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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

PROBLEMATIC - ¥$, Kanye West & Ty Dolla $ign 【和訳・解説】

Artist: ¥$, Kanye West & Ty Dolla $ign

Album: VULTURES 1

Song Title: PROBLEMATIC

概要

本作「PROBLEMATIC(問題児)」は、¥$の『VULTURES 1』に収録された、ホーンセクションが響き渡る壮大でソウルフルなバンガーである。Pierre HenryとSpooky Toothの1969年の楽曲「Jubilation」をサンプリングしたクラシックな「オールド・カニエ」のビート上で、カニエは自身の数々の炎上騒動や「キャンセル」を傲慢に笑い飛ばす。アディダス等との契約(ディール)を失ってビリオネアから転落しようとも、自分は依然として大金持ち(Nigga rich)であり、その影響力はローマ教皇に匹敵すると豪語する。現妻ビアンカ・センソリへの言及や、Mike WiLL Made-Itなどの巧みなワードプレイ、そして自らの過去の名曲「So Appalled」へのセルフオマージュまで、カニエ・ウェストという天才の揺るぎないエゴイズムが凝縮された最高峰のトラップ・ソウルだ。

和訳

[Chorus: Ty Dolla $ign]

I feel like I beat a murder, murder
俺は殺人の罪を免れた(ビート・ア・マーダー)気分だぜ、殺人(マーダー)のな。
※"beat a murder"は殺人罪という絶体絶命の危機から無罪放免になること。社会的に抹殺(キャンセル)されかけた状況から無傷で生還したという強烈なフレックス。

Fuckin' on a bitch you never heard of, heard of
お前らが名前も聞いたことないようなビッチとヤッてるんだ、聞いたことないようなな。
※誰も知らないような極上の美女を抱いているという自慢。

[Verse 1: Kanye West]

That Pope like the leader of the Vatican, he do it again?
バチカンの指導者(教皇/ポープ)のように、あいつはまたやらかしたのか?
※自身の影響力と権威をローマ教皇になぞらえつつ、世間が「カニエがまた炎上したのか?」と騒ぐ様子を皮肉っている。

Everything I do, they do, guess Yeezy set the trend
俺がやることは全て奴らも真似する。Yeezyがトレンドを作ったってことだな。

And we in this bitch again, time to get rich again (Throw your motherfuckin' hands)
俺たちはまたこのクソったれな場所(音楽業界)に戻ってきた。再び大金持ちになる時間だ。(お前らのクソみたいな手を挙げろ)
※アディダス等との契約解除で莫大な資産を失った後、インディペンデントとして再び富を築くという宣言。

They lookin' like prey, I guess that's why they prayin'
奴らは獲物(プレイ)みたいに見える。だから必死に祈って(プレイング)るんだろうな。
※"prey(獲物)"と"pray(祈る)"の踏み韻。

And when you flyin' private, it can't be no delayin'
プライベートジェットで飛ぶなら、遅延(ディレイ)なんてありえねえ。

When I speak my mind, it's gon' be some lawsuits and furniture movin'
俺が本音を口にすれば、訴訟が起きて家具が飛ぶ(引っ越し/大騒動になる)んだよ。
※カニエの発言一つで社会的な大パニックが起き、契約解除や訴訟の嵐になるという彼自身の異様な影響力の自虐。

I gotta haul through like when you be movin'
引っ越しの時みたいに、全てを引きずって(ホール・スルー)通り抜けなきゃならねえ。

I gotta fly to Japan just to bе secluded
隔離(シクルーデッド)されるためだけに、日本へ飛ばなきゃならないんだ。
※2023年頃、カニエはパパラッチや騒動から逃れるために長期間日本(東京など)に滞在していた。彼にとって日本が「世間の喧騒から隔離された安息の地」であったことがリアルに描かれている。

They did no damagе, what I give 'em? No chances
奴らは俺にダメージを与えられなかった。俺が奴らに何を与えたかって? ノーチャンス(チャンスゼロ)さ。

Even if they get a chance, here's panic like they know Spanish
もし奴らにチャンスがあったとしても、「ヒスパニック(here's panic)」になるだけだ。奴らがスペイン語を知ってるみたいにな。
※"here's panic(パニックになる)"と"Hispanic(ヒスパニック/スペイン語圏の人々)"を掛けた言葉遊び。

How I brand all of these clothes?
俺がどうやってこれらの服をブランド化してるかって?

How every tantrum I throw make an anthem for hoes?
俺がかんしゃく(タントラム)を起こすたびに、それが女たちのアンセム(賛歌)になるのはどうしてだ?
※カニエの怒りや奇行すらも、最終的には大衆を熱狂させるポップカルチャーのアンセムに昇華されてしまうという自身の天才性。

This my life, not a quote
これは俺の人生そのものだ。単なる引用(クオート)じゃねえ。

[Chorus: Ty Dolla $ign]

I feel like I beat a murder, murder
俺は殺人の罪を免れた気分だぜ、殺人のな。

Fuckin' on a bitch you never heard of, heard of
お前らが聞いたこともないようなビッチとヤッてるんだ、聞いたことないようなな。

[Verse 2: Kanye West & Ty Dolla $ign]

I'ma take all my baldies to Giorgio Baldis
俺の坊主頭の女(ボールディーズ)たちを全員、ジョルジオ・バルディに連れて行くぜ。
※"Giorgio Baldi"はサンタモニカにあるセレブ御用達の高級イタリアンレストラン(リアーナの行きつけとしても有名)。パートナーであるビアンカ・センソリ(坊主頭のような短髪にしていた時期がある)やその友人たちを引き連れて豪遊する様。

Throw my dick a party
俺のディックのためにパーティを開いてやるんだ。

Your dress code upscale, used to shop at Aldis
お前のドレスコードは超高級(アップスケール)だ。昔はアルディで買い物してたのにな。
※"Aldi"はディスカウント・スーパーマーケット。貧しい生活から、カニエの財力でハイファッションのセレブへと成り上がった女性の対比。

I ran up some numbers, now I got what you all need
俺はとんでもない数字(金)を稼ぎ出した。今じゃ、お前ら全員が必要とするものを俺が持ってる。

Give your homegirl the boric acid, save the summer
お前の女友達にホウ酸(ボリック・アシッド)を渡してやれ。夏を救ってやれよ。
※ホウ酸は細菌性膣炎などのホームケア治療に使われることがある。夏に向けて下半身のケアをしておけという強烈な下ネタとトラッシュトーク。

New abs, she droppin' fast, it's time to come up
新しい腹筋(アブズ)。あの子は急速に落ちていく(体重が減る/あるいは下着を脱ぐ)。成り上がる時間だぜ。

Black out
ブラックアウト(意識を飛ばす)。

Passin' out and then she wakin' up gorgeous
気絶して、そして目を覚ますと、彼女はゴージャスになってるんだ。
※美容整形手術の麻酔で意識を失い、目が覚めると美しくなっている様子。現代のセレブの美容整形カルチャーへの言及。

I'm not racist, it's a preference
俺はレイシスト(人種差別主義者)じゃねえ、これは「好み(プレファレンス)」の問題だ。

And my bitch lookin' like a reference
そして、俺のビッチは「リファレンス(参考資料/元カノの面影)」みたいに見えるぜ。
※元妻のキム・カーダシアンと、現在の妻であるビアンカ・センソリの容姿やスタイルが酷似していることを自認する、不敵でメタ的なライン。

Don't I make the rules like a referee?
俺がレフェリーみたいにルールを作ってるんじゃないのか?

Come get on your knees, shawty, I got needs
さあ、ひざまずけよ、お嬢さん。俺にも欲求(ニーズ)があるんだからな。

She a loud mouth
あの子は口が軽い(大声で騒ぐ)。

I need to sign and seal a couple brand new deals
俺はいくつか新しい契約(ディール)にサインして、ハンコを押さなきゃならねえ。

Gotta get this shit off my chest, I got some shit to spill
このクソみたいなモヤモヤを胸から吐き出したい(Get off my chest)。こぼしちまう(Spill)ような話があるんだよ。

Passin' out NDAs, nigga, deal with it after
NDA(秘密保持契約)を配りまくるぜ、ニガ。後でそれに対処しろ。
※セレブがプライベートな遊びやパーティーで、参加者に情報漏洩を防ぐためのNDAにサインさせるハリウッドのリアル。

I just fucked the world raw, she need a morning after
俺は「世界」をナマでヤッちまったんだ。あいつ(世界)にはモーニングアフター(事後避妊薬)が必要だな。
※自身の影響力が大きすぎることの比喩。世界中を妊娠させてしまう(影響を与えすぎる)から、事後薬が必要だという極端なエゴイズム。

And then the morning after
そして、その翌朝(モーニングアフター)。

And I quote, "It's only one GOAT," let you have your fun, though
引用させてもらうぜ、「GOAT(史上最高)はただ一人だけだ」ってな。まあ、お前らも楽しませてやるけどな。

Run the block like Mutombo, you had it on loan
ムトンボみたいにブロック(街区/シュートブロック)を支配する。お前はそれを借りてただけだろ。
※NBAの伝説的ディフェンダー、ディケンベ・ムトンボ(Dikembe Mutombo)の強烈なシュートブロックと、ストリートの「ブロック(縄張り)」を掛けたワードプレイ。

Every day in New Jersey, on my way to New York
毎日ニュージャージーにいて、ニューヨークへ向かう途中。

I was late to every meeting, in my queen's tunnel
俺は全ての会議に遅刻してた。「俺のクイーンのトンネル」の中にいたからな。
※ニュージャージーからNYへ向かう実際の「クイーンズ・ミッドタウン・トンネル」と、女性(Queen)の膣(Tunnel)の中でセックスをしていたため遅刻したという下ネタのダブルミーニング。

But all the hoes in Hoboken know
でも、ホーボーケン(ニュージャージー州の街)の女たちはみんな知ってるぜ。

If I seent you outside with the open-toes
もし俺がお前を外で、オープントゥ(つま先の開いた靴)を履いてるのを見かけたら。

You might get you a trip to the Poconos
ポコノス(ペンシルベニア州のリゾート地)への旅行に連れて行ってやるかもな。

You might have to tell your man a Pinocchio
お前の男に「ピノキオ(嘘)」をつかなきゃならなくなるかもな。

That was a jokey-joke
まあ、今のはちょっとしたジョークさ。

That wasn't nowhere near as funny when you brokey-broke
お前が完全な一文無し(ブロキー・ブローク)だった頃は、これっぽっちも笑えなかっただろうがな。

Crying in high school over a high school bitch
高校時代に、高校のビッチのことで泣き喚いてた。

And she still in the dark takin' night school, bitch
そしてあいつは今でも暗闇の中、夜間学校(ナイトスクール)に通ってるのさ、ビッチ。
※大物になった自分と、自分を振ったかつての同級生の現在のコントラスト。

Look at how we made it like we Mike WiLL, bitch
俺たちがどれだけ成功した(Made it)か見てみろよ。まるでマイク・ウィル(Mike WiLL Made-It)みたいにな、ビッチ。
※大物プロデューサーの「Mike WiLL Made-It」の名前を使った秀逸なワードプレイ。

Wish somebody woulda warned us
誰かが俺たちに警告してくれればよかったのにな。

When I was fifteen, my soulmate wasn't born yet
俺が15歳の時、俺のソウルメイトはまだ生まれていなかったんだ。
※カニエ(1977年生まれ)と現在の妻ビアンカ・センソリ(1995年生まれ)の18歳の年齢差をユーモラスに表現している。

African king in a different time
違う時代に生まれた、アフリカの王(キング)さ。

We got multiple wives too, just at different times
俺たちにも複数の妻(マルチプル・ワイブズ)がいるんだ。ただ、時期が違ってる(ディファレント・タイムズ)だけさ。
※アフリカの王のような「一夫多妻」を、現代の「離婚と再婚を繰り返す一夫一婦制(シリアル・モノガミー)」に置き換えて正当化するカニエ流の超解釈。

Picture this, if every room got a different bitch
想像してみろ、もし全ての部屋に違うビッチがいたら。

Do that make me a po-nigga-mist?
それって俺を「ポニガミスト(多妻主義の黒人)」にするのか?
※"polygamist(一夫多妻主義者)"と"nigga"を掛け合わせた天才的な造語。Reddit等で特に高く評価されたパンチライン。

Without the deals, I guarantee I'm still nigga rich
企業との契約(ディール)がなくなったとしても、俺は依然として「ニガ・リッチ(成り上がりの黒人の大金持ち)」だって保証するぜ。
※AdidasやGap等の巨大スポンサーを失っても、自分の絶対的な価値と財力は変わらないという強固な自負。

Shit is fuckin' ridiculous
この状況、マジでクソほどバカげてる(リディキュラス)ぜ。
※自身の傑作『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』の収録曲「So Appalled」で多用された名フレーズ「Fuckin' ridiculous」へのセルフオマージュ。古くからのファンを歓喜させた完璧な締めくくり。