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Habitat - Mos Def 【和訳・解説】

Artist: Mos Def

Album: Black on Both Sides

Song Title: Habitat

概要

1999年にリリースされた歴史的ソロデビューアルバム『Black on Both Sides』に収録された本作は、Mos Defが自身のルーツであるブルックリンのゲットー(Habitat=生息地)を多角的な視点から描写したノスタルジックかつ冷徹なトラックである。Diamond Dがプロデュースを手掛け、John Klemmerの「A Touch of Love」の浮遊感のあるヴィブラフォンをサンプリングしたビートが、郷愁とストリートの緊張感を見事に同居させている。楽曲は、Rakimの名言「It ain't where you from, it's where you're at(どこから来たかじゃない、今どこにいるかだ)」をテーマに掲げ、貧困、犯罪、ドラッグといった過酷な環境と、家族や近所の温かい記憶を対比させる。ゲットーという「生息地」が人間の精神にどのような影響を与えるかを描き出した、コンシャス・ラップにおけるストーリーテリングの傑作である。

和訳

[Chorus]

We all got to have, some place that we come from (Home: a place where someone lives, a residence)
俺たちにはみんな、自分の出身地ってものが必要だ(ホーム:誰かが住んでいる場所、住居)
※コーラスの裏で流れるスポークンワードは、辞書による「Home(家、故郷)」の定義を読み上げている。客観的な定義と、主観的な感情(ラップ)を対比させる手法。

This place that we come from is called home (The physical structure within which one lives, such as a house)
俺たちがやって来たこの場所は、ホーム(故郷)と呼ばれる(人が生活する物理的な構造物、例えば家)

We set out on our travels, we do the best we can (A dwelling place with the social unit that occupies it, a household)
俺たちは旅に出て、自分にできるベストを尽くす(それを占有する社会単位が存在する住居、世帯)

We travel this big earth as we roam (An environment offering security and happiness. A valued place. A native habitat)
この広い地球を、彷徨いながら旅するんだ(安全と幸福を提供する環境。価値ある場所。本来の生息地)

We all got to have, some place where we come from (A place where something is discovered, founded, developed, or promoted)
俺たちにはみんな、自分の出身地ってものが必要だ(何かが発見され、設立され、開発され、または促進される場所)

This place that we come from is called home (A source, a headquarters, a home base)
俺たちがやって来たこの場所は、ホームと呼ばれる(源、本部、本拠地)

And even though we may love, this place on the map (All correlating to a team's place of origin on or into the point of which something is directed to the center or the heart)
地図上のこの場所を、俺たちが愛していたとしても(すべてはチームの起源、または何かが中心や心に向かうポイントに関連する)

Said it ain't where ya from, it's where ya at
「どこから来たかじゃない、今どこにいるかだ」ってことさ
※Eric B. & Rakimの1992年のクラシック「In the Ghetto」からのサンプリング(元々は彼らの曲「I Know You Got Soul」のフレーズ)。出身地(ゲットー)を誇ることは重要だが、それに縛られたり言い訳にしたりするのではなく、今現在自分がどう生きているか(Where you at)こそが最も重要であるというヒップホップの究極の哲学。

[Verse 1]

I come up in the street around some real wild brothers
俺はストリートで、マジで荒くれ者のブラザーたちに囲まれて育った

With more than one name and more than one baby mother
名前をいくつも持ってて、子供を産ませた女(ベイビー・マザー)も一人じゃない
※「More than one name」は警察から逃れるための偽名(エイリアス)、あるいはストリートネーム。「Baby mother」は未婚で子供を産んだ相手。ゲットーの複雑な家庭環境と犯罪の匂い。

More than one case, been on more than one run
いくつもの裁判(ケース)を抱え、何度も逃亡生活(ラン)を経験してる

Got more than one enemy and more than one gun
敵も一人じゃないし、持ってる銃も一丁じゃない奴らさ

Partner, all that is left to want is more
なあ相棒、残された欲望は「もっと欲しい」ってことだけだ
※物質的な欠乏が、際限のない欲望(ハスリング)を生み出している。

While them cats whose less privileged is just more raw
恵まれてない(レス・プリビレッジド)奴らほど、より残酷(ロウ)になるのさ

Less space cause the projects laced with more flaws
プロジェクト(公営住宅)には欠陥が多くて、スペースは狭いし

Less sleep cause the nights ain't peace, it's more war
夜も平和じゃなく戦争(銃撃戦)だから、睡眠時間も少なくなる
※ゲットーという「生息地(Habitat)」の過酷な環境要因の列挙。

The can is raw like thirsty, rainy season thunder claps
刑務所(カン)は、乾ききった雨季の雷鳴みたいに容赦ない
※「The can」は刑務所のスラング。

On the block with your old pop pleading number act
ブロックじゃ、お前の親父が違法なナンバーズ賭博(ナンバー・アクト)に縋ってる
※「Number act (Numbers game)」はスラム街で流行していた非合法な宝くじ。貧困層が僅かな希望を賭けて金を失うシステム。

To the spot with the red top fiends is huddled at
「レッド・トップ(クラックの小瓶)」を求めるヤク中(フィーンズ)どもが群がってる場所
※「Red top」は当時クラック・コカインを入れて売られていた赤いキャップのバイアル瓶。

To the crib where the little kids spend their summers trapped
小さな子供たちが、夏の間ずっと閉じ込められて過ごす家(クリブ)
※外(ストリート)は危険すぎるため、親が子供を家から出さないゲットーの夏の現実。

With the jungle cats, lions and tigers, leopards and cheetahs
ジャングルの猫科の猛獣たち、ライオン、トラ、ヒョウ、チーターと一緒にな
※ストリートのギャングやプレデター(捕食者)たちを、ジャングルの猛獣に例えている。

For gazelle you get chased like a zebra, they blaze cheeba-cheeba
ガゼルを求める奴らに、お前はシマウマみたいに追われ、奴らはチバチバ(大麻)を吸い狂う
※「Cheeba-cheeba」はマリファナのスラング。弱肉強食のサバンナ(ゲットー)の生態系を描写。

And dominate the weaker on the street
そしてストリートの弱者を支配するんだ

Hungry bellies only love what they eat and it's hard to compete
飢えた腹は、自分が食うものしか愛さない。競争するのは困難だぜ
※貧困による飢餓状態が、人間の倫理観や同情心を奪い、生き残るための冷酷な本能(自己保存)だけを剥き出しにするという真理。

When they smilin with your heart in they teeth
奴らがお前の心臓を歯にくわえながら、笑いかけてくるんだからな
※笑顔で近づきながら相手を搾取し、命まで奪うストリートの冷酷さを見事に表現したパンチライン。

And the odds is stacked high beyond and beneath
しかも、勝ち目(オッズ)は天と地ほど分が悪い
※「Odds is stacked against (you)」で、圧倒的に不利な状況を指す。システミック・レイシズムや貧困の連鎖から抜け出すことの難しさ。

Son I been plenty places in my life and time
なあ、俺はこれまでの人生でいろんな場所へ行ってきたが

And regardless where home is, son home is mine
ホーム(故郷)がどこであれ、ホームは俺の心の中にあるのさ
※環境がいかに最悪であろうと、自分のアイデンティティの核は奪われないという誇り。

[Chorus]

We all got to have (in this world) some place where we come from (travellin travellin travellin travellin)
俺たちにはみんな(この世界に)、自分の出身地ってものが必要だ(旅をして、旅をして…)

This place that we come from is called home (so many places I go)
俺たちがやって来たこの場所は、ホームと呼ばれる(いろんな場所へ行くけれど)

We set out on our travels, (in this world) we do the best we can (travellin travellin)
俺たちは旅に出て(この世界で)、自分にできるベストを尽くす(旅をして…)

We travel this big earth as we roam (roam roam roam)
この広い地球を、彷徨いながら旅するんだ(彷徨いながら…)

We all got to have, some place that we come from (people all over the world)
俺たちにはみんな、自分の出身地ってものが必要だ(世界中の人々)

This place that we come from is called home (got to have some place to call home)
俺たちがやって来たこの場所は、ホームと呼ばれる(ホームと呼べる場所が必要だ)

And even though we may love, this place on the map (place on the map)
地図上のこの場所を、俺たちが愛していたとしても(地図上のこの場所を)

Said it ain't where ya from, (ain't where you from) it's where ya at
「どこから来たかじゃない(どこから来たかじゃない)、今どこにいるかだ」ってことさ

[Bridge]

Some people live out in-New York City
ニューヨーク・シティに住んでる奴らもいる

Some people live out in-Atlanta
アトランタに住んでる奴らもいる

Some people got to live-Chicago
シカゴに住んでる奴らもいるし

Some people do live-Miami
マイアミに住んでる奴らもいる

All my people at-California
カリフォルニアにいる俺の同胞たち
※全米の主要なブラック・コミュニティを持つ都市へのシャウトアウト。

And other people got to live-London
ロンドンに住んでる奴らもいる

And everybody got to live in the whole big world
みんなこの広くてデカい世界に住んでるんだ

Together just you and me
お前と俺で、一緒にな
※地域を超えた普遍的な連帯の呼びかけ。

[Verse 2]

When I think of home, my remembrance of my beginning
ホームを思う時、俺は自分の原点(始まり)を思い出す
※Verse 1の「現在の過酷なストリート」から、「過去のノスタルジックな幼少期の記憶」へと視点がシフトする。

Laundromat helping ma dukes fold the bed linen
コインランドリーで、お袋(マ・デュークス)がベッドのシーツを畳むのを手伝ったこと
※「Ma dukes」は母親を指すストリートのスラング(主にNYで使われる)。

Chillin in front my building with my brother and them
アパートの建物の前で、兄弟や仲間たちとチルしてたこと

Spending nights in Bushwick with my cousins and them
ブッシュウィックで、従兄弟たちと一緒に夜を過ごしたこと
※ブルックリン北部のヒスパニック系や黒人が多く住む地区。

Wise town and Beat Street, federal relief
ワイズ・タウン、ビート・ストリート、そして連邦政府の援助(生活保護)
※「Beat Street」は1984年のヒップホップ映画の金字塔。当時のカルチャーと、貧困層を支えていた政府の配給(Federal relief / Welfare)の記憶。

Slowly melting in the morning grits we used to eat
朝飯に食ってたグリッツの中で、バターがゆっくり溶けていく情景
※「Grits」はトウモロコシのお粥。南部発祥のソウルフードであり、貧しい黒人家庭の朝食の定番。過酷な生活の中にある温かい家族の記憶。

Sticking to your teeth and teeth is hard to keep
歯にくっつく「ナウ・アンド・レイター」。歯を保つのは大変だったな

With every flavor Now & Later only a dime apiece
どの味の「ナウ・アンド・レイター」も、たったの10セント(ダイム)で買えたんだ
※「Now & Later」はアメリカの定番のフルーツ味のチューイングキャンディ。安くて美味いが、歯にくっついて虫歯になりやすいという子供時代の「あるある」ネタ。

Old timers on the bench playing cards and thangs
公園のベンチでは、ジジイたちがカードゲームなんかをしてて

Telling tales about they used to be involved in things
昔はヤバい事に首を突っ込んでたなんて、武勇伝を語ってる
※ゲットーの日常風景。

Start to drinking, talking loud, cussing up and showing out
酒を飲み始めて、デカい声で喋り、汚い言葉を吐き、見栄を張り出すんだ

On the phone, call the cops, pick'em up, move'em out
誰かが電話でサツを呼び、奴らはパクられ、追い払われる

And it's all too common to start wildin
そんな風に荒れ始めるのは、ここじゃあまりにも日常茶飯事さ

I'm a pirate on an island seeking treasure known as silence
俺は「静寂」という名の宝を探し求める、島(アイランド)の海賊だ
※「Island(島)」はロングアイランド(ブルックリンがある島)、あるいは孤立したゲットーの隠喩。常に騒音と暴力に溢れた環境で、最も価値のある宝物は「平穏(沈黙)」であるという詩的な表現。

And it's hard to find
それを見つけるのは難しいんだけどな

Block parties in dark lobbies
暗いアパートのロビーで開かれるブロックパーティー

Funeral homes packed but only dark bodies
葬儀屋は満員だが、そこにいるのは黒い死体(ダーク・ボディーズ)ばかりだ
※ストリートの暴力によって、次々と命を落としていく黒人の若者たち。パーティーの熱狂と、葬儀の悲しみが隣り合わせの生活。

I can't sleep hardly, stirred up like Bob Marley
ろくに眠ることもできない。ボブ・マーリーみたいに心をかき乱されてるんだ
※「Stir it up」はBob Marleyの名曲。社会の不条理に対する怒りや覚醒。

Marley Marl played the symphony, remember we recall
マーリー・マールが『ザ・シンフォニー』をかけた。なあ、思い出すだろ
※Marley Marlプロデュースによる1988年のヒップホップ史上最高のポッセカット「The Symphony」。彼らがいかにヒップホップと共に育ち、その音楽に救われてきたかという記憶の回喚。

Son I been to many places in my space and time
なあ、俺はこの空間と時間の中で、いろんな場所へ行ってきたが

And whatever my home is, son home is mine
俺のホームがどんな場所であれ、ホームは俺の心の中にあるのさ

[Chorus]

We all got to have, (been all over this world) some place where we come from (travellin travellin travellin travellin)
俺たちにはみんな(この世界中を回ってきた)、自分の出身地ってものが必要だ(旅をして…)

This place that we come from is called home (so many places I go)
俺たちがやって来たこの場所は、ホームと呼ばれる(いろんな場所へ行くけれど)

We set out on our travels, (set out on the travels) we do the best we can (and do the best I can)
俺たちは旅に出て(旅に出て)、自分にできるベストを尽くす(自分にできるベストをな)

We travel this big earth as we roam (? best I know)
この広い地球を、彷徨いながら旅するんだ

We all got to have, (we all got to have) some place where we come from (some place you call home)
俺たちにはみんな(俺たちにはみんな)、自分の出身地ってものが必要だ(ホームと呼べる場所が)

This place that we come from is called home (some place your heart can be close to)
俺たちがやって来たこの場所は、ホームと呼ばれる(心が寄り添える場所が)

And even though we may love, (we may love) this place on the map (this place on the map)
地図上のこの場所を、俺たちが愛していたとしても(愛していたとしても)

Said it ain't where ya from, (no no) it's where ya at (it ain't where ya at)
「どこから来たかじゃない(違う、違う)、今どこにいるかだ」ってことさ

I said it ain't where ya from, (hey hey) it's where ya at
俺は言ったんだ、どこから来たかじゃない(ヘイ、ヘイ)、今どこにいるかだってな

I said it ain't where ya from, (no no) it's where ya at
どこから来たかじゃない(違うんだ)、今どこにいるかだ

(I said it ain't where ya from, it's where ya at)
(俺は言ったんだ、どこから来たかじゃない、今どこにいるかだって)

(I said it ain't where ya from, it's where ya at)
(どこから来たかじゃない、今どこにいるかだ)

(I said it ain't where ya from, it's where ya at)
(どこから来たかじゃない、今どこにいるかだ)

It's where ya at
今、お前がどこにいるか(どう生きているか)なんだよ