Artist: Wu-Tang Clan
Album: Enter the Wu-Tang (36 Chambers)
Song Title: Bring da Ruckus
概要
本楽曲は、1993年に発表されたヒップホップ史に燦然と輝く金字塔的デビューアルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』のオープニングを飾る極めて重要なアンセムである。RZAによる徹底的にローファイで埃っぽいビート、そして1983年のカンフー映画『少林寺武者房』からの大胆なダイアログ・サンプリングは、当時のメインストリームであった西海岸のGファンクやクリーンなR&B路線に対する強烈なアンチテーゼとして機能した。「大乱闘(Ruckus)を巻き起こせ」という扇動的なタイトルの通り、Ghostface Killah、Raekwon、Inspectah Deck、GZAというスタテンアイランド(作中ではShaolinと呼称)の精鋭たちが、ストリートの過酷な現実と高度な隠喩を交えた無双のマイクリレーを展開する。東海岸ハードコア・ヒップホップのルネサンスを決定づけた、まさに「Wu-Tang帝国」の宣戦布告である。
和訳
[Intro]
Shaolin shadowboxing and the Wu-Tang sword style
少林寺のシャドーボクシングと武当派の剣術だ
※1983年の香港映画『少林寺武者房(原題:Shaolin and Wu Tang)』の英吹き替え版からのサンプリング。Wu-Tang Clanというグループ名の直接的な由来であり、彼らは地元スタテンアイランドを「Shaolin(少林)」と呼称した。ヒップホップにおけるクルー同士のバトルを、武術の流派間闘争に見立てる彼らの独自の世界観の根幹を提示している。
If what you say is true, the Shaolin and the Wu-Tang could be dangerous
お前の言うことが本当なら、少林と武当は危険な存在になり得るな
※同映画における悪役の台詞。音楽業界やメインストリームのラッパーたちにとって、アンダーグラウンドから突如現れたWu-Tangの9人という大所帯と特異なスタイルが、いかに予測不能で危険な脅威となるかというメタファーとして機能している。
Do you think your Wu-Tang sword can defeat me?
お前の武当の剣で、この俺を倒せると思ってるのか?
※ヒップホップの文脈においては「剣(Sword)」はMCの「舌」や「リリック」を暗喩する。「お前のラップスキルで俺に勝てるのか?」というヘイターからの挑戦的な意味合いを持つ。
En garde, I'll let you try my Wu-Tang style
構えろ、俺の武当スタイルを味わわせてやるぜ
※「En garde」はフェンシング等の試合開始を告げる合図。ここでは、今から始まる怒涛のマイクリレーへの号砲となっている。
[Chorus: RZA]
Bring da motherfuckin' ruckus!
クソヤバい大乱闘(ラッカス)を巻き起こせ!
※「Ruckus」は騒ぎ、大混乱、乱闘の意。90年代初頭のNYにおける、荒削りで暴力的なエネルギーをシーンに叩きつけるRZAの叫びである。クリーンなサウンドが流行していた当時のシーンに対する中指であり、ライヴではモッシュピットが不可避となるアンセムのフックである。
Bring da motherfuckin' ruckus!
クソヤバい大乱闘を巻き起こせ!
Bring da mother, bring da motherfuckin' ruckus!
巻き起こせ、クソヤバい大乱闘をぶちかませ!
Bring da motherfuckin' ruckus!
クソヤバい大乱闘を巻き起こせ!
[Verse 1: Ghostface Killah]
Ghostface! Catch the blast of a hype verse
ゴーストフェイスの登場だ!このハイプなヴァースの爆風を喰らいな
※Ghostface Killahの記念すべきデビュー作における初声。彼特有の甲高い声と前のめりなフロウで自身の登場を強烈に宣言する。「blast(爆風)」は彼のラップの破壊力を銃器や爆発物に例えている。
My Glock burst, leave in a hearse, I did worse
俺のグロックが火を噴くぜ、霊柩車で帰りな、俺はもっとエグい事もやってきたんだ
※「Glock」はストリート定番の自動拳銃。単にラップバトルで打ち負かすだけでなく、彼らのバックグラウンドにある過酷な犯罪やストリートの現実(ハスラーとしての生活)を仄めかしている。
I come rough, tough like an elephant tusk
俺は荒々しく参上するぜ、象の牙みたいにタフにな
※象牙(elephant tusk)は硬さと希少性、そして密猟されるほどの高価な価値(=自身のラップスキルの価値)を表すクラシックなメタファー。
Your head rush, fly like Egyptian musk
お前の頭をクラクラさせるぜ、エジプシャン・ムスクの香りみたいにブッ飛んでな
※「Egyptian musk」は当時ニューヨークの路上(特にアフリカ系アメリカ人やムスリムのコミュニティ)で手売りされていた定番の安価な香水オイル。強烈な香りが脳にクる様子と、自身のラップがもたらす陶酔感を掛けた生活感溢れる土着的なリファレンスである。
Aww shit, Wu-Tang Clan spark the wicks, an'
クソッたれ、Wu-Tang Clanが導火線に火をつけるぜ
※「wicks」はダイナマイトなどの導火線。ヒップホップシーンという巨大な爆弾を今まさに起爆させるという宣言。
However, I master the trick just like Nixon
どんな手を使ってもな、ニクソンみたいにペテンのトリックを極めてるんだ
※「Nixon」はウォーターゲート事件で辞任した元米国大統領リチャード・ニクソン。「Tricky Dick(ペテン師ディック)」という異名を持っていたことから、巧みな言葉遊び(トリック)と、どんなダーティな手段を使ってでも頂点に立つというマキャヴェリズム的なスタンスを重ね合わせている。
Causin' terror, quick, damage your whole era
テロを引き起こし、あっという間にお前らの時代をブチ壊す
※「era」は時代。既存のラッパーたちが築いてきた時代やメインストリームの流行を強制的に終わらせるという宣戦布告。
Hard rocks is locked the fuck up or found shot
硬派ぶってる奴らはブタ箱にぶち込まれるか、ハチの巣にされて見つかるのがオチだ
※「Hard rocks」はタフガイを気取っているフェイクなギャングスタラッパーへの痛烈なディス。本物の過酷なストリートでは、中途半端な奴は死ぬか投獄されるしか道はないという冷酷な現実の提示。
P.L.O. style, hazardous, 'cause I wreck this dangerous
P.L.O.スタイル、超危険だぜ、俺はこのヤバいビートをメチャクチャにするからな
※「P.L.O.」はパレスチナ解放機構(Palestine Liberation Organization)の略。90年代のNYヒップホップにおいて、ゲリラ的で過激、かつ戦闘的な軍事スタイルを表す形容詞として好んで多用された(Method Manの楽曲にも『P.L.O. Remix』が存在する)。
I blow spots like Waco, Texas
テキサス州ウェイコみたいに、この場を爆破してやるよ
※1993年に発生した「ウェイコ包囲戦(ブランチ・ダビディアン事件)」への言及。カルト教団の施設がFBIとの銃撃戦の末に炎上・大爆発し、多数の死者を出した大事件。リリース年(1993年)の最新の凄惨な時事ネタを取り入れ、自身のラップの爆発力を不謹慎なまでに過激に例えている。
[Verse 2: Raekwon]
I watch my back like I'm locked down
ムショにブチ込まれてる時みたいに、背後には常に気をつけてるぜ
※Raekwon(別名:The Chef)の登場。犯罪と隣り合わせのストリートでは、常に命を狙われる危険性があるため、刑務所内(locked down)と同じレベルのパラノイア(偏執症)的な警戒心が必要であることを示している。
Hardcore-hittin' sound, watch me act bugged and tear it down
ハードコアにブチ当たるサウンド、俺がイカれたフリして全てをブッ壊すのを見てな
※「act bugged」は気が狂ったように振る舞うこと。計算された狂気とハードなライミングでシーンを圧倒する様を表現している。
Illiterate-type asshole, songs goin' gold
無学なクソ野郎の俺でも、曲を出せばゴールドディスクになるんだ
※「Illiterate(読み書きができない)」はストリート育ちでまともな教育を受けていないことの自嘲だが、同時に「そんな俺の生み出すアートが商業的に成功し、大金を稼ぐ」という、インテリ層や白人社会に対する強烈な皮肉と自己肯定を含んだライン。
No doubt, and yo, watch a corny nigga fold
間違いないぜ、ダサい野郎共がビビって折り畳まれる(降参する)のを見物しようぜ
※「corny」は陳腐でダサいこと。「fold」はポーカーで勝負を降りることから転じて、ストリートの圧力や圧倒的なスキルの差に耐えきれず屈服・崩壊することを意味する。
Yeah, they fake and all that, carryin' gats
ああ、あいつらはチャカ(銃)を持ち歩いてるが、全部フェイク野郎だ
※「gats」は銃(ガトリングガンに由来するスラング)。銃さえ持っていればギャングになれると勘違いしている偽物たちを冷笑している。
But yo, my Clan roll with like forty macs
だがな、俺のクランは40丁のMAC-10(サブマシンガン)と共に行動してるんだぜ
※「macs」はMAC-10のこと。Wu-Tangの圧倒的な人数と火力のメタファー。また「40」という数字は、当時フッドで愛飲されていた大容量のモルト・リカー(Olde English 800等の40オンスボトル=forty)とも掛けられている秀逸なワードプレイ。
Now you act convinced, I guess it makes sense
やっと納得した顔をしてるな、辻褄が合ったってわけだ
※圧倒的な実力差と火力の違いを見せつけられ、敵対する者がWu-Tangの実力を認めざるを得なくなった状況を描写。
Wu-Tang, yo, Suuuu—represent!
ウータンだ、スゥーー!レペゼンするぜ!
※「Suuuu」はWu-Tang Clanのメンバーやファンが多用するアイコニックなシグネチャーサウンド。刃物が風を切る音、あるいは「Wu(ウー)」という叫びの変形とされる。ストリートの仲間同士のコール・アンド・レスポンスや、自身の所属を示す誇り高き雄叫びとして機能する。
I wait for one to act up, now I got him backed up
誰かが調子に乗るのを待ってたのさ、今やそいつを追い詰めてやったぜ
※「act up」はふざける、反抗するの意。挑発してくる相手を冷静に罠に掛け、壁際まで後退(backed up)させる戦術的な描写。
Gun to his neck now, react what?
首元に銃を突きつけられて、どう反応するって言うんだ?
※逃げ場のない絶体絶命の状況下における敵の無力さをあざ笑っている。
And that's one in the chamber, Wu-Tang banger
薬室に一発弾が入ってるぜ、これがウータンのバンガー(名曲)だ
※「one in the chamber」は銃の薬室(チャンバー)に弾が装填されており、即座に発射可能な極めて危険な状態であること。同時に、Wu-Tangのデビューアルバムのタイトル『36 Chambers』との見事なダブルミーニングとなっている。
36 styles of danger
36の型を持つ危険なスタイルさ
※カンフー映画『少林寺三十六房』に由来する「36 Chambers」の概念。人間の持つ死角や弱点、あるいはWu-Tangのメンバー(9人×心臓の4つの部屋=36)のスキルの多様性と底知れぬ奥深さを象徴するグループの核となる数字である。
[Chorus: RZA]
Bring da motherfuckin' ruckus!
クソヤバい大乱闘(ラッカス)を巻き起こせ!
Bring da motherfuckin' ruckus!
クソヤバい大乱闘を巻き起こせ!
Bring da mother, bring da motherfuckin' ruckus!
巻き起こせ、クソヤバい大乱闘をぶちかませ!
Bring da motherfuckin' ruckus!
クソヤバい大乱闘を巻き起こせ!
Bring da mother, bring da, bring da motherfuckin' ruckus!
巻き起こせ、さあ、クソヤバい大乱闘をぶちかませ!
Bring da motherfuckin' ruckus!
クソヤバい大乱闘を巻き起こせ!
Bring da mother, bring da motherfuckin' ruckus!
巻き起こせ、クソヤバい大乱闘をぶちかませ!
Bring da motherfuckin' ruckus!
クソヤバい大乱闘を巻き起こせ!
So bring it on!
さあ、かかってこい!
[Verse 3: Inspectah Deck]
I rip it, hardcore like porno-flick bitches
俺はマイクを引き裂く、ポルノ映画のビッチみたくハードコアにな
※Inspectah Deck(別名:Rebel INS)の登場。彼はWu-Tang随一のテクニシャンであり、1ヴァース目から緻密なライミングを披露する。「hardcore」をヒップホップのサブジャンルとポルノのジャンルで掛けている直球のパンチライン。
I roll with groups of ghetto bastards with biscuits
俺はビスケット(銃)を持ったゲットーのクソ野郎どもとツルんでるぜ
※「biscuits」は銃を指すスラング(熱いビスケットを配るように弾丸を浴びせ回ることから)。Wu-Tangのメンバーやスタテンアイランドの血の気の多い仲間たちのこと。
Check it, my method on the microphone's bangin'
よく見とけ、俺のマイクロフォン上のメソッド(手法)は最高にキマってる
※「method」という単語を使い、同グループの中心メンバーであるMethod Manの存在を暗に示唆しつつ、自身のラップの技術的完成度を誇示している。
Wu-Tang slang'll leave your headpiece hangin'
ウータンのスラングはお前の頭部(ヘッドピース)を宙吊りにするぜ
※「headpiece」は頭そのもの、またはイヤホン/ヘッドホンのこと。彼らの複雑なスラングとリリックを聴いて首を吊るほど絶望するか、あるいはあまりのドープさに首がもげるほどヘッドバンギングされる様を描く。
Bust this, I'm kickin' like Seagal: Out for Justice
これをくらえ、スティーヴン・セガールの映画『アウト・フォー・ジャスティス』みたいに蹴りを入れてやる
※1991年のセガール主演のアクション映画『Out for Justice(邦題:アウト・フォー・ジャスティス)』からの引用。武術(合気道)とNYのストリートの暴力が交差する映画であり、Wu-Tangの世界観と完璧に合致している。
The roughness, yes, the rudeness, ruckus
この荒々しさ、そう、この無礼さ、そして大乱闘(ラッカス)だ
※「R」の頭韻(Roughness, Rudeness, Ruckus)を小気味よく踏むことで、楽曲のテーマそのものをリズミカルかつ暴力的に体現しているDeckの技術力の高さが光るライン。
Redrum, I verbally assault with the tongue
レッドラム(殺人)、俺は舌先を使って言葉で襲い掛かる
※「Redrum」は逆から読むと「Murder(殺人)」。スタンリー・キューブリック監督の映画『シャイニング(The Shining)』に登場する有名な不気味なモチーフの引用。物理的な武器ではなく、リリックの鋭さによる「言葉の殺人」を宣言している。
Murder One, my style shocks your knot like a stun gun
第一級殺人だ、俺のスタイルはお前の頭(ノット)をスタンガンみたいに感電させるぜ
※「Murder One」は第一級殺人(計画的で極めて悪質な殺人)。「knot」は頭部(特に後頭部の結び目のような部分)を指すスラング。ラップによる攻撃が法的に最悪の罪に問われるほどの破壊力を持つという比喩。
I'm hectic, I wreck it with the quickness
俺はクソ忙しい、あっという間にブチ壊すぜ
※「hectic」は目まぐるしい、狂乱状態の意。Inspectah Deckの流れるような速いフロウ自体が、この言葉の意味を体現している。
Set it on the microphone, and competition get blown
マイクに向かえば、ライバル共は吹き飛ばされる
※シンプルながら、競争の激しいNYのヒップホップシーンにおける自身のスキルへの絶対的な自信を表す。
By this nasty-ass nigga with my nigga, the RZA
このエグい俺と、俺のマイメン、RZAの手によってな
※トラックメイカーでありクルーの首領であるRZAへのシャウトアウト。ビート(RZA)とラップ(Deck)の完璧な融合を誇っている。
Charged like a bull and got pull like a trigger
闘牛みたいにチャージ(突撃)して、トリガー(引き金)みたいにプル(影響力/引く力)を持ってるんだ
※「pull」は引き金を引く動作と、ストリートや音楽業界における「権力・顔の広さ・影響力」を掛ける秀逸なダブルミーニング。
So bad, stabbin' up the pad with the vocab, crabs
超ヤバいぜ、俺は語彙(ボキャブ)でノート(パッド)を刺しまくってるんだ、このザコ共が
※「pad」はリリックを書くノート。「crabs」は本来カニを意味するが、スラングでは「陰毛のシラミ」や「価値のない底辺の連中(Crabs in a barrel=樽の中のカニのように足を引きずり合う奴ら)」を指す痛烈なディス。
I scream on your ass like your dad, bring it o-on!
お前の親父みたいにお前を大声で怒鳴りつけてやるよ、かかってきな!
※「父親のように」という表現には、敵のMCを「息子(子供)扱い」して見下す、ヒップホップにおける伝統的なマウンティングが含まれている。圧倒的な家父長的権威でシーンを制圧するDeckのフィニッシュブロー。
[Chorus: RZA]
Bring da motherfuckin' ruckus!
クソヤバい大乱闘(ラッカス)を巻き起こせ!
Bring da motherfuckin' ruckus!
クソヤバい大乱闘を巻き起こせ!
Bring da mother, bring da motherfuckin' ruckus!
巻き起こせ、クソヤバい大乱闘をぶちかませ!
Bring da motherfuckin' ruckus!
クソヤバい大乱闘を巻き起こせ!
[Verse 4: GZA]
Yo, I'm more rugged than slave man boots
ヨォ、俺は奴隷のブーツよりもラギッド(頑丈/過酷)だぜ
※GZA(別名:The Genius)の登場。クルー最年長であり、最も哲学的なリリシスト。「slave man boots(奴隷のブーツ)」という表現は、黒人の歴史的な苦難と肉体的な過酷さを象徴しており、単なるファッションとしての「ラギッド」を超えた歴史的・精神的な重みを伴ったパンチラインである。
New recruits, I'm fuckin' up MC troops
新兵共め、俺がMCの軍隊をメチャクチャにしてやるよ
※業界に溢れる新参ラッパーたちを「新兵」と見なし、歴戦の猛者である自分が彼らを一掃するという宣言。
I break loose, and trample shit, while I stomp
俺は鎖を引きちぎり、全てを踏みにじりながらストンプ(四股踏み)するぜ
※前行の「奴隷」のメタファーから繋がり、「break loose(解放される)」ことで溜め込んでいた怒りと力を一気に解放する様を描写している。
A mudhole in that ass 'cause I'm straight out the swamp
お前のケツに泥沼の穴を開けてやるよ、俺は沼地(スワンプ)の出身だからな
※「stomp a mudhole in your ass」はアメリカ南部やプロレスで使われる「徹底的にボコボコにしてやる」という意味の俗語。「swamp(沼地)」は、彼らの出身地であるスタテンアイランドの僻地性や、アンダーグラウンドの泥臭さを象徴している。
Creepin' up on site, now it's Fright Night
現場に忍び寄るぜ、さあ『フライトナイト』の始まりだ
※1985年の吸血鬼ホラー映画『Fright Night(フライトナイト)』の引用。闇に潜むヴァンパイアのように、気付かれぬまま敵に接近し、恐怖のどん底に突き落とすWu-Tangの不気味なバイブスを表現している。
My Wu-Tang slang is mad fuckin' dangerous
俺のウータン・スラングはマジでクソ危険なんだ
※GZAの高い知性に裏打ちされた難解で鋭いリリックが、物理的な凶器以上に脅威となることの宣言。
And more deadly than the stroke of an axe, choppin' through your back
お前の背中を叩き割る斧の一撃よりも致命的だ
※背後からの不意打ちの斧。言葉の破壊力を、カンフー映画やスラッシャー映画に見られるような残虐な身体切断に例えている。
swish Givin' bystanders heart attacks
スウィッシュ 傍観者共に心臓発作を起こさせるぜ
※「swish」は剣や斧を振り下ろす擬音。敵だけでなく、それを見ている周囲のリスナーや他のラッパーたちすらも恐怖と衝撃でショック死させるほどの圧倒的なスキル。
Niggas try to flip, tell me, who is him?
野郎共がキレようとしてるが、教えてくれ、あいつは誰だ?
※「flip」は怒り狂う、あるいは態度を豹変させること。Wu-Tangの圧倒的スキルを前にしてパニックになる無名ラッパーたちを嘲笑している。
I blow up his fuckin' prism, make it a vicious act of terrorism
俺はあいつのプリズムを爆破し、それを凶悪なテロ行為にしてやる
※「prism」は光を屈折させるガラス体で、ここでは敵の「視点・世界観・アイデンティティ」の暗喩。相手の存在基盤そのものを粉砕する行為を、Verse 1のGhostfaceのラインにも通じる「テロリズム」という過激な言葉で表現している。
You wanna bring it, so fuck it, come on and bring the ruckus!
やり合いたいのか、ならクソ食らえだ、かかってこい、大乱闘(ラッカス)を起こそうぜ!
※曲のタイトルとフックをここでGZA自身が回収し、ヴァースのテンションを最高潮へと持っていく。
And I provoke niggas to kick buckets
俺は野郎共がバケツを蹴る(死ぬ)ように仕向けるんだ
※「kick the bucket」は「死ぬ・くたばる」を意味する有名な英語のイディオム(首を吊る際に足場のバケツを蹴ることから)。
I'm wettin' cream, I ain't wettin' fame
俺はクリーム(金)を濡らしてる(稼ぐ)んだ、名声なんてどうでもいい
※「wettin'」は殺す(血で濡らす)という意味のスラングだが、ここでは「手に入れる」という文脈。「cream」は後にWu-Tangの代表曲『C.R.E.A.M. (Cash Rules Everything Around Me)』で世界に定着する「お金」のスラング。メディアがもてはやす名声(Fame)ではなく、リアルな金(Cream)こそが彼らの真の目的なのだという生粋のハスラー哲学。
Who sellin' 'caine? I'm givin' out a deadly game
誰がコカインを売ってるって? 俺は致命的なゲーム(知恵)を与えてるんだ
※「'caine」はコカイン。ストリートで麻薬を売る(毒を撒き散らす)ハスラーたちとは違い、GZAは「Game(生き抜くための知恵、ラップという競技)」を提供している。彼の異名「The Genius」にふさわしい、ドラッグ・ディーラーから知識の提供者への精神的昇華である。
It's not the Russian, it's the Wu-Tang crushin' roulette
これはロシアンルーレットじゃない、ウータンの破滅のルーレットだ
※ロシアンルーレットは弾が1発だけ入った銃を使うが、Wu-Tangのルーレットは「全弾装填」であり、関われば運など関係なく確実に破滅する(crushin')という絶望的なゲームであることを示唆。
Slip up and get fucked like Suzette
ヘマをすれば、クレープ・シュゼットみたいにメチャクチャにされるぜ
※「Suzette」はフランス菓子の「クレープ・シュゼット」のこと。フライパンの上で炎に包まれ(フランベされ)て折りたたまれるクレープのように、敵を燃やして畳み込んでしまうというThe Geniusならではのユニークかつ残酷な言葉遊び。
Bring da fuckin' rockets!
クソヤバいロケットをブッ放せ!
※「Ruckus(大乱闘)」と韻を踏みながら、銃(Rockets/ミサイル)を撃ち放つという究極の破壊描写でヴァースを締めくくる。武術から始まり、銃器、そしてロケットへとスケールアップしていく暴力のインフレーション。
[Chorus: RZA]
Bring da motherfuckin' ruckus!
クソヤバい大乱闘(ラッカス)を巻き起こせ!
Bring da motherfuckin' ruckus!
クソヤバい大乱闘を巻き起こせ!
[Outro]
En garde, I'll let you try my Wu-Tang style
構えろ、俺の武当スタイルを味わわせてやるぜ
※再びサンプリングされた台詞。曲が終わっても彼らの闘いは続くという余韻を残す。
So, bring it on!
さあ、かかってこい!
So, bring it on!
さあ、かかってこい!
So, bring it on!
さあ、かかってこい!
So, bring it on!
さあ、かかってこい!
So, bring it on!
さあ、かかってこい!
So, bring it on!
さあ、かかってこい!
So, bring it on, nigga!
さあ、かかってこいよ、野郎共!
