Artist: Eminem
Album: The Marshall Mathers LP
Song Title: Marshall Mathers
概要
アルバムのタイトルにも冠された本名「マーシャル・マザーズ」をタイトルに据えた、エミネムの最もパーソナルで内省的、かつ激しい怒りに満ちた楽曲である。前作『The Slim Shady LP』の大ヒットにより、彼は一夜にして世界的スターとなったが、それに伴いメディアからのバッシング、同業者からの嫉妬、実の母親からの1000万ドルの名誉毀損訴訟、そして金目当てで群がる親戚たちという「名声の代償」に直面した。本作は、猟奇的なペルソナ「スリム・シェイディ」としてではなく、生身のマーシャル・マザーズとして、当時のポップカルチャー(インシンクやブリトニー・スピアーズ)や、彼を批判したICP(インセイン・クラウン・ポッセ)、さらには彼をセルアウト(商業主義)と非難したアンダーグラウンド・シーンに対して、アコースティックギターの哀愁漂うビートに乗せて痛烈な反撃(アンサー)を叩きつけている。名声と孤独の狭間で苦悩する彼のリアルな感情が刻まれた、ヒップホップ史に残るディストラックにして魂の叫びだ。
和訳
[Intro]
You know, I just don't get it
なぁ、俺にはさっぱり分からねえよ。
※アコースティックギターの静かなイントロに乗せて、エミネムの戸惑いと怒りが語られ始める。
Last year, I was nobody
去年まで、俺は誰でもないただの無名な男だった。
This year, I'm selling records
今年は、レコードが飛ぶように売れてる。
※『The Slim Shady LP』の歴史的なメガヒットを指す。
Now everybody wants to come around like I owe 'em somethin'
そしたら今じゃ、誰も彼もが「俺がそいつらに借りでもある」かのように群がってきやがる。
※成功した途端に擦り寄ってくる親戚や自称「友人」たちへの嫌悪感。
The fuck you want from me?
俺に何を求めてるってんだ?
Ten million dollars?
1000万ドル(約15億円)か?
※実の母親デビー・マザーズが、前作の歌詞で名誉を傷つけられたとしてエミネムを相手に起こした1000万ドルの巨額訴訟への直接的な言及。
Get the fuck outta here
さっさと失せやがれ。
[Chorus]
You see, I'm just Marshall Mathers (Marshall Mathers)
分かるか、俺はただの「マーシャル・マザーズ」なんだ(マーシャル・マザーズ)。
※スリム・シェイディという狂気のキャラクターではなく、一人の等身大の人間であるという宣言。
I'm just a regular guy, I don't know why all the fuss about me (Fuss about me)
俺はただの普通の男さ。なんで俺のことでこんなに大騒ぎしてるのか分からねえよ(大騒ぎしてるのか)。
Nobody ever gave a fuck before, all they did was doubt me (Did was doubt me)
昔は誰も俺のことなんて気にしちゃいなかった。連中はただ、俺を疑ってただけだ(疑ってただけだ)。
※アンダーグラウンド時代、白人であることやスタイルを理由に見下されていた過去の鬱屈。
Now everybody wanna run they mouth and try to take shots at me (Take shots at me)
なのに今じゃ、誰も彼もがデカい口を叩いて、俺を攻撃(テイク・ショット)しようとしてきやがる(攻撃しようとしてきやがる)。
※「Take shots」は銃撃することと、批判・ディスすることのダブルミーニング。
[Verse 1]
Yo
ヨォ。
You might see me joggin', you might see me walkin'
俺がジョギングしてるのを見るかもしれないし、歩いてるのを見るかもしれない。
※ここから、彼が抱える「普通の生活(プライバシー)」が崩壊したことへの皮肉な妄想が始まる。
You might see me walkin' a dead Rottweiler dog
あるいは、俺が死んだロットワイラー犬を散歩させてるのを見るかもな。
With its head chopped off in the park with a spiked collar
頭を切り落とされて、トゲ付きの首輪をつけた犬を、公園でな。
Hollerin' at him 'cause the son of a bitch won't quit barkin' (Ruff ruff)
そいつに向かって怒鳴り散らしてるのさ、あのクソ犬が吠えるのをやめねえからな(ワンワン!)。
※死んだ犬が吠えるはずがないという、スリム・シェイディ的な不条理で猟奇的なブラックジョーク。メディアが自分を「狂人」として扱うなら、その期待通りに狂った振る舞いをしてやるという皮肉。
Or leanin' out a window with a cocked shotgun
あるいは、撃鉄を起こしたショットガンを構えて、窓から身を乗り出してる姿を見るかもな。
Drivin' up the block in the car that they shot Pac in
2Pacが撃たれたあの車に乗って、街を流してる姿をさ。
※1996年に2Pacが暗殺された際に乗っていたBMW 750iLを引き合いに出し、ヒップホップ界の悲劇と自分を重ね合わせている。
Lookin' for Big's killers, dressin' ridiculous
ビギー(ノトーリアス・B.I.G.)を殺した犯人を捜しながら、バカみたいな服を着てな。
Blue and red, like I don't see what the big deal is
青と赤の服さ。それがどれだけヤバいことか分かってないみたいにな。
※「青(クリップス)」と「赤(ブラッズ)」は、ロサンゼルスの二大敵対ギャングのシンボルカラー。両方の色を同時に着るという自殺行為を描写し、自分がヒップホップの歴史的抗争(東西抗争)のただ中に無自覚に放り込まれているような危うさを表現している。
Double barrel 12-gauge bigger than Chris Wallace
クリス・ウォレス(ビギーの本名)よりもデカい、12ゲージのダブルバレル・ショットガンを抱えてる。
Pissed off 'cause Biggie and Pac just missed all this
俺はブチギレてるんだ。だってビギーと2Pacは、この現状を見逃しちまったからな。
※偉大な2人のレジェンドが死んだ後、ヒップホップシーンが腐敗していくのを見る彼らの無念を代弁している。
Watchin' all these cheap imitations get rich off 'em
安っぽいパクリ野郎どもが、あいつらのスタイルをパクって金持ちになっていくのを見てる。
And get dollars that shoulda been theirs like they switched wallets
まるで財布をすり替えたみたいに、本来あいつら(2Pacとビギー)のモノになるはずだった金をせしめてやがる。
※パフ・ダディ(P・ディディ)などの、レジェンドの死を商業的に利用して成功したメインストリームのアーティストたちへの強烈な批判。
And amidst all this Crist' poppin' and wristwatches
クリスタル(高級シャンパン)の栓を抜き、高級時計を見せびらかす、こんな状況の真っただ中で、
I just sit back and just watch and just get nauseous
俺はただ深く座り込んで、ただそれを眺め、ただ吐き気を催してるのさ。
And walk around with an empty bottle of Rémy Martin
そして、空っぽのレミー・マルタン(コニャック)のボトルを持って歩き回る。
Startin' shit like some twenty-six-year-old skinny Cartman (Goddamn it!)
いざこざ(喧嘩)を吹っ掛けて回るんだ、26歳のガリガリなカートマンみたいにな(クソッたれ!)。
※アニメ『サウスパーク』の毒舌で自己中心的なキャラクター「エリック・カートマン」に自分を例えている。カートマンの声真似(Goddamn it!)も入っている。
An anti-Backstreet and Ricky Martin
バックストリート・ボーイズとリッキー・マーティンのアンチ(対極の存在)さ。
※当時一世を風靡していた健全なポップスターたちへの宣戦布告。
Whose instinct's to kill *NSYNC, don't get me started
インシンク(*NSYNC)を殺すのが本能なんだよ。俺を怒らせるな。
※『The Real Slim Shady』でもディスったボーイズグループへの執拗な攻撃。
These fuckin' brats can't sing and Britney's garbage
このクソガキどもは歌えもしねえし、ブリトニー(・スピアーズ)はゴミだ。
What's this bitch, retarded? Give me back my sixteen dollars!
このビッチはどうなってんだ、知恵遅れか? 俺の16ドル(CD代)を返しやがれ!
※ティーンエイジャー向けのポップカルチャーが音楽市場を独占していることへの、ヒップホップMCとしてのリアルな嫌悪感。
All I see is sissies in magazines smilin' (Hee-hee!)
雑誌を開けば、女々しい野郎ども(シッシーズ)がヘラヘラ笑ってるのを見るだけだ(ウフフ!)。
Whatever happened to wilin' out and bein' violent?
狂ったように暴れ回る(ウィリン・アウト)ことや、暴力的になるってカルチャーはどうなっちまったんだ?
※かつてのN.W.AやWu-Tang Clanのような、反抗的で危険なヒップホップの精神が失われ、音楽業界全体が牙を抜かれたポップスに迎合していることへの嘆き。
Whatever happened to catchin' a good old-fashioned passionate ass-whoopin'
古き良き、情熱的な「ケツの蹴り上げ(アホほどブチのめされること)」を食らって、
And gettin' your shoes, coat and your hat tooken?
靴も、コートも、帽子も全部奪い取られる(カツアゲされる)ってのはどうなっちまったんだ?
※「tooken」は「taken」のストリートな言い回し。ゲットーの過酷なストリートのリアリティ(暴力や強盗)こそがヒップホップのルーツであったはずだと主張している。
New Kids on the Block suck a lot of dick
ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック(元祖ボーイズグループ)は、クソほどダサい(男のイチモツをしゃぶってる)。
Boy, girl groups make me sick
ボーイズグループも、ガールズグループも、俺をウンザリさせるぜ。
And I can't wait 'til I catch all you faggots in public
お前らオカマ野郎どもを、公の場(パブリック)で捕まえるのが待ちきれねえよ。
I'ma love it (Hahaha)
最高に楽しんでやるからな(ハハハ)。
Vanilla Ice don't like me (Uh-uh), he said some shit in Vibe to spite me (Yo)
ヴァニラ・アイスは俺のことが嫌いらしい(ううん)。雑誌『Vibe』で俺をコケにするようなことを言いやがった。(ヨォ)
※90年代初頭に大ヒットした白人ラッパー、ヴァニラ・アイスとのビーフへの言及。ヴァニラ・アイスはエミネムのことを「作られた存在だ」と批判していた。
Then went and dyed his hair just like me (Haha)
そのくせ、あいつは俺と全く同じように髪を金髪に染めやがったんだぜ(ハハッ)。
A bunch of little kids wanna swear just like me
大勢の小さなガキどもが、俺みたいに汚い言葉(スラング)を吐きたがってて、
And run around screamin' "I don't care, just bite me!" (Na-na)
「知ったこっちゃねえ、俺に噛みつきな(くたばれ)!」って叫びながら走り回ってるのさ(ナナッ)。
I think I was put here to annoy the world
俺は、この世界をイラつかせるためにここに送り込まれたんだと思うぜ。
And destroy your little four-year-old boy or girl
そして、お前らの4歳の小さな息子や娘を破壊(悪影響を与える)するためにな。
※自分を社会悪として扱うPTAやメディアに対する、最高にタチの悪い煽り。
Plus I was put here to put fear in faggots who spray Faygo Root Beer
それに俺は、フェイゴ(Faygo)のルートビアを撒き散らすオカマ野郎どもに、恐怖を植え付けるためにここにいるんだ。
※ここから、デトロイトのホラーコア・ヒップホップデュオ「ICP(Insane Clown Posse)」への名指しの超強烈なディスが始まる。ICPはライブでフェイゴ(デトロイト発祥の安い炭酸飲料)を観客にぶちまけるパフォーマンスで知られている。
And call themselves clowns 'cause they look queer (Hehe)
あいつらは見た目が変態(クィア)だからって、自分のことを「ピエロ(クラウン)」って呼んでやがる(ヘヘッ)。
Faggy 2 Dope and Silent Gay
「ファギー(オカマ)・2・ドープ」と「サイレント・ゲイ」さ。
※ICPのメンバーである「Shaggy 2 Dope」と「Violent J」の名前を、小学生レベルの同性愛嫌悪ワードで小馬鹿にしてもじっている。
Claimin' Detroit, when y'all live twenty miles away (Fuckin' punks)
自分たちは「デトロイト出身だ(レペゼン・デトロイト)」って主張してるが、お前らそこから20マイル(約32キロ)も離れた郊外に住んでるじゃねえか(クソ野郎どもが)。
※ICPが実際にはデトロイトの過酷なインナーシティ(ゲットー)ではなく、安全な郊外に住みながらストリートを気取っている(フェイクである)ことを暴露する、ヒップホップにおいて最も致命的な「リアルさ」の欠如への攻撃。
And I don't wrestle, I'll knock you fuckin' faggots the fuck out
俺はプロレスなんかやらねえ。お前らクソオカマ野郎どもを、本気でぶちのめして(ノックアウトして)やるよ。
※ICPは当時、プロレス団体(WCWやWWF)に出場してプロレスラーとしても活動していた。それを「フェイクのエンタメ」として嘲笑している。
Ask 'em about the club they was at when they snuck out
あいつらがコソコソ逃げ出したクラブでのこと、あいつらに聞いてみな。
※エミネムとD12のメンバーがデトロイトのクラブでICPと遭遇した際のリアルな乱闘騒ぎ(ビーフ)のエピソード。
After they ducked out the back when they saw us and bugged out (Ah!)
あいつら、俺たちの姿を見た途端にビビり散らして(バグって)、裏口から逃げ出した後にな(アァ!)。
Ducked down and got paintballs shot at they truck — blaow!
身を屈めて逃げるあいつらのトラックに、ペイントボール(サバイバルゲームの銃)をブッ放してやったんだ ——ブラウ!
※実際にエミネム側が逃げるICPの車にペイントボールを撃ち込んだというストリートの武勇伝。
Look at y'all runnin' your mouth again
ほら見ろ、お前らまたデカい口を叩いてやがるな。
When you ain't seen a fuckin' mile road south of 10
「10マイル・ロード」から南の道を、一度も見たことがねえくせにな。
※デトロイトの地理を用いた痛烈なディス。デトロイトの「8マイル・ロード(8 Mile Road)」は白人の郊外と黒人のゲットーを分ける境界線として有名だが、エミネムは「ICPはさらに安全な北側の10マイルより南(危険なエリア)にすら来たことがないフェイクだ」と非難している。
And I don't need help from D12 to beat up two females
それに、2人のメス(女)をぶちのめすのに、D12の助けなんて必要ねえよ。
※ICPを「女(females)」扱いし、自分1人で十分だと一蹴している。
In make-up who may try to scratch me with Lee Nails
リー・ネイル(安物の付け爪)で俺を引っ掻こうとしてくるような、化粧(メイク)をした女どもをな。
※ICPのピエロメイクを「女の化粧」に例え、彼らの攻撃を「女の引っ掻き合い」レベルだと嘲笑している。
"Slim Anus"? You damn right, slim anus
「スリム・アヌス(細いケツの穴)」だと? ああ、その通りだよ。「スリム・アヌス」さ。
※ICPがエミネムへのディス曲『Slim Anus』をリリースしたことへのアンサー。
I don't get fucked in mine like you two little flamin' faggots
俺のケツの穴は、お前ら2人の燃え上がるような(どぎつい)オカマ野郎どもみたいに、男に掘られ(Fuckされ)たりしねえからな。
※相手のディス曲のタイトルをそのまま逆手にとり、「俺のケツの穴が細い(スリム)なのは、お前らみたいに男とヤッてない(拡張されていない)からだ」という、論理的かつ下品極まりない完璧なカウンターパンチでICPとのビーフにトドメを刺している。Geniusでもエミネムのディス・スキルを象徴するラインとして絶賛されている。
[Chorus]
'Cause I'm just Marshall Mathers (Marshall Mathers)
だって俺は、ただの「マーシャル・マザーズ」なんだからな(マーシャル・マザーズ)。
I'm not a wrestler guy, I'll knock you out if you talk about me (Talk about me)
俺はプロレスラーじゃねえ。俺の陰口を叩くなら、本気でぶちのめすぞ(陰口を叩くなら)。
※ICPへの警告。
Come and see me on the streets alone if you assholes doubt me (Assholes doubt me)
俺のことを疑う(フェイクだと思ってる)クソ野郎どもは、ストリートに一人で会いに来いよ(疑うなら)。
And if you wanna run your mouth, then come take your best shot at me (Best shot at me)
デカい口を叩きたいんなら、俺に向かって最高のショット(銃弾/ディス)を撃ち込んでみろよ(撃ち込んでみろよ)。
[Verse 2]
Is it because you love me that y'all expect so much of me?
お前らが俺にこんなに多くを期待するのは、俺を愛してるからか?
※ここから、彼をセルアウト(商業主義に魂を売った)と非難するアンダーグラウンドのヒップホップ・シーンへの怒りが語られる。
You little groupie bitch, get off me, go fuck Puffy
このちっぽけなグルーピーのビッチめ、俺から離れろ。パフィー(P・ディディ)とでもヤッてな。
Now because of this blonde mop that's on top
今、俺の頭のてっぺんにある、この金髪のモップ(髪型)のせいで、
Of this fucked up head that I've got, I've gone pop?
このイカれた頭の上に金髪が乗ってるってだけで、俺が「ポップ(大衆向け)」になっちまったってのか?
※エミネムのトレードマークである金髪(ブリーチヘア)がアイドル的なアイコンとして消費されたことで、彼がヒップホップのコアな精神を失ったと批判するインディーズの連中への反論。
The underground just spunned around and did a three-sixty
アンダーグラウンドの連中は、クルッと回って360度態度をひっくり返しやがった。
※売れる前は仲間だと思っていたインディーズの連中が、売れた途端に嫉妬して手のひらを返した(ヘイターになった)ことへの失望。「360度回ったら元の位置に戻る(180度が正しい)」という数学的な間違いは、エミネムが意図的に「連中の頭が混乱している(バカである)」ことを示すために使ったとする解釈もある。
Now these kids diss me and act like some big sissies
今じゃこのガキどもは俺をディスって、デカいオカマ野郎みたいに振る舞ってやがる。
"Oh, he just did some shit with Missy
「あーあ、あいつミッシー(・エリオット)と一緒に曲をやっちゃったよ。
So now he thinks he's too big to do some shit with MC Get-Bizzy"
だから今じゃ、自分はビッグになりすぎたから、『MCゲット・ビジー』みたいな奴とはもう曲をやれないって思ってるんだぜ」
※「MC Get-Bizzy」は架空の無名アンダーグラウンド・ラッパーの名前。エミネムがミッシー・エリオットなどのメインストリームのスターと共演したこと(『Busa Rhyme』など)を理由に「商業主義に魂を売った」と僻むインディーズ・ラッパーの醜い嫉妬を声真似で風刺している。
My fuckin' bitch mom's sued me for ten-million
俺のクソみたいなビッチのオカンは、俺を1000万ドルで訴えやがった。
※ここから、実の母親デビー・マザーズによる巨額の名誉毀損訴訟に対する、世にも恐ろしいアンサーが始まる。
She must want a dollar for every pill I've been stealin'
俺が今まで盗んできたピル(薬)1錠につき、1ドルずつ要求してるつもりなんだろうな。
Shit, where the fuck you think I picked up the habit?
クソッ、俺がその(薬物を盗む)癖をどこで覚えたと思ってるんだ?
All I had to do was go in her room and lift up her mattress
俺がやるべきことはただ一つ、オカンの部屋に入って、オカンのマットレスをひっくり返すことだけだったんだよ。
※母親自身が重度の薬物依存症であり、彼女がマットレスの下に隠していた大量の処方薬を幼いエミネムが盗んで飲んでいたという、極めてダークでリアルな家庭環境の暴露。母親が「息子の名誉毀損」を訴えることの矛盾を、動かぬ事実で粉砕している。
Which is it, bitch: Mrs. Briggs or Ms. Mathers?
どっちなんだよビッチ、「ミセス・ブリッグス」か、それとも「ミズ・マザーズ」か?
※母親デビーが頻繁に結婚と離婚を繰り返していたこと(ブリッグスは元夫の姓)を揶揄し、彼女の人生の不安定さを批判している。
It doesn't matter, [your attorney Fred Gibson’s a] faggot
まあどっちでもいいさ、[アンタの弁護士のフレッド・ギブソンは]オカマ野郎だ。
※[]内はオリジナル音源では検閲(ミュート)されている。母親の代理人弁護士であったフレッド・ギブソンを実名で名指ししたため、レコード会社が訴訟リスクを恐れて音声を消した。
Talkin' about I fabricated my past
俺が自分の過去(過酷な生い立ち)を「捏造(ファブリケイト)した」なんて言いやがって。
He's just aggravated I won't ejaculate in his ass (Ugh!)
あいつはただ、俺があいつのケツの中に射精(エジャキュレイト)してやらないから腹を立ててる(アグラヴェイト)だけさ(オゲッ!)。
※「fabricated」「aggravated」「ejaculate」の完璧な多音節韻。母親の弁護士に対する、小学生レベルの下品極まりないディス。
So tell me, what the hell is a fella to do?
だから教えてくれよ、一体どうすりゃいいってんだ?
※ここから、富を手に入れた途端に群がってくる親族に対するウンザリした感情が吐露される。
For every million I make, another relative sues
俺が100万ドル稼ぐたびに、また別の親戚が俺を訴えてきやがる。
Family fightin' and fussin' over who wants to invite me to supper
家族どもは、誰が俺を夕食(サッパー)に招待するかで喧嘩して騒ぎ立ててる。
All of a sudden, I got ninety-some cousins (Hey, it's me!)
突然、俺には90人以上もの「いとこ」ができちまったんだ(「やあ、俺だよ!」)。
※無名時代には見向きもしなかった赤の他人が、成功した途端に「いとこ」を名乗って金をせびりに来るという、成り上がったスターのリアルな苦悩。
A half-brother and sister who never seen me
俺の顔すら見たことがなかった異母兄弟や異母姉妹たち。
Or even bothered to call me until they saw me on TV
俺をテレビで見るまで、電話一本よこそうともしなかった奴らさ。
Now everybody's so happy and proud
今じゃ、誰も彼もが俺のことを大喜びして、誇りに思ってやがる。
I'm finally allowed to step foot in my girlfriend's house (Hey!)
俺はようやく、彼女(キム)の家に足を踏み入れることを許されたんだからな(ヘイ!)。
※キムの家族からも、エミネムが貧乏だった時代は交際を反対され、家から追い出されていたという過去。
And then to top it off I walked to the newsstand
そして極めつけに、俺はニューススタンド(売店)に歩いて行って、
To buy this cheap-ass little magazine with a food stamp
フードスタンプ(低所得者向けの食料配給券)で、この安っぽい三流雑誌を買ってやったのさ。
※ヒップホップ雑誌『XXL』のこと。彼らが無名時代のエミネムを評価しなかった過去に対する復讐のエピソード。
Skipped to the last page, flipped right fast
最後のページまで飛ばして、すごい勢いでページをめくった。
And what do I see? A picture of my big white ass
そこで俺が何を見たと思う? 俺のデカくて白いケツの写真さ。
※『XXL』誌がエミネムの人気に便乗し、彼がライブ中にケツを出した写真を無断で掲載したことへの言及。
Okay, let me give you motherfuckers some help (Uh, here!)
オーケー、お前らクソ野郎どもに少し手を貸してやるよ(ほら、受け取れ!)。
"XXL! XXL!"
「XXL! XXLだぜ!」
※雑誌名を連呼し、宣伝してやるという皮肉。
Now your magazine shouldn't have so much trouble to sell
これで、お前らの雑誌も売るのにそこまで苦労しなくなるだろ。
※エミネムの名前を出せば本が売れる(エミネムに依存している)というメディアの浅ましさを嘲笑っている。
Aw, fuck it, I'll even buy a couple myself
あーあ、クソくらえ。俺自身で何冊か買ってやるよ。
※自分を批判していたメディアすらも、自分の圧倒的な影響力と富の前に屈服させてしまったという、王者の余裕と虚無感。
[Chorus]
'Cause I'm just Marshall Mathers (Marshall Mathers)
だって俺は、ただの「マーシャル・マザーズ」なんだからな(マーシャル・マザーズ)。
I'm just a regular guy, I don't know why all the fuss about me (Fuss about me)
俺はただの普通の男さ。なんで俺のことでこんなに大騒ぎしてるのか分からねえよ(大騒ぎしてるのか)。
Nobody ever gave a fuck before, all they did was doubt me (Did was doubt me)
昔は誰も俺のことなんて気にしちゃいなかった。連中はただ、俺を疑ってただけだ(疑ってただけだ)。
Now everybody wanna run they mouth and try to take shots at me (Take shots at me)
なのに今じゃ、誰も彼もがデカい口を叩いて、俺を攻撃しようとしてきやがる(攻撃しようとしてきやがる)。
Because I'm just Marshall Mathers (Marshall Mathers)
だって俺は、ただの「マーシャル・マザーズ」なんだからな(マーシャル・マザーズ)。
I'm just a regular guy, I don't know why all the fuss about me (Fuss about me)
俺はただの普通の男さ。なんで俺のことでこんなに大騒ぎしてるのか分からねえよ(大騒ぎしてるのか)。
Nobody ever gave a fuck before, all they did was doubt me (Did was doubt me)
昔は誰も俺のことなんて気にしちゃいなかった。連中はただ、俺を疑ってただけだ(疑ってただけだ)。
Now everybody wanna run they mouth and try to take shots at me (Take shots at me)
なのに今じゃ、誰も彼もがデカい口を叩いて、俺を攻撃しようとしてきやがる(攻撃しようとしてきやがる)。
※名声の持つ二面性(狂気と孤独)を抱えたまま、一人の人間「マーシャル・マザーズ」としての魂の叫びがフェードアウトしていく。
