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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Ice Attack - Future & Metro Boomin 【和訳・解説】

Artist: Future & Metro Boomin

Album: WE DON'T TRUST YOU

Song Title: Ice Attack

概要

本作は、ヒップホップ界に激震を走らせたFutureとMetro Boominの歴史的ジョイントアルバム『We Don’t Trust You』に収録された、アルバムの根幹を成すテーマ「富とパラノイア」を象徴する一曲だ。前半のソウルフルでメランコリックなサンプリングから始まり、中盤の不穏なセリフを境にして、一転して破壊的なトラップ・ビートへと変貌を遂げる(ビート・スイッチ)。ジュエリー(Ice)を纏うことで生じる強盗への恐怖(Attack)や、大金(Cheese)を手にした途端に群がるフェイクな友人(Rats=ネズミ/密告者)への猜疑心が赤裸々に描かれている。極めつけは、アウトロでサンプリングされたMobb Deepの故Prodigyによる「ダサい(Corny)ラッパー」への痛烈な批判だ。これは、ストリートのリアルを知らないDrakeらをはじめとする業界の偽物たちに対する、Future陣営からの冷徹な宣戦布告として、GeniusやRedditのコアなヒップホップファンの間で高く評価されている。

和訳

[Part I] [Verse]

Can't put too much on, might catch a ice attack
ジュエリーを着けすぎると、「アイス・アタック(氷の襲撃)」を喰らっちまうかもしれない
※「Ice」はダイヤモンドやジュエリーのスラング。「Ice Attack」は、大量のジュエリーの冷たさによる心臓発作(Heart Attack)のようなショックと、そのジュエリーを狙った強盗からの「襲撃(Attack)」という2つの意味を持つ強烈なダブルミーニング。ストリートでの成功がもたらすパラノイアの象徴だ。

Fortieth anniversary, flooded VVS
40周年記念モデル、VVSのダイヤを敷き詰めてる
※ロレックスのデイデイトやパテック・フィリップなどの高級時計の「40周年記念モデル」を指す。VVSは非常に透明度の高い最高級ダイヤモンドのグレード。「flooded」は時計の文字盤やベゼルがダイヤで埋め尽くされている(水浸しになっている)状態。

Trappin' it out the foreign, I might crash and wreck
高級外車からクスリをさばく、クラッシュして大破するかもな
※「foreign」は輸入高級車。「Trappin'」は麻薬密売。通常、トラップ(密売)は目立たないボロボロの車で行うが、Futureは成功を誇示するために高級車で行う。そのスピードと狂気で自滅するかもしれないというスリル。

I'm buyin' out the department, goin' to galaxy
デパートを買い占めて、銀河まで飛んでいくぜ
※ハイブランドの店舗(department)の品を全て買い占めるほどの圧倒的な財力。そして「galaxy」は宇宙(自身の別名Pluto=冥王星)のように、常人には届かない次元や、ドラッグによる強烈なハイ状態へ到達することのメタファー。

I'm prayin' to find a plug to bring me Actavis
アクタビスを持ってきてくれる売人が見つかるように祈ってるんだ
※「Actavis(アクタビス)」は、かつてヒップホップシーンで爆発的に流行した咳止めシロップ(プロメタジン・コデイン配合)の伝説的ブランド。2014年に生産中止となり、現在では1本数百万から数千万円で裏取引される幻のドラッグ。それを引っ張れる超大物の売人(plug)を常に探しているという深刻なリーン依存の描写。

Bought a crib in every city, I forget my address
行く街ごとに豪邸を買ってたら、自分の住所すら忘れちまった
※「crib」は家。全米中に不動産を所有する大富豪(モーグル)としてのフレックス。

I been hustlin' since a kid, I was just a adolescent
ガキの頃からハッスルし続けてきた、まだほんの思春期の頃からな
※「hustlin'」はストリートで金を稼ぐ(主に非合法な)サバイバル術のこと。Drakeのような裕福な出自ではなく、ストリート育ちのリアルさを強調している。

I done ran up a Richard Millie, I can't stop finessin'
リシャール・ミルの金額まで稼ぎ切ったが、フィネスをやめられねぇ
※「Richard Millie (Mille)」は数千万〜数億円する超高級時計。「finessin'」は巧妙な手口で金を巻き上げる、または相手を出し抜いて稼ぐこと。大金持ちになってもストリートのハングリー精神は消えない。

Got to practice what I preach, I'm buyin' my bitch baguettes
有言実行しなきゃな、俺の女にバゲット・ダイヤを買ってやる
※「practice what I preach」は自分が説いていること(教え)を自ら実践するというイディオム。自分が金持ちのボスであるとラップで語る以上、それに相応しく取り巻きの女性にも最高級の長方形カットダイヤ(baguettes)を与えなければならないという王の責務。

I got money, but ain't got time, these hoes gettin' too obsessed
金はあるが時間はない、このビッチどもは俺に執着しすぎだ
※巨万の富を得たことで、女性たちが過剰に擦り寄ってくる煩わしさ。

Went shoppin' out in Europe, shut down Javier
ヨーロッパに買い物に行って、ハビエルの店を貸し切りにした
※「Javier」はヨーロッパの高級ブティックのオーナーや、特定のプライベートジュエラーを指していると思われる。「shut down」は店を貸し切り状態にして一般客を締め出し、VIPとして爆買いすること。

Laced in Balenci' and got Marni on my body gear
バレンシアガで身を包み、マルニを重ね着する
※BalenciagaとMarniというハイエンドなファッション・フレックス。

Look on Google, I been gettin' way richer еvery year
Googleで検索してみな、俺は年を追うごとに遥かに金持ちになってる
※ネットの純資産(Net Worth)の推移を見るだけで、自分の成功が揺るぎない事実であることが証明できるという強気のライン。

Play with Scooter and I'ma sеnd a nigga outta here
スクーターにちょっかいを出してみろ、俺がお前をこの世から消し去ってやる
※「Scooter」はアトランタのラッパーであり、FutureのレーベルFreebandzの盟友「Young Scooter」のこと。彼らはかつて本物の麻薬王(Kingpin)として活動していた背景があり、彼を怒らせれば即座にヒットマンを送り込む(send outta here=死)という血なまぐさい警告。

[Segue]

You mean, you don't trust the police?
つまり、警察を信用していないと?
※アルバムのテーマを凝縮した、古いマフィア・犯罪映画を彷彿とさせるサンプリング。

In my business, you don't trust anybody
俺のビジネスでは、誰も信用しちゃいけないんだ
※ストリートや裏社会における「沈黙の掟」と「完全なる人間不信」。偽善者が蔓延る音楽業界(特にDrakeなどのスニークディスをする同業者)へのパラノイアを、マフィアのセリフに仮託して表現している。ここからビートが攻撃的なトラップへと急展開する。

[Part II] [Chorus]

Metro Boomin, he a millionaire, fuck it, take it back
Metro Boominはミリオネアだ、いやクソ、前言撤回するぜ
※Metroが単なる「金持ち」の枠に収まるような器ではなく、もはや億万長者(Billionaire)レベルの権力者へと登り詰めたという絶賛の入り。

Metro Boomin havin' cheese now, these niggas nothin' but rats
今のMetro Boominは大量のチーズを持ってる、だから周りの奴らはネズミばっかりだ
※【痛烈なダブルミーニング】「Cheese」はストリートスラングで大金のこと。金(チーズ)の匂いを嗅ぎつけて寄ってくる「Rats(ネズミ=偽物の友人たち)」を描写している。さらに「Rats」は警察に密告する「スニッチ(裏切り者)」の代名詞でもある。富を得たことで、皮肉にも信用できない裏切り者ばかりが周囲に群がってくるという、本作のコアとなるパラノイアだ。

I been drankin' codeine, steady rockin' these baguettes
コデインを飲み続けながら、このバゲット・ダイヤを揺らし続ける
※裏切り者たちへの警戒心からくるストレスを、コデイン(ドラッグ)で麻痺させている。

I can feel this money, power, got these niggas so upset
金と権力を肌で感じるぜ、そのせいでヘイター共は怒り狂ってる
※「money, power」はヒップホップ永遠のテーマ。自分たちの圧倒的な成功が、敵対する同業者に強烈な嫉妬と焦り(upset)を与えていることを楽しんでいる。

I can't worry about the flawed shit, these flawless on my neck
傷モノのクソ野郎にかまってる暇はねぇ、俺の首には無傷のダイヤが輝いてる
※「flawed(傷がある、欠陥がある)」と「flawless(無傷、完璧)」の対比。Flawlessはダイヤモンドの最高純度を指す。人間的に欠陥のあるフェイクな奴ら(flawed shit)を、自分の首元で輝く完璧なダイヤ(flawless)の輝きで一蹴している。

Went banoodles on the dog ass ho, that's all
クソみたいなビッチ相手にブチギレてやった、ただそれだけだ
※「banoodles」は「bananas(気が狂う、ブチギレる)」から派生した変形スラング。

Go paradin' whenever, I just spazz out, uh
いつだってパレードしてやる、ただ暴れ回るだけだ、uh
※「spazz out」は制御不能になって暴れること。

Dripped in Louis V bandana, I got my rag out, uh
ルイ・ヴィトンのバンダナでキメて、俺のラグを見せつける、uh
※「rag」はギャングメンバーが所属を示すために身につける色付きのバンダナ(カラーギャングの象徴)。Futureはそれをストリートの安い布ではなく、ハイブランドのLouis Vuittonのバンダナで代用することで、「最高級のギャング・フレックス」を披露している。

[Verse 1]

Bitch was so damn excited, she just lost count, uh
あのビッチは興奮しすぎて、何回イッたか数え切れなくなってたぜ、uh
※ストリップクラブやベッドでの生々しいフレックス。

I got checks like Nike, get nigga checked out, uh
俺はNikeみたいに大量のチェック(小切手)を持ってる、邪魔な奴らはチェックアウト(排除)してやる、uh
※ナイキの象徴である「Swoosh(スウッシュ=チェックマーク)」と、莫大な金額の「小切手(checks)」をかけた定番の言葉遊び。さらに後段の「checked out」は、病院送りや霊安室行き(死んでチェックアウトする)という暗殺のメタファーに発展する見事なライムスキーム。

Gotta make 'em pay for every year, they never paid up
奴らが今まで払わなかった年月の分まで、きっちりツケを払わせてやる
※過去に自分を軽視したり、正当な対価(リスペクトや金)を支払わなかった業界の人間たちに対する報復宣言。

Gucci'd down in the trap with the K up, uh
全身グッチでトラップに立ち、AKを構える、uh
※「the K」はAK-47アサルトライフル。超高級ブランドで着飾ったまま、いつ銃撃戦になってもおかしくない麻薬密売所でアサルトライフルを握りしめているという、Future特有の「ハイエンドな野蛮さ」を象徴する一枚の絵のようなパンチライン。

She was drippin', I went bare, I hit it geeked up
女は濡れそぼってて、俺は生でブチ込んだ。ハイになったままでな
※「geeked up」はドラッグ(パーコセットやモリーなど)で極度にハイになっている状態。

Turtle neck on my neck, a lot of Cubans on
首元はまるでタートルネックだ、大量のキューバン・チェーンを巻いてるからな
※巨大で分厚い純金のキューバンリンク・チェーンを何本も重ね付けしているため、まるでタートルネックのセーターを着ているように首が見えなくなっているという、ストリートの富の最上級の表現。

[Chorus]

Metro Boomin, he a millionaire, fuck it, take it back
Metro Boominはミリオネアだ、いやクソ、前言撤回するぜ
※コーラスの反復。

Metro Boomin havin' cheese now, these niggas nothin' but rats
今のMetro Boominは大量のチーズを持ってる、だから周りの奴らはネズミばっかりだ
※コーラスの反復。

I been drankin' codeine, steady rockin' these baguettes
コデインを飲み続けながら、このバゲット・ダイヤを揺らし続ける
※コーラスの反復。

I can feel this money, power, got these niggas so upset
金と権力を肌で感じるぜ、そのせいでヘイター共は怒り狂ってる
※コーラスの反復。

I can't worry about the flawed shit, these flawless on my neck
傷モノのクソ野郎にかまってる暇はねぇ、俺の首には無傷のダイヤが輝いてる
※コーラスの反復。

Went banoodles on the dog ass ho, that's all
クソみたいなビッチ相手にブチギレてやった、ただそれだけだ
※コーラスの反復。

Go paradin' whenever, I just spazz out, uh
いつだってパレードしてやる、ただ暴れ回るだけだ、uh
※コーラスの反復。

Dripped in Louis V bandana, I got my rag out, uh
ルイ・ヴィトンのバンダナでキメて、俺のラグを見せつける、uh
※コーラスの反復。

[Verse 2]

Money, murder, money, sex, that's a murder zone
金、殺人、金、セックス、そこが殺戮のゾーンだ
※トラップ(ストリートの暗部)を構成する4つの要素。欲と暴力が支配する危険地帯を生き抜くという宣言。

Young nigga, goin' crazy, gettin' they murder on
若ぇ奴らが狂ったように、殺しに手を染めてる
※ストリートの冷酷な現実の描写。

Bitch gon' fuck me in the trap, that's the type of bitch I like
トラップで俺とヤレるビッチ、俺はそういう女が好きなんだ
※高級ホテルではなく、いつ警察や敵に踏み込まれるかわからない危険な麻薬密売所(trap)でも平気で体を重ねられる、ストリートの度胸を持った女性を好むという特異な趣向。

If you fuck me at the spot, then you know you fucked a crook
もし現場で俺とヤッたなら、お前は正真正銘の悪党とヤッたってことだぜ
※「the spot」はトラップハウスや取引現場。「crook」は犯罪者、悪党。

I'm a rich nigga, dog, all iced out
俺は金持ちだぜ、なぁ、全身アイス(ダイヤ)まみれだ
※成金的なフレックス。

You can see the stones lit up when the lights out
照明が消えても、俺の石が光り輝くのが見えるだろ
※ダイヤ(stones)の透明度とカッティングが完璧すぎるため、暗闇でもわずかな光を反射して輝くという自慢。

I didn't want her, I just wanna know what the hype 'bout
あいつのことは別に欲しくなかった、ただ周りが騒いでる理由を知りたかっただけだ
※ストリートやネットで「イケてる」と話題(hype)になっている女性を、自分のステータスを確認するためだけに手を出して抱いてみたという、冷酷で傲慢な態度。

I be turnin' up, these bitches gettin' piped down
俺はブチ上がっていくが、ビッチ共はパイプで黙らされていく
※「turnin' up」はパーティーで盛り上がる、または成功してハイになること。「piped down」は通常「静かにさせる」という意味だが、ここでは「pipe(男性器)」を激しく突き入れることで物理的に黙らせるという強烈な性的スラングのダブルミーニング。

[Chorus]

Metro Boomin, he a millionaire, fuck it, take it back
Metro Boominはミリオネアだ、いやクソ、前言撤回するぜ
※コーラスの反復。

Metro Boomin havin' cheese now, these niggas nothin' but rats
今のMetro Boominは大量のチーズを持ってる、だから周りの奴らはネズミばっかりだ
※コーラスの反復。

I been drankin' codeine, steady rockin' these baguettes
コデインを飲み続けながら、このバゲット・ダイヤを揺らし続ける
※コーラスの反復。

I can feel this money, power, got these niggas so upset
金と権力を肌で感じるぜ、そのせいでヘイター共は怒り狂ってる
※コーラスの反復。

I can't worry about the flawed shit, these flawless on my neck
傷モノのクソ野郎にかまってる暇はねぇ、俺の首には無傷のダイヤが輝いてる
※コーラスの反復。

Went banoodles on the dog ass ho, that's all
クソみたいなビッチ相手にブチギレてやった、ただそれだけだ
※コーラスの反復。

Go paradin' whenever, I just spazz out, uh
いつだってパレードしてやる、ただ暴れ回るだけだ、uh
※コーラスの反復。

Dripped in Louis V bandana, I got my rag out, uh
ルイ・ヴィトンのバンダナでキメて、俺のラグを見せつける、uh
※コーラスの反復。

[Outro: Prodigy of Mobb Deep]

I'm tired, know what I mean?
俺はもうウンザリなんだよ、わかるか?
※【Prodigyのインタビュー・サンプリング】クイーンズが生んだ伝説のヒップホップ・デュオ、Mobb Deepの亡きProdigyの生前の肉声。1990年代の東海岸ハードコア・ラップを体現した彼が、シーンの現状に対する強い不満を漏らしている。

The time to just let it out
今こそ、全部吐き出す時だ
※積年の鬱憤を晴らすという宣言。

Lot of, lot of corny ass niggas, man
大量の、本当に大量の、クソほどダサい連中がいるんだよ、なぁ
※「corny」は「ダサい、陳腐な、フェイクな」という意味。

Lot of corny rappers, man, I'm just like, "Yo, man"
ダサいラッパーが山ほどいるんだよ、俺はただ「おいおい、冗談だろ」って感じさ
※ストリートのリアルを知らないのに、ギャングスタぶったり、流行りのフロウを真似るだけの薄っぺらいラッパーたちへの心底呆れた態度。

I could, I could name a list of a hundred corny ass rappers, yo
俺は、クソダサいラッパーの名前を100人リストアップできるぜ、マジで
※【歴史的背景】ここでの「Corny rappers」は、本アルバムが全体を通して標的にしているDrake(カナダの元子役でありながらマフィアのボスを気取っていると度々批判される)や、その取り巻きの業界人たちに対する間接的かつ強烈なディスとして機能している。生粋のストリートのレジェンドであるProdigyの声を引用することで、FutureとMetro陣営がヒップホップの「本物(リアル)」の側に立っていることを証明する見事な手法だ。

Right now
今すぐにでもな
※Prodigyの極めてリアルで冷酷な言葉で曲が締めくくられる。ヒップホップの「偽物(フェイク)」たちを業界から一掃するという宣戦布告の念押しである。