UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Red and Gold - MF DOOM (feat. King Geedorah) 【和訳・解説】

Artist: MF DOOM (feat. King Geedorah)

Album: Operation: Doomsday

Song Title: Red and Gold

概要

MF DOOMの伝説的デビューアルバム『Operation: Doomsday』に収録された本作は、The Deeleの1987年のR&Bチューン「Shoot 'Em Up Movies」のメロウなアウトロを大胆にサンプリングした、哀愁と殺伐さが交差する隠れた名曲である。タイトルの「Red and Gold」は秋の紅葉(赤と金の落ち葉)を意味し、フックで繰り返される「Wig-Twisting Season(カツラがねじれる季節=強盗や殺人が多発する秋冬の犯罪シーズン)」の到来を告げている。DOOMはこの曲で、自身のもう一つのペルソナである三つ首の怪獣「King Geedorah(キング・ギドラ)」をフィーチャー(実質的にはDOOM一人のラップ)させ、ストリートの冷酷な掟と暴力の連鎖を描写している。さらにVerse 3では、1993年に不慮の事故で亡くなった実弟・DJ Subrocの死に言及する極めてパーソナルで悲痛なラインが刻まれており、スーパーヴィランという仮面の奥に隠された深い喪失感とゲットー・サバイバルの現実が浮き彫りになる、音楽評論的にも非常に価値の高い一曲だ。

和訳

[Intro]

Ahh
アー

This just in
たった今入ったニュースだ

[Verse 1]

I remember when, last past November when
去年の11月のことを覚えてるぜ

Clown kid got pounded in with the Timberlands
ピエロみたいなガキが、ティンバーランドのブーツでボコボコに踏みつけられた時のことをな
※「Timberlands」は90年代ヒップホップ・ファッションの定番であり、同時にストリートでの喧嘩やストンピング(踏みつけ)の凶器としても機能するタフなブーツの代名詞。

They left him trembling, he was not remembering:
震えたまま放置された、あいつは忘れていたんだ

Never tuck your denim in just to floss an emblem
ブランドのロゴを見せびらかすためだけに、デニムをブーツインするなってことをな
※「floss」は見せびらかすこと。当時のストリートの掟として、高価なブランドのエンブレムを目立たせるような軽薄なファッションは、強盗(Stick-up kids)の格好の標的になるという冷酷な教訓。

Some would debate, "Wait, the fella ate gelatin
「待てよ、あいつはゼラチンを食ったからだ」と議論するヤツもいるだろう
※ゼラチンは豚肉を原料とすることが多く、ネーション・オブ・イスラム(NOI)やファイブ・パーセント・ネーションの教義において豚肉は「禁忌(不浄)」とされる。戒律を破ったから罰が当たったのだ、というゲットー特有の宗教的解釈。

Or either listening to what his weathermens was telling him"
「あるいは、天気予報士が言ってたことを真に受けたからだ」ってな

When I could feel it in my melanin, it's compelling
俺のメラニン(黒人の血)でそいつを感じ取れる時、それは抗いがたい衝動となる

Us to break them off, no reassembling
俺たちが連中を粉砕してやる、もう元には戻らねえぞ

No science-fiction to no theater near you, coming soon to
お近くの映画館で公開予定のSF映画なんかじゃない

Fuck with you frequently like how phases of the moon would do
月の満ち欠けのように、頻繁にお前を狂わせに来るんだ

You could gather 'round like it was an eclipse
日食みたいに群がってもいいぜ

Just don't look directly to the bitch, you may be blinded by the scripts
ただ、直接太陽(ビッチ)を見るなよ、このスクリプト(リリック)で目が潰れるかもしれないからな

Pass the L, the last tell such an absurd tale
L(ブラント)を回せ、最後に吸ったヤツがこんなバカげた話をするんだ
※「L」は葉巻(フィリーズ・ブラントなど)の紙で巻いたマリファナ。マリファナを回し飲みしながら、ストリートの噂話(absurd tale)が語られる情景。

All hail, King Geedorah, the third rail
万歳、キング・ギドラ、サード・レール(第三軌条)だ
※「King Geedorah」はDOOMの別名義で、ゴジラシリーズの怪獣キングギドラに由来する。「third rail」は地下鉄の電力を供給する高圧電流の流れるレールのこと。触れれば即死するアンタッチャブルな存在であるという強烈なメタファー。

700 volts holds rap to a standstill
700ボルトの電流が、ラップゲームを立ち往生させるぜ

Fool ignore the rule, fuck up and get his man killed
バカがルールを無視してヘマをやらかし、仲間を死なせるんだ

Two bottles of Dom got his hands filled
ドンペリのボトル2本で、あいつの両手は塞がっちまった
※「Dom」は高級シャンパンのドン・ペリニヨン。酒や金、物質的な見栄に溺れて無防備になり、ストリートの危険に対応できなくなった愚か者への皮肉。

And so goes the days of our lives as the hourglass sand spill
そして、砂時計の砂が落ちるように、俺たちの人生の日々は過ぎていく
※アメリカの長寿昼ドラ『Days of Our Lives』の有名なオープニングナレーション(Like sands through the hourglass, so are the days of our lives)からの引用。

And built with Passion and a glass of the 'Ze
パッション(フルーツ)とアリゼのグラスで築き上げるのさ
※「'Ze」はAlizé(アリゼ)。90年代のヒップホップ・コミュニティで絶大な人気を誇った、パッションフルーツとコニャックなどをブレンドしたフランス産のリキュール。2Pacの「Thug Passion」などでもお馴染みの酒。

(Then the lights went down, hey, hey)
(そして照明が落ちた、ヘイ、ヘイ)
※サンプリング元のThe Deele「Shoot 'Em Up Movies」のボーカルライン。死や気絶、あるいは劇的な場面転換を暗示している。

[Hook]

And I knew it was the last day - Wig-Twisting Season
そして気づいたんだ、それが最終日だってことに。「ウィッグ・ツイスティング・シーズン」さ
※「Wig-Twisting」は直訳すると「カツラがねじれる」だが、ストリートスラングで「誰かを激しく打ち負かす、頭をかち割る、殺害・強盗する」ことを意味する。秋から冬にかけて、ホリデーシーズンに向けて金が必要になり、ゲットーでの犯罪率が跳ね上がる過酷な季節を指している。

When some could get their wigs twisted back within reason
当然の報いとして、頭をねじ切られる(殺される)ヤツらが出る季節

Mostly with these crimes of treason
大抵は「裏切り(トリーズン)」の罪によってな

And you'll be lucky if there's no squeezing even this evening
今夜、銃撃(スクイーズ)が起きなかったら、お前は運がいいぜ
※「squeezing」は銃の引き金を引くこと。

[Verse 2]

From how he's feeling, thrilling choice of flow is sick
ヤツの気分からして、スリリングなフロウの選択は病的にヤバい

He's the villain with the million dollar voice-throw trick
ヤツは100万ドルの腹話術(声のトリック)を持つヴィラン(悪役)さ
※DOOM自身のフロウや別名義の使い分けを、腹話術師(voice-thrower)の高度なテクニックに例えている。

He's like a ventriloquist, with his fist in the speaker's back
まるで腹話術師だ、スピーカーの背中に拳を突っ込んでる

Couldn't think of no uniquer track, nope, sneak attack
これ以上ユニークなトラックは思いつかねえ、いや、奇襲攻撃(スニーク・アタック)だ

It don't really matter how big them is, so much as a nipple
乳首ほどの大きさもあれば、全体がどれだけデカいかなんて関係ない

Cause you could have a chick with D-Triple
だって、トリプルDカップの女がいたとしても

'Cept the nipple little, just hot off the griddle
乳首が小さけりゃ、鉄板から下ろしたばかりの熱さってだけさ
※非常に生々しい性的メタファーだが、転じて「見た目(バストサイズ=名声やハッタリ)がどれだけ大きくても、本質的な芯(ニップル=ラップのスキルやストリートのリアルさ)が伴っていなければ意味がない」というヒップホップ的な美学を語っている。

Like how he do monkey rhymers like Monkey-in-the-Middle
ヤツがサルみたいなライマーどもを、「モンキー・イン・ザ・ミドル(猿の真ん中)」の遊びみたいに扱うようにな
※「Monkey-in-the-Middle」は、二人がボールを投げ合い、真ん中の人間(猿)がそれを奪おうとする子供の遊び。オリジナリティのない猿真似(monkey)ラッパーたちを、DOOMが子供扱いして弄んでいる様子。

By his damn self, ain't no average MC ahead of me
たった一人でな。俺の先を行く平凡なMCなんていねえ

Getting cheddar instead of the probably better pedigree
おそらく血統を良くするより、チェダー(金)を稼ぐ方がマシさ
※「cheddar」はお金のスラング。「pedigree(血統)」は、業界のコネやエリート的な立ち位置を指す。名誉よりも実利(金)を求めるハスラーの精神。

With nicknames, sick games as Rick James
リック・ジェームスみたいに病んだゲームと、いくつものニックネームを持ってな
※80年代のファンクスター、Rick James。彼の破天荒でドラッグに塗れたライフスタイル(sick games)を引き合いに出している。

Messy games, Sci.Fly such as Jesse James
厄介なゲーム、ジェシー・ジェイムズみたいな「サイ・フライ」さ
※「Sci.Fly」はDOOMのプロデューサー名義の一つ。「Jesse James」はアメリカ西部開拓時代の伝説的な強盗・無法者。ヴィランとしてのペルソナを補強するネームドロップ。

Blast, I figure, ass-hawking ass titty licker
ぶっ放すぜ、俺が思うに、ケツを追っかけるおっぱい舐め野郎は

Last one to walk up in, fast-talking city slicker
最後に入ってくる、早口の都会の詐欺師(シティ・スリッカー)さ

Got bagged 'cause of the dirty chick with make-up
メイクをした汚いビッチのせいでパクられた(逮捕された)

Bail out quick for the 7:30 wake-up
7時30分の起床(クレイジーな状態)のために、さっさと保釈されるのさ
※「7:30(セブン・サーティー)」はニューヨーク州刑法第730条(精神疾患により裁判を受けられない状態)に由来するスラングで、「イカれている、狂っている」ことを意味する。刑務所の起床時間とのダブルミーニング。

My only backup was an A-cup, as far as May
俺の唯一のバックアップはAカップの女だけだった、5月までの話だが

To when the leaves turn red and gold to Nimrod earthday
葉っぱが赤と金に変わる季節から、ニムロドの誕生日(アースデイ)までな
※「Nimrod」は聖書に登場する狩人だが、ここではDOOMの身内や仲間を指す隠語。Redditなどのファンの考察では、不慮の死を遂げた弟Subrocの誕生日(8月)、あるいはその喪に服す期間に関連していると推測されている。季節が秋(紅葉)へ移り変わる過酷な時期。

All else? Worthless to say
それ以外は? 言う価値もねえ

(Then the lights went down, hey, hey)
(そして照明が落ちた、ヘイ、ヘイ)

[Hook]

That's when I knew it was the first day - Wig-Twisting Season
その時気づいたんだ、それが初日だってことに。ウィッグ・ツイスティング・シーズンさ

When some could get their wigs twisted back within reasoning
当然の報いとして、頭をねじ切られるヤツらが出る季節

Mostly with these crimes of treason men
大抵は裏切りの罪によってな

And y'all be lucky if there's no squeezing even this evening
今夜、銃撃が起きなかったら、お前らは運がいいぜ

[Verse 3]

It's like a mosquito, the much sweeter resent the act
まるで蚊みたいだ、甘い血を持つ者ほどその行為(吸血)を恨む

I been bent back since my Physical went back
俺の「フィジカル(肉体)」が土に還ってから、俺はずっと背中を曲げて(落ち込んで)生きてきた
※本作において最もパーソナルで悲痛なライン。「Physical」はファイブ・パーセント・ネーションの用語で「肉体(実在する人間)」を指し、ここでは1993年に交通事故で急逝した最愛の弟・DJ Subrocを意味する。「went back (to the essence)」は死んで自然(宇宙の真理)に還ること。弟を失って以来、DOOMは深い悲しみ(bent back=落ち込む、あるいは重荷を背負う)を抱え続けている。

Since, cultured more of my kin
それ以来、俺の仲間たちにより多くの教養(カルチャー)を与えてきた

And for them I keep an L rolled in this hellhole
そして彼らのために、この地獄のような場所(ヘルホール)でLを巻き続けてるのさ
※過酷なゲットー(hellhole)で生き残る仲間たちのために、マリファナを巻き、音楽を通して真理(カルチャー)を伝え続けるという決意。

Hold your head, use your head and hold, or be dead and cold
頭を高く上げろ、頭を使え、そして耐え抜け。さもなきゃ冷たい死体になるだけだ

In the worsest way, soon as the leaves show red and gold
最悪な形でな。木の葉が赤と金を見せ始めた途端に

To 'round Nimrod release day
ニムロドのリリース日(出所日)の辺りまで
※「release day」は刑務所からの出所日、あるいは死によってこの世の苦しみから「解放(リリース)」される日を暗示している。

And all else? Needless to say
それ以外は? 言うまでもねえ

Wait a motherfucking minute! True facts presented
ちょっと待て! 真実が提示されたぜ

The names was probably changed just to protect who ain't in it
この件に関わってないヤツらを守るために、おそらく名前は変えられてるんだろう
※アメリカの古典的な犯罪捜査ドラマ『ドラグネット(Dragnet)』の有名なオープニング・ナレーション「The story you are about to see is true. The names have been changed to protect the innocent.(これは実話である。無実の人々を守るため、名前は変えられている)」のパロディ。

The XP was three-quarters tinted, four-fifths was converted
XPの窓は4分の3がスモーク張りで、4/5(フォー・フィフス)は改造されてた
※「XP」はおそらくFord ExplorerなどのSUV。「four-fifths」は.45口径の拳銃(45 caliber)を意味するストリート・スラング。改造された銃とスモーク張りの車による、ドライブバイ・シューティング(車からの銃撃)の生々しい描写。

The way his shit was twisted? Ask him if it hurted
あいつがどうやって頭をねじ切られた(殺された)かって? あいつに痛かったか聞いてみな
※死人に口なし。ストリートの冷酷な暴力の結末を残酷なユーモアで締めくくっている。

(Then the lights went down, hey, hey)
(そして照明が落ちた、ヘイ、ヘイ)

[Hook]

Wig-Twisting Season
ウィッグ・ツイスティング・シーズン

When some could get their wigs twisted back within reasoning
当然の報いとして、頭をねじ切られるヤツらが出る季節

Mostly with these crimes of lying, and fronting, and cheating
大抵は、嘘や、虚勢や、イカサマの罪によってな

All types of different styles of treason
あらゆる種類の、様々なスタイルの裏切りによってさ