Artist: Future & Metro Boomin
Album: WE DON'T TRUST YOU
Song Title: Seen It All
概要
本作「Seen It All」は、ストリートの最底辺からヒップホップ界の頂点へと登り詰めたFutureが、その過酷な道のりで「すべてを見てきた(経験してきた)」と語る、ベテランとしての貫禄と自負に満ちたバンガーである。Metro Boominの重厚なビート上で、祖母の家での麻薬密売から現在の莫大な富に至るまでの軌跡が冷徹に描かれる。さらに、曲の冒頭でのシャウトアウトやアウトロにフィーチャーされたMobb Deepの故Prodigyによる生前のインタビュー音声は、本作の核心を突いている。「最近の流行りはクソだ。誰が本物か見極められるのは俺たちベテランだけだ」というProdigyの言葉は、ストリートのリアルを知らないフェイクなラッパー(暗にDrakeらを指す)に対する、Future陣営からの究極の権威付けと痛烈な批判として機能している。
和訳
[Intro]
Yeah
イェー
※イントロ。
We done seen it all
俺たちはすべてを見てきた
※タイトルの提示。ストリートの裏切りから業界の頂点まで、酸いも甘いも経験し尽くしたというベテランの余裕。
And done it all
そして、すべてをやってのけた
※ドラッグディールからスタジアムツアーまで、あらゆる経験を積んできた自負。
We don't trust these niggas
俺たちはこいつらを信用しちゃいねぇ
※アルバムタイトル『We Don't Trust You』のマントラ。フェイクな同業者への不信感。
Word, word to my nigga, P
マジだぜ、俺のダチ、Pに誓ってな
※【Prodigyへの敬意】「P」はニューヨークの伝説的ヒップホップ・デュオ、Mobb Deepの故Prodigyのこと。東海岸ハードコア・ラップの象徴である彼に誓うことで、自分たちの言葉が「本物のストリートの真実」であることを強調している。
[Verse 1]
Brodie's bitch is back out, rocking these platinum chains
兄弟のビッチがまた姿を見せたぜ、プラチナのチェーンを揺らしながらな
※「Brodie」は兄弟のように親しい仲間。仲間が囲っている女性が、与えられた高価なジュエリーを誇示している様子。
She give it to a thorough nigga, that's my claim of fame
あいつは本物の男に体を捧げる、それが俺の誇りさ
※「thorough」は筋の通った、本物のストリートの男。自分がその「本物」であるというフレックス。
Chanel body suit, when it rain, diamonds galore
シャネルのボディスーツ、雨が降れば大量のダイヤモンドが光り輝く
※「when it rain」は金をばら撒く(make it rain)こと、あるいは物理的な光の反射でダイヤ(Ice)が水滴のように輝く様子。
Get chauffeured under the stars, you can forget how you was livin' before
星空の下をお抱え運転手付きで走る、昔の貧しい暮らしなんて忘れちまうだろ
※「chauffeured」はショーファー(運転手)に運転させること。ロールス・ロイスの「スターライト・ヘッドライナー(天井に星空を模したLED装飾)」のメタファーでもあり、底辺から成り上がった女性への甘い言葉。
She keep it P with a player, so she never at me
あいつはプレイヤーに対して「P」を貫く、だから俺にまとわりついたりはしねぇ
※「keep it P」はGunnaのヒット曲「Pushin P」でも知られるスラングで、リアルで本物(Player)の姿勢を保つこと。自立した大人の関係性を描いている。
I'ma get munyun, got my lawyer, hoes can't attack me
俺はしこたま稼ぐ、弁護士もついてる。ビッチ共が俺をハメることはできねぇよ
※「munyun」は大金(Money)のスラング。金目当ての訴訟やハニートラップに対しても、優秀な弁護士団(法的武装)で隙を見せない。
Lil' niggas run you down with a gun like he in a track meet
若ぇ野郎どもが、陸上競技みたいに銃を持ってお前を追い詰めるぜ
※「run down」は標的を走って追い詰め、至近距離から銃撃するストリートの処刑法。
Sent through a cleanin' crew, they pressin' with that iron (Ah)
清掃のクルーを送り込む、奴らはアイロン(銃)でアイロンがけ(銃撃)してやるのさ(Ah)
※【秀逸なワードプレイ】「cleanin' crew(清掃員)」と「証拠隠滅や敵の排除を行うヒットマンのチーム」を掛け、「iron(アイロン)」と「拳銃の隠語(Iron)」を掛けている。敵をシワ伸ばし(press)するように平ら(死体)にするという恐ろしい比喩。
Look a nigga in the eyes, see if he gon' cross
野郎の目を見りゃ、裏切るかどうかなんて分かるんだよ
※数々の裏切り(cross)を経験してきたベテランならではの人間観察力。
Cocoa number five bitch eatin' up a boss
ココ・ナンバーファイブのビッチが、ボス(俺)にしゃぶりついてる
※「Cocoa number five」は高級香水「シャネル N°5(Coco Chanel)」と、褐色の肌の女性(Cocoa)、さらにはコカイン(Coco)の匂いがする環境を暗に示している。
Keep my bitch close, but I keep the goons closer
自分の女は近くに置くが、ならず者(護衛)はさらに近くに置いてるぜ
※マフィアの格言「友は近くに置け、敵はさらに近くに置け」の変形。女よりも、自分の命を守る(あるいは汚れ仕事をする)ギャングの仲間(goons)を最優先している。
Dom Pérignon bottle, wasted bubbly on the floor
ドンペリのボトル、極上の泡を床に無駄撒きしてやる
※超高級シャンパンであるドン・ペリニヨンを、飲むためではなくただ床にこぼす(散財する)という成金的フレックス。
Came up from the block, sellin' the rawest coke
ブロック(ストリート)から成り上がった、純度100%のコカインを売り捌いてな
※自身のルーツ。混ぜ物なしの最高品質のドラッグを扱っていた過去。
You might OD off this shit, nigga, ain't never enough
お前らじゃこのブツでOD(過剰摂取)しちまうかもな、それでも全く足りねぇんだよ
※自分の提供するドラッグ(あるいは自分の音楽=Dope)が強力すぎるという誇示。
Richie Mil' cost a house, it ain't never enough
リシャール・ミルは家一軒分の値段だ、それでもまだ足りねぇ
※数千万円〜数億円する超高級時計「Richard Mille」。どれだけ物質的な富を得ても満たされない底なしの欲望。
Seven hundred bucks on a truck, the seats brazy (Ah)
トラック(SUV)に70万ドル突っ込んだ、シートはイカれてるぜ(Ah)
※「Seven hundred bucks」は文字通りには700ドルだが、文脈上「70万ドル(700k)」でフルカスタムされた高級SUV(ロールス・ロイス・カリナンなど)を指している。「brazy」はcrazyのBloods(ギャング)風の言い回し。
[Chorus]
Me and my brothers, we puttin' freaks in rotation
俺と兄弟たちは、変態ビッチ共をローテーションで回してる
※「freaks」は性的に奔放な女性。仲間内で女性を共有するというストリートの非情なフレックス。
Sometimes they move on, they still can't replace
時々あいつらは去っていくが、それでも俺たちの代わりは見つからねぇのさ
※自分たち以上の男(金やステータスを持つ者)はこの世にいないという絶対的な自信。
I'll lose a stone and get it replaced the same day
ダイヤ(ストーン)を落としても、その日のうちに新しいのに交換するぜ
※高価なダイヤモンドを紛失しても痛くも痒くもないという経済力。
From trappin' out my granny house to rappin' on the stage
ばあちゃんの家でトラップ(密売)してた頃から、ステージの上でラップするようになるまで
※Futureの実際の生い立ち。祖母の家を麻薬密売所(トラップハウス)として使っていたゲットーのどん底から、世界的なスーパースターへのサクセスストーリー。
I want it all, I know these streets gon' have to feed me
俺はすべてが欲しい、このストリートが俺を養わなきゃならねぇって分かってるんだ
※ストリートから搾取し、ストリートの王として君臨し続けるという貪欲なハングリー精神。
These hoes sit down, I'm lettin' 'em hit it off the whole key
ビッチ共を座らせて、1キロの塊(キー)から直接吸わせてやる
※「whole key」は1キロのコカイン(キログラム=キー)。小分けのドラッグではなく、密輸されたばかりの巨大な塊から直接女性にキメさせるという異常なスケール感。
Got rich in this shit, got a clip hold a fifty
このクソみたいな世界で金持ちになった、50発入りの拡張マガジン(クリップ)を持ってるぜ
※大成功を収めても、常に重武装(50連ドラムマガジン)を解かないパラノイア。
You tryna keep up with me, gon' be O-V (Ah)
俺についてこようとしてるなら、お前は「終わり(O-V)」になるぜ(Ah)
※「O-V」はOver(終わり)の略。Reddit等では、これがDrakeのレーベル「OVO」を暗にディスしている(OVOに連なる者は終わりだ、という意味)と深く考察されているパンチライン。
[Verse 2]
I cook that white girl uncut, you might OD
俺はアンカットの白人女(コカイン)を調理する、お前じゃODしちまうかもな
※「white girl」はコカインの隠語。「uncut」は不純物が混ざっていない純度100%の状態。「cook」はクラックを精製すること。
Drop thirty-six in a Pyrex, stay low-key
パイレックスに36オンスをぶち込み、目立たずにひっそりやるのさ
※「thirty-six」は36オンス(約1キログラム=1 Key)。「Pyrex」は耐熱ガラス容器。1キロのコカインをコトコトと煮詰めてクラックを作る、リアルなトラップの日常風景。
Put a nigga on suicide watch, they try and play me
俺をナメようとする野郎は、自殺監視対象にしてやるよ
※俺を敵に回せば、恐怖と絶望で精神を病み、刑務所の自殺監視房(suicide watch)に入れられるレベルまで追い込まれるという脅し。
Spent a million dollars on the watch, chasin' a big B
時計に100万ドルを注ぎ込み、デカいB(10億ドル)を追いかけてる
※「big B」はBillion(10億ドル)。ミリオネアからビリオネアへの野心。
Talkin' hip-hop, I'm talkin' 'bout drugs
お前らはヒップホップを語るが、俺はドラッグを語ってるんだ
※ラップを単なる音楽やファッションとして捉える連中とは違い、自分にとってのラップはストリートのリアル(麻薬密売の現実)そのものであるという境界線。
Live like a shotta, I bring fire to the club
ショッターみたいに生きる、クラブに火(銃撃)をもたらすぜ
※「shotta」はジャマイカ由来のスラングで、冷酷なギャングや殺し屋のこと。「fire」は熱気と本物の銃火器の両方を意味する。
Lookin' up to mobsters as kids, that was us
ガキの頃はマフィアのボスに憧れてた、それが俺たちだったんだ
※正業ではなく、裏社会のボス(Mobsters)をロールモデルとして育つしかなかったゲットーの宿命。
Teflon Pluto, I'm not the nigga you can touch (Ah)
テフロン・Plutoだ、俺はお前らが触れられるような男じゃねぇ(Ah)
※「Teflon」はフライパンのコーティング素材で「汚れ(罪)を弾く」ことから、警察の捜査を何度も逃れたニューヨークのマフィアのボス、ジョン・ゴッティの異名「Teflon Don」に由来する。「Pluto」はFuture自身。自分は絶対に捕まらないし、敵からの攻撃も全て弾き返す無敵の存在だという宣言。
[Chorus]
Me and my brothers, we puttin' freaks in rotation
俺と兄弟たちは、変態ビッチ共をローテーションで回してる
※コーラスの反復。
Sometimes they move on, they still can't replace
時々あいつらは去っていくが、それでも俺たちの代わりは見つからねぇのさ
※コーラスの反復。
I'll lose a stone and get it replaced the same day
ダイヤを落としても、その日のうちに新しいのに交換するぜ
※コーラスの反復。
From trappin' out my granny house to rappin' on the stage
ばあちゃんの家でトラップしてた頃から、ステージの上でラップするようになるまで
※コーラスの反復。
I want it all, I know these streets gon' have to feed me
俺はすべてが欲しい、このストリートが俺を養わなきゃならねぇって分かってるんだ
※コーラスの反復。
These hoes sit down, I'm lettin' 'em hit it off the whole key
ビッチ共を座らせて、1キロの塊から直接吸わせてやる
※コーラスの反復。
Got rich in this shit, got a clip hold a fifty
このクソみたいな世界で金持ちになった、50発入りの拡張マガジンを持ってるぜ
※コーラスの反復。
You tryna keep up with me, gon' be O-V (Ah)
俺についてこようとしてるなら、お前は「終わり(O-V)」になるぜ(Ah)
※コーラスの反復。
Me and my brothers, we puttin' freaks in rotation
俺と兄弟たちは、変態ビッチ共をローテーションで回してる
※コーラスの反復。
Sometimes they move on, they still can't replace
時々あいつらは去っていくが、それでも俺たちの代わりは見つからねぇのさ
※コーラスの反復。
I'll lose a stone and get it replaced the same day
ダイヤを落としても、その日のうちに新しいのに交換するぜ
※コーラスの反復。
From trappin' out my granny house to rappin' on the stage
ばあちゃんの家でトラップしてた頃から、ステージの上でラップするようになるまで
※コーラスの反復。
I want it all, I know these streets gon' have to feed me
俺はすべてが欲しい、このストリートが俺を養わなきゃならねぇって分かってるんだ
※コーラスの反復。
These hoes sit down, I'm lettin' 'em hit it off the whole key
ビッチ共を座らせて、1キロの塊から直接吸わせてやる
※コーラスの反復。
Got rich in this shit, got a clip hold a fifty
このクソみたいな世界で金持ちになった、50発入りの拡張マガジンを持ってるぜ
※コーラスの反復。
You tryna keep up with me, gon' be O-V (Ah)
俺についてこようとしてるなら、お前は「終わり(O-V)」になるぜ(Ah)
※コーラスの反復。
[Outro: Prodigy of Mobb Deep]
That's just my opinion, I don't listen to that bullshit, you know what I'm sayin'?
まぁ、これはあくまで俺の意見だけどな、俺はあんなクソみたいな音楽(ブルシット)は聴かねぇよ。言ってる意味わかるか?
※【Prodigyのインタビュー・サンプリング】Mobb Deepの故Prodigyによる生前のインタビュー音声。イントロのシャウトアウトを回収する形で、ストリートのレジェンドの言葉が曲を締めくくる。
Like some people think that's hot
あんなのを「イケてる(Hot)」って思う連中もいるみたいだけどな
※チャートで受けているだけの商業的なフェイク・ラッパーたちへの言及。
Some people actually think that shit is hot
実際に、あんなクソをイケてると思ってる奴らがいるんだよ
※大衆の耳が本物を見極められていないことへの呆れ。
Like, come on, who you gon' listen to, them or P?
おいおい、ふざけんなよ。お前らはどっちの言葉を信じるんだ? 奴らか、それとも俺(P)か?
※「P」はProdigy自身。ストリートで命を削ってカルチャーを作ってきた本物のレジェンドの言葉と、コスプレ・ラッパーの言葉、どちらに価値があるかは明白だという問いかけ。
Who the veterans? Who the seasoned veterans at this shit
誰がベテランだ? このクソみたいな世界を生き抜いてきた「本物のベテラン」は誰なんだ?
※自分たち(Mobb DeepやFuture、Metro)こそが、血で血を洗うヒップホップの歴史をサバイブしてきた真の権威であるという主張。
That can tell you what's hot and what's not?
何が本当にイケてて、何がダサいか、お前らに教えてやれるのは誰なんだよ?
※本物と偽物をジャッジする資格を持つのは、リアルな経験を持つ者だけであるという定義。
You know what I'm sayin'? That's, there you have it, son
言ってる意味わかるか? まぁ、そういうことだよ、坊や
※レジェンドの説教。
And I ain't on no hater shit, I ain't a hater
別にヘイター(嫉妬)として言ってるわけじゃねぇ、俺はヘイターじゃねぇよ
※単なる私怨ではなく、カルチャーを守るための純粋な評価であることを強調。
Do your thing, nigga, you know what I'm sayin'?
お前らはお前らの好きなように(フェイクな真似を)やってりゃいいさ、わかるか?
※相手を完全に見下し、突き放す態度。
But personally, this today is not poppin', son
でも個人的には、今日びのアレは全くイケてねぇ(Poppin'じゃない)んだよ、坊や
※【Drakeらへの最終宣告】現代のシーンに蔓延するフェイクな音楽に対する、ヒップホップの神髄からの冷酷なNOの突きつけ。この言葉により、Future陣営が「本物」であることを決定づけ、楽曲が幕を閉じる。
