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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

All Bad - JID (feat. Mereba) 【和訳・解説】

Artist: JID (feat. Mereba)

Album: The Never Story

Song Title: All Bad

概要

本作「All Bad」は、『The Never Story』におけるエモーショナルな頂点の一つであり、前曲「Hereditary」で描かれた崩壊寸前の恋愛関係を、男女双方の視点から立体的に描き出したデュエット曲である。客演にはSpillage Villageの盟友であり、のちにDreamvilleでも共闘することになるシンガーソングライター・Merebaを迎えている。JIDが真実(自身の裏切りや関係の終焉)を告げることの恐怖と自己嫌悪を歌う前半から一転、後半のMerebaのバースでは、彼女が女の直感でとうの昔にすべてを見抜いていたという冷酷な事実が突きつけられる。映画『ア・フュー・グッドメン』の有名なセリフ「You can't handle the truth!(お前に真実は受け止めきれない)」のサンプリングが象徴するように、互いに嘘をつき合い、結局のところ「真実を受け止めきれなかったのは誰なのか」という皮肉な反転が見事に描かれた、R&Bテイストのオルタナティブ・ヒップホップである。

和訳

[Intro: J.I.D]

Mmm-mmm, mmm
んーんー、んー
※メランコリックなハミング。関係の終焉を予感させる重苦しいムードの設定。

Mmm-mmm, mmm, mmm
んーんー、んー、んー

Oh, woah
あぁ…

[Chorus: J.I.D, J.I.D and Mereba and Mereba]

And if I'm tryna tell the truth, it's all bad (All bad, all bad)
俺が真実を話そうとするなら、それはマジで最悪な事態だぜ(全部最悪さ)
※「all bad」はストリートスラングで「完全に終わっている」「最悪の状況」の意。真実(別れや裏切り)を口にすれば、関係が完全に破滅することを示唆している。

'Cause if you looking for the proof, it's all there (All there)
だって証拠を探してるなら、そこら中にあるからな(そこら中にな)
※浮気や嘘の痕跡が、もはや隠しきれない状態にまで達している。

Come on baby, I'ma tell the truth and nothing but the truth (Ooh-ooh, ooh)
なぁベイビー、俺は真実を、ただ真実だけを話すつもりだ
※法廷での宣誓「the truth, the whole truth, and nothing but the truth(真実を、すべての真実を、そして真実のみを語る)」からの引用。二人の恋愛関係が、まるで冷え切った裁判のようになっているメタファー。

You can't handle the truth, (You can't handle the truth) you can't handle it (You can't handle it), ah-ahh
お前に真実は受け止めきれねぇよ(お前には無理だ)受け止めきれねぇんだ
※映画『A Few Good Men(ア・フュー・グッドメン)』(1992年)におけるジャック・ニコルソンの伝説的なセリフ「You can't handle the truth!」の引用。事実を知れば相手が精神的に崩壊してしまうという、JID側の自己正当化を含んだ逃避である。

And if I'm tryna tell the truth, it's all bad (It's all bad, all bad)
俺が真実を話そうとするなら、それはマジで最悪な事態だぜ(全部最悪さ)
※(※注釈:コーラスの反復)

'Cause if you looking for the proof, it's all there (It's all there)
だって証拠を探してるなら、そこら中にあるからな(そこら中にな)

Come on baby, I'ma tell the truth and nothing but the truth (Ooh-ooh, ooh)
なぁベイビー、俺は真実を、ただ真実だけを話すつもりだ

You can't handle it, (You can't handle it) you can't handle the truth, no (You can't handle the truth, no)
お前には受け止めきれない、(お前には無理だ)お前に真実は受け止めきれねぇんだよ

[Verse 1: J.I.D & Mereba]

Doo, doo, doo-doo, doo
ドゥー、ドゥー、ドゥードゥー

And if I'm trying to tell the truth, it's all bad
俺が真実を話そうとするなら、それはマジで最悪なことなんだ

Huh, baby, do you love me? I know that you do
ハァ、ベイビー、俺のこと愛してるか? あぁ、愛してくれてるのはわかってるさ
※相手からの愛を確信しているからこそ、真実を告げてその愛を破壊することが余計に苦しいというジレンマ。

I been trying so hard, I know I gotta be real with you
俺なりに必死にやってきたんだ、お前には正直(リアル)にならなきゃってこともわかってる
※「be real」は嘘をつかない、誠実になること。ヒップホップにおける美徳だが、ここではそれが痛みを伴う。

Can't be playing with hearts, I know you feel like you feel it too (Feel it too)
人の心をもてあそぶなんてできねぇ、お前も薄々感じてるんだろ?(感じてるはずさ)
※前曲「Hereditary」のテーマ(相手に心を弄ばれたこと)と対をなす。ここではJID自身が相手の心を弄んでいる加害者側の立場になりかけており、それに耐えられなくなっている。

I'm gon' step into the shade
俺は日陰に足を踏み入れるぜ
※罪悪感から、光(真実)の当たる場所から逃げようとしている心理描写。

I don't want the sun in my face, but I don't want to walk away
顔に太陽の光を浴びたくはねぇ、でも立ち去りたくもないんだ
※真実(太陽)を直視したくないが、かといって関係を完全に断ち切る決心もつかないという、どうしようもない優柔不断さ。

Without me saying what I have to say
言わなきゃならねぇことを、言わずに終わらせたくはねぇんだよ
※けじめをつけたいという最低限の誠意。

But I been praying it's another way
でも、他に何か道があるんじゃないかって祈り続けてた
※別れ以外の解決策への無駄な期待。

But this like mayhem on my fucking brain
けど、こいつは俺の脳内をめちゃくちゃに(メイヘム)しやがる
※「mayhem」は騒乱、大混乱。秘密を抱え続けることの極度のストレス。

I gotta say, I'm finna go insane
言わせてもらうぜ、俺はマジで頭がおかしくなりそうなんだ
※精神的な限界。

Shame, shame, and I don't know what I can do (Fuck)
情けねぇ、情けねぇよ、どうすりゃいいかわからねぇ(クソッ)
※自己嫌悪の極致。

'Cause maybe your past guy
だってお前の昔の男や
※ここから、自分の非を少しでも軽くしようとする無意識の責任転嫁が始まる。

And maybe your last guy was probably just right for you
お前の前の男の方が、たぶんお前にはピッタリだったんだよ
※自信の喪失と、「俺が悪いのではなく、相性が悪かっただけだ」という痛々しい言い訳。

And baby, I can't fight the truth
なぁベイビー、俺は真実には抗えねぇ

Baby, I can't fight the truth
ベイビー、俺は真実には抗えねぇんだ

And baby, I can't fight with you, yeah
そしてベイビー、お前と争うことももうできねぇんだ、あぁ
※完全に白旗を上げ、関係を放棄している状態。

[Chorus: J.I.D, J.I.D and Mereba and Mereba]

And since I'm tryna tell the truth, it's all bad (All bad, all bad)
だから俺が真実を話そうとしてる以上、これはマジで最悪なんだぜ(全部最悪さ)
※(※注釈:2回目のコーラス。「if(もし)」から「since(〜だから)」に変わり、真実を話すことが確定している。)

And since you looking for the proof, it's all there (All there)
お前が証拠を探してるなら、そこら中にあるからな(そこら中にな)

Come on baby, I'ma tell the truth and nothing but the truth (Ooh-ooh, ooh)
なぁベイビー、俺は真実を、ただ真実だけを話すつもりだ

You can't handle the truth, (You can't handle the truth) you can't handle it (You can't handle it)
お前に真実は受け止めきれねぇよ、(お前には無理だ)受け止めきれねぇんだ

And since I'm tryna the truth, it's all bad (It's all bad, all bad)
俺が真実を話そうとしてる以上、これはマジで最悪なんだぜ(全部最悪さ)

And since you looking for the proof, it's all there (It's all there)
お前が証拠を探してるなら、そこら中にあるからな(そこら中にな)

Come on baby, I'ma tell the truth and nothing but the truth (Ooh-ooh, ooh)
なぁベイビー、俺は真実を、ただ真実だけを話すつもりだ

You can't handle the truth (You can't handle the truth) you can't handle the truth (You can't handle the truth)
お前に真実は受け止めきれねぇ、(お前には無理だ)お前に真実は受け止めきれねぇよ

[Bridge 1: J.I.D, Mereba with Both]

Doo, doo, doo-doo, doo
ドゥー、ドゥー、ドゥードゥー

And since I'm tryna tell the truth
俺が真実を話そうとしてるってのに

So tell me why you got to lie, lie, lie, lie, lie, lie?
じゃあ教えてくれよ、なんでお前は嘘、嘘、嘘ばかりつくんだ?
※ここで視点が交錯する。JIDだけでなく、相手(Mereba側)もまた嘘をついていたという事実が提示され、物語は新たな局面へ向かう。

So tell me why you got to lie, lie, lie, lie, lie, lie, lie, lie, lie, lie, lie lie?
なぁ教えてくれよ、なんでお前は嘘ばかりつくんだ?

[Verse 2: Mereba]

See I'ma call it off here
ねぇ、ここらでもう終わりにしましょう
※Merebaのバース。男性側のウジウジした言い訳を冷ややかに一刀両断する、女性側の視点。

Boy this intuition ancient, oh
坊や、女の直感(イントゥイション)ってのは太古の昔からあるのよ、あぁ
※JIDが隠していたことなど、女の本能でとうの昔にすべて気づいていたという痛烈な返し。「Boy(坊や)」という呼びかけに、相手を見下すニュアンスが含まれている。

You ain't even really gotta say shit
あなたが何かを言う必要なんて、最初からなかったのよ
※「真実を言うべきか」と一人で悩んでいたJIDの姿を、滑稽なものとして切り捨てている。

I peep your in-the-cut shit, yeah, I'm a sharp motherfuck—er
あなたがコソコソ隠れてやってることなんて全部お見通しさ、そう、私はめちゃくちゃ鋭いんだから
※「in-the-cut」は目立たない場所、陰で隠れて行うこと(浮気など)。「sharp」は刃物のように鋭い=賢い、抜け目がないこと。ごまかしは一切通用しない。

No peace 'til we sleeping
私たちが眠りにつくまで、安らぎなんてない

We find reasons for deceiving
私たちは、騙し合うための理由を見つけ出してるのよ
※JIDだけの責任ではなく、両者が関係を終わらせるために、無意識に(あるいは意図的に)嘘をつき合っているという共犯関係の告白。「Hereditary」で描かれたToxic(有害)な性質がここでも繰り返されている。

And then we both been keeping secrets
そしてお互いに、ずっと秘密を抱えたまま
※恋愛関係の破綻における双方向の責任。

I remember when it felt like a dream (Ooh, ooh, ooh-ooh)
夢みたいに感じてた頃のことも覚えてるわ
※冷酷な現実の中での、わずかなノスタルジー。

I hope it's a blessed world
(あなたにとって)祝福された世界であることを祈ってる
※別れの皮肉めいた挨拶。

Though I bet your next girl won't tell you the truth–
でも、あなたの次の女はきっと、あなたに真実なんて教えないでしょうね

Like I do
私みたいにはね
※自分が最後に「真実(お見通しだったこと)」を突きつけることで、彼にとっての唯一無二のトラウマ的存在であることを刻み込んでいる。

It's just we were coasting on a new high
ただ、私たちは新しいハイ(熱狂)に乗って惰性で進んでいただけ
※「coast」は惰性で進むこと。初期の恋愛のドラッグのような熱狂(new high)が冷め、ただ何となく付き合っていただけだったという極めて冷静な自己分析。

You never let slip that hand on my hip
あなたは私の腰に回した手を、決して離さなかったわね
※かつての情熱的な愛情の記憶。

It was Heaven, it was bliss 'til it flipped right
それは天国だった、至福だったわ。事態がひっくり返るまではね、でしょ?

I ain't finna lie to you though
でも、私はあなたに嘘をつくつもりはないの
※相手との格の違いを見せつけるスタンス。

I ain't finna cry, nevermind that you lied (Lied)
泣くつもりもないわ、あなたが嘘をついたことなんて気にしてない(嘘つき)
※強がりと自立。JIDの嘘に傷つく段階はとうに過ぎている。

That you spilled milk all on my clothes (Fuck)
あなたが私の服にミルクをこぼしたことなんてね(クソッ)
※「Don't cry over spilled milk(覆水盆に返らず/こぼれたミルクを嘆いても仕方ない)」という有名な諺の引用。起きてしまった過ち(浮気や裏切り)を今更嘆いてもどうにもならないという諦観のメタファー。

They say you reap what you sow
「自分で蒔いた種は自分で刈り取る」って言うでしょ
※因果応報(カルマ)。自分がついた嘘の報いを、これからJIDは受けることになる。

Lord knows that's some lies I've been told
神様は知ってるわ、私が今までどんな嘘を聞かされてきたかを

Oooh, watch it grow
あぁ、それがどう育つか見ていましょうよ
※嘘(蒔いた種)がどのように肥大化し、相手の心を破壊し尽くすかを冷ややかに見届けるという恐ろしい態度。

[Chorus: J.I.D & Mereba]

And I done finally heard the truth, it's all bad (All bad, all bad)
そして俺はついに真実を聞いちまった、マジで最悪だぜ(全部最悪だ)
※【重要】ここでコーラスの歌詞が変化する。JIDがMerebaのバース(お見通しだったという真実)を聞き、立場が完全に逆転した状況。自分が真実を言う側だと思っていたが、実は相手の真実に打ちのめされる側だった。

I wasn't looking for the proof, but goddamn (Goddamn)
証拠なんて探してなかったのに、なんてこった(ガッデム)
※聞きたくなかった真実(彼女の冷めた感情や別の隠し事)を知ってしまったショック。

Come on baby, you should tell the truth, but baby fuck the truth
なぁベイビー、お前は真実を話すべきだった、いや、真実なんてクソ喰らえだ
※真実を直視することへの恐怖が頂点に達し、すべてを拒絶して自暴自棄になっている。

I can't handle it, (I can't handle it) you can't handle it
俺には受け止めきれねぇよ(受け止められねぇ)お前にも無理なんだ
※これまでの「You can't handle the truth(お前には受け止められない)」から、「I can't handle it(俺には受け止めきれない)」への見事な反転。結局、真実を受け止めきれず崩壊したのはJID自身であったという、残酷で皮肉な結末である。

[Bridge 2: J.I.D and Mereba]

Ba-da-da-da-da-da-da, da-da, da-da (Ooh, ooh)
バダダダ…(Ooh, ooh)
※(※注釈:言葉を失ったJIDとMerebaによる、痛みを伴うR&Bスキャットの掛け合い。関係の終焉を美しくも悲しく彩る。)

Da-da-da, da-da-da-da-da, da-da-da-da-da-da (Yeah, ooh, yeah, yeah, yeah)
ダダダ…

Da, da-da-da-da-da-da-da-da-da-da (Ooh, ooh, doo-doo-doo-doo)
ダ、ダダダ…

Da-da-da, da-da-da, da-da-da, da-da-da
ダダダ…

Da-duh-da, huh, hm
ダ・ドゥ・ダ、ハァ、フーム

[Outro: Mereba]

You got me extremely fucked up
あなたのおかげで、私の人生めちゃくちゃよ
※「got me fucked up」は相手の行動で自分が被害を受けたり、困惑させられたりするヒップホップスラング。散々虚勢を張っていたMerebaからこぼれ落ちた、決定的な最後の一撃(本音の恨み節)で楽曲は唐突に幕を閉じる。