Artist: ¥$, Kanye West & Ty Dolla $ign & Young Thug
Album: VULTURES 2
Song Title: RIVER
概要
本作「RIVER」は、¥$のアルバム『VULTURES 2』に収録された、贖罪と解放をテーマとする壮大なゴスペル・トラップである。最大の特徴は、RICO法違反等で現在も長期の裁判・勾留を余儀なくされているアトランタの天才、ヤング・サグ(Young Thug)を客演に迎えている点だ。彼の獄中(あるいは逮捕前)のバースを引き継ぐ形で、カニエ・ウェストは「Free Larry(ラリー・フーヴァーを解放しろ)、Free Young Thug」と叫び、アメリカの司法制度に囚われた黒人アイコンたちの解放を訴える。後半にかけてはリオン・ブリッジズ(Leon Bridges)の2015年の名曲「River」をサンプリングし、チャーリー・ウィルソンの歌声とインテル・ミラノのウルトラスのチャントが重なり合う。ストリートの物質主義から離れ、聖水(Holy water)による魂の浄化を乞うカニエの祈りが、スタジアム規模のスケールで鳴り響くマスターピースである。
和訳
[Intro: Young Thug] (SEX)
※"SEX"はYoung Thugの別名(オルターエゴ)。
[Verse 1: Young Thug]
Big-booty bitch, I know who paid for it, yeah (Big-booty bitch, I know who paid for it)
デカいケツのビッチ、誰がその金(豊尻手術代)を払ったか知ってるぜ、yeah。
Big-booty bitch, I know who paid for it (Big-booty bitch, I know who paid for it)
デカいケツのビッチ、誰がその金を払ったか知ってるぜ。
Rock the Audemars Piguet, you ain't on no sad shit (Rock the Audemars Piguet, rock the Audemars Piguet)
オーデマ・ピゲを着けな。お前は悲しんでる(サッド・シット)場合じゃねえんだ。
If you say your grace, I'll get your ass fixed, yeah
もしお前が神に感謝(グレイス)を捧げるなら、そのケツを直して(豊尻手術して)やるよ、yeah。
※"say grace"は食前の祈り。自分を崇めるなら望みを叶えてやるという、Thug特有の神がかったフレックス。
Diamonds, they jump out a Rolls (Rolls)
ダイヤモンドがロールス・ロイスから飛び出してくるぜ。
Stay way too hot, want some froze (Yeah)
あまりにも熱(ホット)すぎるからな、少し凍らせ(フローズ/アイス=ダイヤ)ておきたいんだ。
When I'm rockin' drug addict clothes, yeah, huh
俺が「薬物中毒者(ドラッグ・アディクト)」みたいな服を着こなしてる時にな、yeah, huh。
※ハイファッションの退廃的なグランジスタイル(Rick Owensなど)をドラッグ中毒者のようだと形容しつつ、それを億万長者が着るというギャップ。
Peanut butter guts from the inside
内装(ガッツ)はピーナッツバター色さ。
※高級車のタン色(淡いブラウン)のレザーシートのこと。
We goin' for a bite up to hibachis
ヒバチ(鉄板焼き)を食いに行くぜ。
※アメリカのヒップホップ界隈で「Hibachi(Benihanaなどの鉄板焼きレストラン)」は成功と贅沢の象徴。
Molly came white like a Mentos, Mentos
モリー(MDMA)がメントスみたいに真っ白になってやってきた。
I don't do credit, I don't do credit
俺はクレジット(ツケ/クレジットカード)なんて使わねえ。
Shut up, bitch, shine my necklace (Shut up)
黙れビッチ、俺のネックレスを磨きな。
Playin' with the blocks like Tetris (Yeah)
テトリスみたいにブロック(コカインの塊/あるいはストリートの区画)で遊んでるぜ。
Over onе-fifty got my dentures (My denturеs)
俺の入れ歯(グリルズ)には15万ドル(ワン・フィフティ)以上かかってる。
Are you tyin' ties with all your women? (Are you tyin' ties with all your)
お前は自分の女たち全員と絆(タイズ)を結んでるのか?
Keep your dogs strapped down, they be reckless (Yeah, yeah)
お前の犬ども(ダチ)には銃(ストラップ)を持たせておけよ、あいつら無鉄砲(レックレス)だからな。
Audemars bust down and it's speckless (Oh, yeah)
オーデマ(の時計)はバストダウン(ダイヤ埋め込み)で、一点の曇り(スペックレス)もねえ。
No complainin' that they calling me the bestest (Yeah)
奴らが俺を「最高(ベステスト)」って呼んでも、文句なんて言わねえよ。
Presi' cut, bust down bro necklace (Bust down)
プレジデンシャル・カット。兄弟のネックレスもバストダウンにしてやったぜ。
I ain't tellin' no reason to disguise it (Woah)
それを隠す(ディスガイズ)理由なんて、わざわざ言わねえよ。
I done seen it and turned my eyes (On God)
俺はそれを見て、目を逸らしたんだ(神に誓って)。
※ストリートの犯罪や裏切りを目撃しても、口外しない(Snitchしない)という掟。
Tell your main ho a thousand lies (Hah)
お前の本命の女(メイン・ホー)には、1000の嘘を吐いてやれよ。
Told my main ho the truth, that's on slime (On God)
俺は自分の本命には真実を伝えた。スライム(兄弟)に誓ってな。
※"Slime"はThugのレーベルYSLにおける仲間を意味する強固な合言葉。
I'm a Leo, I got nine lives (Huh)
俺は獅子座(レオ)だ。9つの命を持ってるぜ。
※「猫には9つの命がある」という英語のことわざと、獅子座(ネコ科)を掛けたワードプレイ。何度でも死地から蘇るというストリートの生存力。
Bounty hunters when we come for your life (Woo)
お前の命を狙う時、俺たちは賞金稼ぎ(バウンティ・ハンター)になる。
If you wan' see me succeed (What?)
もし俺の成功を見たいなら。
Gotta tell me everything that I need (Need)
俺に必要なことを全て教えてくれなきゃな。
Malcolm X, told the guys how to read (And what?)
マルコムX。あいつらに読み書きの仕方を教えてやったのさ。
※公民権運動の指導者マルコムXが、刑務所収監中に辞書を書き写して読み書きや教養を身につけた歴史的エピソードの引用。Thug自身が収監中である状況とリンクし、獄中であってもストリートの兄弟たちを啓蒙するという強烈なメッセージ。
Like it dirty, but I'm havin' cheese (Woo)
汚い(ダーティな)やり方が好きだが、俺は金(チーズ)を持ってるぜ。
I got a bitch in Belize (I got a bitch in Belize)
ベリーズ(中米の国)にビッチがいるんだ。
Might be pregnant and this ain't a tease (Might be pregnant and this ain't a tease)
あいつ、妊娠してるかもな。冗談(ティーズ)じゃねえぞ。
I was tellin' my slime not to leave (I was tellin' my slime not to leave)
俺の兄弟(スライム)には、ここを離れるな(逃げるな)って伝えてたんだ。
Too much money to be in the streets, yeah (Let's go)
ストリートに居座るには、金を稼ぎすぎちまったな、yeah。(Let's go)
※富と名声を得たラッパーが、ストリートのいざこざやギャングの抗争に関わり続けることのリスクと矛盾。このThugの深い内省のラインを、Kanyeが続くコーラスで引き継ぐ。
[Chorus: Kanye West]
Too much money to be in the streets
ストリートに居座るには、金を稼ぎすぎちまった。
Too much money to spend all on me
俺一人じゃ、使いきれないほどの金だ。
Too much hate and not enough love
憎しみばかりが多すぎて、愛が足りていない。
Free Larry, free Young Thug
ラリーを解放しろ。ヤング・サグを解放しろ。
※"Larry"はシカゴの巨大ギャング「Gangster Disciples」の創設者で終身刑で服役中のラリー・フーヴァー(Larry Hoover)。"Young Thug"は現在RICO法で裁判中の彼自身。アメリカの司法制度によって長期間檻に繋がれている黒人のリーダーたちへの、Kanyeの切実な解放要求。
Free Larry, free Young Thug
ラリーを解放しろ。ヤング・サグを解放しろ。
[Verse 2: Kanye West]
Back on road, go get in that mode (Mode)
ストリート(ロード)に戻ってきたぜ。あのモード(戦闘態勢)に入るんだ。
Shit that they been on (On), low vibrational
奴らがやってるようなクソなこと。波動(バイブレーション)が低すぎるぜ。
※カニエ特有のスピリチュアルな表現。次元の低い争いやヘイトを嘲笑している。
I'm on vibranium, claws, they titanium
俺はヴィブラニウムでできてる。爪(クロウズ)はチタニウムさ。
※マーベル・コミックの引用。『ブラックパンサー』の強靭な金属「ヴィブラニウム」と、『X-MEN』のウルヴァリンの爪を掛け合わせている(本来ウルヴァリンの骨格はアダマンチウムだが、ここではチタニウムとして韻を踏んでいる)。
You know we is alien, land at SoFi stadium
俺たちがエイリアンだって分かってるだろ。SoFiスタジアムに着陸(ランド)するぜ。
※LAの巨大スタジアム「SoFi Stadium」。スタジアム級のスターであり、常人離れした存在(エイリアン)であるというフレックス。
I feel like Usain or somethin', I been on a crazy run
ウサイン(・ボルト)か何かにでもなった気分だ。とんでもない快進撃(クレイジー・ラン)を続けてきたからな。
If you got the cake and buns, you gon' have to save me some
もしお前がケーキとパン(デカいケツ)を持ってるなら、俺の分も残しておいてくれよ。
This one here for YSL, I ain't talkin' Saint Laurent
こいつはYSL(ワイ・エス・エル)に捧げるぜ。「サン・ローラン」のことじゃねえぞ。
※高級ブランドのYves Saint Laurentではなく、Young Thugが創設したレーベル兼クルー「Young Stoner Life (YSL)」への強固な連帯とシャウトアウト。現在YSLのメンバーの多くが起訴されている状況に対する強力なバックアップ。
Too ahead, we way upfront
先を行きすぎてる。俺たちは遥か前方(アップフロント)にいるんだ。
Throw my name, y'all play too much
俺の名前を好き勝手に使えよ(スロウ・マイ・ネーム)。お前らは遊びすぎだぜ。
※メディアがカニエの名前を見出しに使ってクリックを稼ぐことへの皮肉。
Been this way, I'm way too up
ずっとこの調子さ。俺は遥か高み(ウェイ・トゥー・アップ)にいるんだ。
[Chorus: Kanye West]
Too much money to be in the streets
ストリートに居座るには、金を稼ぎすぎちまった。
Too much money to spend all on me
俺一人じゃ、使いきれないほどの金だ。
Too much hate and not enough love
憎しみばかりが多すぎて、愛が足りていない。
Free Larry, free Young Thug
ラリーを解放しろ。ヤング・サグを解放しろ。
Free Larry, free Young Thug
ラリーを解放しろ。ヤング・サグを解放しろ。
Too much money to be in the streets
ストリートに居座るには、金を稼ぎすぎちまった。
Too much money to spend all on me
俺一人じゃ、使いきれないほどの金だ。
Too much hate and not enough love
憎しみばかりが多すぎて、愛が足りていない。
Free Larry, free Young Thug
ラリーを解放しろ。ヤング・サグを解放しろ。
[Verse 3: Kanye West]
While we at it, free Meech
ついでに言っとくが、ミーチ(Meech)も解放しろ。
※デトロイトの伝説的麻薬カルテル「BMF (Black Mafia Family)」の創設者、Big Meechへの言及。彼もまた長期服役中であり、ヒップホップコミュニティの象徴的な存在。
I'm the owner, this shit not a lease
俺はオーナー(所有者)だ。リース(借り物)じゃねえよ。
※インディペンデントとして自身のマスター権やブランドを完全に所有していることの誇示。
I go ghost and I get out of reach
俺はゴーストになって、誰の手も届かない場所へ行く。
※SNSの削除や公の場からの失踪など、カニエの神出鬼没な行動。
'Cause I gotta protect my peace
自分の平和(ピース)を守らなきゃならねえからな。
They say to trust the process
奴らは「プロセスを信じろ」なんて言うが。
But all I trust is me
俺が信じるのは「俺自身」だけだ。
'Cause all I trust is
俺が信じるのは—
I gotta go tell 'em I said, "God bless"
あいつらに「神のご加護を(ゴッド・ブレス)」って伝えてこなきゃな。
Holy water, take me to the river
聖水(ホーリー・ウォーター)。俺を川へと連れて行ってくれ。
※キリスト教の「洗礼(川で水を浴びて罪を清める儀式)」のメタファー。これまでのストリートや物質主義のフレックスから一転し、神の救済を求めるゴスペル的な展開へと突入する。
Holy Father, forgive me for my sins
聖なる父(神)よ、俺の罪をお許しください。
Holy water, holy water, holy water
聖水よ、聖水よ、聖水よ。
Free all my friends, protect my sons, protect my daughters
俺のダチを全員解放してくれ。俺の息子たちを、娘たちをお守りください。
[Outro: Ty Dolla $ign, Charlie Wilson, The Inter Milan Ultras & Leon Bridges]
Woah
Woah
Take me to your river
あなたの川へ、私を連れて行ってください。
※ここからテキサスのソウル・シンガー、リオン・ブリッジズ(Leon Bridges)の2015年の名曲「River」のサンプリングが響き渡る。さらにR&Bのレジェンド、チャーリー・ウィルソン(Charlie Wilson)と、インテル・ミラノのウルトラスのコーラスが重なり合い、楽曲は神聖な昇天の境地へと達する。
I wanna go (Now)
行きたいんです(今すぐに)。
But please let me know
でもどうか、私に教えてください。
Take me to your river
あなたの川へ、私を連れて行ってください。
I wanna go (Now)
行きたいんです(今すぐに)。
But please let me know
でもどうか、私に教えてください。
Take me to your river
あなたの川へ、私を連れて行ってください。
I wanna go
行きたいんです。
