Artist: ¥$, Kanye West & Ty Dolla $ign, 070 Shake & Desiigner
Album: VULTURES 2
Song Title: SKY CITY
概要
本作「SKY CITY」は、ヒップホップファンの間で伝説となっていた未発表アルバム『Yandhi』(2018年制作)のリーク音源「City in the Sky」が、数年の時を経て『VULTURES 2』でついに公式リリースされた待望のトラックである。天国や死後の世界、そして地上の苦難から解放されたユートピア(空の都市)をテーマにしたスピリチュアルな名曲だ。客演には070 Shake、Desiignerに加え、CyHi The Prynce、The-Dream、Jeremihら豪華な面々がクレジットなしで参加している。特筆すべきは、Verse 1のKanyeのボーカルが「CyHiが録音したリファレンス(仮歌)をAIフィルターでKanyeの声に変換したものではないか」とReddit等で激しい議論を呼んだ点だ。リリックもコロナ禍のマスクや当時の妻キム・カーダシアンへの言及など、過去の文脈がそのまま残されている。過去の亡霊と現在のエゴが入り混じる、美しくもいわくつきのゴスペル・ラップである。
和訳
[Chorus: Ty Dolla $ign & Desiigner]
Say it's my year, know it's my year, my year (Oh)
今年は俺の年だ、分かってるだろ、俺の年だってな(Oh)。
Can we fly, yeah? We can fly, yeah, high, yeah (We can fly, yeah)
俺たちは飛べるか? ああ、飛べるさ。高く飛べる(俺たちは飛べるぜ)。
Build a city in the sky, yeah, sky, yeah
空に街(シティ・イン・ザ・スカイ)を創ろうぜ、空にな。
In the sky, yeah, in the sky, yeah, sky, yeah (Git, git)
空の中に、空の上にさ(Git, git)。
※"Git, git"はDesiigner特有のマシンガン・アドリブ。
We just fly, yeah, we just fly, yeah, fly, yeah (Git, git, fly, yeah)
俺たちはただ飛ぶんだ、飛び立つのさ(Git, git, fly, yeah)。
Build a city in the sky, yeah, sky, yeah
空に街を創り上げよう。
[Verse 1: Kanye West]
Do Heaven got a penthouse that I could rent out?
天国には、俺が貸し切れるペントハウスはあるのか?
※ここから問題のKanyeのバース(AI生成疑惑がある部分)。金と権力を持つ地上のスーパースターが、死後の世界にもVIP待遇があるのかと問いかける。
I could see Rick James with his feet up on Prince couch
リック・ジェームスが、プリンスのソファに土足で足を乗せてるのが見えるぜ。
※コメディ番組『Chappelle's Show』で語られた、ファンクの帝王Rick Jamesが泥酔してPrince(実際にはEddie Murphyの兄Charlie Murphyの家だが、ここでは同じく伝説的ミュージシャンのPrinceに改変されている)の白いソファを泥靴で汚したという伝説的なエピソードへのオマージュ。天国でもレジェンドたちが破天荒に過ごしているというユーモラスな想像。
Always wanted to know, did Biggie get a big house?
ずっと知りたかったんだ。ビギー(The Notorious B.I.G.)はデカい家(Big house)を手に入れたのか?
Do Pac got a thug mansion? Is it pimped out?
2Pacは「サグ・マンション」を持ってるのか? クソほど豪華に改造(ピンプ・アウト)されてるのか?
※2Pacの遺作アルバムに収録された名曲「Thugz Mansion(ギャングたちが安らかに過ごせる天国の場所)」への言及。
Is it a place for the Jews and thе gentiles?
そこはユダヤ人と異邦人(ジェンタイルズ/非ユダヤ人)のための場所なのか?
I heard street niggas ain't in thе top percentile
ストリートの野郎共は、トップの階層(パーセンタイル)には入れないって聞いたぜ。
Real fast, my wife wanna know, do y'all got a gym now?
ちょっと待ってくれ、うちの妻が知りたがってるんだ。「天国にジムはあるの?」ってな。
She talkin' 'bout she still tryna get her waist to slim down
あいつ、「まだウエストを絞らなきゃ」なんて言ってるんだ。
※このリリックが書かれた『Yandhi』期(2018年)の妻、キム・カーダシアンのプロポーションへの執着をからかったライン。離婚後の現在にそのまま収録されたことで、一種のタイムカプセルのようになっている。
Anyhow, forgive me for the taxes that I didn't file
まあそれはともかく、俺が申告しなかった税金(の罪)を許してくれよ。
※脱税や財務上のトラブルに対する、神への軽い懺悔。
I ain't even got back the money that I lent out
俺だって、貸した金すらまだ返してもらってないんだからな。
Can't even have a Corona, shit is gettin' wild
コロナ(ビール)すら飲めねえ。マジでヤバい状況になってきたぜ。
※2020年の新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック初期の状況を反映したライン。
Runnin' around without a face mask like I'm Jim Brown
フェイスマスクを着けずに走り回る。まるでジム・ブラウンみたいにな。
※パンデミック中のマスク着用義務への反抗。そして、NFLの伝説的選手であり、フィールド上で(現在のルールのような厳重な)フェイスマスクなしで荒々しくプレイした公民権運動活動家、Jim Brownの勇敢な姿に自らを重ねている。
Oh, yeah, I heard about your son that you sent down
Oh, yeah。あなたが地上に送った「息子(イエス・キリスト)」の話は聞いたぜ。
I wish there was a place that I could send flowers
花を送れる場所があればよかったのにな。
※神の子の死(あるいは身近な人の死)に対して、手向ける場所がないことへの哀悼。
My OG wrote me from the joint, you know, like a pen pal
俺のOG(大先輩)がムショ(ジョイント)から手紙をくれたんだ。ペンパル(文通相手)みたいにな。
※Kanyeが長年恩赦を求めているシカゴのギャングリーダー、Larry Hooverのことと推測される。
And he asked if you could send a letter to the judge when he begin trial
あいつの裁判が始まる時、裁判官に手紙を送ってくれないかって頼まれたよ。
'Cause we don't know when he gettin' out
あいつがいつシャバに出られるか、誰にも分からねえからな。
[Bridge: Ty Dolla $ign]
Ooh, child, things are gonna get easier
Ooh, child(子供たちよ)、事態はもっと楽になるはずさ。
Ooh, child, things'll get brighter
Ooh, child、未来はもっと明るくなる。
※The Five Stairstepsの1970年のクラシック「O-o-h Child」の有名なコーラスをTy Dolla $ignが歌い上げる。絶望的な状況下での希望と救済のゴスペル。
Ooh, child, things are gonna get easier
Ooh, child、事態はもっと楽になるはずさ。
Ooh, child, things'll get brighter
Ooh, child、未来はもっと明るくなる。
[Chorus: Ty Dolla $ign & Desiigner]
Say it's my year, know it's my year, my year (Oh)
今年は俺の年だ、分かってるだろ、俺の年だってな(Oh)。
Can we fly, yeah? We can fly, yeah, high, yeah (We can fly, yeah)
俺たちは飛べるか? ああ、飛べるさ。高く飛べる。
Build a city in the sky, yeah, sky, yeah
空に街を創ろうぜ、空にな。
In the sky, yeah, in the sky, yeah, sky, yeah (Git, git)
空の中に、空の上にさ(Git, git)。
We just fly, yeah, we just fly, yeah, fly, yeah (Git, git, fly, yeah)
俺たちはただ飛ぶんだ、飛び立つのさ。
Build a city in the sky, yeah, sky, yeah
空に街を創り上げよう。
[Verse 2: CyHi]
Yeah, imagine you could visit your ancestors
Yeah、自分の祖先(アンセスターズ)に会いに行けるって想像してみな。
※Kanyeの長年のゴーストライター/コラボレーターであるCyHi The Prynceのバース。
And all the people that we lost, and you could dance with 'em
俺たちが失った全ての人たちと、一緒に踊れる世界を。
We'd probably be more united than Manchester
俺たちはきっと、マンチェスターよりも強く団結(ユナイテッド)できるはずさ。
※"united(団結)"とイングランドのサッカー名門クラブ「マンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)」を掛けた秀逸なワードプレイ。
'Cause my people still dyin' over hand gestures
だって俺の仲間たちは、未だに「ハンド・ジェスチャー」のせいで死んでるんだからな。
※ストリートにおける「ギャングサイン(指で作る標識)」の違いだけで殺し合っている黒人社会の悲痛な現実。
Keep your enemy close, that's when your man stretch you
敵を近くに置いておけ。味方(マン)がお前を裏切って死体(ストレッチ)にするのはそういう時だ。
※「友は近くに置け、敵はさらに近くに置け」というマキャベリズムの格言。最も身近な人間にこそ寝首をかかれるというストリートのパラノイア。
Damn, I guess karma can catch you
クソ、カルマ(業)ってのは必ず追いついてくるもんだな。
We gotta forgive our trespassers and transgressors
俺たちは、罪を犯した者(トレスパッサーズ)や違反者たちを許さなきゃならない。
Mandela said it won't get better if we stand separate
マンデラも言ってたぜ。俺たちが分断(セパレート)されたままじゃ、状況は良くならないってな。
※南アフリカの反アパルトヘイト指導者ネルソン・マンデラの言葉を引き合いに出し、黒人コミュニティの融和を説いている。
'Cause one hand wash the other, both hands wash the face
片方の手がもう片方の手を洗い、両手で顔を洗うものだからな。
※「One hand washes the other(持ちつ持たれつ)」ということわざ。
Wish they had another place we all could stay
俺たち全員が平和に暮らせる「別の場所」があればいいのにな。
If they don't let us in, then we gon' hop the gate
もし奴らが俺たちを(天国へ)入れてくれないなら、ゲート(門)を飛び越えてやるまでさ。
[Verse 3: Kanye West]
Out of the body, uh, jewelry is gaudy, um
幽体離脱(アウト・オブ・ザ・ボディ)、uh。ジュエリーが派手(ガウディ)すぎるな、um。
※ここから『VULTURES』期に新たに録音されたKanyeのバース。
Secret society, my spirit is Godly
秘密結社(シークレット・ソサエティ)。俺の魂は神の領域(ゴッドリー)にある。
I'm buildin' a buildin' where children can lobby
俺は子供たちがロビーで遊べるような、ビルを建ててる(ビルディン)んだ。
So we can make billions from buildin' a hobby
趣味(ホビー)を構築することで、俺たちが数十億ドル(ビリオンス)を稼げるようにな。
I bought a factory, pickin' the cotton
俺は工場を買った。自ら綿花(コットン)を摘むんだ。
※アメリカの黒人奴隷の歴史的象徴である「綿花摘み」を、現代の黒人であるKanyeが自ら工場(アパレル工場)を所有し、ビジネスとして「綿花を扱う」ことで、搾取の歴史を経済的自立へと反転させる極めて強力なメタファー。
Bought a factory, send 'em to college
工場を買って、あいつらを大学(カレッジ)へ送ってやるんだ。
※事業で得た利益を黒人コミュニティの教育に還元するという宣言。
He made it already with nothin' to lose
あいつは失うものがない状態で、既に成功(メイド・イット)を収めたんだ。
And free attitude with nothin' to prove
証明するものなんて何もない、自由なアティチュードでな。
We goin' bigger, I got the juice
俺たちはさらにデカくいくぜ。俺には力(ジュース/影響力)があるからな。
Playin' them dead to get out the noose
首吊り縄(ヌース)から逃れるために、死んだフリ(プレイン・デッド)をしてやるのさ。
※キャンセルカルチャーによる社会的死の宣告(首吊り)に対し、あえて迎合して死んだフリをし、隙を見て脱出するというサバイバル術。
I don't need your point of views
お前らの視点(意見)なんて必要ねえよ。
I can't hear you at this altitude
この高度(アルティチュード/Sky Cityの高み)じゃ、お前らの声なんて聞こえねえからな。
And they steady sayin' that I'm rude
奴らはいつも俺が「無礼(ルード)」だって言い続けてるが。
I'd be rude if I don't come beat the shit out you
お前をブチのめしに行かない方が、よっぽど無礼ってもんだろ。
※自分が黙って引き下がる方がファンや自分自身に対して失礼だという、狂気的で天才的な正当化。
[Bridge: 070 Shake]
And if we die, yeah, then we die, yeah, aw, yeah
もし俺たちが死ぬなら、ああ、それで終わりさ、aw, yeah。
※Kanyeの『ye』期の名曲「Ghost Town」等で幽玄なボーカルを披露した070 Shakeによる浮遊感のあるブリッジ。
We can fly, yeah, we can fly, yeah, aw, yeah
俺たちは飛べる、ああ、飛べるんだ、aw, yeah。
Night, yeah, in the night, yeah, aw, yeah
夜に、この夜の中に、aw, yeah。
In the night, in the night
夜の中に、夜の中に。
Oh, in the night, serenity all in the city
Oh、この夜、街(シティ)の全てが静寂(セレニティ)に包まれる。
[Verse 4: The-Dream]
I hope I never fall weary
私が決して疲れ果てて(フォール・ウィアリー)しまわないように。
※R&Bレジェンド、The-Dreamのアウトロ・バース。地上の苦難から魂を天へ引き上げるような荘厳な締めくくり。
Help me levitate my pain
この痛みを空へ浮かび上がらせる(レヴィテイト)のを手伝ってくれ。
Oh, good Heaven, sing to me, to me
Oh、美しき天国よ、私のために歌ってくれ。
Let me outsoar my faith
私の信仰(フェイス)よりも高く、飛び立たせて(アウトソア)くれ。
Let me outlast the shame
この恥辱(シェイム)を乗り越えて、生き残らせてくれ。
※世間からのバッシングや自身の罪(恥)を乗り越えて、魂の平穏を得たいという切実な祈り。
At the same time, don't change a thing, a thing
でも同時に、何一つ変えないでくれ。何一つ。
※苦悩も恥辱も含めて自分の人生であり、それを否定したくはないという芸術家のエゴイズム。
[Outro: Jeremih]
Ooh
Ooh
※シカゴ出身のR&Bシンガー、Jeremihの天国的なハミングで楽曲がフェードアウトしていく。
Ooh
Ooh
Ooh
Ooh
Ooh
Ooh
