Artist: Eminem
Album: The Marshall Mathers LP
Song Title: The Way I Am
概要
ヒップホップ史に刻まれる名盤『The Marshall Mathers LP』の中でも、エミネムの純粋な「怒り」が最も色濃く反映されたマスターピースである。前作のメガヒットにより、彼は望まぬポップスターの座に押し上げられ、ファンからはプライバシーを侵害され、メディアからは「銃乱射事件の元凶」として非難の的となっていた。さらにレコード会社の重役からは「『My Name Is』のようなキャッチーなリードシングルを作れ」と強要され、その極限のストレスとプレッシャーに対する回答として彼が自らビートを制作し(彼にとって初の単独プロデュース曲)、叩きつけたのが本作である。伝説のラッパー、ラキム(Rakim)のフレーズをコーラスに引用し、全編にわたって三連符(トリプレット)を多用した複雑怪奇な多音節韻をノンストップで吐き出すその姿は、大衆が押し付けるレッテルを破壊する「真のMC」としての凄絶な証明である。
和訳
[Intro]
Man, whatever
あーあ、もうどうでもいいぜ
※溜め息混じりの独白から始まる。レコード会社からの「ポップなヒット曲を作れ」という要求に対するウンザリした心境の表れ。
Dre, just let it run
ドレー、そのまま流してくれ
※エミネム自身がプロデュースした陰鬱で不穏な鐘の音のビート。恩師であるドクター・ドレーに録音を回し続けるよう指示している。
Ayo, turn the beat up a little bit
エイヨォ、ビートの音量をもう少し上げてくれ
Ayo
エイヨォ
This song is for anyone
この曲は誰に向けたものかっていうと
Fuck it, just shut up and listen
いや、クソくらえだ。とにかく黙って聴きやがれ
Ayo
エイヨォ
[Verse 1]
I sit back with this pack of Zig-Zags and this bag of this weed
ジグザグの箱とハッパの袋を抱えて、深く椅子に座り込む
※「Zig-Zags」は有名な大麻用の巻紙ブランド。極限のストレスを麻薬で和らげようとしている。
It gives me the shit needed to be the most meanest MC on this—
こいつらが、この地球上で最高に意地悪なMCになるために必要なモン(インスピレーション)をくれるんだ
On this Earth, and since birth, I've been cursed with this curse to just curse
この地球上でな。俺は生まれた時から、ただ悪態をつく(カース)ための呪い(カース)にかけられてるのさ
※「curse」という単語の「呪い」と「悪態(汚い言葉)」というダブルミーニングを利用した同音異義のライム。Redditの考察界隈でも、エミネムの言語感覚の異常さを示すラインとして頻繁に引用される。
And just blurt this berserk and bizarre shit that works
そして、この狂ってて(バーサーク)奇妙な(ビザール)戯言をただぶちまける。それが上手くいく(売れる)んだ
And it sells and it helps in itself to relieve
それが売れることで、俺自身を解放する手助けにもなってる
All this tension, dispensin' these sentences
このプレッシャーのすべてをな。これらの文章(リリック)を吐き出すことで、
Gettin' this stress that's been eatin' me recently
最近俺を蝕んでいるこのストレスを
Off of this chest, and I rest again peacefully
胸の奥から吐き出して、ようやくまた安らかに眠れるのさ
※ここまでの8行にわたり、エミネムは三連符(1拍3連)のリズムに完璧に言葉を敷き詰めるという、超絶技巧のフロウを展開している。ヒップホップにおけるフロウの革命と称賛される箇所である。
But at least have the decency in you
だが、せめて最低限の礼儀(デセンシー)くらいはわきまえろ
To leave me alone, when you freaks see me out
お前らイカれた連中(ファン)が、外で俺を見かけた時は放っておいてくれ
※熱狂的なファン(Stanのような存在)による過剰なストーカー行為やプライバシーの侵害に対する怒り。
In the streets when I'm eatin' or feedin' my daughter
ストリートで飯を食ってる時や、娘に飯を食わせてる時にな
※当時のエミネムにとって最大の弱点であり最優先事項であった愛娘ヘイリーとのプライベートな時間を妨害されることへの、父親としてのリアルな激怒。
Do not come and speak to me
俺に話しかけてくるんじゃねえ
I don't know you, and, no, I don't owe you a motherfuckin' thing
俺はお前を知らないし、お前に義理立てする筋合いなんてクソほどもねえんだよ
I'm not Mr. *NSYNC, I'm not what your friends think
俺はインシンク(アイドル)じゃねえ。お前の友達が思ってるような奴じゃないんだ
※「*NSYNC(インシンク)」は当時絶大な人気を誇っていたジャスティン・ティンバーレイク擁するボーイズグループ。ポップスターの枠にはめられ、ファンサービスを強要されることへの強烈な拒絶反応。
I'm not Mr. Friendly, I can be a prick
俺は「ミスター・フレンドリー(愛想のいい奴)」じゃない。クソ野郎にだってなれる
If you tempt me, my tank is on empty
俺を怒らせるな、俺の堪忍袋の緒(タンク)はもう空っぽなんだ
No patience is in me, and if you offend me
忍耐力なんて残っちゃいない。もし俺の気分を害したら、
I'm liftin' you ten feet in the air
お前を宙に10フィート(約3メートル)吊り上げてやる
I don't care who was there and who saw me, just jaw you
そこに誰がいようが、誰が見ていようが知ったこっちゃねえ。お前の顎(ジョー)を砕いてやる
※実際にエミネムがこの曲のリリース直後、デトロイトのクラブで妻キムにキスをした用心棒の男を銃で殴打して逮捕されるという事件を起こしており、この歌詞の暴行予告が単なるフィクションではなかったことが証明されてしまった。
Go call you a lawyer, file you a lawsuit
さっさと弁護士でも呼んで、俺を告訴(ロースーツ)しな
I'll smile in the courtroom, and buy you a wardrobe
俺は法廷で笑いながら、お前に新しい衣装(慰謝料)でも買ってやるよ
※圧倒的な富を得たことで、暴行事件の慰謝料や示談金など痛くも痒くもないという傲慢な成り上がり(成金)の視点。
I'm tired of all you
お前ら全員にもうウンザリなんだよ
I don't mean to be mean
意地悪(mean)をするつもり(mean)はないんだが
※ここでも「mean」の同音異義語を用いた見事な言葉遊び。
But that's all I can be, it's just me
俺はそういう生き方しかできないんだ、これが俺なのさ
[Chorus]
And I am whatever you say I am
そうさ、俺はお前らが「俺はこういう奴だ」と言う通りの存在さ
※このコーラスは、ヒップホップの黄金期を築いた伝説のデュオ、Eric B. & Rakimの1987年の名曲『As the Rhyme Goes On』におけるラキムのフレーズ「I'm the R the A to the K-I-M / If I wasn't, then why would I say I am?」のオマージュ(引用)である。ポップスター扱いされる自分を、ヒップホップの最も神聖なリリックを引用することで「俺は生粋のMCだ」と自己定義している深い考察ポイント。
If I wasn't, then why would I say I am?
もしそうじゃないなら、どうして俺が自分でそうだって言うんだ?
※メディアや大衆が自分に押し付ける「女性蔑視主義者」「悪魔崇拝者」「同性愛嫌悪者」といったレッテルに対し、「お前らがそうやってレッテルを貼るなら、俺は喜んでその悪役(ヴィラン)を演じてやるよ」という究極の皮肉と開き直り。
In the paper, the news, everyday I am
新聞やニュースで、毎日俺のことが書かれてる
(Ha) Radio won't even play my jam
(ハッ)ラジオ局は俺の曲(ジャム)を流そうとすらしないくせにな
※検閲の厳しいラジオ局がエミネムの曲を放送禁止にしながら、ニュース番組では連日彼のスキャンダルを視聴率稼ぎのために大々的に報じているメディアの矛盾を突いている。
'Cause I am whatever you say I am
だって、俺はお前らが「こういう奴だ」と言う通りの存在だからな
If I wasn't, then why would I say I am?
もしそうじゃないなら、どうして俺が自分でそうだって言うんだ?
In the paper, the news, everyday I am
新聞やニュースで、毎日俺のことが書かれてる
(Ha) I don't know, that's just the way I am
(ハッ)知るかよ。それが「俺の在り方(The Way I Am)」なんだから
[Verse 2]
Sometimes I just feel like my father, I hate to be bothered
時々、自分が親父に似てるなって思うよ。邪魔されるのが大嫌いなんだ
※生後すぐに自分を捨てた憎き父親に、他者との関わりを拒絶する自分自身の姿を重ねてしまうという、強烈な自己嫌悪とトラウマの告白。
With all of this nonsense, it's constant
こんな無意味な騒ぎばかりだ、ずっと絶え間なく続く
And, "Oh, it's his lyrical content
「ああ、彼の歌詞(リリカル・コンテンツ)のせいだ
The song "Guilty Conscience" has gotten such rotten responses"
『Guilty Conscience』って曲のせいで、こんなに腐った反響が来てるんだ」なんてな
※前作に収録されたドクター・ドレーとの共演曲『Guilty Conscience』は、強盗やレイプをそそのかす内容だったため、メディアから強烈な非難を浴びていた。
And all of this controversy circles me
こうした論争のすべてが俺の周りを渦巻いてる
And it seems like the media immediately points a finger at me
メディアはすぐに、俺に指を突きつけて非難してきやがる
So I point one back at 'em, but not the index or pinkie
だから俺も奴らに指を突き返してやる。だが、人差し指や小指じゃない
Or the ring or the thumb, it's the one you put up
薬指や親指でもない。お前らが立てる「あの指」さ
When you don't give a fuck, when you won't just put up
一切気に食わねえ時や、我慢ならねえ時に立てる指だ
※メディアに対して中指(ファックサイン)を立てるという宣言。
With the bullshit they pull, 'cause they full of shit too
奴らが引き起こすクソみたいな騒ぎにな。だって奴ら自身がクソまみれなんだから
When a dude's gettin' bullied and shoots up his school
いじめられたガキが、自分の学校で銃を乱射した時
※1999年のコロンバイン高校銃乱射事件への直接的な言及。いじめを苦にした少年2人が同級生を大量虐殺したアメリカ犯罪史に残る悲劇。
And they blame it on Marilyn and the heroin
奴らはそれを、マリリン(・マンソン)やヘロインのせいにしやがる
※事件後、保守派の政治家やメディアは、犯人がロックバンド「マリリン・マンソン」の音楽を聴いていたことを理由に、音楽が事件を引き起こしたと激しい非難キャンペーンを展開した。エミネムはこれに対し「スケープゴートを探しているだけだ」と反論している。この歌詞に共鳴したマリリン・マンソン本人が、後に本作のミュージックビデオにカメオ出演することになる。
Where were the parents at?
親たちは一体どこで何をしてたんだ?
※前曲『Who Knew』のテーマを引き継ぎ、家庭環境や親の教育放棄(ネグレクト)という根本的な問題を棚上げにしてエンタメに責任転嫁する社会の偽善を鋭く突いている。
And look where it's at
それに、事件が起きた場所を見てみろよ
Middle America, now it's a tragedy
ミドル・アメリカ(白人中産階級)の街だ、だから「悲劇」として扱われるんだ
※Geniusでも高く評価される、アメリカの構造的な人種・階級差別を暴いたライン。黒人や低所得者が住むゲットー(インナーシティ)で日々起きている銃犯罪は「日常」として黙殺するくせに、裕福な白人の街(コロラド州コロンバイン)で事件が起きた途端に国を挙げての大騒ぎになるというメディアの偏向報道を痛烈に批判している。
Now it's so sad to see
今になって「なんて悲惨な事件だ」なんて嘆いてやがる
An upper-class city havin' this happenin'
上流階級の街でこんなことが起きるなんて、ってな
Then attack Eminem 'cause I rap this way, but I'm glad
それから「こんなラップをしてるからだ」ってエミネムを攻撃する。でも、俺は嬉しいぜ
'Cause they feed me the fuel that I need for the fire to burn
だって奴らは、俺の炎を燃やすために必要な「燃料(ヘイト)」を注いでくれてるんだからな
※バッシングを受ければ受けるほど、反骨心というエネルギーに変換し、自身のラップがさらに鋭く研ぎ澄まされていくという無敵のメンタリティ。
And it's burnin', and I have returned
そして炎は燃え盛ってる。俺は戻ってきたんだ
[Chorus]
And I am whatever you say I am
そうさ、俺はお前らが「俺はこういう奴だ」と言う通りの存在さ
If I wasn't, then why would I say I am?
もしそうじゃないなら、どうして俺が自分でそうだって言うんだ?
In the paper, the news, everyday I am
新聞やニュースで、毎日俺のことが書かれてる
Radio won't even play my jam
ラジオ局は俺の曲を流そうとすらしないくせにな
'Cause I am whatever you say I am
だって、俺はお前らが「こういう奴だ」と言う通りの存在だからな
If I wasn't, then why would I say I am?
もしそうじゃないなら、どうして俺が自分でそうだって言うんだ?
In the paper, the news, everyday I am
新聞やニュースで、毎日俺のことが書かれてる
(Ha) I don't know, that's just the way I am
(ハッ)知るかよ。それが「俺の在り方」なんだから
[Verse 3]
I'm so sick and tired of bein' admired that I wish that I would just die or get fired
俺は賞賛されること(ポップスター扱い)にウンザリしてて、いっそ死ぬか、クビになればいいとすら思ってる
And dropped from my label, let's stop with the fables
レーベルから契約解除されても構わねえ。作り話(フェイブル)はもうやめようぜ
※前曲の『Steve Berman (Skit)』で描かれた、レコード会社の重役からの「売れる曲を作れ」という理不尽な圧力に対する真っ向からの拒絶。
I'm not gonna be able to top a "My Name Is"
俺は『My Name Is』を超えるような(キャッチーな)曲を作るつもりはねえよ
※デビュー作のリードシングル『My Name Is』のような、ラジオ受けするコミカルでポップな路線を量産しろというレーベルの要求への反発。事実、彼はこの曲を突き返された後、腹いせに『The Real Slim Shady』という究極の皮肉に満ちたポップ・アンセムを書き上げ、結果的にそれが大ヒットするという伝説的なエピソードへと繋がっている。
And pigeon-holed into some poppy sensation
大衆向けのポップなセンセーションの型(ピジョン・ホール)に押し込められて
To cop me rotation at rock 'n' roll stations
ロック(ポップス)のラジオ局で、ヘビーローテーション(頻繁に曲をかけられること)を狙うような真似はな
※自分がヒップホップのMCではなく、白人向けのポップスター(MTVのアイドル)として消費されることへの強い拒否感。
And I just do not got the patience
俺にはもう忍耐力がないんだ
To deal with these cocky Caucasians who think
生意気な白人(コーカシアン)どもの相手をするのにな。奴らはこう思ってやがる
※エミネムのファン層の大部分を占めていた、ヒップホップ文化の背景を理解せずに表面的な過激さだけを消費する郊外の白人層に対する冷徹な視線。
I'm some wigga who just tries to be black
俺のことを、ただ黒人の真似をしようとしてる「ウィガ(Wigga)」だってな
※「Wigga(White + Nigga)」は、黒人のヒップホップ文化やファッションを表面上だけ模倣する白人を揶揄する蔑称。デトロイトの黒人コミュニティの底辺でリアルに育ち、実力でラップスキルを磨き上げてきたエミネムにとって、最も侮辱的なレッテルである。
'Cause I talk with an accent and grab on my balls
俺が訛り(AAVEなどのストリートの口調)で話し、股間を掴むからってな
So they always keep askin' the same fuckin' questions
だから奴らはいつも、同じクソみたいな質問ばかり繰り返す
What school did I go to, what hood I grew up in
「どこの学校に行ってたの? どこのフッド(ゲットー)で育ったの?」
※白人メディアが、彼の生い立ちに「黒人のステレオタイプ」を当てはめようと執拗に身辺調査をしてくることへの苛立ち。
The why, the who, what, when, the where, and the how
「なぜ、誰が、何を、いつ、どこで、どうやって」
'Til I'm grabbin' my hair and I'm tearin' it out (Argh)
自分の髪を掴んで、引き千切りたくなるまでな(アァーッ)
'Cause they drivin' me crazy, I can't take it
奴らが俺を狂わせる。もう耐えられねえ
I'm racin', I'm pacin', I stand, and I sit
思考が暴走(レース)し、部屋を歩き回り(ペース)、立っては座る
And I'm thankful for every fan that I get
もちろん、俺についてくれるすべてのファンには感謝してるぜ
But I can't take a shit in the bathroom without someone standin' by it
だが、トイレでクソ(シット)をすることすらできねえんだ、誰かが横に立ってないとな
※名声によってプライバシーが完全に消滅し、外出先のトイレにまでサインを求めるファンが押し寄せてくる異常な日常のリアリティ。
No, I won't sign your autograph
いや、サインなんてしてやらねえよ
You can call me an asshole, I'm glad
俺のことをクソ野郎(アスホール)とでも呼ぶがいい、そっちの方が清々するぜ
※過剰な期待を押し付けてくるファンや社会との決別宣言。愛想笑いをするスターではなく、憎まれてでも自分を貫くという強烈な意思表示。
[Chorus]
'Cause I am whatever you say I am
だって、俺はお前らが「俺はこういう奴だ」と言う通りの存在だからな
If I wasn't, then why would I say I am?
もしそうじゃないなら、どうして俺が自分でそうだって言うんだ?
In the paper, the news, everyday I am
新聞やニュースで、毎日俺のことが書かれてる
Radio won't even play my jam
ラジオ局は俺の曲を流そうとすらしないくせにな
'Cause I am whatever you say I am
だって、俺はお前らが「こういう奴だ」と言う通りの存在だからな
If I wasn't, then why would I say I am?
もしそうじゃないなら、どうして俺が自分でそうだって言うんだ?
In the paper, the news, everyday I am
新聞やニュースで、毎日俺のことが書かれてる
(Ha) I don't know, that's just the way I am
(ハッ)知るかよ。それが「俺の在り方」なんだから
