Artist: Wu-Tang Clan
Album: Enter the Wu-Tang (36 Chambers)
Song Title: Wu-Tang: 7th Chamber - Pt. II (Conclusion)
概要
本作は、ヒップホップ史に燦然と輝く金字塔『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』の最後を飾るクロージング・トラックである。アルバム中盤に収録された「Wu-Tang: 7th Chamber」のマイクリレーをそのまま活かしつつ、RZAがビートをよりアップテンポでファンキーなドラムブレイクへと大胆に差し替えたリミックス・バージョンとなっている。GZAの「Clan in da Front」のアカペラをイントロに配置し、各MCがオリジナルと同じ高度なリリックを蹴り上げる中で、トラックの違いによって生じる新たなグルーヴを提示している。楽曲の後半(Conclusion)では、当時のラジオインタビューの音源とカンフー映画のサンプリングが交錯し、「ウータンの教えは秘密(他言無用)である」という映画の台詞で見事にオチをつける。そして「自分の首を守れ(Protect Ya Neck)」という最終警告のループと共に、東海岸ハードコア・ヒップホップのルネサンスを決定づけた伝説的アルバムは幕を閉じる。
和訳
[Part I: Wu-Tang: 7th Chamber - Pt. II]
[Intro: The Genius/GZA (from "Clan in Da Front")]
Niggas on the left, brag shit to death
左側の野郎ども、死ぬまで自慢(ブラッグ)しな
※GZAの実質的なソロ曲『Clan in da Front』のコーラス部分のアカペラ・サンプリング。ライブ会場でのコール・アンド・レスポンスを促すアジテーションから始まる。
Now hoods on the right, wild for the night
さあ、右側のフッド(不良)ども、今夜はブッ飛んで騒げ
※「wild for the night」は夜のストリートの決まり文句。
Punks in the back, c'mon and attract to what
後ろのチンピラども、さあ来い、何に惹きつけられてるんだ?
※後方の静かな客も巻き込む挑発。
Clan in da front, let your feet stomp
前方のクラン(仲間)たちよ、足を踏み鳴らせ
※「Stomp(足踏み)」はヒップホップにおけるハードコアなノリ方。
Niggas on the left, brag shit to death
左側の野郎ども、死ぬまで自慢しな
Hoods on the right, wild for the night
右側のフッドども、今夜はブッ飛んで騒げ
Punks in the back, c'mon and attract to what
後ろのチンピラども、さあ来い、何に惹きつけられてるんだ?
This goes back to nineteen..
これは19...まで遡るぜ
※ここでレコードのスクラッチ音と共にRZAのイントロへ切り替わる。
Ahem, check it, yo
コホン、チェックしな、ヨォ
※ここからオリジナル版『7th Chamber』と同じ構成に合流する。
GOOD MORNING VIETNAM!!
グッドモーニング、ベトナム!!
※ロビン・ウィリアムズ主演の1987年の映画『グッドモーニング、ベトナム』の有名なラジオDJの掛け声のサンプリング。戦場(ストリート)の朝の目覚めを告げる。
Yeah, good morning to all you motherfuckin notty-headed niggas
ああ、おはようさん、頭のイカれた(ノッティ・ヘッド)クソ野郎ども
※「knotty-headed」は髪の毛が結び目だらけ(ドレッドヘアなど)の荒くれ者や頑固者のこと。
Word to the camouflage large niggas
迷彩服を着込んだデカい野郎どもに敬意を
※90年代NYヒップホップの軍服(迷彩服)ファッション。彼ら自身がストリートの兵士であることを表している。
Bitch niggas fuckin my body
ビッチ野郎どもが俺の体をメチャクチャにしやがる
※オリジナル版(Bitch, where the fuck is my bottle?)と発音が若干異なって聞こえる部分。
Bring that fuckin meth in here, man!
そのクソ「メス」をここに持ってこい!
※「meth」はMethod Manのことでもあり、彼が巻いたマリファナのブラントを寄こせという要求。
Yo yo yo yo
ヨォ、ヨォ、ヨォ、ヨォ
Now we gonna drink some good Nightrain
これから上等なナイト・トレインを飲むぜ
※「Night Train」は安価でアルコール度数の高いワイン。スラム街のルーツを示すアイテム。
[Verse 1: Raekwon]
Champion gear that I rock, you get your boots knocked
俺が着こなすチャンピオンのギア、お前らはブーツを脱がされる(ボコボコにされる)ぜ
※Raekwon(The Chef)の登場。90年代の定番ブランド「Champion」のパーカーを誇示。「get boots knocked」は暴力的に制圧されることのメタファー。
Then attack you like a pit that lock shit DOWN
そして闘犬(ピットブル)みたいにお前に噛みつき、全てをロックダウン(制圧)する
※「pit」はピットブル・テリア。一度噛み付いたら離さない狂暴性。
As I come and freaks the sound, hardcore
俺がやって来てサウンドを自在に操る(フリークする)ぜ、ハードコアにな
※「freak」はビートを乗りこなす、メチャクチャにするの意。
But giving you more and more, like ding!
だがお前らにもっともっと喰らわせてやるよ、「チーン!」ってな
※「ding!」はボクシングのラウンド開始のゴング。休む間もなくパンチラインを打ち込む。
Nah shorty, get you open like six packs
いや、お嬢ちゃん、6缶パック(シックス・パック)みたいにお前を開けちまうぜ
※「get open」は「心を開かせる」と「物理的に開ける(ビール缶を開けるように傷つける)」のダブルミーニング。
Killer Bees attack, flippin what, murder one, phat tracks
キラービーズの攻撃だ、何をフリップする(サンプリングする)って? 第一級殺人の最高なトラックをだ
※Wu-Tangのファミリー「Killa Beez」。「Murder one」は第一級殺人。「殺人的にヤバいビートを構築する」というRZAへのシャウトアウト。
A'ight? I kick it like a Nike Flight!
分かったか? 俺はナイキのフライトみたいにキックする(ラップする)ぜ
※当時の人気スニーカー「Nike Air Flight」とラップする(kick)の言葉遊び。
Word life, I get that ass raw, I'm fulla spite!
マジな話、腹いせでてめえのケツをナマで(ロウに)ブッ飛ばすぜ!
※オリジナル版(I get that ass robbed on spite)とは少し表記が異なるが、理不尽な悪意(spite)によるストリートの暴力の描写。
Check the method from Bedrock, 'cause I rock ya head to bed
ベッドロックからのメソッド(手法)をチェックしな、なぜなら俺はお前の頭をベッドに寝かしつける(殺す)からさ
※アニメ『フリントストーン』の石器時代の街「Bedrock(原始的で荒々しいスタイルの比喩)」と、永遠の眠りにつかせる「rock to bed」の掛け合わせ。
Just like rockin what? Twin Glocks!
何を揺らす(ロックする)ようにって? 2丁のグロック拳銃さ!
※両手持ちの拳銃(Twin Glocks)による容赦ない銃撃。
Shake the ground while my beats just break you down
地面を揺るがし、俺のビートがお前を精神的・肉体的に破壊する
※重低音の効いたビートの物理的な破壊力。
Raw sound, we going to war right now
生々しい(ロウな)サウンドだ、俺たちは今すぐ戦争に行くぜ
※洗練されていない「Raw」な音を武器にした宣戦布告。
So, yo, bombin
だから、ヨォ、爆撃するぜ
※次行へのセットアップ。
We Usually Take All Niggas Garments
俺たち(W)は・いつも(U)・全ての野郎の(T・A・N)・服を奪い取る(G)
※Raekwonが考案した「W-U-T-A-N-G」の有名なバクロニム(後付けの頭字語)。他のラッパーから身柄や財産を根こそぎ奪い取るという野心。
Save ya breath before I vomit
俺がゲロを吐く前に、息を整えとけよ!
※「vomit」はラップを吐き出すことの汚いメタファー。俺の勢いに圧倒される前に深呼吸しておけという警告。
[Verse 2: Method Man]
I be that insane nigga from the psycho ward
俺は精神病棟(サイコ・ウォード)から抜け出してきた狂った野郎だぜ
※Method Manの登場。自身の予測不能でクレイジーなキャラクターを「精神異常者」に例えている。
I'm on the trigger, plus I got the Wu-Tang sword
俺は引き金に指をかけてるし、おまけにウータンの剣も持ってるんだ
※銃器(現代の暴力)と武当派の剣(伝統的なラップスキル)の両方を備えた無敵の存在。
So how you figure that you can even fuck with mine?
だから、俺のスキルに少しでも対抗できるなんて、どうして思えるんだ?
※他のMCたちとの次元の違いを見せつける。
Hey, yo, RZA! Hit me with that shit one time!
エイヨォ、RZA! あのヤバい音をもう一回鳴らしてくれ!
※プロデューサーのRZAに対するシャウトアウト。
And pull a foul, niggas save the beef on the cow
ファウルを引き出してやるよ、野郎共、ビーフ(揉め事)は牛にでも残しておきな
※「beef」はラッパー同士の抗争と牛肉を掛けた古典的な言葉遊び。「俺と揉めても無駄だから、牛肉でも食ってろ」という皮肉。
I'm milkin this ho, this is MY show, tical
俺はこのビッチ(業界)から乳(金)を搾り取ってるんだ、これは俺のショウだぜ、ティカル!
※「milk」は搾取する、最大限に利益を得ること。「tical」はMethod Manの別名であり、彼が愛好していた上質なマリファナに由来する。
The FUCK you wanna do for this mic piece, duke?
このマイク(ピース)を奪うために、てめえはどうしたいって言うんだ、公爵(デューク)気取りの野郎?
※「duke」は相手を見下して呼ぶ時のスラング。
I'm like a sniper, hyper off the ginseng root
俺は高麗人参(ジンセン・ルート)をキメてハイになったスナイパーみたいだぜ
※漢方薬「高麗人参」で精力を増強し、スナイパーのように遠距離から正確にライムを撃ち込むという、Wu-Tang特有の東洋趣味。
PLO style, buddha monks with the owls
P.L.O.スタイル、フクロウを従えた仏教の僧侶(ブッダ・モンク)たちさ
※「P.L.O.」はパレスチナ解放機構(過激で戦闘的なスタイル)。スタテンアイランドの夜の闇(フクロウ)に潜む武装した東洋の修行僧(大麻を吸う僧侶)というサイケデリックなイメージ。
So who's the fucking man? Meth-Tical
さあ、最強の男は誰だ? メス・ティカルさ
※自身の別名を高らかに宣言。
On the chessbox
チェスボックスの上で
※チェスの盤面を、ラップの知的な戦略戦やストリートの抗争に見立てている。
[Verse 3: Inspectah Deck]
Yo, yeah, yo
ヨォ、イェア、ヨォ
I leave the mic in body bags, my rap style has
俺はマイクを死体袋(ボディバッグ)にブチ込んでやる、俺のラップスタイルは
※Inspectah Deckの登場。マイクを破壊するほどの殺人的なスキル。
The force to leave you lost, like the tribe of Shabazz
お前を「シャバズ族」みたいに迷子にさせるフォースを持ってるんだ
※「Tribe of Shabazz」はNation of Islamの教義に登場する、世界中に散らばって迷子になった黒人の古代部族。敵が俺のラップを聴いて己を見失うというディープな比喩。
Murderous material, made by a madman
狂人(マッドマン)によって作られた殺人的なマテリアル(曲)だ
※緻密なライムを構築する自身を狂った科学者に例える。
It's the mic wrecker, Inspector, bad man
マイクの破壊者、インスペクター、悪党のお出ましだ
※自身の名前(Inspectah Deck)の紹介。
From the bad lands of the killer, rap fanatic
殺人鬼(キラー)の棲むバッドランド(荒野)からやってきた、ラップの狂信者さ
※スタテンアイランドのスラム街を無法地帯に例えている。
Representing with the skill that's iller
誰よりも病んだ(最高な)スキルでレペゼンするぜ
※「ill」はヒップホップにおける最高の褒め言葉。
Dare to compare, get pierced just like an ear
あえて俺と比較しようってのか、ならお前の耳みたいにピアス穴を開けてやるよ
※俺と比べる身の程知らずは、身体に風穴(銃弾)を開けられるという警告。
The zoo-we-do-wop-bop strictly hardware
ズー・ウィー・ドゥー・ワップ・ボップ、完全にハードウェア(武器)だぜ
※オリジナル版(The Shooby Doo-Wop pop)から少し変化している。リズミカルで軽快なスキャットと、冷酷な武器(hardware)の対比。
Armed and geared 'cause I just broke out the prison
武装し、ギアを身につけてるぜ、俺はムショを脱獄したばかりだからな
※社会からの抑圧を打ち破り、戦場にフル装備で乗り込んできたハングリー精神。
Charged by the system - for murdering the rhythm!
システム(警察・体制)に起訴されてるんだ - リズムを殺した(乗りこなした)罪でな!
※自身のラップスキルの高さが、法で裁かれるほどの破壊的な犯罪行為であるという比喩。
Now, lo and behold, another deadly episode
さあ、見よ、次なる致命的なエピソードの幕開けだ
※ドラマの次回予告のような演出。
Bound to catch another fuckin charge when I explode
俺が爆発した時、また新たなクソみたいな罪を着せられることは確実だぜ
※スキルを爆発させればさらに前科が増えるというアウトローの矜持。
[Verse 4: Ghostface Killah]
Slammin a hype-ass verse til ya head burst
お前の頭が破裂するまで、この超ハイプなヴァースを叩きつけるぜ
※Ghostface Killahの登場。前のめりなフロウで圧倒する。
I ramshack dead in the track, and that's that
俺はこのトラックのど真ん中(デッド)を家探し(ラムシャック)して荒らす、それで終わりだ!
※ビートを完全に制圧し、全てを奪い尽くす宣言。
Rap assassin, fastin, quick to blast and hardrock
ラップの暗殺者、素早く迅速に、ハードな岩(ハードコアな奴)を爆破する
※タフガイを気取るフェイクなラッパー(hard rock)を一瞬で粉砕する。
I ran up in spots like Fort Knox!
フォート・ノックスみたいに厳重な場所にも押し入るぜ!
※「Fort Knox」はアメリカの金塊保管庫がある警備が厳重な基地。どんなにディフェンスが硬い場所でも侵入して金(成功)を強奪するという比喩。
I'm hot, top notch, Ghost thinks with logic
俺は熱いぜ! 最高峰(トップ・ノッチ)だ、ゴーストは論理(ロジック)で思考する
※感情的に見えて、裏には綿密な計算とハスラーとしての知恵があるという主張。
Flashback's how I attacked your whole project
俺がお前らのプロジェクト(公営住宅)全体をどう襲撃したか、フラッシュバックするだろ
※過去のストリートでの抗争のトラウマを思い出させる脅迫。
I'm raw, I'm rugged and raw! I repeat, if I die
俺はロウ(生)だ! ラギッドでロウだ! 繰り返すぜ、もし俺が死んでも
My seed'll be ill like me
俺の種(子供)が俺みたいに病んだ(最高な)奴になるさ
※自身のレガシーが血脈(seed)を通して永遠に受け継がれるというギャングスタの死生観。
Approachin me, you out of respect, chops ya neck
俺に近づいてくるのか? お前がリスペクトを欠いたら、首にチョップをお見舞いするぜ
※カンフーの「空手チョップ」と、銃撃(chopper)を掛けたワードプレイ。
I get vexed, like crashing up a phat-ass Lex'
超イカしたレクサスを大破させた時みたいに、激しくイラつく(ベックス)んだよ
※ハスラーの成功の象徴である愛車(Lexus)を事故でパーにした時の、理不尽な怒りをラップのエネルギーに変換している。
So clear the way, make way, yo! Open the cage
だから、道を空けろ! どきな! ヨォ! 檻を開けろ!
※野獣が解き放たれる直前の警告。
Peace, I'm out, jettin like a runaway slave
ピース、俺は行くぜ、逃亡奴隷(ランナウェイ・スレイヴ)みたいに一目散にな
※南部から逃げ出した黒人奴隷の歴史的な切迫感を引き合いに出し、圧倒的なスピードでシーンを駆け抜ける様。
[Verse 5: RZA]
Ya gettin stripped from ya garments, boy, run ya jewels
お前は服をひん剥かれるんだ、坊や、お前の宝石(ジュエル)を渡しな
※RZAの登場。Verse 1の「W-U-T-A-N-G(服を奪う)」を継承し、ストリートの強盗(run your jewels)をラップバトルに持ち込む。
All the meth got me open like Fallopian tubes
大量のメス(マリファナ)のせいで、俺の頭は卵管(ファロピアン・チューブ)みたいにパックリ開いちまってるぜ
※「meth」はMethod Manが巻いた大麻。薬物で思考が拡張(open)する様子を、女性の「卵管」という解剖学的でグロテスクなメタファーで表現するRZAの異常な言語感覚。
I bring death to a snake when he least expect
蛇(裏切り者)が全く予期していない時に、俺は死をもたらす
※「snake」はストリートの密告者。背後から暗殺する忍者のようなスタイル。
Ain't a damn thing changed, boy, Protect Ya Neck
クソみたいな事は何一つ変わっちゃいねえ、坊や、自分の首を守りな!(プロテクト・ヤ・ネック)
※彼らのデビューシングルのタイトル。ストリートの過酷な掟は昔も今も変わらないという戒め。
Ruler Zig Zag, Zig-Allah jam is fatal
支配者ジグ・ザグ・ジグ・アラー、このジャム(曲)は致命的だぜ
※「Zig-Zag-Zig Allah」はRZAの名前の由来。Five Percent Nationの数秘術に基づく。
Quick to stick my Wu-Tang sword right through ya navel
素早く俺のウータンの剣を、お前のヘソ(ネイブル)のど真ん中に突き刺す
※カンフー映画の急所突きを思わせる攻撃。
Suspenseful, plus bein bought through my utensil
サスペンスに満ちている、それに俺の道具(ユテンシル)を通して買われた(もたらされた)モノだ
※「utensil」は次行の「ペン」のこと。
The pencil, I break strong winds up against your
そのペンシル(鉛筆)さ、俺はお前に向かって強烈な風を巻き起こす
※リリックを書くための鉛筆から生み出される言葉が、暴風となって敵を吹き飛ばす。
Abbot, that run up through your county like the Maverick
アボット(修道院長)だ、マーベリックみたいにお前の郡(カウンティ)を駆け抜けるぜ
※オリジナル版の「Havoc」が「Abbot(RZAの別名:少林寺の長)」に変わっている。「Maverick」は空対地ミサイルのこと。ミサイルのように敵陣を破壊し尽くす。
Caps through the tablets, I gots to make the fabrics
石版(タブレット)に大文字(キャップス)を刻み込み、俺は織物(ファブリック)を作らなきゃならねえ
※「Caps」は大文字と銃弾のダブルミーニング。「fabrics」は札束、または自分たちの組織・帝国。歴史に名を刻み、音楽で大金を稼いで帝国を織り上げるというRZAのマスタープラン。
[Verse 6: Ol' Dirty Bastard]
Are uh-ah-uh Are you a warrior? Killer? Slicin shit like a samurai
ア・ア・ア・アー、お前は戦士か? 殺し屋か? サムライみたいにクソどもを切り裂くのか?
※Ol' Dirty Bastard(ODB)の登場。奇怪な叫び声と共に、東洋の武士道を狂気的に解釈して挑発する。
The Ol' Dirty Bastard from the bar
バーからやってきたオール・ダーティ・バスタードだ!
※酒場で泥酔して暴れ回る酔拳の使い手。
Ol' Dirty clan of terrorists
古くて汚い、テロリストのクラン(一族)だ
※業界の常識を破壊するテロリスト集団。
Comin atcha ass like a sorceress, shootin' that PISS!
魔女(ソーサレス)みたいにお前のケツに襲い掛かり、その小便をブッ放すぜ!
※魔法の呪いと「小便(piss)」という下品な言葉を組み合わせる、ODBのスカトロジカルなパンチライン。
Niggas be gettin on my fuckin nerves
野郎共、俺のクソ神経を逆撫でしてきやがる
Rhymes they be kickin make me wanna kick they fuckin ass to the curb
あいつらがキックする(蹴る)ライムを聴いてると、あいつらのクソみたいなケツを縁石(カーブ)まで蹴り飛ばしたくなるぜ
※「kick rhymes」と「kick ass(ケツを蹴る)」の言葉遊び。映画『アメリカン・ヒストリーX』の「カーブ・ストンプ(縁石での処刑)」を思わせる暴力的な表現。
Boy got funky fresh, like the old specialist
少年は「オールド・スペシャリスト」みたいにファンキーでフレッシュになった
※ヒップホップ黎明期のオールドスクールなバイブスを保っているという主張。
A carrier, messenger, bury ya
運び屋、メッセンジャー、お前を埋葬(ベリー)してやるよ
※メッセージの使者であると同時に、敵を墓場へ送る葬儀屋。
This experience is for the whole experience
この経験は、全体の経験のためのものだ
※ODBのラップのバイブスを体感することが、宇宙的な悟り(経験)に繋がるというサイケデリックな思想。
Let it be applied, Unique DROP THAT SCIENCE
それを適用させろ、「ユニーク」、そのサイエンス(知識)を落としてやれ!
※「Unique」はU-Godの別名。彼へのシャウトアウト、あるいは単に「独自の真実(Science)を語れ」という意味。Five Percenterにおいて「drop science」は真実を教えること。
[Verse 7: GZA]
My my my
俺の、俺の、俺の
My Clan is thick like plaster
俺のクランは漆喰(プラスター)みたいに分厚いぜ
※グループの頭脳、GZAの登場。9人の結束力を、壁を塗り固める漆喰に例えている。
Bust ya, slash ya
お前をブチのめし、切り裂く
Slit a nigga back like a Dutch Master Killer
ダッチ・マスター・キラーみたいに、野郎の背中を切り裂く
※「Dutch Master」はブラント(大麻)を巻くために中身を抜いて使われていた葉巻の銘柄。「葉巻の背中をカッターで切り裂く(slit)」動作を、人間の背中を切り裂く殺人に例えた強烈なメタファー。
Style jumped off and Killa, Hill-er
スタイルは飛び出し、キラー・ヒラーだ
※オリジナル版(Killah Hilla)とは少し響きが異なる。「Killa Hill」は彼らのルーツであるスタテンアイランドの「パークヒル・プロジェクト(犯罪多発地帯)」のこと。
I was the thriller in the Ali-Frazier Manilla
俺は「マニラでのアリ対フレージャー」におけるスリラーだった
※1975年の伝説的なボクシングの死闘「スリラー・イン・マニラ」。自身のラップが歴史的激闘の中心にいるかのような破壊力を持っているという比喩。
I came down with phat tracks that combine and interlock
俺は結合し、噛み合う(インターロック)最高なトラックと共に降り立った
※9人の異なる個性が、RZAのビート上で完璧なパズルのように噛み合っている状態。
Like getting smashed by a cinder block
シンダー・ブロック(コンクリート・ブロック)で叩き潰されるみたいにな
※前行の「結合して固まる」から、コンクリートブロックで頭を粉砕するという暴力へのスムーズな移行。
Blaow! Now it's all over
ブラウ!(銃声) これで全テは終わりだ
※銃声の擬音と共に、敵のMCに止めを刺す。
Niggas seeing pink hearts, yellow moons
野郎共は、ピンクのハート、黄色い月
Orange stars and green clovers
オレンジの星、緑のクローバーを見てるぜ
※アメリカの子供向けシリアル「Lucky Charms」のマシュマロの形。コンクリートブロックで頭を殴られた敵が、アニメのように頭の周りを「カラフルな星やハートが飛んでいる(脳震盪を起こしている)」状態を、シリアルの具材でユーモラスかつ残酷に表現した、GZAの天才的なパンチライン。ここでマイクリレーは終了する。
[Part II: Conclusion]
[Inspectah Deck, Method Man & Ghostface Killah]
Yo, butter, butter
ヨォ、バター、バター
※「butter」はスムーズな、最高なという意味のスラング。
Protect Ya Neck, baby
自分の首を守りな(プロテクト・ヤ・ネック)、ベイビー
※彼らのデビューシングルのタイトル。
Respect due, pa
リスペクトを送るぜ、兄弟(パ)
※「pa」は仲間への呼びかけ。
Peace
ピース
Peace
ピース
[Interviewer]
Word up Wu-Tang in the house though
マジでウータンがここに来てるぜ
※アルバムのアウトロとして挿入される、架空(または実際の)インタビューの音声。
I guess alot of people in ya
君たちの…多くの人が
I guess they can feel the realness you
みんな、君たちのリアルさを感じ取ってると思うんだ
They could feel the vibe
そのバイブスを感じ取れるんだよ
And I think hip hop, that's what I be tellin a lot of people
ヒップホップってのは、俺が多くの人に言ってることなんだけど
A lot of record promoters and a lot of artists
多くのレコード・プロモーターやアーティストたちにね
I mean it's like, it's music that you gotta touch and feel
つまり、実際に触れて、感じなきゃいけない音楽なんだよ
You know what I'm sayin'
言ってる意味、分かるだろ?
And I think that comes across well in the video
そして、それはビデオを通してもよく伝わってくると思う
※彼らの生々しいMV(Protect Ya Neckなど)のエネルギーへの賞賛。
I haven't seen you live yet, I'm waitin for the chance
まだ君たちのライブは見たことがないから、そのチャンスを待ってるところさ
But I'm pretty sure that's probably what's it like
でも、きっとそんな感じ(画面越しに伝わる熱量そのまま)なんだろうなって確信してるよ
You know you probably really get into it
きっと、本気で没入できるんだろうなって
I guess I hear it in your voices when you sayin the rhymes
ライムを吐いてる君たちの声からも、それが聞こえてくる気がするしね
Um, what ya say ya style is?
ええと、自分たちのスタイルを言葉で表すとしたら何かな?
※インタビュアーの最後の質問。ここから映画のサンプリングで答えるという演出に繋がる。
[Kung Fu sample]
It's a secret! Never teach the Wu-Tang
それは秘密だ! ウータンの教えは絶対に他言無用だ!
※1983年のカンフー映画『少林寺武者房(Shaolin and Wu Tang)』のサンプリングダイアログ。自分たちのスタイルが門外不出の秘伝であることを、カンフー映画の文脈で回答する見事なオチ。
[Sounds of fighting]
[戦闘の音]
※剣と剣が交わる激しい効果音。
[Outro: RZA]
You best protect ya neck
マジで首を守った方がいいぜ
※アルバム全体を締めくくる、RZAからの最終警告。「Protect Ya Neck(首を守れ)」のフレーズが不気味にリフレインし、デビューアルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』という伝説的な作品は完全に幕を閉じる。
You best protect ya neck
マジで首を守った方がいいぜ
You best protect ya neck
マジで首を守った方がいいぜ
You best protect ya neck
マジで首を守った方がいいぜ
