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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

What The Deal - Kendrick Lamar 【和訳・解説】

Artist: Kendrick Lamar

Album: Youngest Head Nigga in Charge (Hub City Threat: Minor of the Year)

Song Title: What The Deal

概要

2004年、当時16歳のケンドリック・ラマーが「K.Dot」名義でリリースしたデビュー・ミックステープ『Y.H.N.I.C.』に収録された本楽曲は、初期の彼が持ち合わせていた剥き出しの闘争本能と、のちのピューリッツァー賞受賞ラッパーへと至る「言葉遊び(ワードプレイ)」の才能が同居する重要なトラックである。本作では2PacやThe Notorious B.I.G.といった東西のレジェンドを自身に憑依させるかのような傲慢なセルフボーストを展開しつつ、当時のストリートにおける「偽物のギャングスタ」を徹底的にこき下ろしている。特に、ジェニファー・ロペスとディディ(ショーン・コムズ)の破局スキャンダルや、NBA選手から俳優へと転身したリック・フォックスの経歴を引用したメタファーは、Genius等のコミュニティでも「16歳とは思えない引き出しの多さと文脈の構築力」と高く評価されている。初期ケンドリックの攻撃的なペルソナと、ストリートの現実を冷徹に描写する観察眼が堪能できる一曲である。

和訳

[Intro]

Uh-huh, yeah
アーハァ、イェー
※曲の入りを飾る定番の相槌。

You know what it is
どういうことか分かってるだろ
※これから始まる自分のラップのヤバさを予告するフレーズ。

Uh-uh
アー・アー
※ビートに乗るためのフロウ。

It's that Compton shit, nigga
これがコンプトンの流儀だぜ、ニガ
※西海岸ヒップホップの中心地であり、彼の地元であるコンプトン(Compton)の過酷なストリート精神をレペゼンしている。

Get back, uh
下がってな
※圧倒的なスキルの前にひれ伏せという警告。

I tell you, I swear it's-
言っとくが、マジでこれは…
※コーラスへの繋ぎ。

[Chorus]

If I gotta ride (O-O-O-Okay, uh)
もし俺が乗り込まなきゃならねぇなら(オーケー、アー)
※「ride」は単に車に乗るだけでなく、「仲間のために戦う」「ドライブバイ・シューティング(車からの銃撃)に向かう」というギャングスタラップ特有の緊迫した意味を持つ。

Then he's gonna die (O-O-O-Okay, duck, niggas)
あいつは死ぬことになる(オーケー、伏せな、ニガども)
※「duck(伏せる)」。銃撃戦が始まるから頭を下げろというストリートのリアルな描写。

[Interlude]

Uh (Get back)
アー(下がってな)
※ヴァース前の間奏。

Let me talk to 'em
あいつらに言ってやるよ
※説教や警告の開始を告げる。

Listen
よく聞け

[Verse]

I hope niggas ain't really tryin' to break my bones
あいつら、マジで俺の骨を折ろうなんて思ってないことを祈るぜ
※自分に対する物理的な脅威についての言及。

'Cause if you are, make sure you know a nickname you want for that tombstone
だって、もしそうなら、墓石に彫ってほしいニックネームを決めとくんだな
※自分に手を出せば確実に死ぬ(墓石が立つ)という冷酷な脅し。

Play hard as a rock, bullets can break stones
石みたいに硬派ぶっても、弾丸は石を砕くんだぜ
※「hard as a rock(岩のように硬い=タフな男)」という慣用句を使い、どんなにタフぶっても銃弾の前では無力であるというストリートの絶対的ルールを説いている。

Break bad boys down like Jenny did Sean Combs
ジェニーがショーン・コムズにしたみたいに、バッド・ボーイズを叩き潰してやる
※秀逸なポップカルチャーの引用。「Jenny」は歌手のジェニファー・ロペス(J.Lo)、「Sean Combs」はディディ(パフ・ダディ)の本名。両者は1999年〜2001年に交際していたが、1999年末のナイトクラブでの発砲事件に巻き込まれ共に逮捕された。この事件を機にJ.Loはディディと破局し、彼のイメージ(Bad Boy Recordsの顔)は大きく傷ついた。ケンドリックはこのスキャンダルを引き合いに出し、相手(bad boys)を完膚なきまでに崩壊させると宣言している。

I'm hot as an oven, you just a pressin' comb
俺はオーブンみたいに熱い、お前はただのプレスコームだ
※「pressin' comb」は黒人の髪をストレートに伸ばすために加熱して使う金属製の櫛。どちらも熱を持つが、オーブン(ケンドリック)と櫛(ヘイター)ではスケールと火力が全く違うというディス。

I'm not impressed homes, you should've stayed home
全然感心しねぇよ、ホームズ。家(ホーム)に引きこもってりゃよかったな
※「homes(ホーミーの変形)」と「home(家)」のシンプルな言葉遊び。

And prayed that rooftop blocked you from gettin' shitted on
屋根がお前がクソまみれになるのを防いでくれるよう祈ってな
※空から鳥のフンが落ちてくること(get shitted on)と、ラップゲームで徹底的にディスられ恥をかかされること(get shitted on)のダブルミーニング。家にいれば安全だったのに、という皮肉。

I gives a fuck if A&R's don't pick up the phone, huh
A&Rが電話に出なくたって知ったこっちゃねぇ
※「A&R」はレコード会社のアーティスト発掘・育成担当。業界の権力者に媚びを売らずとも、己の実力だけで成り上がれるというインディペンデントな自信の表れ。

I swear there's no one like me
マジで俺みたいな奴は他にいねぇよ
※自身の唯一無二の才能への自負。

But if it is, then I got a long lost twin, or they made me a clone
もしいるとしたら、生き別れの双子か、俺のクローンを作ったかだ
※「俺と同レベルのラッパーがいるなら、それは物理的に俺と同じ遺伝子を持つ者だけだ」という極端な比喩。

I don't care about friends, I was made to be on my own
友達なんてどうでもいい、俺は一人で生きるようにできてるんだ
※過酷なフッドを生き抜くための、孤独と自己完結の哲学。

I came in this world by myself, and I'm leavin' alone
一人でこの世に生まれてきたし、去る時も一人だ
※2Pacなど数多くのラッパーが引用してきた「人間は孤独に生まれ、孤独に死ぬ」という実存主義的なストリートの死生観。

Hopefully with a crib that I can call my own
自分のモノと呼べるデカい家(クリブ)を持てりゃ最高だがな
※「crib」は家のスラング。死ぬ前に莫大な富を手に入れたいという野望。

With a backyard the size of the fuckin' Georgia Dome, pop
ジョージア・ドームサイズの裏庭付きのな、パンッ
※ジョージア・ドームはかつてアトランタにあった巨大なドームスタジアム(収容人数約7万人)。途方もないスケールの成功を夢見ている。末尾の「pop」は銃声を模した擬音であり、次行への伏線。

You pop shit, then I might pop your dome
お前がクソな口を叩くなら、俺はお前の頭を撃ち抜くぜ
※前行の「Dome(スタジアム)」を受けたワードプレイ。「pop shit(戯言を言う)」と「pop your dome(頭部を銃で撃つ)」で「pop」の意味を巧みに変化させている。「dome」はスラングで頭を指す。

Give your homies a reason to make a memory song, huh
お前のダチに、追悼ソングを作る理由を与えてやるよ
※ヒップホップ特有の文化である亡くなった仲間への「追悼曲(Tribute/Memory song)」を逆手に取った脅し。お前を殺して、お前の仲間に悲しい曲を作らせてやるというサイコパス的なライン。

Niggas swear that they love when the beef is on
ビーフが始まると最高だなんて、あいつらマジでほざいてるけど
※「beef(抗争、揉め事)」。偽物のギャングスタたちが、安全な場所から他人の抗争をエンタメとして楽しんでいることへの批判。

Knowin' that plummet time the only time he'll roam
どん底の時(死ぬ時)しかうろつけないって分かってるくせにな
※「plummet(真っ逆さまに落ちる=撃たれて倒れる)」「roam(さまよう)」。普段はビビって出歩けないくせに、死んで幽霊になって初めてストリートをさまようことができるんだろ、という強烈な皮肉。

You better hold your breath, I give you walkin' death
息を止めといた方がいいぜ、歩く死(ウォーキング・デッド)をくれてやる
※生きたまま死人のようにしてやるという脅迫。

And recommend the gun bein' your chaperone
銃を付き添い人(シャペロン)にすることをお勧めするぜ
※「chaperone」は若い女性が外出する際に付き添う保護者。コンプトンを歩くなら銃を保護者代わりに持っていないと命はないという警告。

I know young niggas that look up to Al Capone
アル・カポネに憧れてる若いニガどもを知ってる
※アル・カポネは禁酒法時代のアメリカの伝説的マフィア。ストリートのキッズがいかに犯罪者に憧れ、悪の道へ進むかを描写している。

And they look seventeen, but I swear that their mind is grown, shit
見た目は17歳だが、中身は完全に大人だぜ
※過酷な暴力と死の恐怖が蔓延するフッドの環境が、子供たちの純粋さを奪い、強制的に精神を大人(grown)にさせてしまうという悲劇。後の名盤『good kid, m.A.A.d city』の核となるテーマが既にここで提示されているとReddit等の考察でも頻繁に指摘される。

I'm so grown and the reason why I write this way
俺も超マセてる。こんな風にリリックを書く理由は…
※前行を受け、自身もまた年齢にそぐわない達観した精神を持っていることを宣言する。

Pac and Big be ghostwritin' my songs, huh
2Pacとビギーが俺の曲をゴーストライトしてるからさ
※ヒップホップ史上最大のアイコンである2Pac(西海岸)とThe Notorious B.I.G.(東海岸)の名前を召喚。16歳にしてこれほど深いリリックが書けるのは、東西の亡きレジェンドたちが自分に憑依して代筆(ゴーストライト)しているからだ、という究極のセルフボースト。自らを両者の正統な後継者として位置づけている。

You can play the boss
ボスぶることはできるさ
※表面上だけギャングのボスを演じることは簡単だと指摘。

But if you get shot from bein' on top
だが、トップにいるせいで撃たれるなら
※「on top(頂点)」に立つことは、同時に常に狙われる標的になることを意味する。

Then, homie, that's your loss, shit
ホーミー、それはお前の負けだぜ
※実力が伴わないのにトップを気取れば、命を落とすという因果応報。

I'm nice wit' it
俺はヤバいんだ
※「nice」はヒップホップ用語でスキルが極めて高いことを意味する。

I'll pop your man then leave some money on him so it can pay for his funeral costs, get it?
お前のダチを撃ち殺して、葬式代を払えるように少しばかり札束を置いてってやるよ、わかるか?
※人を殺した上に、その死体の上に葬式代(小銭)を投げ捨てるという、ギャングスタ映画さながらの冷酷かつ屈辱的な描写。圧倒的な財力と残虐性のアピール。

The niggas tryin' to get money like Fort Knox
フォート・ノックスみたいに金を稼ごうとしてる奴ら
※「Fort Knox」はアメリカ合衆国の金塊保管庫がある陸軍基地。莫大な富の象徴。

Either from the rap shit or back down to the cut rock
ラップで稼ぐか、クラック・コカインの密売に戻るかだ
※「cut rock」は細かく砕かれたクラック・コカイン。ストリートの黒人にとって、フッドから抜け出す手段は「ラップ」か「麻薬密売」か「スポーツ」しかないというゲットーの現実。

And you can play a baller but deep inside you know you just an actor
お前はボーラーを演じられるが、心の奥底じゃ自分がただの役者だって分かってるんだろ
※「baller」は元々バスケットボール選手を指すが、転じて「金持ち、成功者、ストリートの勝者」を意味する。フェイクなラッパーはボーラーのフリをしているだけの役者(actor)に過ぎないという批判。そしてこれが次行の極めて高度なパンチラインのセットアップとなる。

Yeah, somethin' like Rick Fox, huh
ああ、リック・フォックスみたいにな
※Geniusでも大絶賛される天才的なライン。「Rick Fox」はNBAのロサンゼルス・レイカーズ等で活躍した本物の「ボーラー(バスケ選手)」でありながら、引退前後にハリウッドで「役者(actor)」としても活動した人物。前行の「baller」と「actor」という2つの単語を見事に一つの固有名詞で回収し、フェイクラッパーを嘲笑っている。16歳の時点でこのレベルの多重ミーニングを構築していたことに、ケンドリックの早熟な才能が如実に表れている。

You ain't a thug, homie, you just a fox
お前はサグじゃねぇ、ホーミー、ただのキツネだ
※前行の「Rick Fox」の「Fox」をさらに展開。タフな悪党(thug)ぶっているが、実際はコソコソ逃げ回るズル賢いだけの小動物(fox)だという侮蔑。

In the midst of werewolves somewhere in the Boondocks
ブーンドックスのどこかにいる狼男たちの群れの中に迷い込んだな
※「Boondocks」は辺境の地、未開の場所、転じてゲットーやスラム街を指す。「werewolves(狼男)」は夜のストリートを徘徊する本物の捕食者(リアルなギャングや自分自身)のメタファー。狼の群れの中にキツネ(フェイク野郎)が迷い込めば、当然食い殺される運命にある。

And I'm really from the streets
そして俺はマジでストリート出身だ
※自分が狼の側(本物)であることの再確認。

So if I ask for beef, homeboy, don't bring me no pork chop
だから俺がビーフを頼んだら、ポークチョップなんて持ってくんじゃねぇぞ
※ヒップホップにおける伝統的な食のメタファー。「beef(牛肉)」はラッパー同士の抗争や深刻な揉め事を意味する。「pork(豚肉)」は安物、フェイク、または警察(Pig)を暗喩する。俺が本気の殺し合い(Beef)を求めているのに、中途半端な偽物の喧嘩(Pork)を持ってくるなという警告。

I turn your skin to pork, homie, with one chop
一撃(チョップ)でお前の肌を豚肉に変えてやるよ、ホーミー
※前行の「pork chop(豚の骨付き肉)」の「chop」を「切り刻む、叩き切る(chop)」という動詞に変換。一撃でお前の肉体を切り刻み、ただの肉の塊(pork)に変えてやるという残虐なワードプレイ。

With a rusty switchblade that's dirty like bum socks, ha
浮浪者の靴下みたいに薄汚れた、錆びた飛び出しナイフでな
※「bum(浮浪者)」。銃のようなスマートな武器ではなく、ストリートの最底辺を象徴するような汚く錆びたナイフで切り刻むことで、相手への究極の侮蔑と肉体的な痛みをリアルに想像させている。

They say the flow is crack
俺のフロウはクラックだって言われてる
※自分のラップ(フロウ)が、一度聴いたら抜け出せないクラック・コカインのように中毒性が高いという定番のボースト。

So wherever I rap, best believe you can call it a dope spot, bitch, bitch, I swear
だから俺がラップする場所はどこでも、ドープ・スポットって呼んで間違いないぜ、ビッチ、マジでな
※「dope spot」は麻薬の取引が行われる場所のこと。前行の「クラック」を受け、自分がラップをする場所=極上の麻薬(dope)が手に入る場所だと宣言し、ヴァースを締めくくる。

[Chorus]

I'm gon' ride (Yeah, y'all know what it is)
俺は乗り込むぜ(イェー、お前ら分かってるだろ)
※再びのコーラス。暴力の実行を宣言。

And he's gotta die (Uh, bitch)
そしてあいつは死ぬ(アー、ビッチ)
※敵対者の完全なる死。

[Outro]

It's that Compton shit, niggas (Get back)
これがコンプトンの流儀だぜ、ニガども(下がってな)
※アウトロでのフッドの再レペゼン。

Uh, oh K.Dot (Huh, uh huh)
アー、オー、K.Dot

Oh, oh, oh, oh K.Dot
オー、オー、オー、オー、K.Dot

Money by any means, nigga
どんな手段を使ってでも金を稼ぐぜ、ニガ
※マルコムXの有名なスローガン「By Any Means Necessary(いかなる手段をとろうとも)」をもじり、ストリートにおける拝金主義とサバイバルの決意を表明して曲が終わる。