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Shame on a Nigga - Wu-Tang Clan 【和訳・解説】

Artist: Wu-Tang Clan

Album: Enter the Wu-Tang (36 Chambers)

Song Title: Shame on a Nigga

概要

本作は、ヒップホップ界における歴史的傑作『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』に収録された、Wu-Tang Clanの予測不能なエネルギーを象徴する楽曲である。シル・ジョンソンの「Different Strokes」からサンプリングされた跳ねるようなホーンループと、セロニアス・モンクの「Black and Tan Fantasy」のフレーズが絡み合うRZAの土臭いビート上で、Ol' Dirty Bastard(ODB)の狂気的なフロウが炸裂する。「俺たちを騙そうとする愚か者には容赦しない」という強烈な警告をテーマに、ODB、Method Man、Raekwonの3名がマイクリレーを展開。洗練された西海岸Gファンクが席巻していた93年当時、あえて不協和音と荒々しいストリートの現実、そして悪趣味なまでのユーモアを前面に押し出した本作は、東海岸ヒップホップのルネサンスを決定づける特異点となった。

和訳

[Intro: Sample, Ol' Dirty Bastard, Method Man, and Raekwon]

[Chorus: Ol' Dirty Bastard]

Shame on a nigga who try to run game on a nigga
俺をハメようとするクソ野郎は痛い目を見るぜ
※「run game」はストリートのスラングで、騙す、利用する、ペテンにかけるの意。Wu-Tangという巨大な組織に対して小手先の騙し討ちを企む他所のハスラーやフェイクなラッパーたちへの痛烈な警告である。ODB特有の荒々しくもリズミカルなフックが曲全体のバイブスを決定づけている。

Wu buck wild with the trigger
ウータンはトリガーを引く時、最高にブッ飛んでるからな
※「buck wild」は理性を失って狂ったように暴れ回ること。銃の引き金を引く(暴力的な報復に出る)際の彼らの容赦のなさと予測不可能性を示している。

Shame on a nigga who try to run game on a nigga
俺をハメようとするクソ野郎は痛い目を見るぜ

Wu buck—I'll fuck your ass up!
ウータンは…てめえのケツをメチャクチャにしてやるよ!
※「buck wild」のフレーズを途中で遮り、突如として直接的で暴力的な脅迫へと切り替わるODBの破天荒なアプローチ。この予測不能な間(ま)と感情の爆発こそがODBの真骨頂である。

[Verse 1: Ol' Dirty Bastard & Raekwon]

Yo, hut one, hut two, hut three—hut!
ヨォ、ハット・ワン、ハット・ツー、ハット・スリー…ハット!
※アメリカンフットボールのクォーターバックがプレイ開始(スナップ)時に発する掛け声。これから始まるWu-Tangの計算し尽くされた(あるいは完全に狂った)連携プレイへの合図である。

Ol' Dirty Bastard, live and uncut
オール・ダーティ・バスタード、生放送のノーカット版だぜ
※自身のラップスタイルが検閲不可能(uncut)であり、粗削りでピュアな状態(麻薬の純度の高さにも掛けられる)であることを誇示している。

Styles unbreakable, shatterproof
このスタイルは絶対に壊せねえ、防弾ガラス仕様だからな
※「shatterproof」は飛散防止(防弾・防刃)のこと。彼らのリリックの強固さと、他からのディスや攻撃を全く受け付けない完璧な防御力を示している。

To the young youth, you wanna get gun? Shoot!
若い連中よ、銃撃戦がしてえのか? なら撃ってみな!
※血の気の多い若手ラッパー(young youth)への挑発。単なる言葉の遊びではなく、ストリートでの実戦経験の差を見せつける余裕を含んでいる。

Blaow! How you like me now? Don't fuck the style
ブラウ!(銃声) 今の俺はどうだ? このスタイルをナメんじゃねえぞ
※「Blaow!」は銃声の擬音。「How you like me now?」はヒップホップにおけるクラシックなフレーズ(Kool Moe Deeの同名曲など)のオマージュであり、圧倒的な実力を見せつけた後の常套句である。

Ruthless, wild—do you wanna
無慈悲でワイルドだぜ…お前ら、マジで
※ODBのフロウが小節の途中で途切れ、次のフレーズへと雪崩れ込む独特のリズム感を生み出している。

Get your teeth knocked the fuck out?
てめえの歯を全部ブチ折られたいのか?
※物理的な暴力による脅迫。ラップバトルにおける敗北を、顔面を殴られて歯を失うほどの致命的なダメージに例えている。

Wanna get on it like that? Well, then, shout!
そういう風にヤリ合いてえのか? なら、叫びな!
※相手の覚悟を問い正しつつ、リスナーに対してはライブでの大合唱を促すようなアジテーション。

[Verse 2: Method Man]

Yo, RZA, yo, razor—hit me with the major
ヨォ、RZA、ヨォ、カミソリみたく鋭いヤツ…極上のビートをくれよ
※「razor」はカミソリ。RZAの作る鋭利でキレのあるビートへのシャウトアウトであると同時に、RZA自身の別名(Ruler Zig-Zag-Zig Allah等)の「Z」の音と掛けた言葉遊び。「major」はメジャー級の強烈なダメージを与えるものを指す。

The damage, my clan understand it, be flavor
この破壊力、俺のクランは分かってるぜ、これが俺たちのフレーバーだ
※彼らの音楽がシーンに与える衝撃(damage)を、身内(clan)はすでに共有し、Wu-Tang独自の「味(flavor)」として昇華しているという宣言。

Gunnin', hummin', comin' at ya
銃を乱射し、鼻歌交じりに、お前らに襲い掛かるぜ
※Method Man特有のスムーズで滑らかな韻の踏み方。「gunnin'」「hummin'」「comin'」と頭韻・脚韻を連続させ、リラックスした状態(鼻歌)で相手を圧倒する冷酷さと余裕を表現している。

First I'm gonna get ya, once I got ya, I gat ya
まずはお前を捕まえる、一度捕まえたら、弾をブチ込むだけだ
※「get ya」と「gat ya(gatは銃で撃つことのスラング)」の言葉遊び。獲物を追い詰め、確実に仕留める一連のプロセスをリズミカルに描写している。

You could never capture the Method Man's stature
メソッド・マンの偉大さ(スタンス)を、お前らが捉えられるわけねえ
※「stature」は名声や身長、器の大きさのこと。独自のフロウと存在感を放つ彼の実像を、他のMCが模倣したり追いついたりすることは不可能であると断言している。

For rhyme and for rapture, got niggas resignin', now master
韻と悦びのためにな、他の野郎共は降参してるぜ、今や俺がマスターだ
※「rapture」は歓喜や有頂天の意。彼の高度なライミングスキルがリスナーを昇天させ、同業者のMCたちを引退(resign)に追い込むほどの圧倒的なものであることを示している。

My style? Never!
俺のスタイルをパクるだと? 絶対に無理だね!
※独自のメソッド(手法)に対する絶対的な自信の表れ。

I put the fuckin' buck in the wild, kid, I'm terror, razor-sharp
俺が「ワイルド」に「バック(狂気)」を注入してやるよ、小僧。俺は恐怖そのもの、カミソリの切れ味だ
※ODBのフック「buck wild」を受け継ぎ、自分がその狂気の中心(buck)であることを宣言している。再び「razor(カミソリ)」というワードを使い、鋭さを強調している。

I sever, the head from the shoulders, I'm better than my compet'ta
お前の肩から首を切り落とすぜ、俺はライバルよりずっと上を行ってる
※カンフー映画の斬首シーンを彷彿とさせる残酷なメタファーで、ライバルのMCたちを完全に沈黙させる様子を描写。

You mean competitor, whatever, let's get together
「コンペティター(ライバル)」って言いたかったんだろ? まあいいや、まとめてかかってこい
※前行で意図的に崩した「compet'ta」という発音を自らツッコミつつ訂正し、「どんな相手でも構わない、一気に相手をしてやる」というメソッド・マンらしいユーモアと余裕を見せつけるライン。

[Chorus: Ol' Dirty Bastard]

Shame on a nigga who try to run game on a nigga
俺をハメようとするクソ野郎は痛い目を見るぜ

Wu buck wild with the tri—blaow!
ウータンはトリガーを引く時…ブラウ!(銃声)
※ここでも「trigger」を最後まで言わせずに銃声(blaow!)で小節を断ち切るという、暴力の突発性を表現した卓越した演出。

[Verse 3: Raekwon]

I react so thick, I'm phat, and yo
俺のリアクションは超濃厚だぜ、俺はファット(最高)だ、ヨォ
※「thick」は分厚い、ドープな。「phat」は最高にクールであるという90年代ヒップホップの代表的スラングだが、同時にRaekwonの恰幅の良い体型への自己言及でもある。

Rae came blowin' and blew off your headphones, black
レイクウォンが嵐みたく現れて、お前のヘッドホンを吹き飛ばすぜ、兄弟
※「blow」はラップすること、または爆発すること。「black」はアフリカ系アメリカ人の仲間を呼ぶ時の親愛を込めたスラング。彼の重低音の効いた声とリリックが、リスナーの聴覚に物理的な衝撃を与えるというメタファー。

Rap from, yo, Cali to Texas
俺のラップは、ヨォ、カリフォルニアからテキサスまで響き渡る
※NY(東海岸)出身でありながら、彼らの音楽の支配力が全米規模(西海岸のCali、南部のTexas)にまで拡大していることを誇示している。

Smoother than a Lexus, now's my turn to wreck this
レクサスより滑らかにな、今度は俺がこの場をブチ壊す番だ
※高級車レクサスのスムーズな乗り心地と自身の流れるようなフロウを掛け合わせたライン。マフィア的なラグジュアリー志向を持つRaekwon(のちのソロ作『Only Built 4 Cuban Linx...』に繋がる世界観)らしさが表れている。

Brothers approach and half step
雑魚どもが近づいてくるが、腰が引けてる(ハーフ・ステップ)ぜ
※「half step」は全力を出さないこと、躊躇すること、または中途半端な実力であること。ビッグ・ダディ・ケインの名曲「Ain't No Half-Steppin'」への敬意を含んだヒップホップ特有の表現。

But ain't heard half of it yet and I bet you're not a fuckin' vet
まだ俺らの実力の半分も聴いちゃいねえだろ、お前なんてただの素人だよ
※「half step」からの「half of it(半分)」という言葉遊び。「vet(veteran=古参、実力者)」でないフェイクなラッパーたちを鼻であしらっている。

So, when you see me on the real
だから、俺をリアルなストリートで見かけたら…
※レコーディングスタジオの中だけでなく、実際の路上における彼らの絶対的な危険性と存在感を強調するための前振り。

Formin' like Voltron, remember I got deep like a Navy Seal
ボルトロンみたく合体するぜ、覚えとけ、俺はネイビーシールズ並みにディープに潜入してるんだ
※「Voltron(百獣王ゴライオン等)」は複数のロボットが合体するアニメ。Wu-Tangの9人のメンバーが集結して巨大な力になることの完璧なメタファーとして機能している。「Navy Seal」は米海軍特殊部隊のことで、ストリートの深淵(deep)に潜み、軍隊並みの殺傷能力と統率力を持っているという宣言。

[Chorus: Ol' Dirty Bastard]

Shame on a nigga who try to run game on a nigga
俺をハメようとするクソ野郎は痛い目を見るぜ

Wu buck wild with the trigger
ウータンはトリガーを引く時、最高にブッ飛んでるからな

Shame on a nigga who try to run game on a nigga
俺をハメようとするクソ野郎は痛い目を見るぜ

I'll fuck your ass up!
てめえのケツをメチャクチャにしてやるよ!

[Verse 4: Ol' Dirty Bastard]

Yo!
ヨォ!
※曲のハイライトとなるODBの狂乱の最終ヴァースの幕開け。

I come with that ol' loco style from my vocal
俺の喉から、あの古き良きイカれた(ロコ)スタイルをブチかますぜ
※「loco」はスペイン語由来のスラングで「狂気」。自身の別名である「Ol' Dirty Bastard(古くて汚いクソ野郎)」に引っかけ、伝統的な手法を狂気に染め上げる自身の独特なボーカルスタイルを宣言。

Couldn't peep it with a pair of bifocals
遠近両用メガネ(バイフォーカル)をかけたって、俺の動きは見切れねえよ
※「bifocals」は遠近両用メガネ。自身の動きやスキルの全貌が、どんなに視力を強化したところで凡人には捉えられないというユーモラスな誇張。

I'm no joker, play me as a joker
俺はジョーカー(冗談を言う奴)じゃねえ、だが俺をジョーカーとして扱え
※「joker」はふざけた奴という意味と、トランプにおける最強のカード(切り札)というダブルミーニング。おどけて見えるかもしれないが、実はシーンを裏返す最凶のジョーカーであるというODBの深い自己分析。

Be on you like a house on fire—smoke ya
火事になった家みたくお前に襲い掛かるぜ…煙に巻いて(殺して)やるよ
※「smoke」は銃で撃ち殺す、または圧倒するというスラング。火事(house on fire)の猛烈な勢いと掛けた言葉遊び。

Crews be actin' like they gangs, anyway
クルー共はギャングのフリしてやがるが、どうでもいいぜ
※見かけ倒しのスタジオ・ギャングスタたちに対する冷笑。

Be like, "Warriors, come out and play!"
いつでも言ってやるよ「ウォリアーズ、出てきて遊ぼうぜ!」ってな
※1979年のカルト映画『ウォリアーズ(The Warriors)』における有名な悪役(ルーサー)の挑発的なセリフの引用。他所のクルーを呼び出し、血祭りに上げるための不気味な招待状。

Burn me, I get into shit, I let it out like diarrhea
俺を燃やしてみろ(ディスってみろ)、面倒事に首を突っ込んで、下痢便みたく全部ブチまけてやるよ
※品性の欠片もない(Dirtyな)究極のスカトロジー・ジョーク。怒りやリリックを抑えきれずに一気に放出する様を、下痢(diarrhea)という強烈な生理現象で表現するODBの真骨頂。

Got burnt once—but that was only gonorrhea
一度だけ燃えた(火傷した)ことはあるぜ…淋病にかかった時だけな!
※「burnt」は「撃たれる/ディスられる」の意味と、性病(gonorrhea=淋病)による排尿時の「焼けるような痛み」を掛けた狂気のパンチライン。自身の性的な放蕩ぶりすらも自己アピールの武器にする圧倒的なユーモア。

Dirty, I keep shit stains in my drawers
ダーティだぜ、俺はパンツの中にウンコのシミをつけたままにしてるからな
※「Ol' Dirty Bastard」という名前の由来を、文字通りの「不衛生さ」で証明してみせる極端なライン。社会の常識を嘲笑うパンク精神の極み。

So I can get fizzy-funky for ya
お前らのために、シュワシュワでファンキーなニオイを漂わせてやるためさ
※「fizzy」は炭酸のようにシュワシュワする様、「funky」は素晴らしいという意味の他に、文字通り「悪臭がする」という意味がある。自分の異常なバイブス(と悪臭)でシーンをかき回すという意気込み。

Murder, taste the flame of the Wu-Tang
殺人だ、ウータンの炎を味わいな
※下品なジョークから一転、Wu-Tangがもたらす本物の死の恐怖へと一瞬でトーンを引き戻す。

Rah! Here comes the Tiger vs. Crane
グルァッ! 「虎対鶴(タイガー・クレーン)」の始まりだ
※カンフーにおける「虎鶴双形拳(Tiger Crane Style)」への言及。敵対するラッパーとのバトルを、中国武術の異種格闘技戦に見立てている。

I'll be like wild with my style
俺のスタイルは最高にワイルドだぜ
※彼の予測不能なカンフー(ラップ)スタイルが型にはまらないものであることを示している。

Punk—you play me, chump, you get jumped
パンク野郎…俺を舐めやがって、間抜けめ、ボコボコにされるぜ
※「get jumped」は複数人で襲われること。Wu-Tangという多人数クルーを敵に回すことの愚かさを警告している。

Wu! is comin' through at a theater near you
ウータンが! お近くの劇場まで乗り込んでくるぜ
※映画の予告編で使われる決まり文句のパロディ。Wu-Tangの音楽自体が、映画のように壮大でドラマチックなスペクタクルであることを示唆している。

And get funk like a shoe
靴の中みたく、最悪にファンク(臭く)してやるよ
※再び「funky」のダブルミーニング。ストリートを歩き回った靴のような土臭さと悪臭(=最高にドープなヒップホップ)をシーンに持ち込むという最後の駄押し。

What?
何だと?
※全てを破壊し尽くした後の、ふてぶてしい締めの一言。聴く者を完全に圧倒した状態で曲は幕を閉じる。