Artist: ¥$, Kanye West & Ty Dolla $ign (feat. Big TC)
Album: VULTURES 2
Song Title: MY SOUL
概要
本作「MY SOUL」は、『VULTURES 2』のエンディングを飾る魂の救済と社会告発のトラックだ。トッド・ラングレンのサンプリングを背景に、カニエは自身の「未完成なラップ(マンブル)」への批判やアディダスとの決裂、キャンセルカルチャーを自嘲気味に語る。一方、タイ・ダラー・サインと客演のBig TC(殺人罪で終身刑を受け服役中のタイの実弟)は、アメリカの大量投獄システムや、カリフォルニアの山火事消火に駆り出される囚人たちの過酷な現実、そして獄中での信仰(イスラム教)について切実に歌い上げる。刑務所内から電話越しで録音されたBig TCの生々しいボーカルが、システムに抗う黒人たちの祈りとして深く胸に響く、重厚なゴスペル・ヒップホップである。
和訳
[Intro: Todd Rundgren]
My soul
俺の魂。
[Verse 1: Kanye West & Todd Rundgren]
What if I start off the track, hum the beginnin'
トラックの出だしはハミングで始めて。
Fucked up the middle part and mumble the endin'?
中盤はめちゃくちゃにして、最後は適当に濁す(マンブル)ってのはどうだ?
※『VULTURES』シリーズや近年の未完成な状態でのリリース手法に対するリスナーからの批判(「歌詞をちゃんと書かずにマンブルしている」という指摘)を逆手に取った、自嘲的かつ挑戦的なライン。
It just feels better in my humble opinion
俺の個人的な意見(ハンブル・オピニオン)としては、そっちの方が気分がいいんだよな。
Much more n-words, but humble beginnings
Nワードは増えちまったが、始まりは謙虚(ハンブル)だったんだ。
When I act like the n-word, somebody get injured
俺が「Nワード(ステレオタイプな黒人)」みたいに振る舞うと、誰かが怪我をする。
That's why we stay in court and go to the pen' for it
だから俺たちは裁判沙汰になって、ムショ(ペン)送りになるんだ。
※黒人がストリートの固定観念に従って暴力的に振る舞うと、結果的に投獄システム(刑務所=Penitentiary)の餌食になるというアメリカの構造的差別の指摘。
Before I forget, let me go get a pen for it
忘れる前に、ペンを取って書き留めさせてくれ。
Cancel culture, before I get censored
「キャンセル・カルチャー」、俺が検閲(センサー)される前にな。
※前行の"pen(刑務所)"と"pen(ペン)"のワードプレイ。反ユダヤ発言等で社会から抹殺(キャンセル)されかけた自身の現状への言及。
All I really meant for is you to get mentorеd
俺が本当に言いたかったのは、お前らに指導(メンター)を受けてほしかっただけなんだ。
Before we gеt sentenced, before we get sent for
俺たちが有罪判決(センテンス)を受ける前に、奴らに呼び出される前にな。
Remember the sentence, remember repentance
判決(センテンス)を思い出せ、後悔(リペンタンス)を忘れるな。
Only God can judge me, GDs and Vice Lords
俺を裁けるのは神様だけだ。あとはGDとバイス・ロードくらいだな。
※2Pacの名言「Only God Can Judge Me」の引用。"GDs (Gangster Disciples)"と"Vice Lords"はシカゴを二分する巨大なストリートギャング。神と地元シカゴのストリートの掟だけが自分をジャッジできるという宣言。
Over in Danville, Stateville, Taylorville, Menard
ダンビル、ステートビル、テイラービル、メナード。
Jacksonville, Pontiac, Pinckneyville
ジャクソンビル、ポンティアック、ピンクニービル。
※イリノイ州(カニエの地元シカゴがある州)に実在する刑務所・矯正施設の名前を羅列している。
We mass targeted, mass marketed
俺たちは大々的に標的(ターゲット)にされ、大々的に市場で消費(マーケット)される。
Mass incarceration, mass in police stations
大量投獄(マス・インカーセレーション)、警察署に溢れる大群衆(マス)。
※黒人文化が巨大な市場で搾取される一方で、黒人たち自身は刑務所システムという「ビジネス」の標的にされ大量投獄されているという、アメリカ社会の構造的な闇に対する痛烈な社会批判。
Mass incorporated, fuck Adidas (My soul)
大企業(マス・インコーポレイテッド)。アディダスなんてクソくらえだ。(俺の魂)
※自身の反ユダヤ発言を機に契約を即座に打ち切り、Yeezyブランドの在庫を販売し続けた元パートナー企業Adidasへの直接的な怒り。
[Verse 2: Ty Dolla $ign & Todd Rundgren]
Won't be gettin' sleep tonight and I'm cryin' as I write this
今夜は眠れそうにない。これを書きながら俺は泣いてるんだ。
Prayin' for my brother locked up, fightin' fires
檻の中に閉じ込められ、火災と戦ってる俺の兄弟のために祈ってる。
※カリフォルニア州で行われている「囚人による山火事の消火活動(Inmate firefighter program)」への言及。時給数ドルという奴隷労働に近い危険な環境で働かされている囚人たち(および自身の実弟Big TC)への悲痛な祈り。
My heart goes out to all the daughters missin' God and fathers
神様と父親を失って寂しがっている、全ての娘たちに心を痛めてる。
Never seen they loved ones 'cause they're prisoners fightin' fires (My soul)
愛する家族に会うこともできない。だってあいつらは火事と戦う囚人なんだからな。(俺の魂)
Oh, and I might be biased, but I feel God standin' by us
Oh、俺の偏見(バイアス)かもしれないが、神様が俺たちのそばに立ってくれているのを感じるんだ。
And the prisoners fightin' fires, oh, yeah (My soul)
そして、火事と戦う囚人たちのそばにもな、oh, yeah。(俺の魂)
And I might be biased, but my soul needs you, Lord
偏見かもしれないが、俺の魂にはあなた(主)が必要なんだ。
Oh, God, please come take control (Take control of my soul)
Oh、神様、どうか来てコントロールしてください。(俺の魂をコントロールしてくれ)
[Interlude: Big TC]
Ah-ah, ah-ah, ah-ah
Ah-ah, ah-ah, ah-ah
I know, I know
分かってる、分かってるよ。
Ah-ah, oh, no, no, no, no, no
Ah-ah, oh, no, no, no, no, no
[Verse 3: Big TC]
The struggle is real, gotta face it
この苦難は現実だ、向き合わなきゃならない。
※ここからTy Dolla $ignの実弟、Big TCのバース。彼は2004年に起きた殺人事件で終身刑を宣告され、現在も無実を訴えながらカリフォルニアの刑務所で服役中である。刑務所内からの電話録音のため、音質が荒いのが特徴。
My freedom so close, I can taste it
俺の自由はもうすぐそこだ、その味が分かるくらいにな。
Make money, got bills, so I chase it
金を稼ぎ、支払いをこなす。だから俺は金を追う。
But stay on my Deen, 'cause without it, I'm faithless
でも自分の信仰(ディーン)には留まるぜ。それがなきゃ、俺は信仰心のない空っぽな奴になっちまう。
※"Deen"はアラビア語で「宗教、信仰、生き方(特にイスラム教)」を意味する。過酷な刑務所生活の中でイスラム教に改宗し、精神の平穏を保っていることが伺える。
They promise they with you, they lies
奴らは「お前の味方だ」って約束するが、それは嘘だ。
They just want what you got and they try
奴らはお前の持ってるものを欲しがり、奪おうとするだけさ。
All alone with nobody beside
傍には誰もいなくて、完全に一人きり。
Sit there and cry, just wishin' you'd die
そこに座って泣きながら、ただ「死ねたら」って願うんだ。
Know this life is a test, tryna pass it
この人生は試練(テスト)だって分かってる、それをパスしようとしてるんだ。
With my face on the ground in the Masjid
モスク(マスジド)の床に顔を擦り付けながらな。
※"Masjid"はイスラム教の礼拝所。床に顔をつけて(サジダ)神に祈りを捧げるムスリムの礼拝の様子。
You got questions, then you better ask 'em
もし疑問があるなら、神に尋ねた方がいい。
'Cause time wait for no one, it comes and it passes
時間は誰のことも待ってくれない、やって来ては過ぎ去っていくからな。
Under pressure, attack on me daily
プレッシャーの下で、毎日が俺への攻撃(アタック)さ。
Love my mama, she tried, couldn't save me
母さんのことは愛してる。彼女は頑張ってくれたが、俺を救うことはできなかった。
Gave me tools to survive through this crazy
この狂った世界を生き抜くための道具(教え)を俺にくれたんだ。
Fear nothing but God, and be good to your lady
「神以外を恐れるな、そして自分の女を大切にしろ」ってな。
Wait on tears and no one understands
涙を流して待っても、誰も理解してはくれない。
It's predestined and God got a plan
これは運命(プレデスティンド)であり、神様には計画があるんだ。
One thing I know, he made me a man
一つだけ分かってるのは、神が俺を「男」にしてくれたってこと。
He gave me two legs on the ground on to stand
この大地に立って耐え抜くための、2本の足を与えてくれたんだ。
To my wifey, baby, you so fine
俺の妻へ。ベイビー、お前は本当に最高(ファイン)だぜ。
Proud to say to the world, yeah, you mine
世界中に向かって「ああ、こいつは俺の女だ」って誇りを持って言える。
You stood by me through all the hard times
どんなに辛い時でも、お前は俺のそばにいてくれた。
You pushed the line, you pushed the line
お前は限界まで頑張ってくれた、最前線(ライン)で戦ってくれたんだ。
I, I can feel your light up on me
俺は、俺を照らすお前の光を感じることができる。
Keep shinin' your light up on me
これからも俺にその光を当て続けてくれ。
Shine your light, just shine up on me
お前の光を照らしてくれ、俺を照らしてくれ。
I can feel your light, oh
お前の光を感じるよ、oh。
