Artist: Thundercat & Mac Miller
Album: Distracted
Song Title: She Knows Too Much
概要
サンダーキャットのアルバム『Distracted』に収録された本作は、2018年に急逝した無二の親友、マック・ミラーとの貴重なコラボレーション楽曲である。生前に録音されていたセッションをベースに構築されたこの曲は、ファンにとって涙なしには聴けないサプライズだ。しかし、楽曲のトーン自体は決して悲痛なものではない。むしろ、知的なふりをしながらも結局は金や名声を求める「LAの典型的な女性(エセ・スピリチュアル層)」をシニカルかつユーモラスに描写した、二人の悪ふざけのようなバイブスに満ちている。サンダーキャットの浮遊感あるファルセットと、マックの軽妙でありながらどこか影を帯びたラップが交差する様は、かつて彼らがアニメを見たりゲームをしながら日常的に共有していたスタジオでの親密な空気感そのものだ。LAシーンの虚飾を笑い飛ばしつつも、もう二度と戻らない「あの頃」の喪失感が背中合わせに存在する、極めて美しく、そして切ないネオソウル・ファンクである。
和訳
[Intro: Mac Miller]
Ooh, electrifyin', mesmerizin'
ウー、シビれるね、完全に魅了されちゃうよ
※「electrifyin'(電撃的)」や「mesmerizin'(催眠術をかけるような)」といった大袈裟な形容詞を使うことで、相手の女性のミステリアスな魅力を皮肉交じりに表現している。
Woo
フゥー!
[Pre-Chorus: Thundercat & Mac Miller]
Ooh-ooh-ooh (Uh)
ウー(アー)
※サンダーキャットによる甘く浮遊感のあるファルセットが、楽曲全体に70年代ソウル的なレトロなバイブスをもたらしている。
Ooh-ooh-ooh-ooh (Feel good, don't it?)
ウー(気持ちいいだろ?)
Ooh-ooh-ooh (You're goddamn right)
ウー(全くもってその通りだぜ)
Ooh-ooh-ooh-ooh (But it feels so wrong, goddamn right)
ウー(でもなんか間違ってる気もするんだよな、マジで)
※快楽に溺れながらも、この関係が不健全であることに気づいている自己矛盾。LAのパーティーシーンにおける虚無感を示唆している。
[Chorus: Mac Miller & Thundercat]
She (Ooh-wee) way out of my league, can't buy her love (Baby)
彼女は(ウー・ウィー)俺には高嶺の花すぎて、愛はお金じゃ買えないんだ(ベイビー)
※The Beatlesの「Can't Buy Me Love」を踏襲しつつ、サンダーキャットのコミカルなコーラス(Ooh-wee)が、深刻な恋愛ではなく一種のゲーム感覚であることを際立たせている。
(Can't buy her love, ooh-wee)
(愛は買えないのさ、ウー・ウィー)
All the books she read, she know way too much
彼女はいろんな本を読んでてさ、ちょっと知りすぎてるんだよね
※タイトル回収部分。LAによくいる「スピリチュアルや自己啓発の本を読み漁り、知的なふりをする女性」への強烈な皮肉。オタク気質で本当にマニアックな知識を持つサンダーキャットやマックからすれば、彼女たちの「知識」は表面的なものにすぎない。
(She knows way too much)
(彼女は知りすぎてるんだ)
Girl, don't know me, you don't know enough (Baby)
なあ、君は俺のことを分かってない、全然分かっちゃいないんだ(ベイビー)
※宇宙や真理については語るのに、目の前にいる人間の心(マックやサンダーキャットの抱える孤独やメランコリー)には全く気づいていないことへの絶望感。
(She don't know me, woo)
(彼女は俺を知らない、フゥー)
Said (Ooh-wee), if you don't know me, you don't know enough (Baby)
言っただろ(ウー・ウィー)、俺を知らないなら、君は何も分かっちゃいないって(ベイビー)
(She don't know me, woo)
(彼女は俺を知らない、フゥー)
[Post-Chorus: Mac Miller & Thundercat]
Yeah, said, "Ooh-wee" (Yeah)
ああ、「ウー・ウィー」って感じさ(イェー)
You got me sayin', "Baby" (Oh yeah, ooh)
君のせいで俺は「ベイビー」なんて柄にもないこと言っちゃうよ(オー・イェー、ウー)
You can drive my car, but don't drive me crazy
俺の車は運転していいけどさ、俺の頭まで狂わせないでくれよ
※「Drive a car(車を運転する)」と「Drive me crazy(狂わせる)」を掛けたワードプレイ。物質的なものは提供できるが、精神的な平穏まで奪わないでほしいという切実な願い。
(Girl, you drive me wild, skrrt)
(なあ、君は俺を夢中にさせるんだ、スクワァー!)
※「skrrt」は車のタイヤが擦れる擬音語。トラップミュージックの定番アドリブをおどけて使っている。
I know that life is hard, we dancin' on the boulevard
人生がハードなのは分かってる、俺たちは大通りで踊り続けてるんだ
※「Boulevard」はおそらくLAのハリウッド・ブルーバードなどのこと。厳しい現実(life is hard)から目を背けるように、享楽的な街で踊り続けるアーティストの業を描写している。
Girl, am I crazy? (Crazy)
なあ、俺がおかしいのかな?(クレイジー)
※相手のせいだと言いつつ、最終的には自分自身の正気を疑い始める。マック・ミラーの楽曲に頻出する自己内省的なテーマ。
I must be crazy (Crazy, um, yeah)
きっと俺がイカれてるんだろうな(クレイジー、うむ、イェー)
[Verse: Mac Miller & Thundercat]
You got trouble payin' rent now
家賃の支払いに困ってるみたいじゃん
※ここからマック・ミラーのストーリーテリングが加速する。金銭目的で近づいてくる女性たちの実態をシビアに描写していく。
Live in an apartment, I can take you to the penthouse (Cha-ching)
アパート暮らしなら、俺がペントハウスに連れてってあげるよ(チャリーン)
※「Cha-ching」はレジの音。あえて下世話な成金アピールをすることで、関係の薄っぺらさを強調している。
Got a stepchild, gone like exile
連れ子がいるのに、追放されたみたいにどっか行っちゃってさ
※育児を放棄して夜の街で遊び歩くLAのパーティーガールの暗部をチクリと刺すライン。
Make me say, "Woo," every time you pull your breasts out (Ooh)
君が胸を出すたびに、俺は「フゥー」って叫んじゃうよ
※男の悲しい性(さが)とコミカルなオタクっぽさが全開のライン。サンダーキャットが横でニヤニヤしながらベースを弾いている情景が目に浮かぶ。
(She got so much love) I'm feelin' left out
(彼女は愛に溢れてるのに)俺はのけ者にされてる気分さ
※SNS上で「愛」や「ポジティブバイブス」を振り撒く女性の裏側で、現実のパートナーである自分が孤独を感じているという現代的なパラドックス。
(I can be your drug) When you're stressed out (Yeah)
(俺が君のドラッグになってあげるよ)君がストレスでやられそうな時はね
※マック自身の薬物依存の背景を考えると、非常にダークで重みのあるメタファーである。
I know you say it's true love, but why you always hit me when the check bounce? (Ooh)
「真実の愛」だなんて言ってるけど、じゃあなんで小切手が不渡りになった(金がない)時ばっかり俺に連絡してくるわけ?
※決定的なパンチライン。Redditでも「LAの偽善を見事に突いた一言」として絶賛されている。
Ooh, yeah, we in love
ああ、そうさ、俺たちは愛し合ってるんだ
※強烈な皮肉。
Tell me what I gotta do to get my dick sucked (Ooh)
どうすりゃフェラしてもらえるのか教えてくれよ
※崇高な愛など存在しないことを悟り、極めて即物的な欲求だけをストレートにぶつける。ラッパー特有のブラガドッチョ(虚勢)の裏にある諦めが見える。
She a pin-up, lookin' for a rich one (Ooh)
彼女はピンナップガールみたいにセクシーで、金持ちの男を探してるんだ
Need to take your ass on home, pick your kid up (Pick your goddamn kid up)
さっさと家に帰って、自分の子どもを迎えに行きなよ(頼むから子どもを迎えに行けって)
※育児放棄に対する再度の怒り。マックの根底にある真っ当な倫理観や優しさが、怒りという形で表出している。
Yeah, heart movin' to the kick drum
ああ、キックドラムのビートに合わせて心臓が揺れてる
※サンダーキャットのライブでもお馴染みの、地を這うような重低音ビートとのシンクロを示す。
You ain't have none, girl? Better get some (Ooh)
何も持ってないのかい? 少しは手に入れた方がいいぜ
You can talk about the universe and energy
宇宙だのエネルギーだの、スピリチュアルなことはペラペラ話すけどさ
※ヒッピー文化の名残があるカリフォルニア特有の、クリスタルや占星術に傾倒する「エセ・スピリチュアル層」への強烈なディス。
But all you really want is a celebrity (You motherfuckin' bitch, bitch)
結局君が本当に欲しいのは、セレブの肩書きだけだろ(このクソビッチが)
※感情が爆発し、最も汚い言葉で罵倒してしまう。この直後のインターリュードへの完璧なフリとなっている。
[Interlude: Mac Miller]
Man, that was a little harsh
おいおい、今のはさすがにちょっとキツすぎたな
※マック・ミラーの最大の魅力である「内省」と「優しさ」が瞬時に現れる瞬間。暴言を吐いた直後に「言いすぎた」と反省するこの人間臭さこそが、彼が世界中から愛され、サンダーキャットが彼を深く慕った理由である。
You're just lost
君はただ迷子になってるだけなんだよね
※相手を「ビッチ」から「迷子(lost)」へと再定義する。彼自身もまた、名声の波の中で迷子になっていた(『Swimming』などのテーマ)ため、彼女に対する深い共感と憐れみが生まれている。
But I'm here to find you
でも、俺が君を見つけてあげるからさ
※底知れぬ包容力。この一言により、単なるヘイトソングから、傷ついた者同士の救済の歌へと見事に昇華されている。
[Pre-Chorus: Thundercat]
Ooh-ooh-ooh
ウー
Ooh-ooh-ooh-ooh
ウー
Ooh-ooh-ooh
ウー
Ooh-ooh-ooh-ooh
ウー
[Chorus: Mac Miller & Thundercat]
She (Ooh-wee) way out of my league, can't buy her love (Baby)
彼女は(ウー・ウィー)俺には高嶺の花すぎて、愛はお金じゃ買えないんだ(ベイビー)
(Can't buy her love, ooh-wee)
(愛は買えないのさ、ウー・ウィー)
All the books she read, she know way too much
彼女はいろんな本を読んでてさ、ちょっと知りすぎてるんだよね
(She knows way too much)
(彼女は知りすぎてるんだ)
Girl, don't know me, you don't know enough (Baby)
なあ、君は俺のことを分かってない、全然分かっちゃいないんだ(ベイビー)
(She don't know me)
(彼女は俺を知らない)
Said (Ooh-wee), if you don't know me, you don't know enough (Baby)
言っただろ(ウー・ウィー)、俺を知らないなら、君は何も分かっちゃいないって(ベイビー)
(She don't know me)
(彼女は俺を知らない)
