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Remember Me? - Eminem (feat. RBX & Sticky Fingaz) 【和訳・解説】

Artist: Eminem (feat. RBX & Sticky Fingaz)

Album: The Marshall Mathers LP

Song Title: Remember Me?

概要

ヒップホップ史に残る名盤『The Marshall Mathers LP』の中でも、異質の凶暴性を放つハードコア・トラック。客演には、ドクター・ドレーの歴史的名盤『The Chronic』で暗躍したRBXと、90年代の東海岸を代表するゴリゴリのハードコア・グループOnyxのフロントマンであるスティッキー・フィンガーズ(Sticky Fingaz)という、東西の狂犬MCを招聘している。コーラス部分では、3人がそれぞれ過去の自身のクラシック楽曲のパンチラインを自己引用し「俺を覚えているか?(Remember me?)」とリスナーを威圧するコンセプチュアルな構成となっている。特にエミネムのヴァースでは、コロンバイン高校銃乱射事件を極めて不謹慎なブラックジョークに昇華し、自身を社会悪のスケープゴートに仕立て上げたビル・クリントン大統領やメディアへの怒りを、凄まじい多音節韻(マルチシラブル)の連打で粉砕している。ダークで重厚なビートの上で、3人の狂気が三つ巴となって激突する名曲である。

和訳

[Chorus: RBX]

Remember me? (Seven executions)
俺を覚えてるか?(7つの死刑執行)
※RBXがDr. Dreのアルバム『The Chronic』(1992年)に収録された「The Day the Niggaz Took Over」で放ったフレーズの自己引用。以降のコーラスもすべて過去の自身の名ラインからのサンプリングである。

Remember me? (I have no remorse)
俺を覚えてるか?(俺に後悔などない)
※同じく「The Day the Niggaz Took Over」からの引用。

Remember me? (I'm high-powered)
俺を覚えてるか?(俺はハイ・パワードだ)
※同じく『The Chronic』収録のドレーとの共演曲「High Powered」からの引用。

Remember me? (I drop bombs, like Hiroshima)
俺を覚えてるか?(広島のように爆弾を投下するぜ)
※同じく『The Chronic』収録の「Let Me Ride」でのRBXの客演ラインからの引用。

[Verse 1: RBX]

For this one, they scream "X, you retarded!?"
この曲を聴けば、連中は「X(RBX)、お前イカれてんのか!?」って叫ぶだろうな
※「retarded」は本来「知的障害」を指す言葉だが、ヒップホップ・スラングでは「常軌を逸してヤバい」という意味で使われる。

'Cause I grab the mic and get down like syndrome
だって俺がマイクを握れば、シンドローム(症候群)みたいにゲット・ダウン(暴れる・落ちる)するからさ
※「ダウン症(Down syndrome)」と「Get down(本気でやる、ブチかます)」を掛けた、倫理観スレスレのワードプレイ。

Hide and roam into the masses
大衆の中に隠れ、そして彷徨い歩く

Without boundaries, which qualifies me
境界線なんざねえ、それが俺に資格を与えるんだ

For the term "universal" without no rehearsal
リハーサルなしで「ユニバーサル(宇宙規模・普遍的)」と呼ばれる資格をな

I leak words that's controversial
物議を醸すような(コントロヴァーシャル)言葉を漏らしてやるよ

Like I'm not the one you wanna contest, see
俺はお前らが勝負(コンテスト)を挑みたい相手じゃないってことだ、分かるか?

'Cause I'll hit your ass like the train did that bitch
だって俺は、あのビッチを轢き殺した電車みたいに、お前を激突して吹っ飛ばすからな

That got banned from TV, heavyweight getup
テレビ放送禁止(banned from TV)になった、ヘビー級の体格をしたあの女をな
※90年代後半にアメリカで流通していた、残酷な事故映像などを集めたアンダーグラウンドのショック・ドキュメンタリー・ビデオシリーズ『Banned from Television』への言及。その中で体重の重い女性が電車に撥ねられる凄惨な映像があり、RBXは自分のラップの破壊力をその衝撃映像に例えているというディープな解説ポイント。

Hit you, watch your whole head split up
お前をブチのめして、頭蓋骨が真っ二つに割れるのを眺めてやる

Loco is the motion, we comin' through
狂気(ロコ)が俺たちの原動力だ、今からそこを通るぜ

Hollow-tips is the lead the .45 threw
ホローポイント弾、それは45口径がブッ放す鉛玉さ
※「ホローポイント弾(Hollow-tips)」は体内に命中すると弾頭が激しく変形・拡張し、致命傷を与える殺傷能力の高い銃弾。

[Chorus: Sticky Fingaz]

Remember me? (Throw ya gunz in the air)
俺を覚えてるか?(銃を宙に放り投げな)
※ここからはSticky Fingazのターン。彼の所属するグループ「Onyx」の1992年のデビュー曲にしてクラシック「Throw Ya Gunz」からの自己引用。

Remember me? (Slam! Slam!)
俺を覚えてるか?(スラム! スラム!)
※Onyxのキャリア最大のメガヒット曲「Slam」(1993年)からの引用。

Remember me? (Nigga, back the fuck up!)
俺を覚えてるか?(おい、さっさと後ろに下がりやがれ!)
※「Throw Ya Gunz」のアウトロで彼が叫ぶアイコニックなシャウトからの引用。

Remember me? (Chka-chka-Onyx)
俺を覚えてるか?(チカ・チカ・オニックス)
※Onyxの楽曲で多用される、彼ら自身のグループ名をスクラッチしたシグネチャーサウンド。

[Verse 2: Sticky Fingaz]

Niggas that take no for an answer get told no
「ノー」と言われて引き下がるような奴らは、永遠に「ノー」と言われ続けるのさ
※Sticky Fingazの持ち味である、暴力的なエネルギーと野心に満ちたヴァースの幕開け。

Yeah, I been told no, but it was more like "No! No! No!"
ああ、俺も「ノー」って言われたことはあるぜ。でもそれは「やめて! やめて! やめて!」って感じのヤツだったがな
※レコード会社からの拒絶の「No」を、女性(または被害者)がレイプや暴行から逃れようと叫ぶ恐怖の「No」に反転させる、ホラーコア的な極悪ジョーク。

Life's a bitch, met her, fuck you if you let her
人生はビッチ(Life's a bitch)だ。そいつに出会って、もしお前がヤラれるがままにしてるなら、くたばっちまえ
※Nasのクラシック「Life's a Bitch」のフレーズを踏まえつつ、「人生という名のビッチを自ら手懐けろ(ヤれ)」と過激にアレンジしている。

Better come better than better to be a competitor
俺の競争相手(コンペティター)になりたいなら、最高よりもさらに最高(ベター)な状態で来ることだな

This vet is ahead of the shit, it's all redder, you deader and deader
このベテランはお前らのはるか先を行ってる。辺り一面真っ赤に染まり、お前らは死人に次ぐ死人(デッダー)になる
※「better」「competitor」「vet is」「ahead of」「redder」「deader」という、怒涛の「-edder」サウンドでの脚韻の連打。

A medic instead of the cheddars and credda
お前らに必要なのは金(チェダー)や名声(クレド)じゃねえ、衛生兵(メディック)だ

Settle vendetta with metal Beretta from ghetto to ghetto
ゲットーからゲットーへ、金属のベレッタ(拳銃)で復讐(ヴェンデッタ)にケリをつける(セトル)
※「medic」「cheddars」「credda」「Settle」「vendetta」「metal Beretta」「ghetto」と、信じられない密度で多音節韻を叩き込んでいる。エミネムが彼を客演に呼んだ理由がよく分かる、圧倒的なライムスキル。

Evidence, nope, never leave a shred of
証拠(エヴィデンス)だと? いや、一片たりとも残しちゃいねえよ

I got the soul of every rapper in me, love me or hate me
俺の中には、あらゆるラッパーの魂が宿ってるんだ。俺を愛そうが憎もうがな

My mom's got raped by the industry and made me
俺のオカンは音楽業界(インダストリー)にレイプされて、俺を産み落としたのさ
※自分のヒップホップにおけるルーツが、搾取と腐敗に満ちたレコード業界の闇から生まれた私生児であるという、業界への強烈な皮肉を込めたメタファー。

I'm the illest nigga ever, I told you
俺は史上最高にヤバい(イルな)黒人だ、言っただろ

I get more pussy than them dyke bitches Total
トータル(Total)のあのレズ(ダイク)のビッチどもよりも、俺の方が女(プッシー)を抱きまくってるぜ
※「Total」はPuff Daddyのレーベル「Bad Boy Records」に所属していたR&Bガールズグループ。彼女たちが同性愛者であるというストリートの噂を悪用した、名指しのセクシャルなディス。

Want beef, nigga? Pbbt, you better dead that shit
俺とビーフ(喧嘩)したいだと? プッ、そんな考えはさっさと殺しとく(諦める)こったな

My name should be Can't-Believe-That-Nigga-Said-That-Shit
俺の名前は「あの野郎・あんな事・言ったなんて・信じられねえ(Can't-Believe-That-Nigga-Said-That-Shit)」にするべきだな

Probably sayin' he ain't a killer, but I'm killin' myself
「あいつは人殺しじゃない」なんて言ってる奴らもいるだろうが、俺は(マリファナで)自分自身を殺してる最中だぜ

Smoke death, fuck bitches raw on the kitchen floor
死(強いハッパ)を吸い込み、キッチンの床でビッチどもと生(生ハメ)でヤりまくる

So think what I'ma do to you, have done to you
だから、俺がお前らに何をするか、これまで何をしてきたか考えてみろ

Got niggas in my hood who'd do that shit for a blunt or two
俺のフッド(地元)には、ブラント(大麻)1本か2本のために人殺しだってやる奴らがいるんだぜ

What you wanna do? Cocksuckers, we Glock busters
どうしたいってんだ? クソ野郎ども、俺たちはグロック(拳銃)をブッ放す部隊だぜ

'Till the cops cuff us, gon' start ruckus and drop blockbusters
サツに手錠(カフ)をかけられるまで、大騒ぎ(ラッカス)を起こして、ブロックバスター(特大の爆弾/大ヒット映画)を投下し続けるぜ

Round the clock hustlers, you cannot touch us
24時間体制(ラウンド・ザ・クロック)のハスラーだ、お前らじゃ俺たちには手も足も出ねえよ

I'm gettin' wires, niggas wantin' me dead
俺には盗聴器(ワイヤー)が仕掛けられてる。連中は俺の死を望んでるんだ

Wantin' my head, you think it could be somethin' I said? (Somethin' I said? Somethin' I said?)
俺の首を狙ってやがる。俺が何か言ったから(逆恨みされた)ってか?(俺が何か言ったか? 俺が何か言ったか?)

[Chorus: Eminem]

Remember me? (I just don't give a fuck!)
俺を覚えてるか?(俺はマジで、何も気にしちゃいねえ!)
※エミネムのターン。前作『The Slim Shady LP』収録のクラシック「Just Don't Give a Fuck」からの自己引用。

Remember me? (Yeah, fuck you too!)
俺を覚えてるか?(ああ、お前らもくたばりな!)
※同じく前作収録の「Still Don't Give a Fuck」のアウトロからの引用。

Remember me? (I'm low down and I'm shifty!)
俺を覚えてるか?(俺は下劣で、狡猾な男さ!)
※メジャーデビュー前の『The Slim Shady EP』(1997年)に収録された原点とも言える楽曲「Low Down, Dirty」からの引用。コアなファンにしか分からないディープな自己参照。

Remember me? (I'm Shady!)
俺を覚えてるか?(俺はシェイディだ!)
※前作収録の「I'm Shady」からの引用。

[Verse 3: Eminem & Dr. Dre]

When I go out, I'ma go out shootin'
俺が外に出る(死ぬ)時は、銃をブッ放しながらハデに逝ってやるぜ

I don't mean when I die, I mean when I go out to the club, stupid
あー、「死ぬ時」って意味じゃねえよ。クラブに「出かける時」の話だよ、このバカどもが
※「Go out(死ぬ/出かける)」のダブルミーニング。当時、Puff Daddy(Diddy)とShyneがニューヨークのクラブで銃撃事件を起こしたばかりであり、ヒップホップ界隈のクラブにおける暴力沙汰を皮肉ったタイムリーなブラックジョーク。

I'm tryin' to clean up my fuckin' image
俺は自分のクソみたいなイメージを「クリーン」にしようと努力してんだ

So I promised the fuckin' critics I wouldn't say "fuckin''' for six minutes
だから、クソみたいな批評家どもに約束したのさ。6分間は「クソ(fuckin')」って言葉を使わないってな
※直前の行から「fuckin'」を連発しているため、すでに約束を破っているというギャグ。

(Six minutes, Slim Shady, you're on)
(6分だ、スリム・シェイディ、お前の出番だぜ)
※背後で聞こえるドクター・ドレーの声。これは、ヒップホップの歴史的クラシックであるDoug E. Fresh & Slick Rickの楽曲「The Show」(1985年)の有名なイントロ「Six minutes, Doug E. Fresh, you're on」のオマージュ。ドレーがスリック・リックの声真似をしている。

My baby's mom, bitch made me an angry blonde
俺の子供の母親(妻キム)、あのビッチが俺を「怒れる金髪(アングリー・ブロンド)」に変えちまったんだ

So I made me a song, killed her and put Hailie on
だから俺は曲を作って、あいつを殺して、娘のヘイリーを曲に参加(共犯に)させたのさ
※前作『The Slim Shady LP』に収録された、妻を殺して遺体を娘と一緒に湖に捨てるという恐るべき楽曲「'97 Bonnie & Clyde」のこと。自身の最大の批判の的となったスキャンダルを悪びれずにドヤ顔で振り返っている。

I may be wrong, I keep thinkin' these crazy thoughts
俺が間違ってるのかもしれねえ。こんなイカれた考えばかりが浮かんでくる

In my cranium, but I'm stuck with a crazy mom
俺の頭蓋骨(クラニウム)の中でな。だが、俺はイカれたオカンに縛り付けられてるんだから仕方ねえ

(Is she really on as much dope as you say she's on?)
(お前が言ってる通り、お前のオカンは本当にそれほどヤク漬けなのか?)
※ドクター・ドレーからの問いかけ。エミネムが「自分の狂気は母親のドラッグ乱用と虐待のせいだ」と公言し、母親から1000万ドルの名誉毀損で訴えられていたリアルな裁判沙汰へのメタ的な言及。

Came home and somebody musta broke in the back window
家に帰ったら、誰かが裏の窓を割って侵入したに違いねえ

And stole two loaded machine guns and both of my trench coats
そして、弾の装填された2丁のマシンガンと、俺のトレンチコートを2着とも盗みやがったんだ
※1999年に起きたアメリカ犯罪史に残る悲劇「コロンバイン高校銃乱射事件」への言及。犯人の少年2人が「トレンチコート・マフィア」と自称し、銃を乱射した事件。エミネムは「犯人たちは俺の家から武器とコートを盗んだんだ」と嘘ぶくことで、若者の犯罪の責任をすべて音楽(エミネム)に押し付けようとする社会やメディアのスケープゴート作りを究極のブラックジョークで痛烈に皮肉っている。Reddit等でも「最も不謹慎だが、最も賢い反論」として語り草になっているライン。

Six sick dreams of picnic scenes
ピクニックの風景を描いた、6つの病的な(シック)夢

Two kids, sixteen, with M-16s and ten clips each
16歳の2人のガキが、M-16アサルトライフルと10個ずつの弾倉(クリップ)を持って

And them shits reach through six kids each
その弾丸が、それぞれ6人のガキどもを貫通していく(リーチ)
※コロンバイン事件の惨劇を冷酷に描写しているが、ここで注目すべきは異常なライミング。「Six / sick / picnic / kids / sixteen / M-16s / clips / reach / six」と、SとK、そしてIの短母音を信じられない密度で踏み続けている。エミネムのキャリアの中でも屈指の「超絶技巧のマルチシラブル」として言語学的に評価される奇跡的な数行である。

And Slim gets blamed in Bill Clint's speech to fix these streets?
で、このストリートを浄化(フィックス)するためのビル・クリントンのスピーチで、なぜか俺(スリム)が非難されるってのか?
※当時のビル・クリントン大統領が銃規制や青少年犯罪への対策スピーチの中で、ハリウッド映画やエミネムのような暴力的なエンターテインメントを名指しで非難したことへの直接的な怒り。政治家が銃規制(NRAへの忖度)という根本的な問題を避け、エンタメをスケープゴートにしている偽善を暴いている。

Fuck that! Pbbt, you faggots can vanish to volcanic ash
クソくらえだ! プッ、お前らオカマ野郎どもは火山の灰(アッシュ)にでもなって消え失せろ

And reappear in hell with a can of gas and a match
そして、ガソリンの缶(キャン)とマッチを持って、地獄に再登場しやがれ

Aftermath, Dre, grab the gat, show 'em where it's at
アフターマス(レーベル名)だ。ドレー、銃(ガット)を掴め。奴らに俺たちの居場所(実力)を見せつけてやれ
※恩師ドクター・ドレーが主宰するレーベル「Aftermath Entertainment」の威信をかけ、自分を不当に扱う世界へ宣戦布告するアウトロへの見事なパス。

(What the fuck you starin' at, nigga?)
(何ジロジロ見てんだ、このクソ野郎?)
※ドクター・ドレーの凄みのある威圧的な一言で、圧倒的な暴力のヴァースが締めくくられる。

[Outro: Eminem]

Don't you remember me?
俺を覚えてないのか?

Remember me?
俺を覚えてるか?

Remember me?
俺を覚えてるか?

Remember me (Slim Shady)
忘れたとは言わせねえぞ(俺はスリム・シェイディだ)
※エミネムという怪物が、もはや誰にも無視できない存在として世界に刻み込まれたことを証明するアウトロ。