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Wu-Tang Clan Ain’t Nuthing ta F Wit - Wu-Tang Clan 【和訳・解説】

Artist: Wu-Tang Clan

Album: Enter the Wu-Tang (36 Chambers)

Song Title: Wu-Tang Clan Ain’t Nuthing ta F Wit

概要

本楽曲は、Wu-Tang Clanのデビューアルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』に収録された、グループの象徴とも言えるハードコア・アンセムである。Biz Markieの「The Vapors」やW-Zの「Nobody Beats the Biz」を連想させるようなキャッチーでありながらも攻撃的なドラムブレイクに、カンフー映画の不気味なテーマ音を重ねたRZAのビートは、90年代ヒップホップにおける東海岸サウンドの青写真となった。タイトルの「ウータン・クランとは関わるな(ヤバい目に遭うぞ)」という強烈なフックは、彼らがストリートで培った無敵の結束力と暴力性の誇示であり、ライブでは観客のモッシュと大合唱を巻き起こす。RZA、Inspectah Deck、Method Manというグループ内でも屈指のカリスマ性を持つ3人が、ポップカルチャーからカンフー映画、プロスポーツまで多岐にわたるメタファーを駆使し、シーンの頂点に君臨する宣言を高らかに歌い上げている。

和訳

[Intro: Sample from Executioners from Shaolin (RZA)]

Tiger Style!
虎の型(タイガー・スタイル)!
※1977年のショウ・ブラザーズのカンフー映画『洪熙官(Executioners from Shaolin)』からのサンプリングダイアログ。これより始まるRZAの野獣のような猛攻を予感させる。

Tiger Style! (Tiger style! Yo, huh, huh)
虎の型!(タイガー・スタイル!ヨォ、ハッ、ハッ)
※RZAの荒々しい息遣いがビートの緊張感を高める。

[Chorus: RZA]

Wu-Tang Clan ain't nuthin ta fuck wit!
ウータン・クランとは絶対に関わるんじゃねえぞ!
※「ain't nothing to fuck with」は「舐めてかかると痛い目を見る、絶対に敵に回してはいけない存在」という意味。ヒップホップ史に残るアイコニックなフックの一つ。

Wu-Tang Clan ain't nuthin ta fuck wit!
ウータン・クランとは絶対に関わるんじゃねえぞ!

Wu-Tang Clan ain't nuthin ta fuck wit!
ウータン・クランとは絶対に関わるんじゃねえぞ!

[Verse 1: RZA]

Yo, there's no place to hide once I step inside the room
ヨォ、俺が部屋に足を踏み入れたら、もう逃げ場なんてねえぜ
※RZAのヴァース開始。圧倒的な存在感で空間を支配する様。

Dr. Doom, prepare for the boom!
ドクター・ドゥームだ、爆発(ブーム)に備えな!
※「Dr. Doom」はマーベル・コミック『ファンタスティック・フォー』の宿敵であり、自身の別名の一つ。ヒップホップ界におけるヴィラン(悪役)としての絶対的なパワーと知性を誇示している。

Bam! Aw, man! I slam, jam, now scream like Tarzan
バム! ああ、クソッ! 俺は叩きつけ、ブチ込み、ターザンみたく叫ぶぜ
※「slam」と「jam」はバスケットボールのダンクシュートの擬音、あるいは荒々しいアクションの表現。ターザンのように野性的で予測不能なエネルギーをシーンに叩きつける。

I be tossin', enforcin', my style is awesome
俺は放り投げ、実力行使する、俺のスタイルは最高(オーサム)だ

I'm causin' more Family Feud than Richard Dawson
俺はリチャード・ドーソン以上に、家族の対立(ファミリー・フュード)を引き起こすんだ
※「Family Feud」はアメリカの長寿人気クイズ番組。初代司会者がリチャード・ドーソンである。「feud(抗争・確執)」という言葉を掛け、自身の存在がラッパー同士やクルー間の激しいビーフ(抗争)を生み出す原因になるという秀逸な言葉遊び。

And the survey said, "You're dead!"
そしてアンケートの結果は…「お前は死んだ!」だ
※前行から続くライン。「And the survey said...(アンケートの結果は…)」は番組『Family Feud』におけるリチャード・ドーソンの有名な決まり文句。クイズの正解発表の代わりに、敵の死を宣告するブラックジョーク。

Fatal Flying Guillotine chops off your fuckin' head!
『空飛ぶ十字剣(フェイタル・フライング・ギロチン)』がお前のクソみたいな首を切り落とすぜ!
※1977年の台湾のカンフー映画『The Fatal Flying Guillotines(空飛ぶ十字剣)』からの引用。遠距離から敵の首を狩る恐ろしい暗殺武器のように、RZAのリリックが一瞬で敵の息の根を止めるという比喩。

MZA "Who is that?!" A-yo, the Wu is back!
MZA「それ誰だ!?」 エイヨォ、ウータンの帰還だぜ!
※「MZA(エムザ)」はRZAがソロ活動初期に使っていた名前(Prince Rakeem時代など)。「誰だそれ?」と自らツッコミを入れつつ、Wu-Tangとして完全体でシーンに戻ってきたことを宣言している。

Makin' niggas go Bo! Bo! like I'm Super Cat
スーパーキャットみたいに、野郎共に「ボ!ボ!」と言わせるぜ
※「Super Cat」は90年代に一世を風靡したダンスホール・レゲエの伝説的ディージェイ。彼のシグネチャーである発砲音の擬音「Bo! Bo!」を引用し、クラブの観客を熱狂させて銃声(の真似)を上げさせる様子を描写。

Me fear no one — oh, no! Here come
俺は誰も恐れねえ…おお、ヤバいぜ! やってきたのは

The Wu-Tang shogun, killer to the eardrum
ウータンの将軍だ、鼓膜(イヤードラム)の殺し屋さ
※自らを軍団を率いる将軍(Shogun)に例え、リスナーの聴覚を破壊するほど強烈なサウンドであることを誇る。

[Verse 2: Inspectah Deck]

Put the needle to the groove, I gets rude
レコードの溝(グルーヴ)に針を落としな、俺は荒っぽくなる(ルード)ぜ
※Inspectah Deckの登場。DJがレコードを再生した瞬間から、彼の容赦ないマイク・コントロールが始まる。

And I'm forced to fuck it up
そして俺は、ここをメチャクチャにブッ壊す使命があるんだ

My style carries like a pick-up truck
俺のスタイルは、ピックアップ・トラックみたいに重いモノを運ぶ(キャリーする)ぜ
※声の通り(キャリー)が良いことと、トラックのような物理的な重みと積載量(情報量の多さ)を兼ね備えているというメタファー。

Cross the clear blue yonder, sea to shinin' sea
澄み切った青空の向こうまで、輝く海から海へと響き渡る
※アメリカの愛国歌「America the Beautiful」のフレーズ「From sea to shining sea」の引用。Wu-Tangの音楽が東海岸から西海岸まで、全米を制覇するという壮大な野望。

I slam tracks like quarterback sacks from L.T.
L.T.のクォーターバック・サックみたいに、俺はトラックを激しく叩きつける
※「L.T.」はNFLニューヨーク・ジャイアンツの伝説的ラインバッカー、ローレンス・テイラー(背番号56)のこと。NFL史上最も恐れられたディフェンダーであり、彼が相手のQBをサック(タックルして潰す)するような破壊力で、ビートを完全に制圧するという強烈なローカル・リファレンス。

Now, why try and test the Rebel INS?
さあ、なぜ反逆者(レベル)INSを試そうなんて思うんだ?
※「Rebel INS」はInspectah Deckの別名。俺の実力を疑ってかかってくる無謀さを問う。

Blessed since the birth, I earth-slam your best
生まれながらに祝福(ブレス)されてる俺は、お前らの最強のラッパーを地面に叩きつける(アース・スラム)ぜ
※天性の才能を誇示し、敵のトップMCでさえもプロレス技のように地面に叩き伏せる。

'Cause I bake the cake, then take the cake and eat it, too
なぜなら俺はケーキを焼き、そのケーキを奪い取り、自分で食っちまうからさ
※「You can't have your cake and eat it too(ケーキを持ったまま食べることはできない=両立しない二つのものを同時に得ることはできない)」という英語の諺を覆すライン。ビート(ケーキ)を作り、富を独占し、すべての利益を自分たちで享受するというWu-Tangのビジネス哲学。

With my crew while we head state-to-state
俺のクルーと一緒に、州から州へと飛び回りながらな
※全米ツアーを敢行し、各地で富を荒稼ぎするギャングスタ的なライフスタイル。

[Chorus: (RZA) & All]

And if you want beef, then bring the ruckus!
もし揉め事(ビーフ)が欲しいなら、大乱闘(ラッカス)を巻き起こせ!
※彼らの代表曲『Bring da Ruckus』のフレーズを再利用し、クルー全体で気勢を上げる。

Wu-Tang Clan ain't nuthing ta fuck wit!
ウータン・クランとは絶対に関わるんじゃねえぞ!

(Straight from the motherfuckin' slums that's busted!)
(完全に破綻しちまった、クソみたいなスラム街からの直送だぜ!)

Wu-Tang Clan ain't nuthing ta fuck wit!
ウータン・クランとは絶対に関わるんじゃねえぞ!

[Interlude: RZA]

Hah! Lebonon, step up, boy!
ハッ! レバノン、前に出ろ、坊や!
※「Lebonon(レバノン)」はストリートの仲間やWu-Tangのアフィリエイトへのシャウトアウトとされる。

Represent! Chop his head off, kid!
レペゼンしろ! そいつの首を切り落とせ、小僧!
※首狩りという過激な言葉で、次に控えるMethod Manへのバトンタッチを扇動する。

[Verse 3: Method Man]

The Meth will come out tomorrow
メスは明日になれば出てくるぜ
※Method Manの登場。ミュージカル『アニー』の有名な楽曲「Tomorrow」の歌詞(The sun'll come out tomorrow)のパロディ。GZAも『Clan in da Front』で引用しており、荒涼としたゲットーのラップと陽気なブロードウェイの対比という彼ら特有のブラックユーモア。

Styles, get busy, bizarre, bizarro
スタイルは激しく(ビジー)、奇妙で(ビザール)、常軌を逸してる(ビザロ)
※「Bizarro(ビザロ)」はDCコミックスのスーパーマンの歪んだクローン・キャラクター。自身のフロウが正統派ではなく、変態的で予測不能であることを示している。

Flow, with more Afro than Rollo
このフロウは、ロロよりも巨大なアフロ(アフロ・ヘア/アフリカのルーツ)を持ってるぜ
※「Rollo」は70年代の人気シットコム『Sanford and Son』に登場するキャラクター、ロロ・ラーソン(Rollo Larson)のこと。彼がトレードマークとしていた巨大なアフロヘアを引き合いに出し、自分のラップがいかに「真っ黒(ブラックカルチャーの純度が高い)」であるかを表現。

Comin' to a fork in the road — which way to go? Just follow!
人生の分岐点(フォーク)に差し掛かった…どっちへ行けばいい? ただ俺についてこい!

Meth is the legend, niggas is Sleepy Hollow
メスは伝説だ、お前らはスリーピー・ホロウさ
※ワシントン・アーヴィングの古典小説『スリーピー・ホロウの伝説(The Legend of Sleepy Hollow)』の引用。この物語に登場する「首なし騎士(Headless Horseman)」にかけ、「俺は伝説だが、お前らには首(頭脳=ラップの才能)がない」、あるいは「俺に首を狩られる運命にある」という極めて高度なダブルミーニング。

In fact, I'm a hard act to follow
実際のところ、俺の次に出る(フォローする)のは至難の業だぜ
※「hard act to follow」は、前の出演者が素晴らしすぎて、次の出演者がやりづらいというショービジネスの用語。自分のヴァースが完璧すぎて他のMCは太刀打ちできないという自負。

I dealt for dolo, Bogart comin' on through
俺は一人(ドロ)でさばく、ボガートが通るぜ
※「dolo」は単独、一人。「Bogart」は映画俳優ハンフリー・ボガートから転じたスラングで、大麻のジョイントを回さずに独り占めすること、あるいは強引に自分の道を押し通る人物を意味する。群れずに我が道を行くMethod Manのスタンス。

Niggas is like, "Oh, my God, not you!"
野郎共は言うんだ「オー・マイ・ゴッド、お前だけは勘弁してくれ!」ってな
※バトルを挑んできた相手が、現れたのがMethod Manだと気づいて絶望する様子。

Yes, I come to get a slice of the punk and the pie
そうさ、俺はパンク野郎(の命)と、パイ(利益)の一切れを貰いに来たんだ
※音楽業界の利益(パイ)を奪うと同時に、立ち塞がる邪魔者(パンク)を排除する。

Rather do than die, check my flavor
死ぬくらいなら、やる(実行する)方を選ぶぜ、俺のフレーバーをチェックしな

Comin' from the RZA, which is short for The Razor
RZAからやって来たんだ、それは「ザ・レイザー(カミソリ)」の略さ
※RZAのビートとMethod Manのラップの完璧な連携。「RZA」の語源の一つが「Razor(鋭利な知性とビート)」であることをリスナーに提示している。

Who make me reminisce true like déjà vu
デジャヴみたいに、本当の記憶を呼び起こさせてくれる奴さ
※RZAの作るオールドスクールな魂を持ったビートが、深い郷愁や真実を思い出させる力を持っている。

I'm rubber, niggas is like glue
俺はゴム(ラバー)だ、お前らは接着剤(グルー)さ
※次の行へ続くセットアップ。

Whatever you say rubs off me, sticks to you
お前が何を言おうと、俺からは弾き返されて(ラバー)、お前自身にくっつく(グルー)んだよ
※アメリカの子供たちの有名な言い返し文句「I'm rubber, you're glue; whatever you say bounces off me and sticks to you(私はゴムで、あなたは接着剤。あなたの悪口は私には弾かれて、あなたにくっつく)」の引用。ヘイターからのディスは一切効かず、すべて相手の自爆に終わるというユーモラスな勝利宣言。

[Chorus: RZA]

Wu-Tang Clan ain't nuthin ta fuck wit!
ウータン・クランとは絶対に関わるんじゃねえぞ!

Wu-Tang Clan ain't nuthin ta fuck wit!
ウータン・クランとは絶対に関わるんじゃねえぞ!

Wu-Tang Clan ain't nuthin ta fuck wit!
ウータン・クランとは絶対に関わるんじゃねえぞ!

Wu-Tang Clan ain't nuthin ta fuck wit! (Fuck wit)
ウータン・クランとは絶対に関わるんじゃねえぞ!(関わるな)

[Outro: RZA]

Ahh-hah! Yeah!
アハハ! イェア!
※ここからRZAによる、全米各地のフッドや業界関係者への怒涛のシャウトアウトが始まる。ヒップホップにおける「レペゼン(代表する・連帯を示す)」の極み。

Representin' Brooklyn, Queens, Long Island, Manhattan, Bronx
ブルックリン、クイーンズ、ロングアイランド、マンハッタン、ブロンクスをレペゼンするぜ
※ニューヨークの各行政区への挨拶。

The Rugged Lands of Shaolin
そして、少林(スタテンアイランド)の荒れ果てた土地にな
※彼らの本拠地であるスタテンアイランドを特別に力強く呼称する。

Niggas from Virginia, Atlanta, our boys in Ohio
バージニア、アトランタの野郎共、オハイオの俺たちのダチたち
※東海岸南部から中西部への連帯。

Comin' through with the crazy Y-O Y-O
クレイジーなヨンカース(Y-O)の奴らと一緒に乗り込むぜ
※「Y-O」はニューヨーク州ヨンカース(Yonkers)。Mary J. BligeやDMXらの出身地。

Yo, niggas from The Source
ヨォ、『The Source』誌の野郎共
※当時ヒップホップ界で最も権威があった雑誌。メディアも味方につける戦略。

My man Kelly Woo from the Gavin
『Gavin Report』の俺のマイメン、ケリー・ウー
※「The Gavin Report」はラジオ業界誌。ラジオでのエアプレイ(宣伝)に貢献してくれた関係者への感謝。

Will Strickland, Jason Staton, yeah
ウィル・ストリックランド、ジェイソン・ステイトン、イェア
※当時の音楽業界やプロモーションに関わっていたキーパーソンたちの実名。

True, true, my nigga Crown, what's goin' down, boy?
間違いない、俺のダチのクラウン、調子はどうだ、坊や?
※ストリートの仲間への呼びかけ。

We ain't nuthing ta fuck wit
俺たちとは絶対に関わるんじゃねえぞ

The whole Texas mob, the Chicago mob
テキサスのモブ(組織)全体、シカゴのモブ

Niggas from Detroit, fuckin' California squadron
デトロイトの野郎共、カリフォルニアのクソ部隊(スクアドロン)

Comin' through, you know what I'm sayin'?
みんな通り抜けていくぜ、俺の言ってる意味分かるか?
※Wu-Tangの音楽が全米の過酷な都市のギャングやハスラーたちに支持されているという誇示。

The whole fuckin' West Coast to the whole East
西海岸全域から、東海岸全域までな

Niggas from D.C., down in Maryland
D.C.の野郎共、南のメリーランド

All the way over there in Morgan State
はるか向こうのモーガン州立大学の連中まで
※「Morgan State」はメリーランド州ボルティモアにあるHBCU(歴史的黒人大学)。黒人コミュニティのインテリ層や学生たちにも自分たちの音楽が届いていることを示す。

Wu-Tang Clan ain't nuthing ta fuck wit
ウータン・クランとは絶対に関わるんじゃねえぞ

All over the whole fuckin' globe, comin' through, boy
このクソ地球全体に響き渡るぜ、坊や
※全米制覇を超え、世界征服への野望。

Peace to the fuckin' Zulu Nation
ズールー・ネーションにピース
※「Universal Zulu Nation」はアフリカ・バンバータが創設したヒップホップの平和的・文化的啓蒙組織。ヒップホップのルーツと先人への敬意。

Peace to all the Gods and the Earths, word is bond
すべての神々(黒人男性)と地球(黒人女性)にピース、マジな話だ
※「Gods and Earths」はFive Percent Nationの教義に基づく同胞への呼びかけ。グループの精神的基盤。

Wu-Tang slang, choppin' heads, boy
ウータンのスラングが、首を切り落としていくぜ、坊や

It ain't safe no more, peace!
この業界はもう安全じゃねえよ、ピース!
※既存のラッパーたちにとって、Wu-Tangがシーンに現れたことで安住の地はなくなったという究極の宣戦布告で幕を閉じる。