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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Clique - G.O.O.D. Music (Kanye West, JAY-Z & Big Sean) 【和訳・解説】

Artist: G.O.O.D. Music (Kanye West, JAY-Z & Big Sean)

Album: Kanye West Presents: Good Music - Cruel Summer

Song Title: Clique

概要

本作は、Kanye West率いる「G.O.O.D. Music」のコンピレーションアルバム『Cruel Summer』(2012年)に収録された、ヒップホップ史に残る最強のポッセカットである。Hit-Boyが手掛けたオペラのような荘厳でダークなビートに乗せ、Big Seanがフックで自らの「派閥(Clique)」の絶対的優位性をアジテートする。続くJAY-Zはドラッグ・ディーリングの暗算や業界の覇権を誇示し、Kanyeは当時の恋人(のちの妻)Kim Kardashianのセックステープ騒動から元CIA長官との会談、さらには母Dondaの死による重度のうつ病と自殺願望までを赤裸々に吐露する。単なるフレックスを超え、黒人の富の在り方や精神的な闇までを描き出した、2010年代のUSラップシーンを象徴する極めて重要な一曲だ。

和訳

[Intro: James Fauntleroy & Big Sean]

What of the dollar you murdered for?
金のために人を殺して、どうなるって言うんだ?
※R&BシンガーJames Fauntleroyのボーカルを極端にピッチダウンしたオペラ風のイントロ。コーラス以降の物質主義的なフレックス(自慢)とは対極にある、冷酷な資本主義への道徳的な問いかけから曲が幕を開ける。

Is that the one fighting for your soul?
その金がお前の魂を救ってくれるとでも?
※(同上)

Or your brother's the one that you're running from?
それとも、お前が逃げ回ってる相手は自分の兄弟(同胞)なのか?
※ストリートにおける黒人同士の抗争(Black-on-Black crime)に対する深い悲哀を含んだ暗示である。

But if you got money, fuck it, ‘cause I want some
でも金を持ってるなら、知ったこっちゃねえ、俺にもよこせ
※直前までの神聖な問いかけから一転し、生々しい欲望が露わになる。これがこの楽曲全体の「聖と俗」の二面性を予告している。

B-I-G
B-I-Gだぜ
※Big Seanのシグネチャー・アドリブ。

Who fuckin' with me?
誰が俺に逆らうって?
※(同上)

Oh, God!
オー・ゴッド!
※(同上)

Woah
ウォウ
※(同上)

[Chorus: Big Sean]

Okay, ain't nobody fuckin' with my clique
オーケイ、俺のクルーに歯向かえる奴なんていねえよ
※Cliqueは「派閥、徒党、仲間内」を意味するスラング。ここではKanye率いるG.O.O.D. Musicと、JAY-Z率いるRoc Nationの圧倒的な同盟関係を指す。

Clique, clique, clique, clique
クルー、クルー、クルー、クルー
※(同上)

Ain't nobody fresher than my muhfuckin' clique
俺の最強のクルーよりイケてる奴らなんていねえ
※(同上)

Clique, clique, clique, clique
クルー、クルー、クルー、クルー
※(同上)

As I look around, they don't do it like my clique
見渡してみても、俺らみたいにやれる奴らはいねえな
※(同上)

Clique, clique, clique, clique
クルー、クルー、クルー、クルー
※(同上)

And all these bad bitches, man, they want the-
イイ女たちはみんな欲しがってるぜ、アレをな...
※「the-」の後に続く言葉は文脈上「the D(ディック=男性器)」または「the clique(俺たちの派閥)」のダブルミーニングとして機能している。

They want the-, they want the- (B-I-G, oh God)
あいつらはアレを欲しがってる...
※(同上)

Go
行くぜ
※(同上)

[Verse 1: Big Sean]

I tell a bad bitch do whatever I say (Yup)
イイ女には俺の言う通りにさせるぜ
※Big Seanの典型的なプレイボーイ・ペルソナによるフレックス。

My block behind me, like I'm coming out the driveway (Swerve)
地元が俺のバックについてる、ドライブウェイから飛び出す時みたいにな(スクルッ)
※ドライブウェイ(私道)から車を出す際に「ブロック(区画)」を背にする情景と、地元(ブロック)の仲間が背後で強力にサポートしている状況を掛けた見事な言葉遊び。

It's grind day, from Friday to next Friday (Woah)
毎日が稼ぎ時さ、金曜から次の金曜までずっとだ
※Ice Cube主演のフッド映画の金字塔『Friday』とその続編『Next Friday』のタイトルを引用しつつ、1週間(7日間)休まずハッスルし続ける姿勢を表現。

I been up straight for nine days, I need a spa day (Spa day)
9日間ぶっ続けで起きてるからな、スパで休まなきゃ
※多忙を極めるトップラッパーのライフスタイル。

Yup, she try and gimme that poon-tang
ああ、あの子は俺に股を開こうとしてるぜ
※「Poon-tang」は女性器を指す古いスラング。

I might let my crew bang, my crew deeper than Wu-Tang (Woah)
クルーの連中にもヤらせてやるかもな、俺のクルーはWu-Tangより層が厚いんだ
※ヒップホップ史において「大所帯クルー」の代名詞であるWu-Tang Clan(9人組)を引き合いに出し、G.O.O.D. Musicに所属するアーティストの多さと層の厚さを誇示している。

I'm rollin' with, ha, fuck I'm saying? Girl, you know my crew name
俺がツルんでるのは...って、俺は何言ってんだ?なぁ、俺のクルーの名前くらい知ってるだろ
※言うまでもなく俺たちは世界一有名な集団だ、という傲慢なアピール。

You know 2 Chainz? Skrrt! I'm pullin' up in that Bruce Wayne
2 Chainzを知ってるか?スクルッ!ブルース・ウェインみたいな車で乗り付けるぜ
※当時G.O.O.D. Musicに電撃加入したばかりの絶頂期にあった2 Chainzへのシャウトアウト。Bruce Wayne(バットマンの正体)は、バットモービルを彷彿とさせる漆黒のランボルギーニ等の超高級車を指すストリートの定番比喩である。

But I'm the fuckin' villain, man, they kneelin' when I'm walking in the buildin'
でも俺は極悪人さ、俺がビルに入ればみんな膝をつく
※ヒーロー(Bruce Wayne)の車に乗っていながら、自分はシーンを荒らすヴィラン(悪役)であるという逆転のメタファー。

Freaky women I be feelin' from the bank accounts I'm fillin'
口座の残高が膨れ上がるにつれて、変態な女たちを引き寄せてるぜ
※富と性的魅力の比例関係を語るストレートなボースト。

What a feelin'! Ah man, they gotta be
なんて気分だ!ああ、あいつら絶対こう噂してるはずさ
※(同上)

Young player from the D that's killing everything that he see for the dough
デトロイト出身の若きプレイヤーが、金のために目につくもん全てをブッ殺してくんだってな
※「The D」はBig Seanの故郷デトロイト(Detroit)のこと。デトロイトのハングリー精神で音楽業界(すべて)を喰い尽くすという宣言。

[Chorus: Big Sean]

Okay, ain't nobody fuckin' with my clique
オーケイ、俺のクルーに歯向かえる奴なんていねえよ
※(Chorusリフレインのため解説省略)

Clique, clique, clique, clique
クルー、クルー、クルー、クルー
※(同上)

Ain't nobody fresher than my ma'fuckin' clique
俺の最強のクルーよりイケてる奴らなんていねえ
※(同上)

Clique, clique, clique, clique
クルー、クルー、クルー、クルー
※(同上)

As I look around, they don't do it like my clique
見渡してみても、俺らみたいにやれる奴らはいねえな
※(同上)

Clique, clique, clique, clique
クルー、クルー、クルー、クルー
※(同上)

And all these bad bitches, man, they want the-
イイ女たちはみんな欲しがってるぜ、アレをな...
※(同上)

They want the-, they want the- (Click clack, stick 'em up)
あいつらはアレを欲しがってる...(カチャッ、手を上げな)
※銃のコッキング音(Click clack)と強盗の決まり文句(Stick 'em up)をサンプリング。音楽業界を完全に制圧したことを示唆する。

Go
行くぜ
※(同上)

[Verse 2: JAY-Z]

Yeah, I'm talkin' Ye (Clique) yeah, I'm talkin' Rih (Clique)
ああ、Ye(カニエ)のことだ、ああ、Rih(リアーナ)のことさ
※JAY-Zのヴァース。Roc NationとG.O.O.D. Musicが擁する絶対的なスーパースターたちの名前を並べ、自らの「派閥」の強大さを誇示する。

Yeah, I'm talkin' B (Clique) nigga, I'm talkin' me
ああ、B(ビヨンセ)のことだ、そして俺様のことさ
※「B」は妻であるBeyoncé。最強の布陣の最後に「俺自身」を持ってくる王者の風格。

Yeah, I'm talkin' bossy, I ain't talkin' Kelis
ああ、俺は「ボス」の話をしてるんだ、ケリスの曲のことじゃねえぜ
※Kelisの2006年のヒット曲『Bossy』と掛けた見事なWordplay。俺はただの曲名としてではなく、真のエンタメ界の「ボス」として語っているという念押し。

Your money too short, you can't be talkin' to me
お前の金は少なすぎる、俺に話しかけるレベルじゃねえよ
※純資産10億ドルを超えるヒップホップ界屈指のビリオネアである彼にとって、一般的なラッパーの財力など取るに足らないという冷酷な事実。

Yeah, I'm talkin' LeBron, we ball in our family tree
ああ、レブロンの話さ、俺らの家系図じゃトップレベルでボールを回してる
※JAY-Zと親交の深いNBAのスーパースターLeBron Jamesへの言及。「Ball」はバスケットボールをプレイすることと、大金を稼いで豪遊すること(Ballin')のダブルミーニング。ビジネスパートナーも「家族(Family tree)」と同義であるとしている。

G.O.O.D. Music drug-dealing cousin, ain't nothin' fuckin' with we
G.O.O.D. Musicにいるドラッグディーラーの従兄弟ってわけだ、俺らに敵う奴はいない
※JAY-Z自身をG.O.O.D. Music陣営の「元ハスラーの身内(後ろ盾)」として位置づけている。彼がいかにストリートのバックグラウンドを持ちつつ、巨大レーベルの黒幕として君臨しているかを示唆。

Me, turn that sixty-two to one-twenty-five, one-twenty-five to a two-fifty
俺にかかれば、6万2千を12万5千に、12万5千を25万に倍増させる
※ストリートにおけるコカイン売買の利益計算(ドラッグ・マスマティクス)。1キロのコカインをカット(不純物を混ぜてかさを増す)して倍の量で売り捌くという、JAY-Zお得意のストリート・ハッスルの暗算を現在のビジネス投資規模に置き換えている。

Two-fifty to a half a, man, ain't nothin' nobody can do with me
25万をハーフ・ミリオン(50万)にしてみせる、誰も俺の真似はできねえよ
※(同上)この倍々ゲームの錬金術こそが、彼がブルックリンの売人から世界的実業家へと登り詰めた手法である。

Now, who with me? ¡Vámonos! Call me Hov or Jefe
さあ、誰が俺についてくる?行くぞ!ホヴィかヘフェと呼びな
※¡Vámonos!はスペイン語で「行くぞ」。Jefeはスペイン語で「ボス」を意味する。麻薬カルテルの首領(エル・ヘフェ)を思わせる言葉選びで、自らのアンダーグラウンドな支配力を強調。

Translation: I'm the shit, 'least that what my neck say
翻訳してやるよ「俺は最高だ」ってことさ、少なくとも俺の首元のチェーンはそう言ってる
※首から下げた何億円ものジュエリーが、自らの地位と成功を無言で証明しているという成金的なフレックス。

Least that what my check say, lost my homie for a decade
少なくとも俺の小切手はそう言ってる、だがダチを10年も失っちまった
※金はいくらでも手に入ったが、過去の麻薬密売ビジネスの代償として親友を長期間刑務所に送ってしまったという、突然のダークな告白。

Nigga down for like twelve years, ain't hug his son since the second grade
あいつは12年もムショにいて、息子が小学2年の時からハグすらしてねえんだ
※JAY-Zの親友であり、麻薬密売で2000年に懲役16年の判決を受けたEmory Jonesへの直接的な言及。JAY-Zは彼の法廷闘争を長年支援し、判事への手紙などを経てEmoryは2010年に釈放された。ストリートの成功の裏にあるリアルな痛みを綴っている。

Uh, he never told—who he gon' tell?
ああ、あいつは絶対にチンコロしなかった、そもそも誰を売るっていうんだ?
※ストリートの絶対的掟である「No Snitching(密告しない)」を12年間貫き通した友人を称賛している。

We top of the totem pole
俺らがトーテムポールの頂点(組織のトップ)なんだからな
※「誰を密告するんだ?」という問いへの回答。JAY-Zたち自身が麻薬組織のピラミッドの最上層にいたため、友人が密告する「上の人間」など存在しなかったという、恐ろしくも強烈なボースト。

It's the Dream Team meets the Supreme Team
これは「ドリーム・チーム」と「シュプリーム・チーム」の融合だ
※1992年のマイケル・ジョーダン率いる米バスケ代表(圧倒的なスター集団)と、1980年代にNYクイーンズ地区を牛耳った悪名高き麻薬密売組織「Supreme Team」を対比。G.O.O.D. Musicの音楽的才能とRoc Nationのストリートの冷酷さが合体した無敵の組織であることを表現。

And all our eyes green, it only means one thing: you ain't fuckin' with the clique
俺らの目はみんな緑色に輝いてる、意味することはただ一つ、お前らは俺のクルーの足元にも及ばないってことさ
※「目が緑色」とは米ドル紙幣(Greenbacks)の色、つまり全員が金に飢えたハスラーであることを意味する。

[Chorus: Big Sean]

Okay, ain't nobody fuckin' with my clique
オーケイ、俺のクルーに歯向かえる奴なんていねえよ
※(Chorusリフレインのため解説省略)

Clique, clique, clique, clique
クルー、クルー、クルー、クルー
※(同上)

Ain't nobody fresher than my ma'fuckin' clique
俺の最強のクルーよりイケてる奴らなんていねえ
※(同上)

Clique, clique, clique, clique
クルー、クルー、クルー、クルー
※(同上)

As I look around, they don't do it like my clique
見渡してみても、俺らみたいにやれる奴らはいねえな
※(同上)

Clique, clique, clique, clique
クルー、クルー、クルー、クルー
※(同上)

And all these bad bitches, man, they want the-
イイ女たちはみんな欲しがってるぜ、アレをな...
※(同上)

They want the-, they want the-
あいつらはアレを欲しがってる...
※(同上)

[Verse 3: Kanye West]

Break records at Louis, ate breakfast at Gucci
ルイ・ヴィトンで売上記録を塗り替え、グッチで朝食を食う
※Kanye Westのヴァース。音楽界だけでなくハイファッション界においても圧倒的な影響力と権力を持っていることを誇示。

My girl a superstar all from a home movie
俺の女は「ホーム・ビデオ」一本でスーパースターになったんだ
※当時交際中(のち結婚し離婚)だったKim Kardashianが、元恋人Ray Jとのセックステープ流出事件を機にリアリティ番組で大成功を収めた事実を堂々とフレックスする強烈なパンチライン。Reddit等で「ヒップホップ史上最も堂々とした、パートナーの過去の受容」として高く評価される伝説のラインである。

Bow on our arrival, the un-American idols
俺らが到着したらお辞儀しろよ、非・アメリカン・アイドルのお出ましだ
※国民的オーディション番組『American Idol』に対するアンチテーゼ。白人社会のメインストリームが好む「優等生」像を拒絶し、問題児のまま頂点に立った自分たちを「アン・アメリカン」と称している。

What niggas did in Paris, got 'em hangin' off the Eiffel
パリで黒人たちがやったことといったら、連中をエッフェル塔からぶら下げたような衝撃だぜ
※JAY-Zとのコラボアルバム『Watch The Throne』に収録された大ヒット曲『Niggas in Paris』の現象的成功に言及。パリでの彼らのライブは、ヨーロッパの白人社会を熱狂の渦に巻き込んだ。

Yeah, I'm talkin' business, we talkin' CIA
ああ、ビジネスの話さ、俺らはCIA規模の話をしてる
※単なるラッパーのビジネスの枠を超え、国家の情報機関レベルの権力者たちと渡り合っているという誇大妄想的な自負。

I'm talkin' George Tenet, I seen him the other day
ジョージ・テネットの話だよ、こないだ彼に会ったんだ
※ジョージ・テネットはクリントン政権からブッシュ政権にかけて務めた元CIA長官。Kanyeは実際に彼と遭遇し、世界の裏側や権力構造について言葉を交わしたとされている。

He asked me about my Maybach, think he had the same
彼は俺のマイバッハについて聞いてきた、たぶん同じ車に乗ってたんだろうな
※国家の最高機密を握る要人でさえ、Kanyeの乗る超高級車(マイバッハ)に興味津々だったというエピソード。

Except mine tinted and his might have been rented
俺のはスモークガラスで、彼のはレンタカーだったかもしれないがな
※いくら元CIA長官であろうと、圧倒的な富を持つ自分自身の前では一般人にすぎないという痛烈なマウント。

You know, white people get money, don't spend it
白人たちは金を得ても使わない
※人種間の「富の扱い方」に関する鋭い社会学的観察。

Or maybe they get money, buy a business
あるいは金を得たら、ビジネスを買うんだ
※白人は資産運用や投資を行い「世代を超える富(Generational wealth)」を築くという事実。

I rather buy eighty gold chains and go ign'ant
俺はむしろ80本のゴールドチェーンを買って、無知(イグナント)に振る舞う方を選ぶぜ
※Ign'antは「Ignorant(無知・愚か)」のスラング。黒人が富を得た際に、賢く投資するのではなく見栄のために散財するステレオタイプを自虐的かつ挑戦的に肯定している。システムに順応するより、成金趣味を極めることで白人社会へ中指を立てるKanye特有の美学。

I know Spike Lee gon' kill me, but let me finish
スパイク・リーが俺を殺したがるだろうな、でも最後まで言わせてくれ
※黒人の社会的地位向上を訴える映画監督Spike Leeが、Kanyeのこうした「黒人のステレオタイプを助長する」物質主義的な態様を猛烈に批判していた背景を踏まえている。

Blame it on the pigment, we livin' no limits
肌の色のせいにでもしてくれ、俺らは限界なし(ノー・リミット)で生きているんだ
※Pigment(色素=黒人であること)を理由に開き直る姿勢。

Them gold Master P ceilings was just a figment
マスター・Pの家の金箔張りの天井は、ただの幻想だったんだ
※No Limit Recordsの創設者Master Pが、MTVの豪邸訪問番組『Cribs』で披露した金色の天井。ゲットーの若者にとって究極の夢だったが、現実には番組用の見栄(セット)だったという都市伝説に触れ、ヒップホップ界における「見栄張りの文化」を皮肉っている。

Of our imagination, MTV cribs
MTVの『Cribs』で見た、俺たちの想像の産物さ
※(同上)

Now I'm lookin' at a crib right next to where TC lives
今じゃ俺はTCが住んでる場所のすぐ隣の家を内見してるんだ
※TC=Tom Cruise。超A級ハリウッドスターと同じレベルのビバリーヒルズの物件を買えるまでになったKanyeの圧倒的な出世と経済力。

That's Tom Cruise, whatever she accuse
トム・クルーズさ、彼女が何を非難しようとな
※2012年当時のTom CruiseとKatie Holmesの離婚・サイエントロジー騒動に触れつつ、メディアのゴシップに対するセレブ側の連帯感を示している。

He wasn't really drunk, he just had a frew brews
彼は別に酔っぱらってたわけじゃない、ビールを数杯飲んだだけさ
※韻を踏むための強引な連想ゲームとも、メディアに誇張される有名人の行動のメタファーとも解釈される謎多きライン。

Pass the refreshments, a cool, cool beverage
リフレッシュメントを回してくれ、冷たい飲み物をな
※スターとしての重圧に囲まれ、一息つこうとする描写。

Everything I do need a news crew's presence
俺がやることすべてに、ニュースの取材陣が必要なんだ
※自らの一挙手一投足がメディアの餌食(あるいは注目の的)になるスーパースターの巨大なエゴとフラストレーション。

Speedboat swerve, homie, watch out for the waves
スピードボートで急旋回するぜ、波に気をつけな
※自らが巻き起こすトレンド(波)の比喩。

I'm way too Black to burn from sunrays
俺は黒人すぎで太陽の光じゃ日焼けしないんだぜ
※自らの人種的アイデンティティに対する誇りとユーモア。

So I just meditate at the home in Pompeii
だから俺はポンペイの自宅で瞑想するのさ
※ポンペイはヴェスヴィオ火山の噴火で灰に埋もれた古代都市。破滅と退廃の象徴である場所を「自宅」と呼ぶことで、Kanyeの精神的な孤立や、常に炎上(噴火)と隣り合わせにある自身の状況を暗示している。

About how I could build a new Rome in one day
どうやって1日で新しいローマ帝国を築き上げるかってな
※「Rome wasn't built in a day(ローマは一日にして成らず)」という有名な諺を覆し、神のごとき創造力で一瞬で帝国を築き上げてみせるという、Kanye特有のメガロマニア(誇大妄想)的パンチライン。

Every time I'm in Vegas they screamin' like, "He's Elvis"
ラスベガスに行くたびに、連中は「彼こそエルヴィスだ!」って叫ぶんだ
※白人社会のキング・オブ・ロックンロールであるElvis Presleyと同等かそれ以上のスター性を自負している。

But I just wanna design hotels and nail it
でも俺はただ、ホテルのデザインを手掛けて完璧に仕上げたいだけなんだ
※音楽だけでなく、建築やデザインなど他分野にも異常な野心と執着を持つKanyeの芸術家気質。実際に彼はこの時期、建築デザインの会社を設立しようとしていた。

Shit is real, got me feelin' Israelian
マジな話、イスラエル人みたいな気分になってきたぜ
※「Real」と「Israel」で韻を踏むためのアプローチ。

Like Bar Refaeli, or Gisele—no, that's Brazilian
バー・ラファエリとか、ジゼルみたいにな…いや、ジゼルはブラジル人だったな
※イスラエル出身のスーパーモデルBar Refaeliと、ブラジル出身のGisele Bündchenを混同し、レコーディング中にその場で自己ツッコミを入れたテイクをそのまま採用している。緻密な計算と突発的なユーモアを共存させるKanye流の遊び心。

Went through, deep depression when my mama passed
母さんが亡くなった時、深い鬱病を経験した
※2007年の母Donda Westの美容整形手術による突然の合併症死がもたらした、深刻なトラウマの突如たる告白。直前までの陽気で誇大妄想的なフレックスから一転するこの凄まじい落差こそが、Kanyeの狂気と天才性を象徴している。

Suicide, what kinda talk is that?
自殺だなんて、なんて恐ろしい考えだ?
※圧倒的な富や名声を得ていながら、母親の死を乗り越えられず希死念慮(自殺願望)に取り憑かれていた精神的な闇。Genius等では「華やかなポッセカットの終盤に突如挿入される最も無防備でリアルな悲痛の叫び」として神格化されているライン。

But I been talkin' to God for so long
でも俺はずっと神様に語りかけてきたんだ
※絶望の淵で信仰にすがり、祈り続けた孤独な日々。

That if you look at my life I guess He talkin' back
俺の今の人生を見れば、神様も返事をしてくれたってことだろうな
※現在の音楽界・ファッション界での神がかった成功そのものが、どん底にいた自分に対する「神からの返答(祝福)」であると結論づけている。信仰心と自らのエゴイズムが究極の形で融合した、Kanye Westという人間を完璧に体現するクロージング・ラインである。

Fuckin' with my clique
俺のクルーに敵う奴はいないぜ
※究極の自己開示を経て、再び「俺たちは最強だ」というフックへと回帰する。

[Outro: Big Sean]

Ain't nobody fresher than my ma'fuckin' clique
俺の最強のクルーよりイケてる奴らなんていねえ
※(Outroのため解説省略)

As I look around, they don't do it like my clique
見渡してみても、俺らみたいにやれる奴らはいねえな
※(同上)

And all these bad bitches, man, they want the-
イイ女たちはみんな欲しがってるぜ、アレをな...
※(同上)

They want the- they want the-
あいつらはアレを欲しがってる...
※(同上)

Go
行くぜ
※(同上)