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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

New God Flow.1 - G.O.O.D. Music (Kanye West, Pusha T & Ghostface Killah) 【和訳・解説】

Artist: G.O.O.D. Music (Kanye West, Pusha T & Ghostface Killah)

Album: Kanye West Presents: Good Music - Cruel Summer

Song Title: New God Flow.1

概要

本作は、ヒップホップ界に君臨する神々としての圧倒的なエゴと、ストリートの冷酷な現実を叩きつけるG.O.O.D. Musicのハードコア・アンセムである。当初はKanye WestとPusha Tのタッグ曲『New God Flow』として先行発表されたが、アルバム『Cruel Summer』収録時にWu-Tang Clanのレジェンド、Ghostface Killahが参加した完全版「.1」へとアップグレードされた。トラック全体を牽引するボーカルサンプルは、他でもないGhostfaceのクラシック『Mighty Healthy』から拝借されており、彼本人がビートの上でマイクを握るというヒップホップ的カタルシスを実現している。Pusha TによるCash Money Recordsへの容赦ないディス、Kanye WestによるNike(Jordan)超えの宣言やLeBron Jamesとの境遇の重ね合わせなど、2010年代初頭のラップ・ゲームの覇権争いや文化的コンテクストが極限まで詰め込まれた、極めて資料価値の高い一曲である。

和訳

[Intro]

Somebody been running a long time
誰かがずっと走り続けてる
※Bongi Makebaの1975年の楽曲『Do You Remember Malcolm?』からの声ネタのサンプリング説が有力視されている。過去の黒人指導者たちの闘争から、現代のヒップホップにおける果てしないサバイバルレースへの繋がりを暗示している。

Somebody—
誰かが—
※(同上)

[Chorus: Ghostface Killah]

Shake that body, party that bod—
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ—
※Wu-Tang ClanのGhostface Killahの1999年の名曲『Mighty Healthy』の冒頭のフレーズをサンプリング。この声ネタ自体は、さらに古く1980年代のディスコ/ファンクの文脈から引用されたものである。

Shake that body, party that bod—
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ—
※(同上)

Shake that body, party that body
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ
※(同上)

Come and have a good time with G-O-D
さあ、G-O-Dと一緒に最高の時間を過ごそうぜ
※原曲の『Mighty Healthy』における「G-O-D」は全能の神(あるいはFive-Percent Nationにおける黒人=神という教義)を指すが、本作ではKanye率いる「G.O.O.D. Music」と「New God(新たな神)」のダブルミーニングとして見事に機能している。

[Verse 1: Pusha T & Kanye West]

I believe there's a God above me
俺の頭上には神が存在すると信じてるぜ
※Pusha Tのヴァース。冒頭からヒップホップ史に残る極めて強烈なパンチラインが炸裂する。

I'm just the god of everything else
だが、それ以外のすべてにおいては俺自身が神なんだよ
※天上の神には敬意を払うが、地上のアンダーグラウンド(麻薬密売やストリートの掟)においては自分が全能の存在であるという、恐ろしいまでの傲慢さとカリスマ性を示す宣言。RedditのHipHopHeads等でも「Pusha Tのベスト・ラインの一つ」として頻繁に引用される。

I put holes in everything else
俺以外のものにはすべて風穴を開けてやる
※自分に逆らう者や、他のラッパーたちのキャリアを銃撃(ディス)で蜂の巣にするという脅し。

"New God Flow," fuck everything else
「新たな神のフロウ」、他のクソなんか知ったことか
※(同上)

Supreme dope dealer (Woo!), write it in bold letters
至高の麻薬密売人(ウー!)、太字でそう書き記しておけ
※「Supreme(至高/最高)」と「Bold(太字)」の組み合わせは、ストリートブランド『Supreme』の有名なボックスロゴ(Futura Heavy Obliqueという太字フォント)を暗示しているとするGeniusの考察が存在する。

They love a nigga spirit like Pac at the Coachella
連中は俺のスピリットを愛してる、コーチェラでの2Pacみたいにな
※2012年の巨大音楽フェス「Coachella」で、Dr. Dre & Snoop Doggのステージに今は亡き2Pacがホログラム(Spirit/霊魂)として降臨し世界中を驚愕させた歴史的出来事を引用している。

They said Push ain't fit with the umbrella
世間はPushaがこの「傘下(アンブレラ)」には合わないって言ったよな
※「アンブレラ」はKanye West率いる巨大レーベルG.O.O.D. Musicのこと。Pusha TがKanyeと契約した当初、コカイン・ラップを身上とする彼が、Kanyeの芸術的でファッショナブルな路線に適合するのか疑問視するメディアやヘイターの声があったことを指す。

But I was good with the yay' as a wholesaler
だが、俺は卸売業者として「イェー」を扱うのは得意だったんだぜ
※「Yay」はコカインのスラングであると同時に、ボスの「Ye(カニエ・ウェスト)」とのダブルミーニング。麻薬の卸売(Wholesaler)で大成功したように、G.O.O.D. Music(Kanye)という巨大組織の中でも完璧に立ち回れるという見事なワードプレイ。

I think it's good that 'Ye got a blow dealer
Yeが「ブロウ」のディーラーを味方につけたのは正解だったな
※「Blow」はコカインのこと。アート路線に傾倒していたKanyeの陣営に、ストリートの冷酷なリアルをもたらす存在として自分が不可欠であったという自負。

A hot temper matched with a cold killer
熱血漢と冷酷な殺し屋の完璧なマッチングさ
※「Hot temper」は感情的で暴走しがちなKanye Westを、「Cold killer」は常に冷静沈着に韻で相手を仕留めるPusha T自身を指し、両者の相性の良さを表現している。

I came aboard for more than just to rhyme with him
俺がこの船に乗ったのは、ただあいつとライムするためだけじゃない
※Kanyeのレーベルに加入した目的は、単なるフィーチャリング要員ではなく、レーベルの最前線で戦う実働部隊になるためだという宣言。

Think '99, when Puff woulda had Shyne with him (Yuugh)
1999年を思い出せ、パフ・ダディがシャインを引き連れていたあの頃をな(ユーッ)
※1999年、Bad Boy Recordsの総帥Puff Daddyがクラブでの銃撃事件を起こした際、同行していた若手ラッパーのShyneが身代わりのようにすべての罪を被って10年の実刑判決を受けた事件の引用。Pusha Tは自らを、Kanye(総帥)のためにどんな汚れ仕事(ビーフでの攻撃など)も厭わない忠実で危険な「ヒットマン」であると位置づけている。

Matchin' Daytonas, rose gold on us
お揃いのデイトナ、ローズゴールドが俺らの手首で輝いてる
※Kanyeと共に購入した超高級時計、ロレックス・デイトナのローズゴールド・モデル。富の共有と強固な絆の象徴。

Goin' HAM in Ibiza done took a toll on us (Woo!)
イビザ島でハチャメチャに(H.A.M.)暴れ回ったせいで、すっかり疲れ果てちまったよ(ウー!)
※「H.A.M.」は「Hard as a Motherfucker」の略で、KanyeとJAY-Zの楽曲タイトルでもある。スペインの高級リゾート地イビザでの常軌を逸した豪遊ライフをひけらかしている。

But since you overdo it, I'ma pour more
だがお前がやりすぎるって言うなら、俺はもっと酒を注いでやるよ
※Kanyeの極端な行動や野心に対し、ブレーキをかけるどころか燃料を投下し共に暴走するというスタンス。

Well if you goin' coupe, I'm goin' four door
お前がクーペ(2ドア)で行くなら、俺は4ドアで乗り込んでやる
※車選びにおけるスタイルの違いを示しつつ、どんなアプローチであれ組織のボス(Kanye)と完璧に歩調を合わせるという連帯感の表明。

[Chorus: Ghostface Killah & Kanye West]

Shake that body, party that bod— (That's rare, nigga)
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ—(レアだぜ、ニガ)
※Kanyeの合いの手。「Rare」は彼らのような圧倒的な才能と富を持つ存在が現代において希少であることを示している。

Shake that body, party that bod— (Ric Flair, nigga)
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ—(リック・フレアーだぜ、ニガ)
※伝説的プロレスラーRic Flairへの言及。Pusha Tの代名詞的なアドリブ「Woo!」が、リック・フレアーの有名な雄叫びに由来していることに対するKanyeからのシャウトアウト。

Shake that body, party that body (Yeah, nigga)
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ(イェー、ニガ)
※(Chorusリフレインのため解説省略)

Come and have a good time with G-O-D (Yeah)
さあ、G-O-Dと一緒に最高の時間を過ごそうぜ(イェー)
※(同上)

Shake that body, party that bod— (Woah)
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ—(ウォウ)
※(同上)

Shake that body, party that bod— (Woah)
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ—(ウォウ)
※(同上)

Shake that body, party that body (It's the new God flow, niggas)
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ(これが「新たな神のフロウ」だぜ)
※(同上)

Come and have a good time with G-O-D (Yo)
さあ、G-O-Dと一緒に最高の時間を過ごそうぜ(ヨウ)
※(同上)

[Verse 2: Pusha T]

Step on they necks 'til they can't breathe
息ができなくなるまで、あいつらの首を踏みつけてやる
※Pusha Tの第2ヴァース。業界のライバルたちを完全に窒息させ、業界から抹殺するという容赦ない宣言。

Claim they five stars, but sell you dreams
自分たちを「五つ星」だと豪語してるが、実際はお前らに夢(嘘)を売りつけてるだけさ
※長年の因縁があるCash Money Records(特にCEOのBirdmanと、看板ラッパーのDrake)に対する極めて直接的なディス。Birdmanの頭部には「5つの赤い星」のタトゥーが彫られている。また、「夢を売る」とは、契約した若手アーティストに甘い言葉をかけながら正当な報酬を支払わない(未払い問題)というCash Moneyの悪評を鋭く突いている。

They say death multiplies by threes
死は「3」の倍数で増殖するって言うよな
※「不吉な出来事は3回続く(Bad things come in threes)」というアメリカの迷信への言及。

Line them all up and let's just see
あいつらを全員一列に並べて、確かめてみようぜ
※Cash Money/Young Money帝国の主力であった「Drake、Lil Wayne、Nicki Minaj」の3人を標的に並べ、彼らのキャリアに死(終わり)をもたらすという恐るべき宣告。Redditの考察でも、この時期のPusha TのDrakeに対する執念深い攻撃の起点として高く評価されているライン。

Fuck 'em, 'Ye, fuck 'em, 'Ye
クソ食らえだ、Ye、あんな奴らぶっ潰してやれ
※ボスであるKanyeに同意を求め、敵対陣営への徹底抗戦を煽っている。

I wouldn't piss on that nigga with Grand Marnier
あの野郎が火だるまになっても、グラン・マルニエの小便なんてかけてやらねえよ
※「I wouldn't piss on him if he was on fire(あいつが火事になっても小便すらかけて助けてやらない=それほど憎い)」という英語の慣用句をベースにしている。さらに、自分が飲む高級オレンジリキュール「Grand Marnier(グラン・マルニエ)」が混ざった高価な小便を、あんな安っぽい連中にかける価値すらないという極限の侮蔑表現。

(Woo) They shit is shoppin' at Targét
(ウー)あいつらのやってることは「ターゲット」での買い物レベルさ
※アメリカの大衆向けディスカウントストア「Target」を、わざとフランス語風に「タルジェ(Targét)」と発音し、安物を高級に見せかけようとする敵の薄っぺらさを嘲笑している。

(Woo) My shit is luxury Balmain
(ウー)俺が身につけてるのは、本物のラグジュアリーなバルマンだ
※フランスの高級メゾン「Balmain(バルマン)」。当時のカニエ陣営の最先端のハイファッション志向と、自分たちの本物のラグジュアリー感を対比させている。

I'm balling, Amar'e
俺はアマレみたいに稼いで(プレイして)るぜ
※当時NBAのニューヨーク・ニックスで活躍し、巨額の契約を結んでいたスター選手Amar'e Stoudemire(アマレ・スタウダマイアー)への言及。「Balling」は豪遊することとバスケをプレイすることのダブルミーニング。

A nick' sold in the park, then I want in
公園で5ドル分(ニック)のハッパが売れたなら、俺もそこ(シノギ)に一枚噛ませろ
※「Nick」は5ドル分の麻薬のこと。どんなに小さなストリートの取引であっても、麻薬王である自分を通さなければ許さないという、究極の強欲さと独占欲。

What's a king without a crown, nigga? (What?)
王冠を持たない王様なんて、一体何の意味がある?(え?)
※実力があっても、それにふさわしい地位や富(王冠)を手に入れていなければ意味がないという事実。

What's a circus without you clown niggas? (Ha)
お前らみたいなピエロ(道化)がいないサーカスなんて、一体何になる?(ハッ)
※フェイクなラッパーたちをサーカスの「ピエロ」扱いし、業界のエンタメ(笑い者)としては必要悪だという痛烈な皮肉。

What's a brick from an out-of-town nigga?
よそ者が持ち込んだブリック(コカインの塊)なんて、どうなるか分かるか?
※(次の行へ続く)

When you flood and you can drown niggas? (Yuugh)
俺らが市場を氾濫(フラッド)させて、お前らを溺死させられる時にさ?(ユーッ)
※「Brick」は1キロのコカイン。他の地域の売人(よそ者のラッパー)が市場に参入してきても、G.O.O.D. Musicが大量の最高品質のコカイン(=極上の楽曲)を投下して市場を氾濫させれば、敵はひとたまりもなく溺死(淘汰)するというストリートの経済学に基づいたメタファー。

It's the G.O.O.D. Music golden child
俺こそがG.O.O.D. Musicのゴールデン・チャイルド(黄金の申し子)さ
※自らをレーベルの切り札、最高傑作であると誇示している。

M-A-dollar sign, can't nobody hold me down
Mae(メイス)みたいにな、誰も俺を抑え込むことなんてできねえよ<br />※90年代のBad Boy Recordsの黄金期を支えたラッパー「Mae(M-A-dollar sign)」と、彼のヒット曲『Can't Nobody Hold Me Down』へのオマージュ。Puff DaddyにおけるMa$eのように、Kanyeにおける自分がレーベルの最重要人物であることを宣言。

[Chorus: Ghostface Killah]

Shake that body, party that bod—
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ—
※(Chorusリフレインのため解説省略)

Shake that body, party that bod—
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ—
※(同上)

Shake that body, party that body
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ
※(同上)

Come and have a good time with G-O-D
さあ、G-O-Dと一緒に最高の時間を過ごそうぜ
※(同上)

[Verse 3: Kanye West]

Hold up, I ain't trying to stunt, man
待てよ、別に自慢(スタント)したいわけじゃないんだ
※Kanye Westのヴァース。謙遜を装いながら、直後に特大の自慢を投下するためのフリ。

But the Yeezys jumped over the Jumpman
だが、YeezyがJumpman(ジョーダン)を飛び越えちまったんだよ
※スニーカー史に残る歴史的宣言。KanyeがNikeとコラボした『Air Yeezy 2』の異常なプレ値と熱狂が、Nikeの絶対的看板であるMichael Jordanの『Air Jordan (Jumpman)』のブランド力をついに凌駕したという事実。このラインは後にKanyeがAdidasへ移籍した際の楽曲『Facts』でも引用される。

Went from most hated to the champion god flow
最も嫌われた男から、チャンピオンの神のフロウへと登り詰めた
※(次の行へ続く)

I guess that's a feeling only me and LeBron know
俺とレブロン・ジェームズにしか分からない感覚だろうな
※2010年、KanyeはTaylor Swiftへのマイク強奪事件で全米の敵(Most Hated)となったが、大傑作アルバム『MBDTF』で完全復活を遂げた。同年、NBAのLeBron Jamesもクリーブランドからマイアミ・ヒートへの移籍番組(The Decision)で全米のヒールとなったが、2012年に念願の初優勝(Champion)を果たした。この極端な栄枯盛衰と才能によるバッシングのねじ伏せを共有する、天才同士の絶対的な共鳴。

I'm living three dreams
俺は「3つの夢」を同時に生きている
※(次の行へ続く)

Biggie Smalls', Dr. King, Rodney King's, uh
ビギー・スモールズの夢、キング牧師の夢、そしてロドニー・キングの夢さ
※The Notorious B.I.G.の『Juicy』の冒頭「It was all a dream(貧困からの脱出の夢)」、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの演説「I Have a Dream(人種差別のない平等な社会の夢)」、そして1992年のロス暴動の引き金となった黒人被害者ロドニー・キングの言葉「Can we all get along?(みんな仲良くできないのか?=平和への夢)」。アメリカの黒人史を象徴する3つの「夢」を背負っているという凄まじいスケールのメタファー。

'Cause we can't get along, no resolution
だって俺らは仲良くなんてできない、解決策なんてないんだから
※ロドニー・キングの願い虚しく、業界のビーフや黒人同士の抗争が終わらない絶望的な現実。

'Til we drown all these haters, rest in peace to Whitney Houston
このヘイター共を全員溺れさせるまではな。ホイットニー・ヒューストンよ、安らかに眠れ
※敵対者を「溺れさせる(Drown=完全に沈める)」という表現と、2012年2月にホテルのバスタブで溺死した伝説的歌手Whitney Houstonへの追悼を掛け合わせた、天才的だが極めてダークで議論を呼んだパンチライン。

Cars, money, girls and the clothes
高級車、金、女、そしてデザイナーズブランドの服
※ヒップホップにおける典型的な成功の証。

Aw, man, you sold your soul
「あーあ、お前は魂を売っちまったんだな」
※Kanyeが物質主義に染まり、イルミナティなどの秘密結社に魂を売ったと非難するアンチのステレオタイプな批判の声。

Nah, man, mad people was frontin'
いや、違うね。沢山の連中が俺を舐めてかかってただけだ
※(次の行へ続く)

Aw, man, made somethin' from nothin'
「ああ、お前は何もないところから(ゼロから)這い上がったんだ」
※「魂を売った」という批判に対し、自分はただ周りの冷たい視線や障害を跳ね除け、己の才能と努力だけでゼロから頂点に立ったのだと反論している。

Picture workin' so hard and you can't cut through
想像してみろよ、死ぬほど努力してるのに現状を打開できない絶望を
※(次の行へ続く)

That can mess up your whole life, like an uncle that touched you
それはお前の人生全体を台無しにしかねない、まるで「お前にイタズラをした叔父さん」みたいにな
※努力が報われない絶望感を、近親者(叔父)からの児童性的虐待という一生消えない重篤なトラウマに例えた、身の毛のよだつような比喩表現。Kanyeの歌詞に時折現れる、生々しく不穏な心の闇。

What has the world come to? I'm from the 3-1-2
世界はどうなっちまったんだ?俺は「3-1-2」の出身だ
※「3-1-2」はKanyeの故郷、シカゴの中心部の市外局番。

Where cops don't come through and dreams don't come true
そこは警察も見回りに来ないし、夢が叶うこともない場所さ
※全米最悪レベルの殺人事件発生率を誇るシカゴのサウスサイド(ゲットー)の冷酷な現実。

Like, "There the God go, in his Murcielago"
「ほら、神様のお通りだ、ムルシエラゴに乗ってな」って感じさ
※絶望的な環境の中で、ランボルギーニ(富の象徴)に乗るKanyeがゲットーの若者たちにとって唯一の希望(神)となっている光景。

From workin' McDonalds, barely payin' the car note
マクドナルドでバイトして、車のローンを払うのがやっとだった時代から
※Kanye自身の過去の苦労。アルバム『Late Registration』などでも触れられている、貧しい下積み時代。

He even got enough to get his mama a condo
今じゃ、母親に高級マンションを買ってやれるほど稼げるようになった
※ヒップホップ・ドリームの体現。

Then they ran up and shot him right in front of his mom
なのに、連中は押し入ってきて、母親の目の前でそいつを撃ち殺しやがったんだ
※直前のサクセスストーリーから一転する、シカゴの凄惨な現実。成功して地元に還元しようとした若者が、嫉妬や抗争によって無惨に殺されるというBlack-on-Black crime(黒人同士の犯罪)の悲劇を描写している。

Forty killings in a weekend, forty killings in a week
週末だけで40件の殺人、1週間で40件の殺人が起きる
※シカゴの異常な銃犯罪の統計データを突きつける社会派的なライン。

Man, the summer too hot, you can feel it in the street
ああ、この夏は暑すぎる、ストリートにいればそれが肌で分かるはずだ
※気温の暑さと、発砲事件が多発する「Hot(危険な)」ストリートの緊張感を掛けている。

Welcome to Sunday service, if you hope to someday serve us
「サンデー・サービス(日曜礼拝)」へようこそ、もしお前らがいつか俺たちに仕えたい(サーブしたい)と望むならな
※のちにKanyeが本格始動させるゴスペル・プロジェクト「Sunday Service」の名称がここで既に登場している。「礼拝に出る」ことと、神である自分たちに「Serve(給仕する/奉仕する)」することを掛けた神格化のメタファー。

We got green in our eyes, just follow my Erick Sermon
俺たちの瞳は緑色に光ってる、ただ俺のエリック・サーモンの言葉(説教)についてきな
※「Green in our eyes」は金(ドル札=緑色)への執着。伝説のラップグループEPMDのメンバー「Erick Sermon」の瞳が実際にグリーンアイズ(ヘーゼルグリーン)であるというマニアックな事実と、彼の名前が「Sermon(教会の説教)」と同音であることを見事に掛け合わせた、Geniusでも絶賛される高度なワードプレイ。

Did Moses not part the water with the cane?
モーセは杖(ケイン)で海を割らなかったか?
※旧約聖書の「出エジプト記」の奇跡。「Cane(杖)」とコカインのスラング「Caine」を掛けている。

Did strippers not make an ark when I made it rain?
俺が札束の雨を降らせた時、ストリッパーたちは箱舟(アーク)を作らなかったか?
※旧約聖書の「ノアの箱舟」の奇跡。ストリップクラブで札束をばら撒く行為(Make it rain=雨を降らせる)と、大洪水から逃れるための箱舟をストリッパーたちが必死に作ったという、聖書とストリップクラブを融合させた冒涜的かつ天才的なユーモア。

Did Yeezy not get signed by Hov and Dame?
Yeezy(俺)は、Hov(ジェイ・Z)とデイムにサインされなかったか?
※KanyeがRoc-A-Fella Recordsの創設者JAY-ZとDame Dashに見出され、契約したというヒップホップ史の奇跡。

And ran to Jacob and made the new Jesus chains?
そしてジェイコブの店に駆け込んで、新しいジーザス・チェーンを作らせなかったか?
※契約金を手にしたKanyeが、ヒップホップ・ジュエリーの巨匠「Jacob the Jeweler」に依頼し、アイコニックなキリストの顔のネックレス(Jesus Piece)を作らせた奇跡。自らのキャリアの歩みを、聖書の奇跡と同列に並べている。

In Jesus' name, let the choir say
イエスの御名において、聖歌隊に歌わせよう
※教会の礼拝の締めくくり。

"I'm on fire, ayy," that's what Richard Pryor say
「俺は燃えてるぜ(絶好調だ)、エイ!」それこそリチャード・プライヤーが言った言葉さ
※伝説の黒人コメディアンRichard Pryorが、1980年にコカインのフリーベース(加熱吸引)中に引火し、文字通り「火だるま(On fire)」になって大火傷を負った凄惨な事件を引用。「On fire(絶好調)」というラップの常套句と、プライヤーの実際の火気事故をブラックジョークとして昇華させている。

And we annihilate anybody that violate
そして俺らは、掟を破る奴らを誰であろうと完全に殲滅する
※「Annihilate(殲滅する)」と「Violate(違反する/無礼を働く)」で韻を踏む、組織のボスとしての冷酷な宣告。

Ask any dope boy you know, they admire 'Ye
お前の知ってるドープ・ボーイ(麻薬密売人)に聞いてみな、みんなYeに憧れてるはずさ
※ストリートの最前線にいるハスラーたちでさえ、ラッパー/デザイナーとして頂点に立つKanyeの成功を究極のロールモデルとして崇拝しているという事実。

[Chorus: Ghostface Killah & Kanye West]

Shake that body, party that bod— (Yo)
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ—(ヨウ)
※(Chorusリフレインのため解説省略)

Shake that body, party that bod— (Stop)
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ—(ストップ)
※(同上)

Shake that body, party that body
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ
※(同上)

Come and have a good time with G-O-D
さあ、G-O-Dと一緒に最高の時間を過ごそうぜ
※(同上)

[Interlude: Ghostface Killah]

Yeah, nigga
イェー、ニガ
※Ghostface Killahの追加ヴァース前のイントロ。サンプリング元である本人が満を持して登場する熱い展開。

Yeah, I had my— I had my Jesus piece since '94
ああ、俺は— 俺のジーザス・ピースは1994年から着けてるんだぜ
※直前のKanyeの「新しいジーザス・チェーンを作った」というラインに対する、大先輩からの強烈なマウント。Kanyeがジュエリーを買うずっと前(94年のWu-Tang黎明期)から、自分はストリートで本物のジーザス・ピースをぶら下げていたという歴史と格の違いを見せつけている。

I don't know what I— I don't know what y'all talkin' 'bout
俺には— お前らが何の話をしてるのかさっぱり分からねえよ
※最近の若手ラッパー(Kanyeたち)が「神」や「ジーザス」を語るが、俺からすればヒヨッ子の戯言だという冷笑。

And my eagle
俺の「黄金の鷲」のチェーンもな
※Ghostfaceのもう一つのアイコンである、巨大な黄金の鷲のブレスレット/チェーン。

Still got it all in the bag, B (Yeah)
まだ全部バッグの中に持ってるぜ、ブラザー(イェー)
※かつての栄光だけでなく、現在もその富と権力を保持していることのアピール。

All I did was play possum (Yo, come on)
俺はただ「死んだふり(狸寝入り)」をしてただけさ(ヨウ、カモン)
※「Play possum」はオポッサムが死んだふりをして敵をやり過ごすことから転じた慣用句。ヒップホップの最前線から退いたように見せていたが、実はいつでも復帰してシーンを制圧する牙を隠し持っていたという宣言。

[Verse 4: Ghostface Killah]

Six hundred Cuban cigar in the big tub
巨大なバスタブに浸かりながら、600ドルのキューバ産葉巻をくゆらせる
※Ghostface Killahの真骨頂である、マフィア映画のような「マフィオソ・ラップ」の情景描写。

Medallion on, Dove soap on the fresh cut
メダリオンを首にかけ、散髪したての頭にダヴの石鹸を擦り込む
※風呂の中でも巨大な金のネックレス(メダリオン)を外さない成金趣味と、庶民的なDoveの石鹸を使うという独特のディテールが彼のストーリーテリングの魅力である。

With soap suds on the MAC-11
MAC-11(サブマシンガン)にも石鹸の泡がついたままだ
※入浴中でさえ常に傍らに銃を置いている、裏社会のボスのパラノイア(偏執病)的な警戒心。

My big lion haven't ate since twelve and it's after seven
俺の飼ってるデカいライオンは12時から何も食ってねえ、今はもう7時過ぎだ
※麻薬王『スカーフェイス』などを彷彿とさせる、ペットの猛獣による残虐な処刑の準備。

We feed the nigga like forty chickens
裏切り者の野郎を、40羽のチキンみたいにそいつ(ライオン)に食わせてやる
※人間をライオンの餌(鶏肉)としてバラバラにして与えるという、冷酷極まりない暴力表現。

His tail wag when I send him a bag with just one victim
たった一人の犠牲者が入った袋を送るだけで、ライオンは喜んで尻尾を振るのさ
※(同上)

Uh-huh, now let me show you what my closet on
ア・ハ、さて、俺のクローゼットに何があるか見せてやろうか
※話題を富の自慢へと転換する。

Gems in the display case, call it a rock-a-thon
ディスプレイケースの中の宝石たち、まさに「ロック・ア・ソン(宝石の祭典)」ってやつだ
※「Rock」はダイヤモンドのスラング。「テレソン(24時間テレビのような長時間チャリティ番組)」をもじり、宝石が無限に並んでいる様子を「Rock-a-thon」と表現。

I— I got soccer moms payin' for cock
俺は— 中流階級のサッカーマムたちに、俺のイチモツへの金を払わせてる
※「Soccer mom」は郊外に住む白人の中産階級の主婦のステレオタイプ。そんな上品な女性たちでさえ、自分の性的魅力(あるいは売人としての魅力)の虜になり金を貢いでいるという下品なフレックス。

Asians get it from behind while they cleanin' they wok
アジア人の女たちは、中華鍋(ウォック)を洗いながら後ろから突かれてるぜ
※Ghostfaceのアジア文化(特にカンフー映画や中華料理)への傾倒が、極端にポリティカリー・インコレクトな性描写として表れたライン。Wu-Tangの無軌道な美学の表れ。

Comin' with flows that is toxic (Come on)
猛毒(トキシック)のようなフロウを持ってやって来たぜ(カモン)
※自らのラップスキルが致死レベルであるという誇示。

Deadly fumes when I'm in the room
俺が部屋に入れば、そこには死を招く毒ガスが充満する
※(同上)

Repercussions occur when you dry snitch
お前らが「ドライ・スニッチ(無自覚な密告)」をすれば、必ず痛い報い(反動)が待ってるぜ
※「Dry snitch」は警察に直接密告する気はないのに、ペラペラと余計なことを喋って結果的に仲間の罪を暴露してしまう行為。ストリートにおいてこれは意図的な裏切りと同罪であり、血の制裁が下されるという警告。

Red light, green light, one, two, three
だるまさんがころんだ(赤信号、青信号、1、2、3)
※子供の遊びである「Red Light, Green Light」を引用し、ターゲットを仕留めるタイミングを冷酷に見計らう様を表現。

Look mean, got my machine, cried and hit you, please
鬼の形相でマシンガンを構える、泣き叫んで「お願いだから(撃たないで)」って懇願するんだな
※命乞いをするターゲットへの無慈悲な眼差し。

Said and shake that body, scar up that body
その体を揺らせと言ったんだ、その体を傷だらけにしてやる
※コーラスの「Shake that body」を、ダンスではなく銃弾を浴びて痙攣する体、あるいは拷問で傷つけられる体へとダークに反転させた秀逸なライン。

Should I kill him now Tone? I said, "Probably"
「トーン、今すぐこいつを殺しましょうか?」俺は答えた、「たぶんな」
※「Tone」はGhostfaceの別名であるTony Starks(アイアンマンの主人公)のこと。部下からの処刑の伺いに対し、無関心に「たぶん殺すだろうな」と答える冷酷なマフィアのボスの演出。

Side bets are four and better
サイド・ベット(裏カジノの賭け)は4ドル以上からだ
※ストリートの賭博の情景。

Bust hammers with pot holders
鍋つかみ(ポットホルダー)を使って銃(ハンマー)をぶっ放す
※銃撃後の熱くなった銃身から手を守るため、または指紋を残さないためにキッチンの鍋つかみを使って発砲するという、過度にディテールにこだわったリアルなゲットーの犯罪描写。

And yo, dead a cow for his fuckin' leather
そしてな、極上のレザーのために牛を一頭ブチ殺してやるよ
※高級なレザージャケットを作るためだけに牛を殺すという、動物愛護団体の怒りを買いそうな過剰な物質主義の表現。

I'm not bow-legged, but old school like Redd Foxx
俺はガニ股じゃないが、レッド・フォックスみたいにオールドスクールだぜ
※70年代のシットコム『Sanford and Son』で知られる伝説のコメディアンRedd Foxx。彼がガニ股で歩く特徴的な姿と、彼のクラシックなスタイルを重ねている。

My favorite color in my hustle days was red tops
俺がハッスル(密売)してた頃の一番のお気に入りの色は「レッド・トップ」だったな
※「Red top」は赤い蓋がされたクラック・コカインの小瓶のこと。麻薬密売時代のノスタルジー。

My gold eagle arm shitted out a red rock
俺の腕の黄金の鷲が、赤い石(ルビー)をクソみたいにひねり出した
※巨大な鷲のブレスレットから、高価なルビーが取れて落ちた様子を下品に表現。

Threw it off my project roof and saw red dots
それをプロジェクト(団地)の屋上から投げ捨てたら、赤い点(レーザーサイト)が見えたぜ
※落ちていく赤いルビーが、敵対組織や警察の狙撃銃の「レッドドット・サイト(照準器)」のように見えたという、ストリートの緊迫感を描いた美しい映像的メタファー。

Kanye, shine a light on my Wallabees
カニエ、俺のワラビーに光を当ててくれ(スポットライトを当てろ)
※「Wallabees」はClarksの靴ワラビーのこと。Wu-Tang Clanが流行らせたストリートファッションの象徴であり、彼らのアイデンティティそのもの。後輩であるKanyeに対し、俺のスタイル(レジェンドとしての偉大さ)を世界に再認識させろという誇り高き要求。

You can have a good time with G-O-D
お前もG-O-Dと一緒に最高の時間を過ごせるぜ
※(同上)

[Chorus: Ghostface Killah & Kanye West]

Shake that body, party that bod— (That's rare, nigga)
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ—(レアだぜ、ニガ)
※(Chorusリフレインのため解説省略)

Shake that body, party that bod— (Ric Flair, nigga)
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ—(リック・フレアーだぜ、ニガ)
※(同上)

Shake that body, party that body (Yeah, nigga)
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ(イェー、ニガ)
※(同上)

Come and have a good time with G-O-D (Yeah)
さあ、G-O-Dと一緒に最高の時間を過ごそうぜ(イェー)
※(同上)

Shake that body, party that bod— (Woah)
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ—(ウォウ)
※(同上)

Shake that body, party that bod— (Woah)
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ—(ウォウ)
※(同上)

Shake that body, party that body (It's the new God flow, niggas)
その体を揺らせ、体ごとパーティーするんだ(これが「新たな神のフロウ」だぜ)
※(同上)

Come and have a good time with G-O-D (Yo)
さあ、G-O-Dと一緒に最高の時間を過ごそうぜ(ヨウ)
※(同上)

[Outro: Kanye West]

G.O.O.D. Music, G.O.O.D. Music
G.O.O.D. Music、G.O.O.D. Musicだ
※(Outroのため解説省略。レーベル名の連呼による完全な制圧宣言)

G.O.O.D. Music, G.O.O.D. Music
G.O.O.D. Music、G.O.O.D. Musicだ
※(同上)