where brothers run the risk of getting swallowed once the Beast eat
そこじゃ、野獣(ザ・ビースト)が食事を始めれば、ブラザーたちが飲み込まれる危険と隣り合わせなんだ
※「The Beast」はヒップホップ・スラングで警察権力や抑圧的な社会システムを指す。彼らに捕まれば、刑務所という名の胃袋に飲み込まれ、人生を奪われてしまう。

I'd rather lay in the cut, collect cash pay
俺なら目立たない場所(イン・ザ・カット)に潜んで、現金をかき集めるね

Only TNT I see is Gilligan's castaway
俺が見る「TNT」なんて、ギリガンが漂流するチャンネルくらいのもんさ
※前のラインの「TNT(警察部隊)」と、ケーブルテレビ局の「TNTネットワーク」を掛けた言葉遊び。『ギリガン君SOS(Gilligan's Island)』が再放送されている安全なテレビチャンネルのこと。

With Mary Jane and Ginger
メリー・ジェーンと、ジンジャーと一緒にな
※『ギリガン君SOS』のキャラクターであるMary Ann(なぜかMary Janeと言い換えている=マリファナの隠語)とGinger。主人公のGilliganと合わせて、ここでも見事に「3人(3つ)」の法則が完結している。

Oh, from which you spent the night by accident, I creep like a ninja
おっと、お前が偶然一晩過ごした場所から、俺は忍者のように忍び寄るぜ

When the mack is bent, who can give one fuck?
マック(ポン引き/プレイボーイ)が酔い潰れてる時、誰が気にするってんだ?

Get bucked, get broke up like three-piece nun-chucks
撃ち抜かれろ、三節棍(スリーピース・ヌンチャク)みたいにバラバラに砕かれちまいな
※「three-piece」で三つ首の竜(キング・ギドラ)の攻撃性を武器(三節棍)に例え、最後まで「3の法則」を貫徹している。

Y'all sun struck, sick to they head-piece
お前らは日射病にかかって、頭(ヘッドピース)がイカれてるんだ

Three-headed beast brings the drama to a dead cease
三つ首の野獣が、このドラマ(抗争)を完全に終わらせるぜ

[Break]

Sick to they head-piece
頭がイカれてるんだ

(Get that money, god)
(その金を稼げ、神よ)
※5% Nationにおいて黒人男性はお互いを「God」と呼ぶ。現金を稼げというストリートの掟。

Sick to they head-piece
頭がイカれてるんだ

(Get that money, god)
(その金を稼げ、神よ)

(Get that money, god)
(その金を稼げ、神よ)

(Get that money, god)
(その金を稼げ、神よ)

Greenbacks... the meanest green stacks
グリーンバックス… 最高にヤバい緑の札束

[Chorus]

But M-O-N-E-Y never did a thing for L-O-V-I-N
だが、金(M-O-N-E-Y)は愛(L-O-V-I-N)のためには何もしてくれない

I'll never understand what people's heads are in, oh
連中が何を考えてるのかなんて、一生分からねえよ、あぁ

Ask me what I need
俺に何が必要か聞いてみな