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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Hoodbooger - JID 【和訳・解説】

Artist: JID

Album: The Never Story

Song Title: Hoodbooger

概要

「Hoodbooger」は、JIDのデビューアルバム『The Never Story』に収録された、アトランタのストリートの現実と底なしの野心をユーモア交じりに描くバウンシーなトラップ・チューンである。「Hoodbooger(フッドブーガー)」とは、ゲットー(Hood)の底辺にいながら、自身を高級(Exotic)だと偽る女性や人物を指すスラングだ。JIDは所持金がわずか23ドルでボロボロのポンティアックを乗り回す「持たざる者」の現状を認めつつも、その圧倒的なラップスキルを武器に、将来ベントレーやフェラーリを手に入れた己の姿(Imagine me if I got it)を鮮烈に思い描く。マイケル・ヴィックやサージ・イバカといったスポーツ選手の比喩から、Bone Thugs-N-Harmonyまでを網羅する言葉遊びの連打は、彼が単なるトラップラッパーではなく、極めて知的なリリシストであることを証明している。アトランタのストリップクラブ「Follies」の情景など、地元愛と成り上がりへの渇望が入り混じった、彼のハングリー精神を象徴する一曲である。

和訳

[Intro]

Imagine me if I got it
もし俺がすべてを手に入れた時のことを想像してみてくれよ
※「it」は金や成功を指す。現状は何も持っていないが、成功を確信している未来志向のアティチュード。

If my nine stop busting, imagine me with a shotty
もし俺の9ミリが火を噴かなくなったら、ショットガンを持った俺を想像しな
※「nine」は9mm拳銃、「shotty」はショットガン。トラブルへの対応力をさらにスケールアップさせるというストリートのユーモア。

Imagine me with your shorty
お前の女を連れてる俺を想像してみな
※成功すれば、敵や他人の彼女(shorty)すら奪い取れるというフレックス。

Bumping "God's Whisper" by Raury
車内じゃRauryの「God's Whisper」をガンガンに流してさ
※「Raury」はアトランタ郊外のストーンマウンテン出身のアーティストで、JIDと同郷。「God's Whisper(神の囁き)」は彼のブレイク曲であり、地元のインディペンデントな才能へのシャウトアウトである。

Probably be with your, huh
たぶんお前の…ハッ
※言葉を濁しつつ、ビートが本格的に始まる。

[Verse 1]

Yeah, too many hoes on my D-I-C-K
あぁ、俺のD-I-C-K(チンコ)にはビッチどもが群がりすぎてる
※ストレートな下ネタをアルファベットでスペルアウトしてリズムを作っている。

I run the game like V-I-C-K
俺はこのゲームをV-I-C-Kみたいに支配(ラン)するぜ
※アトランタ・ファルコンズで活躍した伝説的なNFLクォーターバック、Michael Vick(マイケル・ヴィック)への言及。彼は脅威的な「ラン」の能力で知られていたため、「Run the game(ラップゲームを支配する / 試合を走る)」と完璧に掛かっている。

You ain't talking shit, no habla ingles
お前らのクソみたいな言葉なんて聞こえねぇ、英語は話せないんでな(ノー・アブラ・イングレス)
※「No habla ingles」はスペイン語で「私は英語が話せません」の意。ヘイターのディスは自分には通じないという皮肉。

I can cock that thing back and pon de replay
銃の撃鉄を引いて、もう一回ブッ放してやるよ(ポン・デ・リプレイ)
※「cock back」は銃の撃鉄を引く動作。「Pon de Replay」はRihanna(リアーナ)の2005年の大ヒット曲のタイトル。「もう一度(リプレイ)」という意味を使い、銃撃の連射を表現する巧妙なワードプレイ。

I'ma be the man, and I know that you feel it
俺はトップに立つ男だ、お前もそれを感じてるだろ
※確固たる自己肯定感。

Fast-forward, in five years in L.A. in a Bentley
早送りして、5年後のロサンゼルス、俺はベントレーに乗ってる
※現在の貧しい状況から、5年後の大成功を鮮明にビジュアライズしている。

I been a Renaissance, finna send a bomb
俺はルネサンス(再生)を体現してきた、爆弾を落としてやるぜ
※JIDのクリエイティビティの豊かさと、シーンに衝撃を与えるという宣言。

Hit him in his arm, leg, head, nigga swam oceans for the commas
奴の腕、足、頭をブチ抜いてやる、連中はカンマ(大金)のために海だって泳ぐのさ
※「arm, leg, leg, arm, head」というイスラム民族運動(Five Percent Nation)の教義「ALLAH」のバリエーション。また「commas」は金額の桁区切りのカンマ(数百万ドルなどの大金)を指す。金のために手段を選ばないゲットーの執念。

Oh my Jésus, the tops in the gray coupe
あぁ神様(ジーザス)、グレーのクーペの屋根を開け放って
※Jésusはスペイン語風の発音。成功して高級車(クーペ)のオープンカーに乗る姿。

And when you hit the gas, that shit growl like a gray wolf
アクセルを踏み込めば、エンジンがハイイロオオカミみたいに唸り声を上げる
※「gray coupe」と「gray wolf」で踏み、エンジンの轟音を獣の唸り声に例えている。

I'm murdering the game like Beowulf, what you saying?
俺はこのゲームをベオウルフみたいに惨殺してるんだ、何か文句あるか?
※『ベオウルフ』は古英語の叙事詩に登場する、怪物を退治する英雄。ラップゲームを怪物ごと討伐するという教養あふれるメタファー。

You 'bout to get slayed, hop out the roof with the woof, uh
お前は今から殺されるんだ、屋根から飛び出して犬みたいに吼えてやる(ウーフ)、あぁ
※車のサンルーフから身を乗り出し、銃を撃つ(あるいは吠える)獰猛な姿。

[Chorus]

Boy, I be happy with nothing, imagine me if I got it
なぁ、俺は何も持ってなくても幸せだったんだ、俺がすべてを手に入れた時を想像しな
※アルバム『The Never Story』のテーマである「何もない(Never)」状態からのハングリー精神。

Say if my nine stop busting, imagine me with the shotty
もし俺の9ミリが火を噴かなくなったら、ショットガンを持った俺を想像しな
※(※注釈:イントロのリフレイン。)

I been pushing this Pontiac, imagine me in the 'Rari
ずっとこの(ボロい)ポンティアックを走らせてきた、フェラーリに乗る俺を想像しな
※「Pontiac」はJIDが下積み時代に乗っていた「The General」という愛称のG6のこと。そこから高級車「'Rari(フェラーリ)」へのステップアップ。

Bumping "God's Whisper" by Raury, probably be with ya shawty
車内じゃRauryの「God's Whisper」を流して、たぶんお前の女と一緒だぜ
※(※注釈:成功すれば他人の女すらもナビシートに乗せられるというフレックス。)

It's probably Tuesday night, she probably pull up at Follies
たぶん火曜の夜で、彼女はたぶんフォリーズに車を停める
※「Follies(Follies Gentlemen's Club)」はアトランタで非常に有名なストリップクラブ。火曜日はストリップクラブが盛り上がる定番の曜日。

I probably pop me a, nah, she probably pop her a molly
俺はたぶん…いや、彼女がモリー(MDMA)をキメるんだろうな
※ドラッグの摂取。自分がキメるのではなく、ストリッパーやパーティーガールの彼女がクスリに溺れている情景へと訂正する生々しさ。

And then she just a hood booger, probably claim she exotic
そして彼女はただのフッド・ブーガー(ゲットーの底辺女)なのに、たぶん自分は「エキゾチック(高級品)」だって言い張るのさ
※曲のタイトル回収。「Hood booger」はスラム街にいる下品で安っぽい人間のこと。「Exotic」はストリッパーなどが自身を高く見せるためによく使う自称。彼女の虚栄心を冷笑している。

The only thing that's exotic is all this weed in my pocket
「エキゾチック」なのは、俺のポケットに入ってるこの極上のウィードだけだぜ
※「Exotic weed」は高品質な大麻のこと。偽物の女よりも、自分の持っているウィードの方がよっぽど本物の価値があるという皮肉。

But she fine
でも彼女、イイ女なんだよな
※文句を言いながらも、結局その外見には惹かれているというストリートの男の矛盾。

[Post-Chorus]

Ain't nothin' better than a badass bih' with the check
金(チェック)を持ってる超イイ女(バッドアス・ビッチ)ほど最高なものはねぇよ
※「badass bih'(bitch)」は魅力的で自立した女性。ストリッパーなどで自ら大金を稼ぐタフな女への賞賛。

Nothin' badder than a bad bih' with the check
金を持ってるイイ女ほどヤバいものはねぇ
※(※注釈:以降、同じフレーズの反復。)

Nothin' better than a badass bih' with the check
金を持ってる超イイ女ほど最高なものはねぇよ

Nothin' badder than a badass bih' with the–
金を持ってる超イイ女ほどヤバいものは…

[Verse 2]

Twenty-three dollars in my pockets, I'm rich as fuck
ポケットには23ドルぽっち、俺はクソ金持ちだぜ
※文字通りの絶対的な貧困状態を、皮肉(あるいは後述する精神的な豊かさ)を込めて「リッチ」と表現している。

'Cause my nigga just hit me from the pen and I hooked him up
だって刑務所(ペン)にいるダチから連絡があって、俺が面倒を見てやったからな
※「pen」はpenitentiary(刑務所)。なけなしの金でも、刑務所にいる仲間の口座に送金(hook up)してやるというゲットーの連帯感と義理堅さ。それゆえの「精神的リッチ」である。

Fast-forward ten years, we hopping out of the matted black truck
早送りして10年後、俺たちはマットブラックのトラックから飛び出してくる
※再び未来の成功のビジョン。出所した仲間と共に高級車に乗る姿を描いている。

Black lips, dark abyss in my cup
黒い唇、俺のカップの中には暗い深淵(アビス)が広がってる
※リーン(咳止めシロップ)や強い酒を飲んでいる描写。同時に彼自身のダークな精神状態のメタファー。

Wrist sick 'cause I shit like "2 Bitches, 1 Cup"
手首が病気(シック)だぜ、だって俺は「2 Bitches, 1 Cup」みたいなクソを垂れ流すからな
※手首がシック(Sick)=ダイヤなどで輝いている、あるいはラップのスキルが異常であること。「2 Bitches, 1 Cup」は、2000年代後半にネット上でトラウマ動画として有名になったスカトロ動画「2 Girls 1 Cup」のパロディ。「俺のラップ(クソ)は吐き気がするほどエグい(ヤバい)」という、とてつもなく下品で強烈な自己主張。

You a witness, I been had bitches like Pac and Clinton
お前も目撃者だろ、俺はパックやクリントンみたいにビッチどもをはべらせてきたんだ
※「Pac」は伝説的ラッパーの2Pac。「Clinton」はビル・クリントン元大統領(モニカ・ルインスキーとの不倫スキャンダルで有名)。時代を代表するプレイボーイたちと同列に自身を語っている。

I Ibaka your shot to give dick to Ms. Hilson
Ms.ヒルソンにディックを与えるために、俺はお前のシュートを「イバカ」するぜ
※Geniusで絶賛されたワードプレイ。「Ibaka」はNBAのサージ・イバカ(Serge Ibaka)選手。彼は驚異的なブロックショットで有名。ライバルの男の誘い(シュート)をブロックして、R&Bシンガーのケリー・ヒルソン(Keri Hilson、あるいはそのレベルの美女)と寝てやるという宣言。ちなみにイバカ選手とケリー・ヒルソンは実際に交際していた時期があるため、その関係性を見事に引用している。

Do the "Pretty Girl Rock" with this shit in your kidneys
お前の腎臓にこいつ(ディック)をブチ込んで「Pretty Girl Rock」を踊らせてやるよ
※「Pretty Girl Rock」は前行のケリー・ヒルソンの2010年の大ヒット曲名。激しい性行為のメタファー。

Blow the clit to oblivion, guess I'm talking belligerent
クリトリスを忘却の彼方まで吹き飛ばしてやる、俺は少し好戦的(ベリジェラント)に喋りすぎてるかもな
※過激な性描写から、少し冷静になって自身の攻撃性を客観視するユーモア。

Head off, I'm so ignorant, please state your significance
頭が吹っ飛んでる、俺は本当に無知(イグノラント)さ、お前の重要性(存在意義)を述べてみろよ
※「ignorant」はヒップホップでは「常識知らずでヤバい、ワイルドな」という意味。自分に喧嘩を売る相手に対して、自分より価値があるのか証明してみろという挑発。

Ain't no harmony, thug, but my bone is the busiest
ハーモニーなんてねぇよ、サグ野郎、でも俺の「骨(ボーン)」が一番忙しいんだ
※伝説的なラップグループ「Bone Thugs-N-Harmony」の名前を分解した完璧な言葉遊び。「harmony(調和)」「thug(悪党)」「bone(ペニス、あるいは骨身を削って働くこと)」を組み合わせ、俺は愛想よく調和(ハーモニー)する気はないが、セックス(あるいは仕事)では誰よりも忙しく働いているというアピール。

Hit my phone, I'm lonely inside expensive interior, uh
電話してくれよ、俺は高級な車のインテリアの中で孤独なんだ、あぁ
※バースの最後で唐突に見せる脆さ。どれだけ成功し、高級車(expensive interior)に乗っていても、心の中は満たされず孤独であるというJIDの二面性。

[Chorus]

Boy, I been happy with nothing, imagine me if I got it
なぁ、俺は何も持ってなくても幸せだったんだ、俺がすべてを手に入れた時を想像しな
※(※注釈:フックの反復。孤独を抱えながらも、成功への執念を燃やし続ける。)

Say if my nine stop busting, imagine me with the shotty
もし俺の9ミリが火を噴かなくなったら、ショットガンを持った俺を想像しな

I been pushing this Pontiac, imagine me in the 'Rari
ずっとこのポンティアックを走らせてきた、フェラーリに乗る俺を想像しな

Bumping "God's Whisper" by Raury, probably be with your shorty
車内じゃRauryの「God's Whisper」を流して、たぶんお前の女と一緒だぜ

It's probably Tuesday night, she probably pull up at Follies
たぶん火曜の夜で、彼女はたぶんフォリーズに車を停める

I probably pop me a, nah, she probably pop her a molly
俺はたぶん…いや、彼女がモリーをキメるんだろうな

And then she just a hood booger, probably claim she exotic
そして彼女はただのフッド・ブーガーなのに、たぶん自分は「エキゾチック」だって言い張るのさ

The only thing that's exotic is all this weed in my pocket
「エキゾチック」なのは、俺のポケットに入ってるこの極上のウィードだけだぜ

But she fine
でも彼女、イイ女なんだよな

[Post-Chorus]

Ain't nothin' better than a badass bih' with the check
金を持ってる超イイ女ほど最高なものはねぇよ
※(※注釈:アウトロへ向けてフェードアウトしていく。)

Nothin' badder than a bad bih' with the check
金を持ってるイイ女ほどヤバいものはねぇ

Nothin' better than a badass bih' with the check
金を持ってる超イイ女ほど最高なものはねぇよ

Nothin' badder than a badass bih' with the
金を持ってる超イイ女ほどヤバいものは…