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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

530 - ¥$, Kanye West & Ty Dolla $ign & Future 【和訳・解説】

Artist: ¥$, Kanye West & Ty Dolla $ign & Future

Album: VULTURES 2

Song Title: 530

概要

本作「530」は、『VULTURES 2』に収録された、カニエ・ウェストの私生活と精神状態が最も赤裸々に露呈したメランコリックな名曲である。タイトルは「午前5時30分」を指し、泥酔した深夜(早朝)の孤独と未練がテーマとなっている。SWSHの「Break the Fall」をサンプリングしたソウルフルな前半(Part I)では、元妻キム・カーダシアンとの離婚の痛手や「酔った勢いでのメッセージ(Drunk texting)」への後悔が語られる。後半(Part II: Dear Summer)に入ると、未完成のガイドボーカル(Mumble)をあえてそのまま収録し、DrakeやFutureといった他のラッパーの名前を挙げながら元妻を口汚く罵る、感情が完全にコントロールを失った状態(ブレイクダウン)が生々しく描写されている。天才の脆弱さと狂気がそのままパッケージされた、極めてパーソナルで痛切なトラックだ。

和訳

[Part I: 530] [Intro: Swsh]

Baby, yeah
ベイビー、yeah。
※R&BシンガーSWSHの「Break the Fall」のボーカルをサンプリング。

Woah, baby, who pick up when you call?
Woah、ベイビー。お前が電話をかけた時、誰が出てくれるんだ?

Yeah, yeah, yeah
Yeah, yeah, yeah

[Chorus: Kanye West]

5:30, the car missin'
午前5時30分。車はない(お前は帰ってこない)。

No text backs or call misses, I feel like we all victims
返信も着信履歴(コール・ミシーズ)もない。俺たち全員が被害者(ヴィクティムズ)みたいな気分さ。

Docks is gettin' long
波止場(ドックス)での待ち時間は長くなるばかりだ。
※先の見えない孤独な待機の隠喩。

Drunk textin', I should not do Patrón
酔った勢いでメッセージ(ドランク・テクスティン)を送っちまった。パトロン(高級テキーラ)なんて飲むべきじゃなかったな。

[Verse 1: Kanye West]

I hop on the phone, turn the music up, got in my zone
スマホを手に取り、音楽のボリュームを上げて、自分の世界(ゾーン)に入り込む。

Drunk textin', I should probably sue Patrón
酔った勢いでのメッセージ。パトロン社を訴える(スー)べきかもな。
※自業自得の行動を酒のせいにして企業を訴えるという、カニエ流のブラックジョーク。

Had to do wrong order to do you right
お前に正しく接する(ドゥ・ユー・ライト)ために、間違ったこと(ドゥ・ロング)をしなきゃならなかった。

You gotta go through it order to give advice
アドバイスをするためには、自分自身がその苦しみを経験(ゴー・スルー・イット)しなきゃならないんだ。

It's the price of the litty nights, I know the liquor hittin'
これが最高に狂った夜(リティ・ナイツ)の代償さ。酒が回ってきてる(ヒッティン)のが分かるぜ。

Why when somebody break your heart, it help fix your vision?
誰かに心を砕かれた(ブレイク)時、どうして視界(ビジョン)が鮮明に(フィックス)なるんだろうな?
※失恋の痛みによって、相手の本性や現実が残酷なほどクリアに見えるようになるという真理。

If you fall in love with a demon or a diva
もしお前が、悪魔(ディーモン)やディーヴァ(歌姫/わがままな女)と恋に落ちたなら。

Pray your soulmate got a soul when you meet her
そいつ(ソウルメイト)に出会った時、あいつに魂(ソウル)が残っていることを祈るんだな。
※"Soulmate"と"Soul"を掛けたワードプレイ。キム・カーダシアンを「魂のないディーヴァ」と暗に批判している。

The crystal ball couldn't tell me if they'll leave again
水晶玉(クリスタル・ボール)でさえ、あいつらがまた離れていくかどうかなんて教えてくれなかった。

Problems too extra large to share with a medium
問題がデカ(エクストラ・ラージ)すぎて、霊媒師(ミディアム)に相談することもできねえよ。
※"extra large(特大)"と"medium(Mサイズ/霊媒師のダブルミーニング)"を掛けた秀逸なパンチライン。

We fight not for flesh and blood on this level
このレベルになると、俺たちの戦いは血肉(フレッシュ・アンド・ブラッド)の争いなんかじゃない。
※新約聖書エペソ人への手紙6章12節からの引用。もはや人間同士の争いではなく、悪魔(メディアや背後の権力)との精神的な戦いであるというカニエのパラノイア。

And devil's advocate is advocatin' for the devil
そして「悪魔の代弁者(デビルズ・アドボケイト)」は、文字通り悪魔のために弁護(アドボケイト)してるのさ。

And love is all drainin' and, stop, it's all fadin'
愛は全てを吸い尽くし(ドレイニン)、そして止まり、全てが色褪せて(フェイディン)いく。

We used to be secretive but now it's all blatant
昔は秘密主義(シークレティブ)だったのに、今じゃ全てが露骨(ブレイタント)だ。

It's all just lost, ain't it? Watchin' it all cave in
全て失われちまったんだろ? 全てが崩れ落ちる(ケイブ・イン)のを見ている。

We the topic of conversation
俺たちが、世間の会話の話題(トピック)の全てさ。
※プライベートな離婚劇が、世界中のゴシップの標的になっていることへの疲弊。

[Chorus: Kanye West]

5:30, the car missin'
午前5時30分。車はない。

No textin', just call missin'
メッセージもない、着信履歴だけが残っている。

We fight and you won't listen
俺たちは喧嘩をし、お前は話を聞こうとしない。

You right, we both trippin'
お前の言う通りだ。俺たちは二人ともどうかしてた(トリッピン)。

[Verse 2: Kanye West]

It's game time, matter fact, it's Ye time
ゲームの時間だ。いや、Ye(俺)の時間だぜ。

The past year been a strange time
この1年は、本当に奇妙な時間だったよ。

Visitations on FaceTime
FaceTime越しでの(子供たちとの)面会(ビジテーション)。
※離婚により、子供たちと直接会うことができず、画面越しでしか顔を見られないという父親としての生々しい苦痛。

And who gon' break who's heart first? Always just breaks mine
どっちが先に相手の心を壊すかって? いつだって壊れるのは俺の心だけさ。

Looking for blessings that God'll hand me
神が俺に差し出してくれる祝福(ブレッシングス)を探している。

I'm tryna just raise the family, somebody should raise the nanny
俺はただ家族を育て(レイズ)ようとしてるのに、誰かがあのナニー(子守)を育ててやらなきゃならねえ。
※キムが雇っているナニー(ベビーシッター)に対する不満、あるいは他人に子育てを任せきりになっている現状への苛立ち。

I'm tryna leave you alone
俺はお前を放っておこう(忘れよう)としてるんだ。

But that last text was courtesy of Patrón
でも、あの最後のメッセージは、パトロン(テキーラ)のせい(好意)だったのさ。

[Chorus: Kanye West]

5:30, the car missin'
午前5時30分。車はない。

Emotions is all distant
感情は全て遠く離れてしまった。

No texts, just calls missin'
メッセージもない、着信履歴だけが残っている。

We fight and you won't listen
俺たちは喧嘩をし、お前は話を聞こうとしない。

You right, we both trippin'
お前の言う通りだ。俺たちは二人ともどうかしてた。

[Part II: Dear Summer] [Intro: Ty Dolla $ign]

Barely holdin' on
なんとか持ち堪えてる。

Barely holdin' on, oh
ギリギリで耐えてるんだ、oh。

Barely holdin' on
なんとか持ち堪えてる。

I'm barely holdin' on
俺はギリギリで耐えてるんだ。

[Chorus: Kanye West]

5:30, the car missin'
午前5時30分。車はない。

Is this what you call distance?
これがお前の言う「距離(ディスタンス)」ってやつか?

Want some in a glass prison
ガラスの牢獄(グラス・プリズン)の中で何かを欲しがっている。
※酒のグラス、あるいはメディアやSNSという透明な監視社会に閉じ込められている状態。

Duh-duh, 'fore our last visit
Duh-duh、俺たちの最後の面会の前に。
※ここからカニエのボーカルが「マンブル(未完成のガイドボーカルのままのハミング)」状態になっていく。精神的なブレイクダウン(崩壊)をあえてそのまま収録している。

[Verse: Kanye West]

That does it, woah, well, that did it
それで終わりだ、woah、ああ、終わったんだ。

That gets it, no, that did it
それで分かった、いや、終わったんだよ。

Mad with it, I thought that we had did it
それにブチギレてる。俺たちは(やり直せる)と思ってたのにな。

Everybody want too much of us, everybody except for us
誰もが俺たちに求めすぎなんだよ。俺たち「以外」の全員がな。
※大衆がセレブカップルに理想を押し付け、消費していくことへの疲れ。

I don't know what's left of less, run away with nothing less
何が残ってるのか分からねえ。これ以下はないって状態で逃げ出すんだ。

Tryna write what's left of us, tryna write what's left of us
俺たちに残されたものを書き留めようとしてる。残されたものを。

Runnin' off with nothin' else, wanna know what the writer does
他に何も持たずに逃げ出す。作家(ライター)が何をするのか知りたいもんだ。

Everything they said it was, everything they read it was
奴らが言ったこと全て、奴らが読んだこと全てだ。

I don't know how bad it was, I don't know how I forget it does
それがどれだけ最悪だったか。どうやってそれを忘れりゃいいんだ。

I don't know how I forget it does
どうやって忘れりゃいいんだよ。

You know it was, you know it is, you know the kid
お前は分かってたはずだ、お前は分かってる。俺(ザ・キッド)のことも分かってるだろ。

You know we did and I owe with this
俺たちがやったことだ、俺にはこれに対する借りがある。

Owe with this, I'ma go with it, I'ma go with it and I go with it
借りがある。俺はこれでいくぜ、これでいくんだ。

Know I'm finna go with it, I throw with it and we goin' in
俺がこれでいくって分かってるだろ。投げ捨てて、俺たちは突っ込むんだ。

Huh-fuh, from the whole in, duh-duh, goin' up with the thunder
Huh-fuh、穴(ホール)の中から、duh-duh、雷(サンダー)と一緒に昇っていく。

And I can't take it, I can't take it
もう耐えられねえ、耐えられねえよ。

You a fake bitch
お前はフェイクなビッチだ。
※マンブル状態から突然クリアな言葉に戻り、キムへの直接的な罵倒が始まる。

You don't really love Ye, go listen to Drake, bitch
お前は本当はYe(俺)のことなんて愛してないんだろ。ドレイク(Drake)でも聴いてろよ、ビッチ。
※カニエの長年のライバルであり、過去にキムとの関係を匂わす楽曲を発表してカニエを激怒させたDrakeへの言及。嫉妬と怒りが剥き出しになっている。

You don't live with those songs, what it take, bitch
お前はあいつの曲と一緒に生きてるわけじゃない。何が必要なんだ、ビッチ。

Go listen to Lil Baby, go listen to Future, bitch
リル・ベイビー(Lil Baby)でも聴いてろ。フューチャー(Future)でも聴いてろよ、ビッチ。
※他の人気ラッパーの名前を羅列し、自分ではなくトレンドのラッパーばかりを好む(あるいは関係を持つ)女性への当てつけ。皮肉なことに、この曲にはそのFuture自身が客演で参加している。

Go soft, you don't think about your future, bitch
甘く(ソフト)なりやがって。お前は自分の「未来(フューチャー/ラッパーのFuture)」のことなんて考えてないんだろ、ビッチ。

Don't sa-fah-na-da, I'm new with this
Don't sa-fah-na-da、俺はこれ(この状況)に慣れてねえんだ。

Da-da, na-dana, goin' through with this
Da-da, na-dana、これを乗り越えようとしてる。

Pa-da-la, fa-na-dan, don't think this
Pa-da-la, fa-na-dan、そんな風に考えるなよ。

Can't fa-fa-na-da for you fake bitch
フェイクなビッチのお前のために、Can't fa-fa-na-da。

You don't really love Ye, go listen to Drake, bitch
お前は本当はYeのことなんて愛してないんだろ。ドレイクでも聴いてろよ、ビッチ。

Young Thug, Thug, Gunna Wunna, do to bitch
ヤング・サグ(Young Thug)、サグ、ガンナ(Gunna Wunna)、あいつらにもヤラれちまえよ、ビッチ。

Listen to Lil Baby, listen to Future, bitch
リル・ベイビーでも聴いてろ、フューチャーでも聴いてろよ、ビッチ。

Bo-summa-thunna temper for a fugitive
逃亡者(フュージティヴ)のためのBo-summa-thunnaな気性(テンパー)。

Wunna-tunna-dunna-dunna, and I don't love hoes
Wunna-tunna-dunna-dunna、そして俺はアバズレ(ホー)なんか愛さねえよ。

You don't love Ye, you love Moneybagg Yo
お前はYeを愛してない、マネーバッグ・ヨー(Moneybagg Yo)でも愛してるんだろ。

I done signed at where you signed it, what he bad for? What he mad for?
お前がサインした場所で俺もサインした。あいつは何が悪かったんだ? 何を怒ってるんだ?
※離婚届へのサインの暗示。

You a fake bitch
お前はフェイクなビッチだ。

Don't listen to me, you don't— go listen to Drake, bitch
俺の曲なんて聴くな。お前は—ドレイクでも聴いてろよ、ビッチ。

Listen to Lil Baby, go listen to Future, bitch
リル・ベイビーでも聴いてろ、フューチャーでも聴いてろよ、ビッチ。

But if I'ma nunna-dunna for your future, bitch
でも、もし俺がお前の「未来(フューチャー)」のためにnunna-dunnaするなら、ビッチ。

And I hope your baby daddy was a fugitive
お前の赤ん坊の父親(ベイビー・ダディ)が、逃亡者(フュージティヴ)になればいいって願ってるよ。
※"baby daddy"はカニエ自身のことだが、ここではキムが今後別の男と子供を作った場合の呪い、あるいは自分自身が指名手配犯(逃亡者)のように社会から追放されることへの自虐とも解釈できる。

And I hope you sanna-danna when you lose the kids
お前が子供たちを失った(親権を失った)時に、sanna-dannaすればいいって願ってるよ。

And I hope you, danna-danna do with this
お前が、これに対してdanna-danna doすればいいって願ってる。

[Outro: Kanye West]

These last words from Patrón
これがパトロン(テキーラ)からの最後の言葉だ。

This last text 'cause Patrón
この最後のメッセージは、パトロンのせいだからな。

Did I start something through?
俺は何かを始めたのか?

No heartbreak, I break through
傷心(ハートブレイク)なんかじゃない。俺は突き破る(ブレイク・スルー)のさ。
※泥酔状態からの目覚め。心を壊されるのではなく、この痛みを突き破って(ブレイク・スルー)前へ進むという、悲痛だが力強い決意で曲が終わる。