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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

I Did This To Myself - Thundercat & Lil Yachty 【和訳・解説】

Artist: Thundercat & Lil Yachty

Album: Distracted

Song Title: I Did This To Myself

概要

サンダーキャットのアルバム『Distracted』に収録された本作は、近年サイケデリック・ロックやファンクへの接近で音楽的評価を劇的に高めたリル・ヨッティを客演に迎えた、異色かつ必然のコラボレーションだ。両者に共通する「ブラックミュージック・シーンにおけるオタク的アウトサイダー」という立ち位置が見事に共鳴し、LA特有の「スピリチュアル系女子」や「SNSモデル」に振り回される男の滑稽さと悲哀をシニカルに描いている。サンダーキャットのメランコリックで超絶的なベースラインに乗せ、自己嫌悪(I Did This To Myself)と自虐的なユーモアが交錯する。華やかな交友関係の裏で、マック・ミラーら大切な友人を喪失した孤独感を抱える彼が、虚無的な人間関係に大金を注ぎ込んでしまう自己矛盾を赤裸々に歌い上げた、現代LAのリアルで痛烈な失恋ソングである。

和訳

[Intro: Thundercat]

Fuck
クソッ

Hey, what are you doing later tonight after you're done with work?
ねえ、今夜仕事が終わった後、何してる?
※留守番電話やボイスメッセージに吹き込んでいるような、サンダーキャット特有の気まずく不器用なイントロダクション。彼のアニメ声とオタク的なオドオドしたトーンが、この曲が「冴えない男(Simp)の嘆き」であることを決定づけている。

I know you might be tired, but, uh, I'ma be awake
疲れてるかもしれないけど、えっと、俺は起きてるからさ

Yeah, ha-ha
うん、ハハッ

[Verse 1: Thundercat]

Got me looking like a fool
すっかりピエロみたいな気分だよ

Just to get some of your attention
君の気を少しでも引きたくてさ

Girl, what I gotta do?
なあ、俺はどうすりゃいいんだよ?

(Oh, you a weird chick, you like crystals and shit)
(ああ、君はクリスタルとかそういうのが好きな、ちょっと変わった子だもんな)
※「She Knows Too Much」でも描かれた、LAによくいる「スピリチュアルや占星術に傾倒する女性(Crystal Girl)」のトロープ。本質的な愛情ではなく、表面的な宇宙のエネルギーなどにこだわる彼女たちに対する、理系オタク的な視点からのシニカルな観察である。

Girl, you look annoyed
君、すごくイライラしてるみたいだね

Like you've already had enough
もうウンザリだって顔してる

Do I remind you of your ex?
俺のせいで元カレのことでも思い出した?

(That don't seem too fair 'cause I just got here)
(それって不公平だよな、俺は今ここに来たばっかりなのにさ)
※RPGゲームで自分のキャラクターが理不尽な状況にスポーン(出現)したかのような、ゲーマー特有の俯瞰した被害者意識が表れている。相手のトラウマのサンドバッグにされることへのコミカルな抗議。

She gets everything she wants
彼女は欲しいものを全部手に入れる

It wouldn't matter if it came from me
それが俺からのプレゼントかどうかなんて、どうでもいいんだ

Why am I paying so much?
なんで俺、こんなに金払ってんだろ?
※感情のつながりがない関係を、金銭的(あるいは精神的)なコストでしか維持できない現代の虚無感。

I swear I just got here
マジで今来たばっかりなのに

Give her everything she wants
彼女が望むものは全部与えちゃうんだ

'Cause that's just how it goes
だって、そういうもんだからさ

I did this to myself
全部自分が蒔いた種なんだけどね
※タイトル回収。破滅的で搾取的な人間関係から抜け出せない自分自身の弱さを認めている。マック・ミラーの死後、酒やジャンクな関係性に依存しがちだった彼自身のコーピング・メカニズム(防衛機制)に対する痛切な自己批判でもある。

(But you gotta admit, she's a bad bitch)
(でも認めざるを得ないよな、彼女はイケてる悪女なんだ)

[Verse 2: Lil Yachty]

Bitch, stop actin' like you never seen realness
おい、本物の男を見たことがないみたいな態度はやめろよ

(Bitch, stop actin' like you never seen—)
(本物を見たことがないみたいな態度は—)

The cars I was dealt in my life need to be reshuffled
俺の人生に配られたカード(車)は、シャッフルし直す必要があるな
※「cards(トランプのカード)」と「cars(車)」を掛けた見事なワードプレイ。配られた手札(人生の境遇や出会う女性)に対する不満を漏らしている。

The Lexus LS and them bubbles (Mm)
レクサスLSと、あの丸っこいバブルボディのやつ(うーん)

I usually hang around guys who's rebels (Mm)
俺は普段、反逆者みたいなヤツらとつるんでるんだ(うーん)

Who sip on codeine, not no Red Bull, damn
レッドブルなんかじゃなく、コデインをすするような連中とな、クソッ
※「コデイン(シロップ)」はヒップホップ界隈で蔓延するドラッグ。サンダーキャットの親友マック・ミラーが薬物の過剰摂取で亡くなったという重い背景を持つ中で、あえてこのフレーズを客演のヨッティが口にする点に、LAシーンの退廃的なリアルが残酷なまでに描写されている。

Cleared out my whole schedule
予定を全部空けてやったのに

And you still act like you're too busy
君はまだ忙しぶってるのかよ

Bitch, stop actin' like you got a real job
おい、まともな仕事に就いてるようなフリはやめろ

(Bitch, that's not a real job)
(あんなの、まともな仕事じゃねえよ)

Takin' those pics in a bra shouldn't jam your schedule
ブラジャー姿で写真撮るだけで、そんなに予定がパンパンになるわけないだろ
※InstagramのインフルエンサーやOnlyFansクリエイターとして稼ぐ女性への強烈なディス。ハリウッドの虚飾に対する痛烈な風刺である。

We made plans twice and it's unsuccessful
2回も予定を立てたのに、どっちもボツになった

(I'm mad)
(マジでキレそう)

'Cause the more that I look in your face, you look like your dad
だって、君の顔をマジマジと見れば見るほど、君の親父にそっくりじゃん

And it's hard picturin' him with a big ol' ass
親父にデカいケツがついてるのを想像するのは、さすがにキツいんだわ
※シリアスで退廃的な空気から一転して放たれる、リル・ヨッティ特有のシュールで馬鹿馬鹿しいユーモア。Geniusでも「ヨッティ史上最も笑えるラインの一つ」として評価されており、サンダーキャットのオタク的な悪ふざけとも完璧にマッチしている。

(Damn, that's crazy)
(クソッ、狂ってんな)

[Outro: Thundercat]

Ooh
ウー

Ooh
ウー

Girl, why am I paying so much? Ooh
なあ、なんで俺、こんなに金払ってんだろ? ウー
※曲の終盤に向け、再びサンダーキャットの哀愁漂うファルセットが響く。搾取されていると頭では分かっていても、孤独を埋めるための代償として大金を払い続ける男の、救いようのないメランコリーが余韻を残す。

Girl, why am I paying so much? Yeah
なあ、なんで俺、こんなに金払ってんだろ? イェー