Artist: Mos Def
Album: Black on Both Sides
Song Title: Got
概要
1999年にリリースされたMos Defのソロデビューアルバム『Black on Both Sides』に収録された本作は、ヒップホップにおける「Bling Blingエラ(物質主義)」への痛烈な警告である。プロデューサーのAli Shaheed Muhammad(A Tribe Called Quest)による、不穏なベースラインとタイトなドラムが緊迫感を煽るビートに乗せ、Mos Defはストリートの冷酷な現実を描写する。高級車やジュエリーをひけらかし、「自分は無敵だ」と勘違いした成金ラッパーやハスラーたちが、いかに簡単に強盗(Got)の標的になり、命を落とすかというプロセスを、まるで犯罪ドキュメンタリーのように生々しく綴っている。単なる暴力の描写にとどまらず、その根底にある貧困問題(生きるための略奪)にまで言及する、社会派ラッパーとしての彼の鋭い観察眼が光るストーリーテリングの傑作である。
和訳
[Intro]
Some cats really like to, you know...
あのさ、マジでこういうのが好きな奴らがいるんだよ…
Profile and front
見栄を張って、強がるのがな
※「Profile」は目立つように振る舞うこと、「Front」は虚勢を張ること。当時のヒップホップシーンで蔓延していた物質的アピールへの皮肉。
And then the jooks go down, all at once they like...
で、いざ強盗(ジュークス)に遭うと、急に奴らはこう叫ぶのさ…
※「Jooks」はニューヨークのストリートスラングで「強盗、襲撃」の意。
[Chorus]
Don't get me, don't get me
やらないでくれ、頼むからやめてくれ
※強がっていた人間が、銃口を突きつけられた途端に命乞いをする無様な姿をMos Def自身が滑稽に演じている。
Don't g-g-g-g-g-get me
や、や、や、やめてくれよ
Don't get me, don't get me
やらないでくれ、頼むからやめてくれ
Don't g-g-g-g-g-get me
や、や、や、やめてくれよ
Don't get me, don't get me
やらないでくれ、頼むからやめてくれ
Don't g-g-g-g-g-get me
や、や、や、やめてくれよ
Don't get me, don't get me
やらないでくれ、頼むからやめてくれ
Don't g-g-g-g-g-get me
や、や、や、やめてくれよ
[Bridge]
You're out on the block hustling at the spot
ブロックに出て、いつもの場所でハッスル(非合法な商売)してる時
GOT, this is how you get Got
「ヤられた」。こうやってお前らは強盗に遭うんだ
※「Got(Get got)」はストリートで騙される、奪われる、殺されることを意味する絶対的なスラング。
At the gamblin' spot and your hand is mad hot
賭場にいて、お前の手札が異常にツイてる時
※大勝ちして金を持っている瞬間が、最も狙われやすいタイミングであるという教訓。
GOT, this is how you get Got
「ヤられた」。こうやってお前らは強盗に遭うんだ
Out in Brooklyn late night flashing all of your rocks
深夜のブルックリンで、自分の宝石(ロックス)を全部見せびらかしてる時
GOT, this is how you get Got
「ヤられた」。こうやってお前らは強盗に遭うんだ
Some girl from pink house said "I like you a lot"
ピンク・ハウスの女が「あなたのこと大好き」なんて言ってきた時
※「Pink house」はブルックリンのイースト・ニューヨークにある悪名高い公営住宅「Louis Pink Houses」のこと。美人に誘われて付いて行くと、待ち伏せしていた地元のギャングに身ぐるみ剥がされるという、典型的な「ハニートラップ」の危険性を警告している。
GOT, this is how you get Got
「ヤられた」。こうやってお前らは強盗に遭うんだ
[Verse 1]
This one goes to all them Big Will cats
これは大物気取り(ビッグ・ウィル)の奴ら全員に向けた曲だ
※「Big Will(Big Willie)」は金回りの良さをひけらかす成金のこと。Will Smithのヒット曲『Big Willie Style』等で広まった概念。
With ice on they limbs and big rims on they Ac
手足にダイヤ(アイス)をジャラジャラ着けて、アキュラにデカいホイールを履かせてる奴らにな
※「Ac」はホンダの高級車ブランドであるAcura。当時の東海岸のストリート・ハスラーたちがこぞって乗っていたステータス・シンボルである。
You goin' around town with your system bump
お前はカーステレオをガンガン鳴らして街を流し
And your windows cracked low to profile and front
見栄を張るために、わざと窓を少し開けてるんだろ
※「Windows cracked low」は、自分の顔や車内の豪華な内装、爆音の音楽を外にアピールするための典型的な自己顕示欲の表れ。
Now I like to have nice things just like you
俺だって、お前みたいに良いモノを持つのは好きだぜ
But I'm from Brooklyn, certain shit you just don't do
だが俺はブルックリン出身だ。絶対にやっちゃいけないタブーがあるのさ
Like, high postin' when you far from home
例えば、地元から遠く離れた場所で目立つように振る舞うこと(ハイ・ポスティング)
※「High postin'」はバスケットボールのハイポスト(ゴールから離れた目立つ位置)から派生したスラングで、傲慢で目立つ行動をとること。
Or like, high postin' when you all alone
あるいは、たった一人しかいないのに見栄を張ることとかな
※護衛もいない状況でのアピールは、自ら「強盗してくれ」と宣伝しているようなものだという冷酷な事実。
Now, this would seem to be clear common sense
こんなの、誰がどう見ても当たり前の常識に思えるが
But cats be livin' off sheer confidence
奴らは根拠のない自信だけで生きてるんだよ
Like "Fuck that, picture them tellin' me run that"
「クソくらえ、俺に向かって『金を出せ』なんて言ってくる奴がいるわけねえだろ」ってな
※「Run that」は強盗が金品を要求する時の決まり文句。自分の権力や評判に守られていると錯覚している愚かさ。
But acting invincible, just ain't sensible
でも無敵のフリをするなんて、ちっとも賢明じゃないぜ
It's 1990 now and there's certain individuals
今は90年代だぜ、中にはこういう奴らが確実にいるんだからな
※リリースは1999年だが、1990年代全般の過酷なストリートの空気感を総括して「1990 now(今現在の90年代)」と表現している。
Swear they rollin' hard and get robbed on principle
イカつく振る舞ってるつもりが、掟通りにきっちり強盗に遭うのさ
5 star general, flashin' on your revenue
「五つ星の将軍」気取りで、稼いだ金を自慢してやがるが
※ストリートのボス(5 star general)を自称していても、銃の前では無力である。
You takin' a ride on the Downstate medical, Like (whooooooo)
お前はダウンステート医療センター行きの救急車に乗るハメになる。こんな風にな(ウーーーー!)
※「Downstate medical」はブルックリンにある大規模な州立医療センター。撃たれて救急搬送されるサイレンの音(whooooooo)を口で真似ている。
Colorful sparks, yellow and blue
カラフルな火花、黄色と青
※突然暗闇で放たれる銃の「マズルフラッシュ(発砲時の閃光)」の生々しい描写。
A full on attack and it's happening to you
総攻撃だ。それがお前自身の身に降りかかるんだよ
Wit' nothing you can do but bust back and cop a plea
お前にできることと言えば、撃ち返すか、命乞いをする(コップ・ア・プリー)ことくらいだ
But five of them and one of you, that equals Got to me
だが相手は5人、お前は1人。それは俺の計算じゃ「ヤられた(Got)」ってことさ
※どれだけタフぶって反撃しようとしても、多勢に無勢のストリートの暴力の前では確実に死ぬという冷徹な数学的帰結。
[Chorus]
Don't get me, don't get me
やらないでくれ、頼むからやめてくれ
Don't g-g-g-g-g-get me
や、や、や、やめてくれよ
Don't get me, don't get me
やらないでくれ、頼むからやめてくれ
Don't g-g-g-g-g-get me
や、や、や、やめてくれよ
Don't get me, don't get me
やらないでくれ、頼むからやめてくれ
Don't g-g-g-g-g-get me
や、や、や、やめてくれよ
Don't get me, don't get me
やらないでくれ、頼むからやめてくれ
Don't g-g-g-g-g-get me
や、や、や、やめてくれよ
[Verse 2]
Come on ya'll now, let's be real
おいみんな、現実を見ようぜ
Some jokers got a rough time keepin' it concealed
自分の持ってるモノ(金や銃)を隠しておくのが苦手な、アホな奴らがいるよな
I wonder what it mean, it's probably self-esteem
どういう心理なんだろうな、たぶん自尊心の問題なんだろう
※物質的な富を誇示しないと自我を保てない、成金たちの精神的な脆さを分析している。
They fiendin to be seen, get hemmed like Gabardines
奴らは目立ちたくてたまらないんだ。そしてギャバジンみたいに「囲まれてボコボコにされる(ヘム)」のさ
※「Hemmed (up)」は囲まれる、袋叩きにされるというスラング。高級な織物・スーツである「ギャバジン(Gabardine)」の「裾上げをする(hem)」ことと、高級服を着た奴が「袋叩きにされる(hem)」ことを掛けた、恐ろしいほど秀逸なワードプレイである。
Cats think it can't happen until the gats start clappin
銃(ギャット)が火を噴く(クラップする)まで、奴らは自分にはそんなこと起きないと思ってる
They comin' down the wire spittin fire like a dragon
強盗たちはワイヤー(通信・境界線)を越えてやってきて、ドラゴンのように火(銃弾)を吐き出すんだ
Cause while the goods glisten, certain eyes take position
だって、その品物がキラキラ輝いている間、特定の「目」が定位置について
※高級品を見せびらかす光が、暗闇に潜むプレデター(強盗)を呼び寄せるビーコンになっている。
To observe your trickin', then catch that ass slippin'
お前が金を使ってイキってる(トリッキン)のを観察し、油断した(スリッピン)隙を突くからな
Like, come on now ock, what you expect?
なあブラザー(アック)、何を期待してたんだ?
※「Ock(Akh)」はアラビア語由来で「兄弟」を意味する黒人コミュニティのスラング。
Got a month's paycheck danglin' off your neck
1ヶ月分の給料を首からぶら下げて歩いてるんだからな
※高価なゴールドチェーンやペンダントを「歩く現金」として描写している。
And while you Cristal sippin', they rubbin' up they mittens
お前がクリスタル(高級シャンパン)を飲んでる間に、奴らはミトン(手袋)をこすり合わせてるんだ
※富裕層の象徴である「Cristal」と、指紋を残さないための強盗の必須アイテム「Mittens」の冷酷な対比。手をこすり合わせて獲物を狙う仕草も暗喩している。
With heat in mint condition to start the getti-gettin'
強盗(ゲティ・ゲティン)を始めるための、新品同様(ミント・コンディション)の銃(ヒート)を持ってな
They clique starts creepin' like Sandinista guerrillas
奴らのクルーは、サンディニスタのゲリラ部隊みたいに忍び寄ってくるぜ
※「Sandinista」はニカラグアのサンディニスタ民族解放戦線のこと。ストリートの強盗団が、単なるチンピラではなく、高度に組織化された軍事ゲリラのように緻密で冷酷であることを示している。
You screamin' playa haters, these niggas is playa killers
お前は「あいつらは俺の成功を妬んでる(プレイヤ・ヘイター)だけだ」と叫ぶが、奴らは「成功者を殺す奴ら(プレイヤ・キラー)」なんだよ
※単なる嫉妬(Hater)ではなく、物理的に命と財産を奪う存在(Killer)であるという決定的な認識の違い。
Mr. Fash-ion, that style never last long
ミスター・ファッション。そのスタイルは決して長続きしないぜ
The harder you flash, the harder you get flashed on
派手に見せびらかす(フラッシュする)ほど、より激しく銃火(フラッシュ)を浴びることになるんだ
※ジュエリーの「Flash(輝き)」と、銃の「Muzzle flash(マズルフラッシュ)」を対比させた見事なパンチライン。
There's hunger in the street that is hard to defeat
ストリートには、打ち勝つのが難しいほどの「飢え」があるんだよ
※ここでMos Defの視点は、強盗を働く側にも向けられる。彼らが犯罪に手を染める根源的な理由は、ゲットーの極限の貧困である。
Many steal for sport, but more steal to eat
ゲーム感覚(スポーツ)で盗む奴も多いが、生きるため(食うため)に盗む奴の方がもっと多いのさ
Cat's heavy at the weigh-in, and he's playin' for keeps
計量(ウェイ・イン)の時点でヘビー級の奴らが、本気(命懸け)でゲームをプレイしてるんだ
※ボクシングのメタファー。ストリートというリングには体重制限などなく、最初から圧倒的な暴力(ヘビー級)が本気で殺しにくる。
Don't sleep, they'll roll up in your passengers seat
油断するな(ドント・スリープ)。奴らはお前の車の助手席に乗り込んでくるぞ
※カージャックのリアルな恐怖。
There is universal law, whether rich or poor
金持ちだろうが貧乏だろうが、普遍的な法則(ユニバーサル・ロウ)ってのがある
Some say life's a game, to more, life is war
人生はゲームだと言う奴もいるが、多くの奴らにとって、人生は「戦争」なんだよ
※富裕層や成金にとっては人生は楽しむ「ゲーム」だが、スラムで生きる者にとっては毎日の生存を懸けた「戦争」であるという決定的な断絶。
So put them egos to the side and get off them head trips
だから、そのエゴを脇に置いて、自惚れ(ヘッド・トリップ)から目を覚ませ
'Fore some cats pull out them heaters and make you headless
奴らが銃(ヒーター)を引き抜いて、お前を「頭なし(ヘッドレス)」にしちまう前にな
※自惚れた頭(Head trips)を持ち歩いていると、文字通り頭を吹き飛ばされて「Headless」になるという、身の毛もよだつような最終警告。
[Chorus]
Don't get me, don't get me
やらないでくれ、頼むからやめてくれ
Don't g-g-g-g-g-get me
や、や、や、やめてくれよ
Don't get me, don't get me
やらないでくれ、頼むからやめてくれ
Don't g-g-g-g-g-get me
や、や、や、やめてくれよ
Don't get me, don't get me
やらないでくれ、頼むからやめてくれ
Don't g-g-g-g-g-get me
や、や、や、やめてくれよ
Don't get me, don't get me
やらないでくれ、頼むからやめてくれ
Don't g-g-g-g-g-get me
や、や、や、やめてくれよ
