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Can It Be All So Simple / Intermission - Wu-Tang Clan 【和訳・解説】

Artist: Wu-Tang Clan

Album: Enter the Wu-Tang (36 Chambers)

Song Title: Can It Be All So Simple / Intermission

概要

本楽曲は、Wu-Tang Clanのデビューアルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』において、ストリートの過酷な現実と郷愁、そしてグループの未来への野望を繋ぐ極めて重要な転換点である。前半「Can It Be All So Simple」では、Gladys Knight & The Pipsの「The Way We Were / Try to Remember」の哀愁漂うボーカルとギターフレーズをRZAが見事にサンプリング。RaekwonとGhostface Killahが、麻薬や銃撃戦にまみれた過去のトラウマを振り返りつつ、音楽による成功と平和な暮らしへの渇望をシネマティックに描写する。一転して後半の「Intermission(休憩時間)」では、Method Manの語りを通じてWu-Tangを構成する各メンバーの特異なキャラクターや役割(GZAを頭脳とする「ボルトロン」のメタファーなど)が解説され、音楽業界を支配(Domination)し、次世代へ遺産を残すという強固な決意が宣言される。ハードコアな暴力性の中に見え隠れする彼らの哲学と人間性が最も色濃く表れた名曲である。

和訳

[Part I: Can It Be All So Simple] [Skit]

[RZA]: Fuck yo, we gotta get this fucking loot baby
[RZA]: クソッ、ヨォ、俺たちこの金(ルート)を稼がなきゃなんねえんだよ、ベイビー
※「loot」は戦利品や大金。ストリートのハッスルから音楽業界へと戦場を移し、成功を掴み取るというRZAの強い決意。

We gotta get this loot
どうしてもこの大金を手に入れないとな

Yo back, remember back in the days
ヨォ、昔のことを覚えてるか

When shit, everything was all smooth and calm and shit was like
クソッ、あの頃は全てがスムーズで穏やかで、まるで…

[GFK]: Smoke that bone, nigga
[Ghostface Killah]: そのボーン(ジョイント)を吸いな、兄弟
※「bone」はマリファナを巻いたジョイント。思い出話に耽るRZAを促している。

[RZA]: Yo man, yo I'm doing it God, I'm doing it man
[RZA]: ヨォ、おい、今吸ってるところだぜ、神よ、やってるさ
※「God」はFive Percent Nationにおける黒人男性同士の尊称。互いを神と呼び合う彼らの文化的背景。

I'm saying, back in like in '70, fucking '79
俺が言いたいのはさ、昔、そう、1970年とか、クソみたいな79年のことだよ

[Mef]: Everybody was on your line man
[Method Man]: みんながお前の電話(ライン)を鳴らしてた頃だな、兄弟
※ストリートで顔が広く、ドラッグの取引などで絶えず連絡が来ていたハスラー時代を指す。

[RZA]: Nah, '87, that was my favorite shit God
[RZA]: いや、87年だ、あの頃が最高だったぜ、兄弟

Polo shit, everything, everything was lovely
ポロの服とかよ、全てが、全てが最高(ラブリー)だったんだ
※「Polo」はラルフローレン。1980年代後半のニューヨークで流行した「Lo-Life(ラルフローレンを万引きして全身を着飾るギャング集団)」カルチャーに言及。彼らにとって高級ブランドを着ることは、ゲットーからの脱却と成功の象徴だった。

Yo get the fuck out the rain nigga
ヨォ、雨の中から早く出ろよ、兄弟
※スタテンアイランドの雨降る路地裏での情景が浮かぶ生々しい描写。

Oh shit, who the fuck is that? Fuck
おいクソッ、あれは一体誰だ? クソが
※突然の不穏な空気に警戒心をあらわにする。

Ayo Ghost, ayo Rae, what's up with y'all niggas?
エイヨォ、ゴースト、エイヨォ、レイ、お前らどうしたんだよ?

Man, what the fuck you nigga, ah
おい、お前ら一体何なんだ、あぁ
※スキットが途切れ、郷愁を帯びたビートへとシームレスに繋がっていく。

[Intro: Gladys Knight & Raekwon]

Hey, you know, everybody's talking about the "good old days," right? Everybody! The good old days
[Gladys Knight サンプリング]: ねえ、みんな「古き良き時代」について語り合ってるわよね? 誰もがね! あの古き良き時代を
※R&Bのレジェンド、Gladys Knight & The Pipsのカバーメドレー「The Way We Were / Try to Remember」からのサンプリング。残酷なストリートの現実と、美化された過去へのノスタルジーを見事に対比させるRZAのプロデュースの真骨頂。

Well, let's talk about the good old days!
さて、あの古き良き時代について語りましょうか!

Know what I'm sayin'?
[Raekwon]: 俺の言ってる意味、分かるか?

Take you on this lyrical high real quick
お前らをこのリリックのハイな気分に一気に連れてってやるぜ

1993 exoticness, know what I'm sayin'?
1993年のエキゾチックさ(異国情緒)だ、分かるか?
※「exoticness」は、彼らの音楽が当時のヒップホップシーンにおいて、いかに規格外で独自のもの(カンフー映画のサンプルやFive Percenterの哲学)であったかを自負する言葉。

Let's get technical; where's your bone at?
テクニカルに行こうぜ。お前のボーン(大麻)はどこにある?

Get up on that shit, a'ight? Yo!
そのクソヤバい気分に乗っかってきな、いいか? ヨォ!

[Verse 1: Raekwon]

Started off on the island, aka Shaolin
俺の始まりはあの島、別名「少林(シャオリン)」だ
※「the island」はニューヨークのスタテンアイランド。Wu-Tangのメンバーは自分たちの地元を、カンフー映画の聖地である「少林寺」になぞらえて呼んでいた。

Niggas wilin', gun shots thrown, the phone diallin'
野郎どもは暴れ回り、銃弾が飛び交い、電話が鳴り響いてた
※「wilin'」は wilding(暴れる)。ドラッグの取引(電話)と抗争(銃撃)が日常茶飯事だったゲットーの描写。

Back in the days, I'm 8 now
あの頃に戻ろう、俺は今8歳だ
※記憶のフラッシュバック。

Makin' a tape now, Rae gotta get a plate now
ミックステープを作って、レイは自分の皿(メシ)を手に入れなきゃならなかった
※「plate」は食事=生きるための金。幼い頃から音楽(テープ)を作りつつも、過酷な環境で自活しなければならなかったハングリー精神。

Ignorant and mad young, wanted to be the one
無知でクソ若くて、特別な存在(ナンバーワン)になりたかったんだ

'Til I got (Blaow! Blaow! Blaow!) felt one
俺自身が(ブラウ!ブラウ!ブラウ!)一発喰らう(撃たれる)まではな
※「felt one」は銃弾の痛みを「感じる」こと。ストリートの王を夢見ていた少年が、実際の銃撃戦で被弾し、死の恐怖という現実を突きつけられた瞬間。

Yeah, my pops was a fiend since 16
ああ、俺の親父は16歳の頃からジャンキー(フィーンド)だった
※「fiend」は麻薬中毒者。Raekwonの父親が若い頃からヘロイン中毒であったという痛ましい家族の背景。

Shootin' that "that's that shit!" in his blood stream
「これこそ最高(のクスリ)だ!」って言いながら、血流に注射を打ってたんだ
※ヘロインを静脈注射(shoot)する生々しい描写。ドラッグが家庭を崩壊させていく様を冷徹に振り返る。

That's the life of a grimy, real-life crimey
それが薄汚れた、現実の犯罪者(クライミー)の人生ってやつさ

And niggas know that habit's behind me
だが仲間たちは知ってるぜ、俺はそんな悪習(ハビット)はもう過去に置いてきたってな
※親の世代からの麻薬の連鎖を断ち切り、自分は音楽で這い上がったという誇り。

Day one, yo, growin' all up in the ghetto
初日からだ、ヨォ、ゲットーのど真ん中で育ってきてな

Now I'm a weed fiend jettin' to Palmetto
今じゃ俺はウィード(大麻)のフィーンドになり、パルメット通りへ急行してる
※「Palmetto」はブルックリンのブッシュウィック地区にある通りの名前。ヘロイン中毒の父親とは違い、自分は大麻愛好家としてブルックリンのハッスル拠点へと向かっている。

In Medina, yo, no doubt, the god got crazy clout
メディナの中じゃ、ヨォ、間違いない、この神(俺)はヤバいほどの影響力(クラウト)を持ってるぜ
※「Medina(メディナ)」はイスラム教の聖地だが、Five Percent Nationの教義では「ブルックリン」を意味する。

Pushin' the big joint from down South
南部からデカいジョイント(麻薬の塊)をさばいてる(プッシュする)んだ
※「down South」はマイアミなどの南部地域。そこから運ばれてくる大量のドラッグを売りさばく大物ハスラーとしての姿を描写。

So if you're filthy stacked up, better watch your back and duck
だから、もしお前が汚い金(フィルシー)を山ほど貯め込んでるなら、背後に気をつけて身を屈めた方がいいぜ
※「filthy stacked up」は違法な手段で大金を稼いでいる状態。Raekwonのようなハングリーなハスラーから強盗に狙われるという警告。

'Cause these fiends, they got it cracked up
なぜならこの中毒者共は、クラック(コカイン)で完全にイカれちまってるからな
※クラック・コカインの蔓延がストリートの倫理を破壊し、誰もが予測不能な強盗に変わるという80〜90年代の社会不安。

Now my man from up North, now he got the loft
今度は北部から来た俺のダチの話だ、あいつはロフト(隠れ家)を持ってる
※「up North」はアップステート・ニューヨーク(州北部)。

It's solid as a rock and crazy salt
そこは岩みたいに強固で、最高に塩対応(ソルト)だぜ
※「solid as a rock」はクラック(コカインの岩)のこと。「crazy salt」は純度が高く塩のように真っ白なドラッグ、あるいは冷酷無比(salty)な態度を意味するダブルミーニング。

No jokes, I'm not playin', get his folks
冗談じゃねえ、遊びじゃないんだ、奴の家族を捕まえろ
※対立するディーラーへの非情な報復。当人だけでなく家族(folks)をも人質に取るストリートの冷酷な掟。

Desert Eagle his dick and put him in a yoke
デザートイーグルを奴の股間に突きつけ、ヘッドロック(ヨーク)をかけてやれ
※「Desert Eagle」は威力の高い大型自動拳銃。「yoke」は腕で首を絞め上げる(ヘッドロック)こと。極限の拷問描写。

And to know for sure, I got reck and rip shop
確実に(口を割らせる)ために、俺はブチギレて店(シマ)をめちゃくちゃにする(リップ・ショップ)
※「rip shop」は徹底的に破壊する、大暴れするの意。

I pointed a gat at his mother's knot
俺はガット(銃)を、奴の母親の頭(ノット)に突きつけたんだ
※「gat」は銃、「knot」は頭(または札束)。金庫の場所やドラッグの隠し場所を吐かせるため、母親の命すら脅かす血も涙もないハスラーの狂気。

(Yo, yo, Rae, don't do that shit, man! Don't do that shit!)
(ヨォ、ヨォ、レイ、そんな事やめとけって! やめろ!)
※仲間からの制止の声。度を越した暴力への恐怖。

Fuck that!
クソ食らえだ!
※制止を振り切るRaekwonの叫びと共に、感傷的なコーラスへと雪崩れ込む。

[Chorus: Raekwon, Ghostface Killah & Gladys Knight]

Dedicated to the winners and the losers
勝者と敗者に捧げるぜ
※ストリートの抗争で生き残った者(勝者)と、命を落としたり刑務所に入った者(敗者)へのレクイエム。

Dedicated to all Jeeps and Land Cruisers
すべてのジープとランドクルーザーに捧げる
※当時、成功したハスラーやラッパーのステータスシンボルであった高級SUV。

Can it be that it was all so simple then?
あの頃は、すべてがこんなにもシンプルだったって言うのか?
※Gladys Knightのサンプリング。子供時代の純粋さや、まだ規模が小さかった昔のストリートへのノスタルジー。金や名声を手にするにつれ、人生がいかに複雑で血塗られたものになってしまったかを嘆くメインテーマ。

Dedicated to the 5's, 850i's
BMWの5シリーズと、850iに捧げるぜ
※「5's」はBMW 5シリーズ、「850i」はBMWの最高級クーペ。これらも成功の証。

Dedicated to niggas who do drive-by's
ドライブバイ(車からの銃撃)をやる野郎どもに捧げる
※高級車に乗る成功者だけでなく、その車を使って殺人を犯すギャングたちにも言及することで、ストリートの光と影を同列に扱う。

Can it be that it was all so simple then?
あの頃は、すべてがこんなにもシンプルだったって言うのか?

Dedicated to the Lexus and the Ac's
レクサスとアキュラ(Ac)に捧げるぜ

Dedicated to MPV's: phat!
マツダ・MPVにも捧げるぜ、最高(ファット)だ!
※「MPV」は当時アフリカ系アメリカ人コミュニティで非常に人気があったミニバン(クルー全員で乗れるため)。

[Verse 2: Ghostface Killah & Raekwon]

Kickin' the fly clichés, doin' duets with Rae and A
イケてる決まり文句(クリシェ)をキックして(ラップして)、レイやAとデュエットしてる
※Ghostface Killahのヴァース。「A」については諸説あるが、Ason Unique(ODBの別名)やAbbot(RZAの別名)など、Wu-Tangの仲間たちと解釈される。

Happens to make my day
それが俺の最高の一日になるんだ

Though I'm tired of bustin' off shots, havin' to rock knots
銃をブッ放すのにも、札束(ノット)を稼ぐ(または人の頭を殴る)のにもウンザリしてるのにな
※「bustin' off shots」は銃撃戦。「rock knots」は麻薬取引で分厚い札束を作ること、あるいは暴力で他人の頭(knot)にコブを作ることのダブルミーニング。ストリートライフへの疲弊と嫌悪感を吐露している。

Runnin' up in spots and makin' shit hot
あちこちの現場に押し入って、事態をホット(危険)にするのもな
※「makin' shit hot」は警察の目を引くような派手な犯罪や発砲事件を起こすこと。

I'd rather flip shows instead of those
そんなことより、俺はライブのショウをひっくり返したい(沸かせたい)んだ
※犯罪で金(ドラッグ)をフリップ(転売)するのではなく、マイクを握って音楽で正当に稼ぎたいという切実な願い。

Hangin' on my livin' room wall, my first joint and it went gold!
リビングルームの壁には、ゴールドディスクになった俺の最初の曲(ジョイント)が飾ってある!
※「joint」はマリファナ、または楽曲のこと。デビュー曲が成功し、犯罪から抜け出せるという希望の象徴。

I want to lamp, I want to be in the shade
俺はリラックス(ランプ)したい、日陰で静かに過ごしたいんだ
※「lamp」は街灯の下でチルする(休む)というスラング。常に命を狙われるヒリヒリした生活から解放されたいという願望。

Plus the spotlight, gettin' my dick rode all night
それにスポットライトを浴びて、一晩中女に俺の股間を乗馬(ライド)されたいね
※スターとしての名声と性的な快楽という、若きラッパーの率直な欲望。

I want to have me a phat yacht
バカでかい(ファットな)ヨットも手に入れたいし

And enough land to go and plant my own sess crops
自分の大麻(セス)の作物を育てるための、十分な土地も欲しい
※「sess」はシンセミリア(種無しでTHC濃度の高い最高級のマリファナ)。マイアミの麻薬王(スカーフェイス)のような豪遊への憧れ。

But for now it's just a big dream
だが、今のところはただのデカい夢に過ぎねえ
※現実への引き戻し。

'Cause I find myself in a place where I'm last seen
なぜって、俺は最後に目撃されたのと同じ場所(ストリート)から、まだ抜け出せてないんだからな
※音楽で成功を夢見ても、依然として危険なゲットーの環境(または警察に監視される状況)に縛り付けられているジレンマ。

My thoughts must be relaxed, be able to maintain
思考をリラックスさせて、正気を保たなきゃならねえ

'Cause times is changed and life is strange
時代は変わっちまったし、人生ってのは奇妙なもんだからな
※「Can it be all so simple then?」のテーマに呼応するライン。

The glorious days is gone and everybody's doin' bad
栄光の日々は過ぎ去り、誰もが悪いこと(貧困や犯罪)に手を染めてる
※80年代のクラック・エピデミック(大流行)以降、コミュニティが荒廃してしまったことへの嘆き。

Yo, mad lives is up for grabs
ヨォ、数え切れないほどの命が、いつ奪われてもおかしくない状態(up for grabs)だ
※誰もが銃を持ち、命の価値が極端に軽くなってしまったストリートの現実。

Brothers passin' away, I gotta make wakes
兄弟たちが次々と死んでいく、俺は葬式(ウェイク)に顔を出さなきゃならねえ
※「wake」は通夜や葬儀。

Receivin' all types of calls from Upstate
アップステート(刑務所)からの、ありとあらゆる電話を受け取ってるんだ
※「Upstate」はニューヨーク州北部。アッティカ刑務所など、重警備の刑務所へ送られた仲間たちからのコレクトコール。死か投獄かという二択の過酷さ。

Yo, I can't cope with the pressure, settlin' for lesser
ヨォ、このプレッシャーにはもう耐えきれねえ、妥協して安月給(lesser)に甘んじるのも無理だ
※犯罪の恐怖にも、底辺の合法的な労働にも耐えられないという行き場のない焦燥感。

The God left lessons on my dresser
神(ザ・ゴッド)が、俺のタンス(ドレッサー)の上にレッスン(教典)を置いていってくれた
※「The God」はRZA、あるいはFive Percent Nationの導師を指す。「lessons」は120 DegreesやSupreme Mathematicsと呼ばれるFive Percenterの教義・テキスト。精神的な救済と自己認識への目覚め。

So I can bloom and blossom, find a new way
だから俺は花を咲かせ、新たな道を見つけることができるんだ

Continue to make more hits with Rae and A
これからも、レイやAと一緒にヒット曲を作り続けていくぜ

Sunshine plays a major part in the daytime
太陽の光(サンシャイン)が、昼間には重要な役割を果たす
※教義による啓蒙(光)が自分の人生を照らしてくれるという比喩。または、平和な昼間の光景を愛でる精神的余裕。

Peace to mankind, Ghostface carry a black nine, nigga
人類に平和(ピース)を、だがゴーストフェイスは黒い9ミリ拳銃(ブラック・ナイン)を持ち歩くぜ、兄弟
※悟りを開き平和(Peace)を願いつつも、現実のストリートを生き抜くためには銃(black nine)を手放すことはできないという、Ghostfaceの壮絶なパラドックス。ヒップホップ屈指のパンチライン。

Word up, it's all like that… yeah
マジだぜ、世の中ってのはそういうモンさ…ああ

[Part II: Intermission] [Method Man]

It's like this, I'ma start from the top
[Method Man]: こんな感じさ、まずはトップ(最初)から始めるぜ
※後半のインタールード(休憩時間)。不穏なピアノのループの上で、Method ManがWu-Tangの各メンバーの特性をファンに向けて解説し始める。

Inspectah Deck, he's like
インスペクター・デック、あいつはまるで…

He's like that dude that'll sit back and watch you
あいつは一歩引いて座りながら、お前のことをじっくり観察してるような奴さ

Play yourself and all that, right?
お前がボロを出す(自滅する)のを見届けるんだ、だろ?
※「play yourself」は自分を過大評価して墓穴を掘ること。Deckの常に冷静で客観的な視点。

And see you sit there and know you lyin'
そこでお前が嘘をついてるのを完全に見抜いてるんだ

And he'll take you to court after that
そしてその後、あいつはお前を法廷(コート)へと引きずり出すのさ
※「take you to court」はラップバトルで相手の嘘を白日の下にさらし、処刑すること。

'Cause he the Inspectah, that's why he the and
なぜならあいつは「インスペクター(捜査官)」だからな、だからあいつは…

And also he the Rebel I.N.S
それに、あいつは「レベル(反逆者)I.N.S」でもあるんだ
※Inspectah Deckの別名。真実を捜査し、嘘だらけのシーンに反逆する存在。

You know what I'm sayin'?
言ってる意味、分かるか?

And Shallah Raekwon, he the Chef
そしてシャラ・レイクウォン、あいつは「シェフ(料理人)」だ
※「Shallah」はRaekwonのFive Percenterとしての名前の要素。

He cookin' up some marvelous shit to get your mouth waterin'
あいつは、お前のヨダレが垂れるような、最高にマーベラスな代物を調理する(クック・アップ)のさ
※「cook up」はストリートではコカインを熱してクラックを製造することを意味するが、ここでは「最高のリリック(音楽)を生み出す」という才能のメタファー。

On some "oh shit"
「おお、クソッ(ヤバいぜ)」ってなるようなヤツをな

Then, then it's, then it's the Method Man
それから、次はこのメソッド・マンだ

It's like mad different methods to the way I do my shit
俺のやり方(ラップスタイル)には、クソほど多様なメソッド(手法)があるってことさ
※変幻自在のフロウを操る自身の名前の由来。

[Raekwon]

You gotta smoke a bean in here, anyhow
[Raekwon]: とにかく、ここではビーン(大麻)を吸わなきゃな
※背後からのRaekwonの合いの手。「bean」はマリファナやドラッグの隠語。

[Method Man]

And I'm tellin' you, mine
[Method Man]: だから言ってんだろ、俺のメソッドは…

Basically Method Man is like
基本的にメソッド・マンってのは…

Roll that shit, light that shit, smoke it
そのクソ(大麻)を巻いて、火をつけて、吸い込むってことさ
※Method Manのラップが、極上のマリファナのようにリスナーを気持ちよくハイにさせる効果があるという宣言。彼の代表曲「Method Man」のコーラスからの引用。

And then Baby U, he a psychopathic
それからベイビーU(U-God)、あいつはサイコパスだ
※「Baby U」はU-Godの別名。

He a psychopathic thinker
あいつはサイコパス的な思想家(シンカー)なんだよ
※U-Godの低音ボイスから放たれる、常軌を逸した独特の言語感覚と凶暴な思考。

And and, then we got, then we got the Ol' Dirty Bastard
そして、次に出てくるのは、オール・ダーティ・バスタード(古くて汚い私生児)だ

'Cause there ain't no father to his style
なぜなら、あいつのスタイルには「父親(オリジネーター)」がいねえからさ
※「Bastard(私生児・父親不明の子)」という名前の由来を解説。誰の真似でもない、完全に唯一無二の狂気のスタイルであることを最大の賛辞として語っている。

That's why he the Ol' Dirty Bastard
だからあいつはオール・ダーティ・バスタードなんだよ

Ghostface Killah, you know what I'm sayin'?
ゴーストフェイス・キラ、言ってる意味分かるか?

He on some "now you see me, now you don't"
あいつは「今お前には俺が見えてるが、次の瞬間には見えなくなる」って感じの奴さ
※幽霊(Ghost)のように、ビートの上に突然現れては消える、予測不能で実態の掴めない幻惑的なフロウ。

Know what I'm sayin'? And and, the RZA
言ってる意味分かるか? そして、RZA(レザ)だ

He the sharpest motherfucka in the whole Clan
あいつは、クラン全体の中で一番鋭い(シャープな)クソ野郎さ
※「razor(カミソリ)」と「RZA」を掛けた表現。

He always on point, razor sharp
あいつは常に的確(オン・ポイント)で、カミソリみたいに鋭利(レイザー・シャープ)なんだ

With the beats, with the rhymes, whatever, any DJ
ビート作りでも、ライムでも、DJでも、何をやらせてもな
※Wu-Tangのマスターマインド(総帥)であるRZAの才能への絶対的な信頼。

[Raekwon]

And the GZA, the G is just the Genius
[Raekwon]: そしてGZA(ジザ)、このGはまさに「天才(Genius)」を意味してる
※GZA(The Genius)はグループ最年長であり、最も哲学的なリリシスト。

He, he's the backbone of the whole shit
あいつが、俺たち全体のバックボーン(背骨)なんだよ

[RZA]

It's self-explanatory, Genius, word
[RZA]: 説明するまでもないな、「天才」ってことさ、マジで

[Method Man]

He the head, let's put it that way
[Method Man]: あいつは俺たちの「頭脳(ヘッド)」だ、そう言っておこう

We form like Voltron, and GZA happen to be the head
俺たちは「ボルトロン」みたいに合体するんだが、GZAはその頭(ヘッド)の部分になるってわけさ
※「Voltron(ボルトロン)」は、複数のロボットが合体して一つの巨大ロボットになるアメリカのアニメ(日本の『百獣王ゴライオン』等)。9人の個性が集結してWu-Tangという無敵の存在になるというヒップホップ史に残る有名な比喩表現。そしてGZAがそのブレインであることを示している。

You know what I'm sayin'?
言ってる意味、分かるか?

[Interviewer]

Yeah, yeah, that's cool
[Interviewer]: ええ、ええ、それはクールですね
※インタビュー形式に切り替わる。

So what's like, I mean what's like
それで、つまり、あなたたちの…

Your ultimate goal against in this in this industry?
この音楽業界における、究極の目標(アルティメット・ゴール)とは何ですか?

[Method Man]

Domination, baby, fuck that
[Method Man]: 「支配(ドミネーション)」だよ、ベイビー、クソ食らえだ
※単なるヒットや金儲けではなく、ヒップホップシーンそのものをWu-Tangの帝国として完全に支配するという圧倒的な野望。この宣言通り、彼らはその後の数年間で業界を文字通り支配することになる。

[Raekwon]

Can I say this one? Can I say this one?
[Raekwon]: 俺からも一つ言っていいか? 言わせてくれ

Right now, right now, we still, we still
今のところ、今の時点では、俺たちはまだ…

Feel like we ain't get what we want yet
自分たちが欲しいものを手に入れてないって感じてるんだ

When we get, when we get, when we get a little props
俺たちが、もう少しまともなプロップス(評価・尊敬)を得て…

And really really get the way we gotta go
そして、俺たちが進むべき道を本当に、本当に掴んだ時…

That's when you know it's on
その時こそ、事態が「始まった(It's on)」ってのがお前らにも分かるはずさ
※デビュー直後のまだアンダーグラウンドな立ち位置に対する飢餓感。

You know what I'm sayin'?
言ってる意味、分かるか?

'Cause right about now, I ain't braggin' or nothin'
なぜなら今現在、俺は自慢(ブラッグ)してるわけでも何でもないが…

But yo, the Wu, the Wu got somethin'
ヨォ、ウータンは、俺たちウータンは「何か」を持ってるんだ

That I know that everybody wanna hear
それは、誰もが聴きたがってる「何か」だってことを俺は知ってる

'Cause I know I've been waitin' to hear
なぜなら俺自身が、ずっとそんな音楽を聴きたくて待ってたからな
※西海岸のGファンク全盛期において、東海岸のリアルで埃っぽいハードコア・ヒップホップをリスナーが渇望していることへの確信。

You know what I'm sayin'?
言ってる意味、分かるか?

But straight up and down, 'til we get the goal
だが真面目な話、目標を達成するまで…

We gon' keep goin'
俺たちは絶対に立ち止まらずに進み続けるぜ

[Method Man]

Yeah, 'cause we tryin' to do all this
[Method Man]: ああ、俺たちがこれらすべてをやろうとしてるのは…

We tryin' to make a business outta this, man
俺たちはこの音楽から、確固たる「ビジネス」を作り上げようとしてるからだ、兄弟
※ただのストリートギャングの集まりではなく、Wu-Tangロゴのアパレル展開など、独自の経済圏を築き上げるというRZAのマスタープランへの言及。

We ain't tryin' to-- know what I'm sayin'?
俺たちはこんな事はしたくねえんだ、分かるか?

Affiliate ourselves with them fake-ass A&Rs and all that
あのフェイクなクソA&R(レコード会社の新人発掘・育成担当)どもとつるむようなマネはな
※アーティストを搾取するレコード会社のシステムに組み込まれることを拒絶するインディペンデント精神。

We tryin' to make our own shit
俺たちは自分たち自身で、独自のクソヤバいシステムを作ろうとしてるんだ

So that when our children, word
そうすれば、俺たちの子供たち(チルドレン)が、マジな話…

So that when our children, all our seeds and whatever
俺たちの子供たちや、俺たちのすべての種(シーズ=子孫)が…

They got somethin' for theyselves right there
あいつらが自分たちのために残された「財産(何か)」を、そこで手に入れられるようにな
※ストリートの暴力の連鎖(Verse 1でのRaekwonの父親の話など)を自分たちの代で終わらせ、次世代(seeds)へ富と権利を正当に継承させるという、黒人コミュニティにおける極めて切実で崇高なビジネスの目的。

[Ghostface Killah]

We ain't tryin' to hop in and hop out right quick
[Ghostface Killah]: 俺たちは、ポッと出ですぐに消えていく(ホップイン・ホップアウトする)ようなつもりはねえよ

Know what I'm sayin'?
言ってる意味、分かるか?

We out for the Gusto, and we gon' keep it raw
俺たちは本気で「ガスト(最高のもの・すべて)」を狙いにいく、そして俺たちはいつまでも「ロウ(生々しさ)」を保ち続けるぜ
※「go for the gusto」は全力で最高の結果を求めること。「raw」は彼らの音楽の根幹である粗削りなハードコアさ。商業的に大成功しても魂(ルーツ)は売らないという力強い宣誓。

You know what I'm sayin'? (Word)
言ってる意味、分かるか?(マジだぜ)
※アルバム後半への期待を高めたままインタールードが終了する。