Artist: Future & Metro Boomin
Album: WE STILL DON’T TRUST YOU
Song Title: Crazy Clientele
概要
『WE STILL DON’T TRUST YOU』に収録された「Crazy Clientele」は、Futureのストリートでのハッスル(麻薬密売)時代を赤裸々に回顧するバンガーである。Metro BoominとWill-A-Foolによる重低音が響く不穏なトラップビートに乗せ、彼は秤(スケール)すら使わず爪の感覚だけでクラック・コカインを切り分ける熟練のディーラーとしての過去を誇示する。タイトルが示す通り、彼の元には「常軌を逸した数の顧客(Crazy clientele=ジャンキーたち)」が昼夜を問わず群がっていた。特筆すべきは、グラム(grams)単位でコカインを捌いていた過去と、グラミー賞(Grammys)を獲得するに至った現在を鮮やかに踏韻で対比させている点だ。単なる犯罪の美化ではなく、ゲットーの貧困から抜け出すための命懸けのサバイバルと、消えないパラノイア(警察やジャンキーへの警戒)を生々しく描き出しており、トラップ・ミュージックの原点回帰とも言える冷徹な名曲に仕上がっている。
和訳
[Intro]
Got my bomb in my hand, Taliban, yeah
手には極上のブツ(爆弾)を握ってる、タリバンみたいにな、ああ
※「bomb」は強力なドラッグやクラック・コカインのスラング。自身を武装組織「タリバン」に例え、ストリートでの危険な立ち回りと強大な影響力を誇示している。
(If Young Metro don't trust you, I'm gon' shoot you)
(ヤング・メトロがお前を信用しないなら、俺がお前を撃つぜ)
[Chorus]
Cut my crack with my nail, weigh the bale without the scale (Can I trust you?)
爪でクラックを切り分ける、秤(スケール)なんて使わずにベイル(大量の塊)の重さを測るんだ(お前を信じられるか?)
※本楽曲のコアとなる強烈なパンチライン。長年のディーラー経験により、スケールを使わずとも目分量や手の感覚だけでコカインの正確な重量を測れるという、ストリートにおける究極の職人技(フレックス)をアピールしている。
I'm cuttin' crack with my nail, weigh the bale without a scale
爪でクラックを切り分ける、スケールなしでブツの重さを測るのさ
Cuttin' crack with my nail, I got crazy clientele (Will-A-Fool, Will-Will-Will-William)
爪でクラックを切り分ける、俺にはイカれた上客(クライアンテル)が腐るほどいるからな(ウィル・ア・フール、ウィル・ウィル・ウィル・ウィリアム)
※背後で鳴る「Will-A-Fool」はアトランタのプロデューサー集団Freebandz所属のWill-A-Foolのタグ。Metro Boominとの共同プロデュースであることを示している。「crazy clientele」は麻薬に依存して次から次へと買いに来る常軌を逸したジャンキーたちを指す。
Cuttin' the crack with the nail, weighin' bale without the scale
爪でクラックを切り分ける、スケールなしでブツの重さを測る
I'm a Freeband nigga, I got crazy clientele
俺はフリーバンズのハスラーだ、ヤバい顧客を抱えてるぜ
※「Freebandz」はFuture自身が設立したレーベル名であり、彼のクルーそのものを指す。
Yeah, yeah, yeah
ああ
Yeah, yeah, yeah
ああ
I cut crack with my nail, weigh a bale without the scale
爪でクラックを切り分ける、スケールなしでブツの重さを測るのさ
I'm a Black Amigo nigga, I got crazy clientele
俺はブラック・アミーゴのハスラーだ、イカれた上客が山ほどいるぜ
※「Black Amigo」はアトランタのラッパーYoung Scooterが設立したレーベル「Black Migo Gang (BMG)」のこと。FutureのFreebandzとは極めて関係が深く、ストリートでの強力なアライアンス(同盟)を意味している。
Yeah, yeah, yeah
ああ
Yeah, yeah, yeah
ああ
[Verse 1]
Cooked a bomb up and I didn't use a Belly (I ain't use a scale)
極上のブツ(ボム)を料理(クック)したぜ、ベリーなんて使わずにな(スケールなんて使わねえ)
※「Belly」は1998年の伝説的フッド映画『Belly(血肉の絆)』の引用、あるいはストリートでの計測器具のスラング。いずれにせよ、道具に頼らず自身の感覚だけでドラッグを精製(クック)したという誇示。
I was a young nigga, servin' dope up out the telly (Had them bales goin')
俺はまだガキだった頃から、安モーテル(テリー)を拠点にドープを捌いてた(大量のブツを回してたぜ)
Tote .223 when you got that fetti (What you doin', boy?)
大金(フェティ)を持ってる時は、.223口径(アサルトライフル)を携帯するんだ(何やってるんだ、ボーイ?)
※「fetti」は金のスラング。大量の現金と麻薬を所持している時は、強盗から身を守るために重火器(AR-15などの.223口径)が必要不可欠であるという過酷なサバイバルのルール。
Got shottas pullin' up, they armed and ready (They armed and ready, yeah)
殺し屋(ショッタ)どもが車で乗り付けてくる、奴らは武装して準備万端だ(武装して準備万端だぜ、ああ)
※「shottas」はジャマイカのパトワ語に由来する、銃を持ったギャングや殺し屋のこと。
Hold the Glock with two hands, shoot it steady (Shoot the Glock now)
グロックを両手でしっかり構えて、ブレずに撃ち抜くのさ(今すぐグロックをブッ放せ)
I'm four hours in, been cookin' Betty (Cookin' the block 'round)
もう4時間もぶっ通しで、ベティを料理(クック)し続けてる(ブロック中でクックしてるぜ)
※「Betty」はアメリカの有名なケーキミックスのブランド「Betty Crocker」のこと。コカインを鍋で煮詰めてクラックを精製する(クックする)工程を、ケーキ作り(ベティ・クロッカー)に見立てたストリート特有の巧妙な隠語。
I'ma front you a kilo 'cause I ain't petty (I ain't petty, nigga)
お前に1キロ(のコカイン)を前貸し(フロント)してやるよ、俺はケチな男じゃねえからな(俺はケチじゃねえ)
Gon' rerock a block, my game heavy (Uh)
ブロック(キロ単位のコカインの塊)をリロックしてやる、俺のシノギはデカいんだ
※「rerock」はコカインに不純物(重曹など)を混ぜて固め直し、量を水増しして利益を倍増させるディーラーのテクニック。
Been servin' them yams, crib in Skyami (I'm in Skyami now)
ヤムイモ(極上のドラッグ)を捌き続けて、今じゃスカイアミに豪邸を構えてる(今はスカイアミにいるぜ)
※「yams」はコカインやヘロインの塊。「Skyami」はマイアミの超高層高級コンドミニアム(Sky + Miami)を指す造語。底辺のゲットーから、空(Sky)に近いラグジュアリーな生活への圧倒的な成り上がり。
Went from servin' them grams to havin' Grammys (Yeah)
グラム単位でブツを捌いてたどん底から、グラミー賞(グラミーズ)を手にするまでになったのさ(ああ)
※本楽曲で最も評価の高いパンチライン。ドラッグの重さの単位である「Grams」と、音楽界最高の栄誉である「Grammys」を掛けた、美しすぎるサクセスストーリーの対比。
Still workin' twenty-four hours just like a deli (Pluto)
今でもデリ(24時間営業のコンビニ)みたいに、24時間眠らずに働き続けてるぜ(プルート)
※大成功を収めても、ストリート時代に培ったハスラーとしてのワーカホリックな精神は全く変わっていない。
Gotta free my big brother locked in the celly (Free my brother Chuck)
独房(セリー)にぶち込まれてる兄貴を、何としても自由にしなきゃならねえ(俺のブラザー、チャックを解放しろ)
※刑務所に服役している地元の仲間や肉親へのシャウトアウト。ストリートの過酷な現実が今も彼を縛り付けている。
[Chorus]
Cuttin' the crack with the nail, weighin' bale without the scale
爪でクラックを切り分ける、スケールなしでブツの重さを測る
I'm a Freeband nigga, I got crazy clientele (I got crazy clientele, yeah)
俺はフリーバンズのハスラーだ、ヤバい顧客を抱えてるぜ(ヤバい顧客を抱えてる、ああ)
Yeah, yeah, yeah (I got crazy clientele, yeah)
ああ(ヤバい顧客を抱えてる、ああ)
Yeah, yeah, yeah
ああ
I cut crack with my nail, weigh a bale without the scale
爪でクラックを切り分ける、スケールなしでブツの重さを測るのさ
I'm a Black Amigo nigga, I got crazy clientele (l got crazy clientele, yeah)
俺はブラック・アミーゴのハスラーだ、イカれた上客が山ほどいるぜ(ヤバい顧客を抱えてる、ああ)
Yeah, yeah, yeah (I got crazy clientele, yeah)
ああ(ヤバい顧客を抱えてる、ああ)
Yeah, yeah, yeah
ああ
[Verse 2]
Workin' that block, servin' that cheese, nigga
あのブロック(シマ)で働き詰めさ、チーズ(金とドラッグ)を捌きまくってる
※「cheese」は金、または安物のヘロインを指すストリート用語。
You gon' pop it on your own 'cause you don't need niggas
誰の助けもいらねえ、お前は自分自身の力だけでブチかますんだ
※他人に依存せず、単独でハッスル(自立)することの重要性を説くストリートの教訓。
Servin' bags of the strong without the seeds, nigga
種の入ってない、強烈なストロング(極上のウィード)の袋を捌いてるぜ
※「strong」はTHC濃度が高い強力なマリファナ。「without the seeds(種なし)」は、交尾させていないメス株から作られる最高級のシンセミリア(種なし大麻)であることを示し、扱う商品の質の高さを自慢している。
On the top of the throne, it's hard to see niggas (I'm a king, nigga)
王座の頂点に座ってると、下の雑魚どもの姿なんて見えやしねえ(俺は王様だからな)
Got a thousand-one grams, I'm servin' P's, nigga (Thousand grams)
1001グラムのブツを持ってる、俺はP(ポンド)単位で捌いてるんだ(1000グラムだぜ)
※「P's」はポンド(約453グラム)、あるいはピル(錠剤)のこと。グラム単位の小売りから、卸売りのビッグボスへと昇格した証。
Servin' coke out your hand, you gotta eat, nigga (Servin' coke)
自分の手から直接コカインを捌くんだ、生きて食っていくためにな(コークを捌く)
Ready to run up them bands, street feed niggas
札束(バンズ)を積み上げる準備はできてる、ストリートが俺たちに飯を食わせてくれるんだ
(Freeband Gang)
(フリーバンド・ギャング)
We gon' sell it for the high, you got it cheap, nigga
俺たちはそれを最高値(ハイ)で売り捌く、お前は安く手に入れたんだからな
(Yeah)
(ああ)
Just a product of my environment, I'm a key, nigga
俺はこの過酷な環境(ゲットー)の産物に過ぎない、俺はキー(キログラム)の男さ
※「key」はコカインの単位であるキロ(kilo)と、成功への「鍵(キー)」、あるいはフッドに欠かせない重要人物(キーパーソン)というトリプルミーニング。
It's hard to sleep with this money, I'm takin' E, nigga (I'm takin' X now)
これだけの大金を抱えてると眠れやしねえ、だからE(エクスタシー)を飲んでるんだ(今はXをキメてるぜ)
※「E」および「X」はMDMA(エクスタシー)のスラング。大金を手に入れた重圧や、いつ命や金を狙われるか分からないパラノイアにより不眠症に陥り、さらにドラッグに依存していくというトラップスターの悲痛な悪循環。
I had to hustle, go get it, wasn't tryna leave niggas (Go and get it)
俺はハッスルして自ら掴み取りに行くしかなかったんだ、仲間を見捨てようとしたわけじゃねえ(掴みに行け)
I seen a million-somethin' dollars just off the weed, nigga (Woah)
俺はウィード(大麻)を捌いただけで、ミリオン(100万ドル)以上の大金をこの目で見てきたんだぜ(ウォー)
※コカインなどのハードドラッグだけでなく、比較的単価の低い大麻だけでも莫大な富を築いたという、彼のディーラーとしての商才と規模の大きさを物語っている。
[Chorus]
Cuttin' the crack with the nail, weighin' bale without the scale
爪でクラックを切り分ける、スケールなしでブツの重さを測る
I'm a Freeband nigga, I got crazy clientele (Woah)
俺はフリーバンズのハスラーだ、ヤバい顧客を抱えてるぜ(ウォー)
Yeah, yeah, yeah
ああ
Yeah, yeah, yeah (Yeah)
ああ(ああ)
I cut crack with my nail, weigh a bale without the scale
爪でクラックを切り分ける、スケールなしでブツの重さを測るのさ
I'm a Black Amigo nigga, I got crazy clientele (Woah)
俺はブラック・アミーゴのハスラーだ、イカれた上客が山ほどいるぜ(ウォー)
Yeah, yeah, yeah (Yeah)
ああ(ああ)
Yeah, yeah, yeah (Woah)
ああ(ウォー)
[Outro]
Junkies at my door, police at my door (I need it, boy)
ドアの前にはジャンキーども、そして警察まで押し寄せてくる(ソレが必要なんだ、ボーイ)
※ドラッグを求めて群がる常軌を逸した顧客たち(crazy clientele)の狂気と、常に付き纏うサツの影(逮捕の恐怖)。大金を稼いでも決して安らぐことのないストリートの現実。
Junkies at my door, police at my door (Please, boy)
ジャンキーどもがドアを叩き、サツもドアを叩きやがる(頼むよ、ボーイ)
※「Please, boy(頼むよ)」は、禁断症状に苦しみ薬を懇願するジャンキーの生々しい声。
Junkies at my door, police at my door (Yeah)
ドアの前にはジャンキーども、そして警察まで押し寄せてくる(ああ)
Pounds in the attic, pounds on the floor (Woah)
屋根裏には何ポンドものブツ、床の上にも何ポンドものブツが転がってるぜ(ウォー)
※家中に違法薬物が溢れ返っている異常な光景。富の蓄積と、いつ破滅してもおかしくない極限状態のパラノイアを描き出し、楽曲は不穏に幕を閉じる。
