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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

NEVER - JID 【和訳・解説】

Artist: JID

Album: The Never Story

Song Title: NEVER

概要

JIDのブレイクスルー・シングルであり、J. Cole率いるDreamville Recordsとの契約を決定づけたとされる最重要楽曲である。プロデューサーのChristoとChildish Majorによる二部構成のビートスイッチが特徴的だ。前半(Part I)では、どん底の環境で「何も持っていなかった(Never)」過去の飢えと、フェイクなラッパーたちへの嫌悪感を、呪術的なフロウで不気味なギターリフに乗せて吐き出す。そして重厚なベースラインとドラムが轟く後半(Part II)へ突入すると、一転して圧倒的なワードプレイと変幻自在のラップスキルを見せつけ、ストリートの現実とユーモアを交えながらシーンの頂点へ登り詰める覚悟を宣言する。タイトル通り『The Never Story』の核心であり、アトランタから現れた異端児・JIDの特異な才能を世界に知らしめた金字塔である。

和訳

[Part I] [Chorus]

Okay, never been shit, never had shit
オーライ、俺はマジでクソみたいな存在だったし、何も持っちゃいなかった
※「shit」は文脈により意味を変えるが、ここでは「never been shit(大した奴じゃなかった)」「never had shit(何も持っていなかった)」と徹底的な欠如を表現している。アルバムタイトル『The Never Story』の根幹を成すテーマであり、JIDの凄まじいハングリー精神の原点である。

Never knew shit, never out, never do shit, damn
何も知らねぇし、外にも出ねぇ、何もしてなかった、クソ
※フッドの閉塞感の中で、機会も知識も与えられず、ただ停滞していた過去の自分を振り返っている。

But a nigga never gave two shits, uh, damn
でも俺はそんなこと少しも気にしちゃいなかったぜ、あぁクソ
※「give two shits」は「少しでも気にかける」というイディオム。何も持たない現状を嘆くのではなく、その反骨心を燃料にしてきたというアティチュード。

Never been a bitch, never had a Rollie on the wrist
ビッチみたいな真似はしたことねぇし、腕にロレックスを巻いたこともねぇ
※「Rollie」はロレックスの時計。物質的な豊かさ(高級時計)は持っていなかったが、ストリートの掟を破るようなダサい真似(bitch)は決してしなかったという自負。

Never had shit, I'ma take
何も持ってなかったから、俺は奪い取るのさ
※持たざる者が成功を手にするための手段として、誰かに頼るのではなく実力で奪い取るという野心。

Never askin', "Give me this, give me that shit (Yeah, uh, yuh)
決して頼んだりはしねぇんだよ、「あれをくれ、これをくれ」なんてな
※業界に蔓延するクレクレ君(他力本願なラッパー)との明確な差別化。

Give me everything, nigga, give me everything, nigga…"
「全部俺にくれよ、なぁ、全部寄こせよ…」なんてな
※他人にすがりついてすべてを得ようとする者たちを嘲笑しつつ、逆説的に「俺は自力ですべてを手に入れてやる」という狂気じみた欲望も孕んでいる。

Again, never been shit, never had shit
もう一回言うぜ、俺は何者でもなかったし、何も持っちゃいなかった
※(※注釈:フックの反復。催眠術のようなフロウでリスナーの脳裏に「Never」という言葉を刻み込んでいく。)

Never knew shit, never out, (Woah) never do shit, (Woah) damn
何も知らねぇし、外にも出ねぇ、何もしてなかった、クソ
※(※注釈:ライブで大合唱となるパート。どん底の状況を共有するリスナーに対する強烈なエンパワーメントとしても機能する。)

But a nigga never gave two shits, damn, damn
でも俺はそんなこと少しも気にしちゃいなかったぜ、クソ
※(※注釈:前述の通り、無関心を装いつつも内なる炎を燃やしている。)

Never been a bitch, never had a bezel on the wrist
ビッチみたいな真似はしたことねぇし、腕にベゼルを巻いたこともねぇ
※「bezel」は時計の文字盤の縁を指し、ヒップホップにおいてはダイヤモンドなどで装飾された高級時計のメタファー。

Never had shit, never take
何も持ってなかった、奪うこともしなかった
※先ほどは「I'ma take(奪う)」だったが、ここでは「never take(奪わなかった)」と変化している。犯罪に手を染めて手っ取り早く奪う(強盗など)ことはせず、あくまで自分のスキルで道を切り開いてきたという矜持とも解釈できる。

Never askin', (Woah) "Give me this, give me that shit
頼んだりはしねぇんだよ、「あれをくれ、これをくれ」なんてな
※(※注釈:JIDの徹底したインディペンデント精神の表れ。)

Give me everything, (Look) nigga, give me everything, nigga
「全部俺にくれよ、なぁ、全部寄こせよ
※(※注釈:このコーラスは、彼の内側から湧き上がる飢餓感の爆発である。)

Give me everything…"
全部俺によこせよ…」
※(※注釈:この渇望感が、次のバースへの強烈なブリッジとなる。)

[Verse]

Look, never had a real dollar to my name, bruh, shit been lame, bruh
見な、俺の名前で稼いだ本物の金なんて一ドルもなかったぜ、マジでダサい状況だったよ
※「to my name」は「自分の所有する」。自分で正当に稼いだ財産が皆無であった下積み時代の苦悩。

I ain't even in this shit for the fame, bruh, it's the pain, bruh
俺は名声のためにこのラップゲームにいるんじゃねぇ、痛みが動機なんだよ、兄弟
※表面的な成功や名声(fame)ではなく、これまでの人生で味わってきた痛み(pain)や貧困からの脱却こそが自身の原動力であると語る。

Most of the niggas I came up with– (Came up with) haven't came up
俺と一緒に育った連中の大半は、上には行けなかった
※「came up with(一緒に育った、共に上がってきた)」と「came up(成功を収めた)」の言葉遊び。フッドの仲間たちの多くがストリートの現実(死や投獄)に飲み込まれ、這い上がれなかった悲惨な現状。

And doin' the same stuff, but I haven't came up, this really ain't none
あいつらと同じようなクソをやってたけど、俺はまだ成功しちゃいない、こんなの大したことねぇよ
※彼自身も過去にストリートの犯罪(「General」で語られた強盗や密売など)に手を染めていたが、まだ本当の意味での成功には達していないというハングリーな認識。

Niggas thinkin' that they fuckin' with JID, y'all got the game fucked up
連中はJIDとタメ張れるなんて思ってやがる、お前らこのゲームを勘違いしてるぜ
※「fuck with」は「相手になる、対抗する」。自分のスキルが常軌を逸していることに気付かず、安易に挑んでくる三流ラッパーたちへの警告。

Tremendously, can't fuck with the mind of a mental fiend
圧倒的にな。イカれた精神の中毒者の頭の中には踏み込めねぇよ
※自身の複雑なライミングや思考回路を「mental fiend(精神のジャンキー)」と表現。常人には理解不可能なレベルで言葉と戯れる天才の自負。

Who dig deep in the depths when he in too deep
深みにハマった時、さらにその深淵を掘り下げちまう奴の頭にな
※困難な状況に陥った時、逃げるのではなく、自らの内面やトラウマのさらに奥深くへと潜り込んでリリックを抽出するアーティストとしての業。

I crept on the steps where the demon sleeps
悪魔が眠る階段を抜き足差し足で忍び歩いたんだ
※ストリートの危険な環境や、ドラッグ、暴力といった誘惑(悪魔)のすぐそばを、捕まらないようにサバイブしてきたメタファー。

And yell, belch, tell my Lord what he means to me
そして叫び、ゲップして、神様に俺の想いを伝えるのさ
※粗野な振る舞い(ゲップ)を交えながらも、神に対して真摯に祈りを捧げるアンビバレントな姿。ゲットーのゴスペル的な表現。

"Oh, my God, don't be mean to me"
「あぁ神様、俺に意地悪しないでくれよ」ってな
※これほど苦労しているのだから、もう不運を与えないでくれという悲痛かつ少しコミカルな祈り。「means to me(意味する)」と「mean to me(意地悪をする)」で韻を踏んでいる。

In the ride with a bean or three
車の中にはビーンが1つか3つ転がってて
※「bean」はMDMAやエクスタシー、あるいはパーコセットなどのピル(錠剤)を指すストリートスラング。ドラッグが身近にある危ういライフスタイル。

And it's not what it seems to be, I can die, I can fly
見かけ通りじゃねぇんだよ、俺は死ぬこともできるし、飛ぶこともできる
※クスリでハイになって「飛ぶ(fly)」ことと、物理的に死ぬ(die)ことが隣り合わせであるという危険な状態。

I can try very easily, I'm a guy and a giant
簡単にやってのけるぜ、俺はただの男であり、巨人でもあるんだ
※「giant」はラップスキルの巨大さやシーンにおけるポテンシャルの大きさを示す。一人の無力な人間(guy)と、圧倒的な才能(giant)の二面性。

She's a vivrant thing, I prolly won't buy it
彼女はヴァイブラント・シングだ、まぁ俺は買わねぇだろうけどな
※A Tribe Called QuestのQ-Tipの大ヒット曲「Vivrant Thing」(1999年)からの見事な引用。魅力的な女性だが、金目当ての女には金を使わない(won't buy it)というスタンス。

Bird bitch, take flight, no pilot
鳥みてぇなビッチ、飛んでいきな、パイロットはなしでな
※「Bird」は頭の悪い女、尻軽女を指すスラング。「鳥(bird)」だから勝手に「飛び立て(take flight)」と冷酷に突き放している。

Serve dick, curve bitch, no bias
ディックを与えて、ビッチをあしらう、偏見なしにな
※「curve」はスラングで「振る、拒絶する」。誰彼構わず平等(no bias)にヤるだけヤって冷たくあしらうという冷酷なプレイボーイの態度。

Back up, back up, chick, bad timing
下がれ、下がれよ女、タイミングが悪いぜ
※女遊びよりも今はラップゲームで上り詰めることが最優先であるため、言い寄ってくる女性を遠ざけている。

I got to get on stage, you better get on page
俺はステージに上がらなきゃならねぇんだ、お前も状況を理解した方がいいぜ
※「get on page」は「get on the same page(共通認識を持つ、空気を読む)」の略。自分が今からスターになるという現実を理解しろという忠告。

I have you looking out the windowpane
窓ガラスから外を眺める羽目にしてやるよ
※自分は外(世界)へ羽ばたくが、女は部屋に取り残されて窓から自分を見送るだけになるという情景。

Or in the rain or anything but in a way
雨の中だろうが何だろうが、とにかく邪魔なんだよ
※「in a way」は「in the way(邪魔になっている)」とのダブルミーニング。野心の妨げになる存在への苛立ち。

And if I say that's what it is, forget the lip
俺が「そういうことだ」って言ったら、口答えはすんな
※「forget the lip」は「give me lip(生意気な口をきく)」から派生し、文句や反論を許さないという強圧的な態度。

Now, what's my point, now I forget—damn, this bitch
で、俺は何が言いたかったんだ? 忘れちまった…クソ、このビッチのせいで
※ヒップホップ特有の自己言及的なユーモア。怒りのあまり自分のリリックの構成を見失うという演劇的なアプローチ。

Got me fuckin' up my script, fuck this shit, I got this shit
俺の台本を台無しにしやがって。まぁいいや、俺ならやれる
※JIDはしばしば意図的にフロウをつまずかせ、そこからリカバリーする技術を見せる。これもその一環で、生々しい臨場感を生んでいる。

Gettin' to the point where everybody say they from the block and shit
誰も彼もが自分はフッドの出身だの何だのとホラを吹く時代になっちまった
※ストリートでの苦労を知らないフェイクなラッパーたちが、流行りに乗ってゲットー出身を騙る現状への強烈なディス。

With Glocks and shit and poppin', pimpin', trappin', sippin' lean
グロックを持ってるだの、弾を撃つだの、ポン引きだの、トラップだの、リーンをすするだのってな
※トラップ・ミュージックにおけるクリシェ(ありふれた題材)を羅列し、量産型のラッパーたちの薄っぺらさを皮肉っている。

Y'all niggas fall for anything, you got the plug in Medellín?
お前らは何でも信じちまう。メデジンに密売のコネがあるだって?
※「Medellín(メデジン)」はパブロ・エスコバルのメデジン・カルテルで有名な麻薬都市。安っぽいドラッグディーラー気取りのラッパーが、そんな大物と繋がっているわけがないという嘲笑。

Kingpin? You a pen king (Kingpin? You a pen king, ayy)
キングピンだと? お前は「ペン・キング」だろ
※Geniusでも大絶賛されたワードプレイ。巨大な麻薬組織のボス「Kingpin」の文字を入れ替え、リリック(ペン)の中だけで犯罪者を演じている虚構のラッパーを「Pen king(ノートの中だけの王様)」と痛烈にこき下ろしている。

Bye, bye, niggas, 'N Sync, try I? Nigga, risky
バイバイだ、イン・シンクみたいにな。俺に挑む気か? 命取りだぜ
※2000年代のポップアイドルグループ「*NSYNC」の大ヒット曲「Bye Bye Bye」をサンプリング。フェイクな連中をアイドル扱いしてシーンから退場させるという痛快なパンチライン。

Fire, fire from the wrist piece, niggas shootin' like the '60s (Yeah, uh)
手首の銃から火を噴くぜ、連中は60年代みたいに撃ちまくるのさ
※「60年代」はキング牧師やマルコムX、JFKなどが暗殺され、ベトナム戦争があった血生臭い時代。同時に、60年代のバスケットボール選手のように高確率でシュート(shoot)を決めるというダブルミーニングでもある。凄まじい密度の連想ゲームである。

[Chorus]

Again, never been shit, never had shit, (Woah) never knew shit (Woah)
もう一回言うぜ、俺は何者でもなかったし、何も持っちゃいなかった、何も知らなかった
※(※注釈:再びフックへ戻る。フェイクなラッパーたちをなぎ倒した後だけに、彼の「持たざる者」としてのリアルさがより一層際立つ。)

Never out, never do shit, damn (Look)
外にも出ねぇ、何もしてなかった、クソ(見な)
※(※注釈:過去の停滞を断ち切り、未来へ向かう準備。)

But a nigga never gave two shits, damn, damn
でも俺はそんなこと少しも気にしちゃいなかったぜ、クソ
※(※注釈:このフックが最高潮に達した直後、曲調が劇的に変化するビートスイッチが待ち構えている。)

Never been a bitch, never had a Rollie on the wrist
ビッチみたいな真似はしたことねぇし、腕にロレックスを巻いたこともねぇ
※(※注釈:物質的貧困と精神的富裕の対比。)

Never had shit, I'ma take
何も持ってなかったから、俺は奪い取るのさ
※(※注釈:奪う=ラップゲームの王座を実力でもぎ取る決意。)

Never asking, "Give me this, give me that shit
決して頼んだりはしねぇんだよ、「あれをくれ、これをくれ」なんてな
※(※注釈:インディペンデント精神の再確認。)

Give me everything, nigga, fuck you…"
「全部俺にくれよ、なぁ、くたばれ…」
※(※注釈:ここで前回の「give me everything」から一転、「fuck you」という拒絶の言葉を吐き捨ててビートが突如として停止する。リスナーを驚愕させる展開である。)

[Part II] [Intro]

Let's go
行くぞ
※プロデューサーのChildish Majorによる、重低音が効いた凶悪なトラップビートへ切り替わる。ここからJIDの無双状態(スーパーサイヤ人モード)が始まる。

Yeah, yeah
Yeah, yeah
※ビートのグルーヴを確かめるような合いの手。

Yeah, what?
あぁ、何だ?
※これから始まるバースへのウォーミングアップ。

Umm
うーん
※余裕を見せつけるハミング。

[Verse]

Alright, what you call a chick that don't suck dick? You don't
さて、フェラしない女のことをなんて呼ぶ? 呼ばねぇよ
※「You don't(呼ばない)」は「そういう女には名前すらつけない」と「電話で呼び出したりしない(You don't call her)」の秀逸なダブルミーニング。ビートチェンジ直後に放たれる強烈なジョーク。

And if you think you finna come up this, you won't
それに、このビートで俺を超えられると思ってるなら、無理だぜ
※直前の性的なラインにかけて、「come up(成功する、イク)」のワードプレイ。俺のレベルには誰も到達できないという宣言。

Down comes the boogie and up jumps the funk
ブギが舞い降りて、ファンクが跳ね上がるぜ
※シュガーヒル・ギャングの古典「Rapper's Delight」の一節や、様々なオールドスクールヒップホップで使われる伝統的なフレーズを引用。音楽的なルーツへの敬意と、自分が本物のグルーヴを体現していることの証明。

This beat takin' a beating, I hand out the lumps
このビートはボコボコにされてるぜ、俺がコブを作ってやってるんだからな
※「take a beating(打ちのめされる)」と「beat(ビート)」の言葉遊び。俺のラップがあまりにも凶暴だから、ビートそのものが殴られて腫れ上がっている(lumps)という表現。

Damn, baby, yo' ass stand out in pumps
おいベイビー、ヒールを履いたお前のケツは目立ってるぜ
※「stand out(際立つ)」と「pumps(パンプス、またはポンプで膨らませたような)」で、女性の魅力的なスタイルを描写。

That's outstanding, stand outside until your man come
実に傑出してるよ、彼氏が来るまで外に立ってな
※「outstanding(目立つ、素晴らしい)」と「stand outside(外に立つ)」を踏んだライミング。他の男の女であるなら、魅力があっても自分の部屋には入れず外で待たせるという冷酷な扱い。

Or you can leave with the kid, we can plan some'
それか、俺と一緒に来て何か企んでもいいんだぜ
※彼氏を裏切って自分と一夜を共にするか?という悪魔の誘い。

You know I came from the dirt like a sandstorm
知っての通り、俺は砂嵐みたいに泥から這い上がってきたんだ
※「dirt」は泥、貧困、ストリートの底辺。砂嵐(sandstorm)のようにすべてを巻き込みながらゲットーから急浮上した自身のキャリアを表現。

Nigga, this a 3 point and-1
ザーコ、これは3ポイントシュートからのエンドワンだ
※バスケットボール用語。3ポイントシュートを決めた上でファウルをもらい、フリースローも追加(4点プレイ)される最高難易度のプレイ。俺のラップはそれほど圧倒的で得点力が高いというメタファー。

And 100, Wilt Chamberlain with the hand dunk
そして100点だ、ウィルト・チェンバレンの手を使ったダンクみたいにな
※伝説のNBA選手ウィルト・チェンバレンは、1試合で「100得点」を記録した史上唯一の人物。彼の圧倒的な支配力と自分を重ね合わせ、「100点満点」のラップを見せつけている。

Shawty love JID, let me turn her to a hand puppet
嬢ちゃんはJIDに夢中さ、彼女をハンドパペットにしてやるよ
※女性を完全にコントロールできるというプレイボーイな側面。性的な行為の比喩(手に負える、手玉に取る)でもある。

She moan, sound like German or something
彼女の喘ぎ声は、ドイツ語か何かみたいに聞こえるぜ
※激しい性行為によって、女性が意味不明な言葉(ドイツ語のようなくぐもった響き)を発しているというユーモラスな描写。

Run game, bitches think I'm Todd Gurley or something
ゲームを支配するぜ、ビッチどもは俺をトッド・ガーリーか何かだと思ってる
※「Run game」は「女を騙す、手玉に取る」という意味と、アメフトの「ランプレイ」をかける。トッド・ガーリーはジョージア大学出身で当時NFLを席巻していたスターRB(ランニングバック)。JID自身も元アメフト選手であったため、このメタファーは完璧に機能している。

Give me a jersey, I done balled so hard, I caught a hernia
ユニフォームをよこせ、激しくプレイしすぎてヘルニアになっちまったよ
※「ball」は「バスケ/アメフトをする」と「豪遊する、成功する」のスラング。あまりにも凄まじい勢いでラップゲームを戦い抜いた(あるいはセックスした)ため、腰を壊してしまったというジョーク。

Wheeled yo' bitch out my bed in a gurney
お前の女を俺のベッドからストレッチャーで運び出してやったぜ
※前行のヘルニアからの医療用語繋がり。激しすぎる夜を過ごしたせいで、女性が自力で歩けなくなり救急搬送されるというカートゥーン的な誇張表現。

You gotta leave lil' mama, the clock's turning
そろそろ帰らなきゃな、嬢ちゃん、時間が回ってるぜ
※目的を果たせばあっさりと帰らせる冷酷さ。

I hit it first, Ray J or Ron Jeremy
俺が最初にヤったんだ、レイ・Jかロン・ジェレミーみたいにな
※キム・カーダシアンの元カレで「I Hit It First(俺が最初にヤった)」という曲を出したレイ・Jと、伝説的なポルノ男優ロン・ジェレミーを引き合いに出し、シーンの流行や女を誰よりも早く手に入れていることを誇示。

They bleed like us so them niggas could never scare me
あいつらも俺たちと同じように血を流すんだ、だから連中が俺をビビらせることなんてできねぇよ
※どんなに大物ぶっているラッパーやギャングスタでも、撃たれれば同じように死ぬ人間であるという、ストリートの冷酷かつ平等な真理。

No niggas got more glow than JID, barely scratchin' the fucking surface
JIDより輝いてる奴なんていねぇよ、これでもまだ表面を引っ掻いた程度だぜ
※「glow」はカリスマ性やスター性。今見せている圧倒的なスキルすら、自分の真のポテンシャルのほんの一部(氷山の一角)に過ぎないと豪語している。

You need work, you need purpose
お前には練習が必要だし、目的意識も必要だ
※三流ラッパーたちに対する厳しいダメ出し。努力もビジョンも足りていないと一蹴。

Everybody good, everybody trap perfect
誰もが自分はイケてると思ってて、誰もが完璧なトラッパーを演じてやがる
※SNSや曲の中で、全員が偽りの成功者やギャングを演じている没個性的なシーンを批判。

Everything cool, don't nobody act nervous
すべて順調なフリをして、誰もビビってないように振る舞ってるが
※本当は恐怖や不安を抱えているのに、虚勢を張っているだけのラッパーたちの心理を看破している。

Just ignore the fact that your favorite rap nigga is a sap nigga
お前のお気に入りのラッパーが、実はマヌケなカモだって事実から目を逸らしてるだけさ
※「sap」は騙されやすい奴、まぬけ。ファンが崇拝しているトラップスターの多くは、裏ではレーベルに搾取されたり、ストリートの掟を知らないフェイクであるという真実の暴露。

We don't dap niggas, get the rrr-rat from the ratchet
俺たちはそんな奴らとダップなんてしねぇ、ラチェットから「ルルル・ラット」をお見舞いするだけだ
※「dap」は拳を合わせる挨拶。「ratchet」は元々工具のラチェットレンチだが、ストリートでは銃(特に粗悪な拳銃)や、下品な振る舞いを指す。銃声を巻き舌で模写するフロウが天才的である。

Get the pack out the package
パッケージからパックを取り出すのさ
※ここから「-ass」で韻を踏みまくる怒涛のラストスパートへ向かう助走。ドラッグの密売という生々しいストリートの描写。

Lil' savage ass, ratchet ass, bastard ass, havin' ass
この野蛮なクソ野郎、下品なクソ野郎、私生児のクソ野郎、金持ち気取りのクソ野郎
※「ass」を連続させるAAVE特有の罵倒表現。フェイクな連中を一気に薙ぎ払う。

Rappin' ass, jackin' ass, wait (Yeah)
ラップするクソ野郎、パクるクソ野郎どもが、待てよ(Yeah)
※他人のスタイルを盗む(jackin')偽物たちに対する怒り。ここでビートを一瞬止める(wait)というニクイ演出。

Finna blast, green dot, send the cash, pen and pad (Yeah, uh, uh, uh, uh)
ブッ放すぞ、グリーンドット、金を送れ、ペンとノートだ
※「green dot」は刑務所の受刑者への送金や、ストリートで足のつかない金のやり取りに使われるプリペイドカード。ペンとノート(リリック)を使って、現金と暴力を稼ぎ出すリアルなギャングスタ・ヒップホップの体現。

Minivan, been a dad, been with that bullshit, nigga
ミニバンに乗って、父親みたいな気分さ、そういうクソみたいな事には昔から付き合ってきたんだよ
※「ミニバンに乗る父親」のように、子供じみたフェイクラッパーたちを後部座席に乗せて説教・世話してやるというユーモア。シーンの幼稚さにウンザリしている。

Ehh, I don't wake up to the bull like I usually do
あーあ、俺はいつものように、闘牛みたいなクソ事のために目覚めたりはしねぇよ
※「the bull」は「bullshit(くだらないこと)」の略であり、同時に「Chicago Bulls(ブルズ)」も連想させる。朝からくだらない揉め事に関わるのは御免だという余裕。

Young niggas down the block on the woopty woop
ブロックの端で、若い連中がピーポーパーポーに追われてる
※「woopty woop」はパトカーのサイレンの擬音、もしくは「あれやこれや(どうでもいい騒ぎ)」のこと。フッドの日常風景。

Better pray to God they don't shoot at you
あいつらがお前を撃たないように、神に祈ったほうがいいぜ
※警察(あるいは敵対ギャング)の暴力が日常茶飯事である環境への警告。

Dreams of cleanin' this dirty money out my cuticle
俺の爪の甘皮から、この汚れた金を洗い流す日を夢見てるんだ
※「dirty money」は違法に稼いだ金。「キューティクルの汚れ」は、ドラッグを捌いたり泥水をすすってきたストリートの過酷な生活の痕跡。音楽で成功し、完全にクリーンになる(マネーロンダリングではなく、正当な成功を得る)という切実な願い。

Then a nigga make the crowd jump like Zoboomafoo
そして俺は、観客を「ゾボマフー」みたいに飛び跳ねさせるのさ
※PBS(公共放送)の子供向け動物番組『Zoboomafoo(ゾボマフー)』に登場する、ピョンピョン飛び跳ねるキツネザルへの言及。ダーティなストリートの描写から一転、90年代生まれのノスタルジーをくすぐるポップカルチャーの引用でバースを締める、JIDの知的で予測不可能なセンスが爆発したパンチライン。

[Outro]

Shit's beautiful, shit's beautiful
素晴らしいことだぜ、最高に美しい
※どん底(Never)から這い上がり、自分の才能だけで観客を熱狂させる景色に到達した喜び。

Shit's beautiful, shit's beautiful, shit's beautiful
美しい、最高に美しいぜ、マジで美しいんだ
※(※注釈:フェードアウトしていく中で、かつて「never had shit(何も持っていなかった)」と嘆いていた男が、現在の成功を「beautiful(美しい)」と噛み締めている。アルバム全体を通じた壮大なカタルシスを予感させて曲は終わる。)