UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Protect Ya Neck - Wu-Tang Clan 【和訳・解説】

Artist: Wu-Tang Clan

Album: Enter the Wu-Tang (36 Chambers)

Song Title: Protect Ya Neck

概要

本楽曲は、1992年に自主制作でリリースされ、世界にWu-Tang Clanの名を轟かせた記念碑的デビューシングルである。メンバーが資金を出し合い、わずか300ドルで録音されたこのポッセ・カットは、当時メインストリーム化しつつあったヒップホップシーンに対し、徹底的にロウでザラついたスタテンアイランド(少林)のハードコアなエネルギーを叩きつけた。RZAによる不穏なループの上で8人のMCが次々とマイクをリレーし、後半のGZAのヴァースではアーティストを搾取するレコード会社のA&Rへの痛烈な批判が展開される。彼らの音楽的・精神的独立宣言であり、東海岸ルネサンスの幕開けを告げた歴史的傑作である。

和訳

[Intro]

So, what's up, man?
よぉ、調子はどうだい?

Coolin', man
落ち着いてる(クーリン)よ

Chillin', chillin'?
リラックス(チリン)してるって?

Yo, you know I had to call, you know why, right?
ヨォ、俺が電話しなきゃならなかった理由、分かるだろ?

Why?
何でだい?

Because, yo, I never, ever call and ask you to play somethin', right?
だってさ、俺がラジオに電話して「あの曲をかけてくれ」なんて頼むこと、絶対にないだろ?

Yeah
そうだな

You know what I wanna hear, right?
俺が何を聴きたいか、分かってるよな?

What you wanna hear?
何を聴きたいんだ?

I wanna hear that Wu-Tang joint
あのウータンのヤバい曲(ジョイント)を聴かせてくれよ

Wu-Tang again?
またウータンかい?

Ah, yeah, again and again
ああ、そうさ、何度でも何度でもな
※ラジオのDJとリスナーの電話のやり取りを模したスキット。デビュー前の無名グループであったWu-Tangの楽曲が、ストリートのリスナーからいかに熱狂的にリクエスト(渇望)されていたかを示すリアルな演出。

[Interlude: RZA & Ol' Dirty Bastard]

(Wu-Tang Clan comin' at you)
(ウータン・クランがお前らを襲撃するぜ)

Watch your step, kid
足元に気をつけな、坊や

Watch your step, kid (Protect your neck, kid)
足元に気をつけな、坊や(自分の首を守りな、坊や)
※「Protect your neck(首を守れ)」は、油断していると首を狩られる(致命傷を負う)というストリートにおける究極の警告。

Watch your step, kid
足元に気をつけな、坊や

Watch your step, kid (First to set it off)
足元に気をつけな、坊や(まず最初におっ始めるのは)

Watch your step, kid
足元に気をつけな、坊や

Watch your step, kid (The Inspectah Deck)
足元に気をつけな、坊や(インスペクター・デックだ)

[Verse 1: Inspectah Deck]

I smoke on the mic' like "Smokin' Joe" Frazier
マイクの上じゃ「スモーキン・ジョー」フレージャーみたく煙を上げる(打ちのめす)ぜ
※Inspectah Deckの登場。モハメド・アリの永遠のライバルであったボクシング世界ヘビー級王者ジョー・フレージャー(異名:スモーキン・ジョー)の引用。彼の強烈な左フックのように、マイク上で敵を粉砕し煙を立たせる(圧倒する)という自己紹介。

The hellraiser, raisin' Hell with the flavor
地獄からの使者(ヘルレイザー)、このフレーバーで地獄を呼び覚ますのさ
※ホラー映画『ヘルレイザー』と、スラングの「raise hell(大暴れする、大騒ぎする)」を掛け合わせたワードプレイ。

Terrorize the jam like troops in Pakistan
パキスタンの軍隊みたく、パーティー(ジャム)を恐怖に陥れる
※当時のパキスタンの軍事的緊張や武装勢力を引き合いに出し、自身のラップが現場に与えるテロレベルの破壊力を表現している。

Swingin' through your town like your neighborhood Spider-Man
親愛なる隣人スパイダーマンみたく、お前らの街をスウィングして駆け抜けるぜ
※マーベル・コミックの有名なキャッチコピー「Your friendly neighborhood Spider-Man」の引用。ハードコアなギャングスタ・ラップの中に突如アメコミのヒーローを登場させる、Wu-Tang特有のナード(オタク)的カルチャーの融合。

So, uh, tick-tock and keep tickin'
だから、チクタクと時計の針を進めな

While I get you flippin' off the **** that I'm kickin'
俺がキックするこのヤバいシット()でお前らを狂喜乱舞(フリップ)させてる間にな
※時限爆弾(tick-tock)のように着実に刻まれるフロウ。

The lone ranger
ローン・レンジャー(孤高のヒーロー)のお出ましだ

Code red, danger
コード・レッド、超危険だぜ
※アメリカの西部劇『ローン・レンジャー』の引用。群れずに一人でも圧倒的な力を持つ存在であり、最高レベルの警戒態勢(Code red)が必要な脅威であると警告する。

Deep in the dark with the art
暗闇の奥底で磨き上げたアート(芸術)で

To rip the charts apart
ヒットチャートを引き裂いてやる
※アンダーグラウンド(暗闇)のストリートで培われた純粋なヒップホップ芸術が、セルアウトした商業的な音楽チャートを破壊するという宣戦布告。

The vandal, too hot to handle
破壊者(ヴァンダル)さ、熱すぎて手におえねえぜ

You battle, you're sayin', "Goodbye," like Tevin Campbell
俺とバトルすれば、テヴィン・キャンベルみたく「グッドバイ」って言うハメになる
※90年代初頭に活躍した天才R&Bシンガー、テヴィン・キャンベルのヒット曲『Goodbye』の引用。彼とバトルしたMCには別れ(死)が待っているという秀逸なネームドロップ。

Roughneck
ラフネック(荒くれ者)だ

Inspectah Deck's on the set
インスペクター・デックが現場(セット)に到着したぜ
※DeckはWu-Tangの楽曲において、常に一番手(特攻隊長)として完璧なヴァースを蹴ることで定評がある。

The Rebel
反逆者(レベル)さ

I make more noise than heavy metal
ヘヴィメタルよりもデカいノイズを鳴らしてやる
※自身の別名「Rebel INS」への言及。白人のヘヴィメタル音楽以上に、黒人のヒップホップが巨大なエネルギーと騒音(影響力)を生み出すという宣言。

[Verse 2: Raekwon]

The way I make the crowd go wild
俺が観客を熱狂させるやり方はな

Sit back, relax, won't smile
深く腰掛けてリラックスして、一切笑わねえことさ
※Raekwon(The Chef)の登場。ステージ上で無理に愛想を振りまいたりせず、マフィアのボスのようなどっしりとした威厳(ストイックさ)だけで群衆を沸かせるというマフィオーソ・ラップの美学。

Rae got it goin' on, pal
レイ(俺)はノッてるぜ、兄弟

Call me the rap assassinator
俺をラップの暗殺者(アサシネーター)と呼びな

Rhymes rugged and built like Schwarzenegger
ラギッドなライムは、シュワルツェネッガーみたいに鍛え抜かれてる(ビルト)んだ
※俳優アーノルド・シュワルツェネッガーの肉体美を引き合いに出し、自身のリリックが屈強で隙のない構造(built)をしていることを誇示。

And I'ma get mad deep like a threat
脅威みたいにクソ深く潜り込んで

Blow up your project
お前らのプロジェクト(公営住宅)を爆破し

Then take all your assets
お前の資産(アセット)を根こそぎ奪ってやるよ
※ストリートの強盗(stick up)の手口をラップゲームに適用。対立するラッパーの拠点(シマ)を破壊し、プロップスや富を強奪するというギャングスタ的アプローチ。

'Cause I came to shake the frame in half
なぜなら俺は、この業界の枠組み(フレーム)を真っ二つに揺るがしに来たんだ

With the thoughts that bomb shit like math
数学(マス)みたく論理的で爆発的な思考を使ってな
※「math(数学)」は、Five Percent Nationの教義「Supreme Mathematics(至高の数学:宇宙の真理を数字で解読する思想)」への言及。単なる暴力ではなく、高度な計算と知識に基づいたリリックでシーンを爆撃するという宣言。

So if you wanna try to flip, yo, flip on the next man
だから、もしキレて(フリップして)突っかかりたいなら、ヨォ、他の奴のところに行きな
※「flip」は態度を豹変させる、怒り狂うこと。俺を標的にするのは命取りだからやめておけという警告。

'Cause I grab the clip and
なぜなら俺は弾倉(クリップ)を掴み

Hit you with sixteen shots and more, I got
16発以上の弾丸(ライム)をお前にブチ込むからな、俺は
※「16 shots」は銃弾の数であると同時に、ヒップホップにおける標準的な1ヴァースの長さ(16小節=16 bars)のダブルミーニング。16小節のライムで相手を蜂の巣にする。

Goin' to war with the meltin' pot, akh'
人種のるつぼ(メルティング・ポット)と戦争をしに行くんだ、兄弟(アク)
※「akh」はアラビア語の「akh(兄弟)」に由来するイスラム系黒人コミュニティのスラング。「melting pot」は多様な人種が混ざり合うニューヨーク(あるいはアメリカ全体)のこと。全米のあらゆるヘイターを相手に戦争を仕掛けるというスケールの大きな野望。

[Verse 3: Method Man]

It's the Method Man, for short, Mr. Meth
メソッド・マンだ、略してMr.メス

Movin' on your left
お前の左側から忍び寄るぜ
※Method Manの登場。車の追い越し(アメリカでは左車線のファストレーンから)や、死角からの不意打ちを意味する。

Uh, and set it off, get it off, let it off like a gat
アァ、ブチかまして、おっ始めて、ガット(銃)みたいにブッ放してやる
※韻を畳み掛けながら、銃(gat)の引き金を引くような流れるフロウ。

I wanna break full, cock me back
フルバーストでブッ壊してえから、俺の撃鉄を起こしな(コック・ミー・バック)
※自身を銃に見立て、ライブやトラック上で完全に暴れ回る(発砲する)準備ができている状態。

Small change, they puttin' shame in the game
小銭(スモール・チェンジ)稼ぎの奴らが、このヒップホップ・ゲームに泥(シェイム)を塗ってやがる
※目先の金のためにセルアウトし、ヒップホップの芸術性を貶めている商業的なフェイク・ラッパーたちへの批判。

I take aim and blow that nigga out the frame
だから俺が照準を合わせ、そいつをフレームの外まで吹き飛ばすんだ

And like fame, my style'll live forever
そして名声(フェイム)と同じように、俺のスタイルは永遠に生き続ける

Niggas crossin' over like they don't know no better
野郎共は何も分かっちゃいねえくせに、ポップスにクロスオーバー(擦り寄り)してやがる
※「cross over」はR&Bやポップスなど、より大衆受けするメインストリームのジャンルへ迎合すること。当時のハードコアなアーティストが最も嫌悪した「魂を売る」行為。

But I do, true, can I get a, "Soo?"
だが俺は違うぜ、マジだ、「スゥー!」って声をくれないか?
※「Soo (Suuuu)」はWu-Tang Clanのメンバーやファンが多用するシグネチャーの雄叫び(コール・アンド・レスポンス)。

'Nough respect due to the 1-6-ooh
1-6-ウー(O)に最大のリスペクトを

I mean, "Oh"
いや、「オー(O)」って意味だぜ
※「1-6-O」はスタテンアイランドのパークヒル・プロジェクトにおける彼らの拠点である160号棟(160 Park Hill Ave)のこと。「1-6-ooh」と韻を踏むために発音を崩し、すぐに「O(オー)」だと言い直すユーモア。

Yo, check out the flow
ヨォ、このフロウをチェックしな

Like the Hudson
ハドソン川みたいに流れるぜ

Or PCP when I'm dustin'
それか、俺がPCP(エンジェルダスト)でハイになってる時みたいにな

Niggas off because I'm hot like sauce
俺はホットソースみたいに熱いから、野郎共をブッ飛ばす(ダスト・オフする)んだ
※NYのハドソン川のような淀みないフロウ。「dustin'」はPCP(別名エンジェルダスト)を吸うことと、相手をボコボコにする(dust off)ことのダブルミーニング。

The smoke from the lyrical bud make me—
リリカルなバッズ(大麻)から立ち昇る煙が俺を—
※言葉遊びで煙に巻かれるように、ヴァースが突如として途切れる。

[Bridge: U-God]

Ooh
ウー

What? Grab my nut, get screwed
なんだと? 俺の金玉(ナット)を掴みな、メチャクチャにされちまえ

Ow
アウ!
※U-Godの短いブリッジ。「get screwed」は性的な意味と「ひどい目に遭う」のダブルミーニング。当時U-Godは銃器所持で収監されており、出所後に急遽この短いパートだけ録音したため彼だけフルサイズのヴァースがない。

Here comes my Shaolin style
俺の少林(シャオリン)スタイルのお出ましだ

True
間違いない

B-A-ba-B-Y-U
B-A-B-Y-U(ベイビー・U)さ
※「Baby U」はU-Godの別名(Golden Arms等の他にBaby Uとも呼ばれていた)。

To my crew with the, "Soo"
「スゥー!」と叫ぶ俺のクルーへ捧ぐぜ

[Interlude: Ol' Dirty Bastard & RZA]

(Yeah, yeah, yeah)
(イェア、イェア、イェア)

Watch your step, kid
足元に気をつけな、坊や

Watch your step, kid (Come on, baby, baby, come on, baby, baby, come on, baby, baby, come on)
足元に気をつけな、坊や(カモン、ベイビー、ベイビー…)

Watch your step, kid (Protect your neck)
足元に気をつけな、坊や(首を守りな)

Watch your step, kid
足元に気をつけな、坊や

Watch your step, kid
足元に気をつけな、坊や

Watch your step, kid
足元に気をつけな、坊や

Watch your step, kid (Yo, you best protect your neck)
足元に気をつけな、坊や(ヨォ、マジで首を守った方がいいぜ)

[Verse 4: Ol Dirty Bastard]

First things first, man, you're **** with the worst
まず第一に、お前らは最悪な奴と関わっちまってるんだぜ
※Ol' Dirty Bastard(ODB)の登場。「」は「fuckin'」。自身を業界最悪(最も危険で予測不能)の存在と定義。

I'll be stickin' pins in your head like a **** nurse
クソみたいな看護師(ナース)みたく、お前の頭にピンを突き刺してやるよ
※ヴードゥー教の呪い人形のように頭にピンを刺す、あるいは精神病院のサディスティックな看護師のような狂気的なサイコパス描写。

I'll attack any nigga who slack in his mack
口説き(マック)をサボる(弱腰な)野郎は、誰だろうと俺が攻撃するぜ
※「mack」はハスラーとしての振る舞いや女性を口説くスキル。スキルのない軟弱なラッパーへの攻撃宣言。

Come fully packed with a fat, rugged stack
分厚く(ファット)、ラギッドな札束(スタック)をパンパンに詰めてやって来たんだ

Shame on you when you step through to
お前は恥をかく(痛い目を見る)ぜ、ここに足を踏み入れたらな

The Ol' Dirty Bastard straight from the Brooklyn Zoo
「ブルックリン動物園(ズー)」から直送の、このオール・ダーティ・バスタードの領域にな
※Wu-Tangの大半はスタテンアイランド出身だが、ODB(とGZA、Masta Killa)はブルックリン出身。「Brooklyn Zoo」は彼の出身地を無法地帯の動物園に例えたもので、後の彼のソロデビューシングルのタイトルにもなる。

And I'll be damned if I let any man come to my center
俺の中心(センター)に誰かを踏み込ませるなんて絶対にゴメンだね
※「center」はFive Percent Nationにおける「自分自身の宇宙・精神の中核」。そこに他人の侵入を許さないという確固たる自我。

You enter the winter
お前らは冬(ウィンター)に突入するんだ
※「enter the winter」は、彼と敵対すれば冷酷で凍りつくような死(冬)が訪れるという比喩。

Straight up and down, now **** is packed jam
真面目な話、今やこのクソみたいな会場(ジャム)は満員御礼(パックト)だ

You can't slam, don't let me get fool on him, man
お前はスラム(暴れること)なんてできねえ、俺にこいつをボコボコに(フールに)させないでくれよ、なあ
※敵のラッパーに対して「俺を本気で怒らせて狂人(fool)にさせるな」という警告。

The Ol' Dirty Bastard is dirty and stinkin', Ason Unique
オール・ダーティ・バスタードは、汚くて悪臭(スティンキン)を放ってるぜ、「エイソン・ユニーク」さ
※自身のもう一つの別名「Ason Unique(エイソン・ユニーク)」の紹介。他とは全く違う悪臭(強烈な個性)を放っているという彼特有のボースティング。

Rollin' with the night of the creeps
夜の変人ども(クリープス)と一緒につるんでるんだ
※1986年のB級ホラー映画『Night of the Creeps』の引用。ストリートの夜を徘徊するWu-Tangの仲間たちを化け物に見立てている。

Niggas be rollin' with a stash, ain't sayin' cash
野郎共は隠し財産(スタッシュ)を抱えてウロついてるが、現金(キャッシュ)の事じゃねえぞ
※「stash」はお金ではなく、他からパクったライムのこと。

Bite my style, I'll bite your **** ass
俺のスタイルをバイト(パクる)するなら、俺はてめえのクソみたいなケツをバイト(噛みちぎる)してやるよ
※「bite」はヒップホップ用語で「盗作する」ことだが、物理的に「噛み付く」という狂犬のようなODBのキャラクターで掛けている。

[Verse 5: Ghostface Killah]

For cryin' out loud, my style is wild, so book me
勘弁してくれよ(フォー・クライング・アウト・ラウド)、俺のスタイルはワイルドだ、だから俺をブッキングしろ
※Ghostface Killahの登場。ライブのオファー(book)を寄越せというアピール。

Not long is how long that this rhyme took me
このライムを書くのに、たいして時間はかかっちゃいねえ
※苦労せずに一瞬でこのレベルのリリックが書けるという天性の才能の誇示。

Ejectin' styles from my lethal weapon
俺のリーサル・ウェポン(凶器)から、スタイルを射出(イジェクト)する

My pen that rocks from here to Oregon
ここ(NY)からオレゴン州まで揺るがす、俺のペンからな
※凶器(lethal weapon)の正体は「ペン」。東海岸から遥か西海岸のオレゴンまで、その影響力が届く。

Here's more again, catch it like a psycho flashback
さあ、もう一発(モア・アゲイン)行くぜ、サイコのフラッシュバックみたいに喰らいな
※「Oregon(オーレゴン)」と「more again(モア・アゲン)」の完璧なライミング。トラウマがフラッシュバックするかのように脳裏に焼き付くリリック。

I love gats, if rap was a gun, you wouldn't bust back
俺はガット(銃)を愛してる。もしラップが銃撃戦だったら、お前は撃ち返す(バスト・バック)ことすらできねえよ
※ラップスキルにおける圧倒的な火力差。

I come with **** in all types of shapes and sounds
俺はあらゆる形とサウンドのクソヤバいブツを持ってやって来る

And where I lounge is my stomping grounds
そして俺がくつろぐ(ラウンジする)場所が、俺の縄張り(ストンピング・グラウンズ)なのさ
※どこに行こうと、そこを自分の支配領域にしてしまう。

I give an order to my peeps across the water
海の向こうのダチ(ピープス)に命令を下す

To go and snatch up props all around the border
国境中を回って、プロップス(評価)を根こそぎ奪い取ってこいってな
※ニューヨーク港(水辺)を挟んだスタテンアイランドから、全米へ向けて部下を放つマフィアのボスの視点。

And get far like a shootin' star
そして流れ星(シューティング・スター)みたいに遠くまで到達する

'Cause who I are is livin' the life of Pablo Escobar
なぜなら俺の正体は、パブロ・エスコバルの人生を生きる男だからさ
※歴史上最大の麻薬王であるコロンビアのパブロ・エスコバル(Pablo Escobar)のネームドロップ。世界規模の帝国を築くという野望と、マフィオーソ・ラップの真骨頂。

Point blank as I kick the square biz
至近距離(ポイント・ブランク)から、俺が真っ当なビジネス(スクエア・ビズ)をキックする
※「square biz」はTeena Marieの1981年のヒット曲のタイトルでもあり、「真実、偽りのない本物のビジネス」という意味。

There it is
ほら、見ろよ

You're **** with pros
お前らはプロフェッショナルとやり合ってるんだぜ

And there it goes
そういうことさ

[Verse 6: RZA]

Yo, chill with the feedback, Black, we don't need that
ヨォ、フィードバック(雑音)は抑えろ、ブラック(兄弟)、そんなモンは必要ねえ
※RZAの登場。マイクのハウリング(フィードバック)と、ヘイターからの無駄な批判(フィードバック)を掛けている。

It's 10 o'clock, ho, where the **** your seed at?
夜の10時だぜ、ビッチ、てめえのガキ(シード)はどこにいるんだ?
※アメリカのローカルニュースで夜10時に流れる有名な公共広告「It's 10 p.m., do you know where your children are?(夜10時です、お子さんがどこにいるか知っていますか?)」の引用。ネグレクトへの皮肉。

Feelin' mad hostile, wearin' Aéropostale
エアロポステールを着込みながら、クソほど敵意(ホスタイル)に満ちてるぜ
※90年代に流行したカジュアルブランド「Aéropostale」と「hostile」のライミング。

Flowin' like Christ when I speaks the gospel
俺がゴスペル(福音)を語る時、キリストのように流れる(フロウする)
※自身のラップを宗教的な真理の伝道に例える。

Stroll with the holy robe
聖なるローブを纏って練り歩き

Then attack the globe
地球(グローブ)を攻撃するんだ

With the buckest
最高にブッ飛んだ(バッケスト)

Style, the ruckus
スタイル、大乱闘(ラッカス)でな

Ten-times-ten, men committin' mad sin
10かける10(100人)の男たちが、狂ったような罪(シン)を犯している

Turn the other cheek and I'll break your **** chin
別の頬を向けやがれ、てめえのクソ顎(チン)をカチ割ってやるよ
※新約聖書の有名な教え「右の頬を打たれたら、左の頬を向けなさい(Turn the other cheek)」のパロディ。Wu-Tangの掟では、無抵抗の頬を向けたところで容赦なく顎を粉砕される。

Slayin' boom-bangs like African drums
アフリカの太鼓みたいに「ブーンバン」と叩き殺すぜ

He'll be comin' around the mountain when I come
俺がやって来た時、奴は山を回って逃げていくのさ
※アメリカの伝統的な民謡『She'll Be Coming 'Round the Mountain』のパロディ。「俺の足音が聞こえたら、敵は山を迂回して逃げ出す」という比喩。

Crazy flamboyant for the rap enjoyment
ラップの歓喜(エンジョイメント)のために、クレイジーなほど派手(フランボヤン)にキメるぜ

My Clan increase like Black unemployment
俺のクランは、黒人の失業率(ブラック・アンエンプロイメント)みたいに増加していく
※90年代のアメリカにおける深刻な社会問題であった「黒人の高い失業率」というネガティブな事実を、Wu-Tangの影響力(クランの人口)が爆発的に増大していく様への強烈なブラックジョークとして引用した歴史的パンチライン。

Yeah, another one dare
ああ、また一人挑んで(デア)きやがったか

Ge-Gecka-Genius, take us the **** out of here
ジ、ジーニアス、俺たちをここから抜け出させてくれ
※GZA(The Genius)へバトンを渡すアウトロ。

[Verse 7: GZA]

The Wu is too slammin' for these cold killer labels
ウータンは、あの冷酷なキラー・レーベルどもに収まるには、あまりにも強烈(スラミン)すぎるのさ
※GZAの登場。ここから、彼がWu-Tang結成前に所属していたCold Chillin' Records(コールド・キラーと皮肉っている)への強烈なディスが始まる。

Some ain't had hits since I seen Aunt Mabel
メイベルおばさんに会った時からずっと、ヒット曲を一本も出せてねえ奴らもいるぜ
※「Aunt Mabel」はThe Notorious B.I.G.などのリリックにも登場する架空の(あるいは遠い親戚の)古い人物の代名詞。「大昔から全くヒットが出ていないオワコン・レーベル」という痛烈な皮肉。

Be doin' artists in like Cain did Abel
カインがアベルを殺したみたいに、アーティストをハメて(搾取して)やがる
※旧約聖書の「カインとアベル(人類初の兄弟殺し)」の引用。レーベルが身内であるはずのアーティストを裏切り、キャリアを殺している悪徳ビジネスへの告発。

Now they money's gettin' stuck to the gum under the table
今じゃ奴らの金は、机の裏にくっついたガムみたいに底を突いて(スタックして)動けねえんだ
※レーベルの財政難と行き詰まり(stuck)を、机の裏のガムという汚らしい比喩で表現。

That's what you get when you misuse what I invent
俺が発明したモノ(才能)を悪用した報いがそれさ

Your empire falls and you lose every cent
お前らの帝国は崩壊し、全財産(すべてのセント)を失うんだ

For tryna blow up a scrub
ザコ(スクラブ)を売り出そう(ブロウアップ)としたからな

Now, that thought is just as bright as a twenty-watt light bulb
今や、その考えは20ワットの電球と同じくらい明るい(暗くて頭が悪い)ぜ
※GZAのような本物の天才(Genius=光り輝く才能)を冷遇し、才能のない三流ラッパーに投資したレーベルの無能さを「20ワットの電球(薄暗い=頭が悪い)」と皮肉る。

Should've pumped it when I rocked it
俺がブチかましてた時に、全力でプッシュ(パンプ)すべきだったんだよ

Niggas so stingy, they got short arms and deep pockets
奴らはケチでセコすぎる、「手が短くてポケットが深い」んだ
※「short arms and deep pockets(腕が短くてポケットが深い)」は、お金を払う時にポケットの底の財布に手が届かないフリをする「極度のケチ(ドケチ)」を意味する英語の慣用句。アーティストに正当な対価を支払わないレーベル経営者への痛烈なディス。

This goes on in some companies
こういう事が色んな会社で起きてるのさ

With majors, they're scared to death to pump these
メジャーレーベルどもは、俺たちみたいなヤツらをプッシュするのを死ぬほどビビってるんだ
※Wu-Tangのような生の(Raw)ストリートの表現を恐れ、クリーンなポップラップばかりを好むメジャー業界全体への批判。

First of all, who's your A&R?
そもそも、お前らのA&R(新人発掘担当)は誰なんだ?

A mountain climber who plays an electric guitar?
エレキギターを弾く登山家か何かか?
※ヒップホップのヒの字も知らない、ストリートとは無縁の白人のロックファンやアウトドア趣味の連中が、黒人音楽のA&Rの椅子に座っているという業界の構造的な歪みへの痛烈な風刺。

But he don't know the meanin' of dope
奴らは「ドープ(最高)」の意味すら分かっちゃいねえ

When he's lookin' for a suit-and-tie rap that's cleaner than a bar of soap
石鹸の固まりよりもクリーンな、スーツとネクタイを着たラップばかりを探してるからな
※当時メインストリームで売れていた無害で大衆受けするクリーンなラッパーばかりを求める業界の風潮。

And I'm the dirtiest thing in sight
そして俺は、目につく中で最も汚れた(ダーティな)存在だ

Matter fact, bring out the girls and let's have a mud fight
実際のところ、女の子たちを呼んで、泥んこプロレス(マッド・ファイト)でもしようぜ
※業界が求める「クリーン」な石鹸に対し、自分たちは徹底的に「ダーティ(泥)」であるという宣言。泥んこプロレス(女性が泥の中で戦う見世物)を引き合いに出し、クリーンな業界を泥まみれにしてやるというGZAの痛快なアンチテーゼで楽曲は幕を閉じる。

[Interlude]

Huh, huh
ハッ、ハッ

Huh
ハッ

Huh
ハッ

Yo, yo, yo, yo
ヨォ、ヨォ、ヨォ、ヨォ

[Outro: RZA & Ol' Dirty Bastard]

You best protect your neck (Watch your step, kid)
マジで首を守った方がいいぜ(足元に気をつけな、坊や)

You best protect your neck (Watch your step, kid)
マジで首を守った方がいいぜ(足元に気をつけな、坊や)

You best protect your neck (Watch your step, kid)
マジで首を守った方がいいぜ(足元に気をつけな、坊や)

You best protect your neck (Watch your step, kid)
マジで首を守った方がいいぜ(足元に気をつけな、坊や)