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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

HAPPY - Kanye West (feat. Future) 【和訳・解説】

Artist: Kanye West (feat. Future)

Album: DONDA 2

Song Title: HAPPY

概要

本作は、『DONDA 2』のエグゼクティブ・プロデューサーも務めたアトランタのトラップ・キング、フューチャー(Future)を大々的にフィーチャーしたヘヴィなバンガーだ。前半のフューチャーによる長尺のバースでは、どん底のストリートから抜け出し、ドラッグやハイブランドに囲まれたトラップ・ライフスタイルの頂点が冷徹に描かれる。しかし後半、バトンを受け取ったカニエは「Uberを降りて、Uberの会社ごと買収する」という次元の違うビリオネア・フレックスを見せつけながらも、「なあ、俺が幸せに見えるか?」と痛切な自問自答を繰り返す。富や名声を極めながらも、離婚による家庭崩壊やメディアとの闘争の中で「本当の幸福(HAPPY)」を見失ってしまったカニエの剥き出しの孤独が、不穏なビートの上で不気味に響き渡る問題作である。

和訳

[Verse 1: Future]

Cook the dope, let me cook it, yeah
ドープ(麻薬)を調理しろ、俺に料理(クック)させろ。
※"cook"はコカインを重曹と水で煮詰めてクラックを作る工程を指す。転じて、スタジオで極上の音楽を作り出すことのメタファーでもある。

Junkies lay inside the bushes, yeah
ジャンキーどもが茂みの中に寝転がってるぜ。
※ストリートの悲惨な現実。薬物を求めて徘徊する中毒者たちの姿。

Do-si-do syrup, yeah
ドゥー・シ・ドーとシロップ。
※"Do-si-do"は人気のある大麻の品種。それに加えてプロメタジン・コデインのシロップ(リーン)をキメている状態。

These gold diggers, I deserve it, yeah
この金目当ての女(ゴールド・ディガー)たち、俺にはその価値がある。
※成功したラッパーに群がる女性たちを、自分が成功した証(トロフィー)として肯定的に受け入れている。

A gang of **** bought purses, yeah
ビッチどもの群れに高級バッグを買ってやったぜ。
※フューチャーの圧倒的な財力の誇示。

I did it off of one verse, yeah
たった1バース蹴っただけで稼いだ金でな。
※フューチャーの客演フィーがいかに高額であるかを示すライン。

I'm sippin' syrup inside the vert, yeah
オープンカー(vert)の中でシロップを啜ってる。
※"vert"はコンバーチブル(オープンカー)。

I'm leavin' my mark on the Earth
俺はこの地球上に自分の生きた証を刻み込んでるんだ。

Takin' my
俺のものを奪い取る。

my **** pack
俺のダチのパックを吸いやがって。

Came from the—, came from mud
俺はどん底—、泥沼(マッド)から這い上がってきた。
※"mud"は貧困層やゲットーを指すヒップホップ特有の表現。

First to put the hood on the jet
フッド(地元)の連中をプライベートジェットに乗せたのは俺が最初だ。
※アトランタのストリートの仲間たちをフックアップし、成功の果実を分け与えた自負。

First to put the hood on molly
フッドにモリー(MDMA)を流行らせたのも俺が最初だ。

Then we put the hood on X
それからフッドにX(エクスタシー)を広めたのもな。
※ドラッグカルチャーのトレンドセッターとしてのダークな自慢。

**** what a **** gotta say
他の連中が何を言おうが知ったことか。

I know how to secure my bag
俺は自分のバッグ(大金)を確実に手に入れる方法を知ってるんだ。

Trappin' in Atlanta
アトランタでトラップ(麻薬密売/音楽ビジネス)をしてる。
※トラップ・ミュージックの聖地、アトランタの王としての宣言。

Bought three, four, fivе Phantoms
ロールス・ロイス・ファントムを3台、4台、5台と買い漁ったぜ。

Drug dealers, murders, and thе scammers
麻薬の売人、人殺し、そして詐欺師たち。
※フューチャーを取り巻くアトランタのアンダーグラウンドな交友関係。

Crocodile Birkin for your mama
お前のママにはクロコダイルのバーキンだ。
※エルメスの最高級バッグ。数千万単位の価値があるものを平然とプレゼントするフレックス。

Forty somethin' racks on sandals
サンダルに4万ドル(約600万円)以上突っ込む。
※"racks"は1000ドルの束。常軌を逸した散財。

Burberry mink on camera
カメラの前じゃバーバリーのミンクコートだ。

Pour the Wock' down in the Fanta
ウォックハートをファンタに注ぎ込む。
※"Wock'"はWockhardt社製のプロメタジン・コデイン・シロップ。これをファンタ等のソーダで割ってリーン(パープル・ドランク)を作る。

Walk a **** down on camera
カメラの前でクソ野郎を追い詰めてブチ殺す(ウォーク・ダウン)。
※"Walk down"は標的に歩み寄り、至近距離から銃撃するストリートの処刑スタイル。

Ski mask cover my face up
スキーマスクで顔を覆い隠す。
※強盗やヒットマンの正装。

Skull wallet chain, Santana
スカルのウォレットチェーン、サンタナみたいにな。
※ディップセットのJuelz Santana(ジュエルズ・サンタナ)が2000年代初頭に見せていたアイコニックなスカル・ファッションへのシャウトアウト。

Show a real **** what you made of
本物のストリートの男にお前の価値を見せてみろ。

Hit 'em in the top right now
今すぐ奴の頭(トップ)をブチ抜け。

Drankin' on Wock' right now
今まさにウォック(リーン)を飲んでる。

Clutchin' my Glock right now
今まさにグロック(拳銃)を握りしめてるぜ。
※ドラッグで酩酊しながらも、常に銃を手放さないパラノイア的な警戒心。

Marni on my sock right now
今の俺の靴下はマルニ(Marni)だ。
※イタリアのラグジュアリーブランド。

Your **** give me mop right now
お前のビッチが今、俺にフェラ(mop)をしてくれてるぜ。
※"mop"はオーラルセックスを表すスラング。

To finesse on the road out of town
街を出て、ツアーの道中でうまく稼ぐ(フィネスする)ために。

Drinkin' pain up then smoke out the pound
痛みを飲み干して、パウンド(大量のウィード)を吸い尽くす。
※リーンや大麻は、単なる快楽ではなくストリートのトラウマ(痛み)を麻痺させるためのセルフ・メディケーション(自己投薬)であるというリアルな描写。

Selling dope at grandma house
ばあちゃんの家でドープを売り捌いてた。

Bust juggs at grandma house
ばあちゃんの家でシノギ(juggs)をこなしてたんだ。
※"juggs"は麻薬取引や強盗など、ストリートで金を稼ぐ行為。安全であるはずの祖母の家すらもトラップハウス(密売所)になっていた悲惨な環境。

Cut sixteen-hundred out a ounce
1オンスのコカインから1600ドルを稼ぎ出す。

Bought a foreign, could barely pronounce
名前の読み方すら怪しいような、外国産の高級車(フォーリン)を買ったぜ。
※ヨーロッパ製のスーパーカー(ランボルギーニやマクラーレンなど)を指す定番のラップ表現。

One chain and it cost 'bout a house
たった一つのチェーンが、家一軒分の値段だ。

Hit a model, give her five, then bounce
モデルとヤッて、5千ドル(あるいはハイタッチ)を渡して、そのままズラかる(バウンス)。
※金で女性との関係を清算するドライなライフスタイル。

Go tomato on the guts, a Ferrari
フェラーリの内装(ガッツ)をトマトみたいに真っ赤にしてやる。
※高級車のカスタム。外装だけでなく内装(guts)まで特注のレッドレザーにするフレックス。

Hit this new lick, I'm snatchin' Bugatti
この新しいシノギ(リック)をキメて、ブガッティを奪い取る(買う)ぜ。

Sippin' oil out the drank, it's exotic
ドリンク(リーン)からオイル(シロップ)を啜る、最高にエキゾチックだ。

Get paid just to talk, I pop it
ただ喋る(ラップする)だけで大金が転がり込む。俺はブイブイ言わせてるぜ。

Once you finish loading up, then you cock it
弾を装填し終えたら、撃鉄を起こす(コックする)んだ。

And these **** out of France got me cocky
フランスから来たビッチどものせいで、俺は傲慢(コッキー)になっちまった。
※銃の"cock"と自身の傲慢さ"cocky"をかけたワードプレイ。

Rappers take off with the lingo and chop it
他のラッパーどもは俺の作ったスラング(リンゴ)をパクって、切り刻んで使いやがる。
※フューチャーが現代トラップ・ミュージックのフロウや言語感覚のパイオニアであり、多くのフォロワーを生み出したことへの自負。

Make me crush up the scene with no problem
俺なら全く問題なく、このシーンを粉砕できるぜ。

Swearin' these **** gon' try me in Atlanta
アトランタじゃ、クソ野郎どもが俺を試そうと(手を出そうと)してきやがるんだ。

[Verse 2: Kanye West]

Hopped out the Uber, next thing you know, I bought Uber
Uber(ウーバー)から降りて、次に気づけばUberの会社ごと買い取ってたぜ。
※ここからカニエのバース。車を降りるという日常的な行為から、企業買収というビリオネア(億万長者)レベルの行動へ一瞬でスケールアップする、カニエ特有の誇大妄想的フレックス。Redditのリスナー達もこの突飛なパンチラインを絶賛した。

Hopped out the Uber, next thing you know, I bought Uber
Uberから降りて、次に気づけばUberを買収してたんだ。

Don't come in with the rumors, don't ask me nothin' you can Google
噂話なんか持ち込んでくるな。Googleで検索して分かるようなことは俺に聞くんじゃねえよ。
※メディアのゴシップやパパラッチの低レベルな質問に対する苛立ち。

Do I look happy, do I look happy to you?
なあ、俺が幸せに見えるか? お前には俺が幸せそうに見えるのか?
※楽曲の核心。フューチャーが語ったような無限の富と名声を手に入れ、Uberの会社すら買える財力があっても、家族(キム・カーダシアンと子供たち)を失った自分は全く幸せではないという、あまりにも痛切で悲劇的な心の叫び。

(Do I look happy to you?)
(俺が幸せそうに見えるのか?)

Comin' in like, damn, where you get it from?
「クソ、一体どこでそれを手に入れたんだ?」って感じで現れる。

Comin' in like, damn, where you, where you from?
「クソ、お前は一体どこの出身なんだ?」って感じでな。

Had just hopped up out the 'ooter
フーター(Hooters/巨乳のウェイトレスがいるレストラン、あるいはシューターの崩し)から飛び出したばかりだ。

Next week, dumb man'll probably buy Uma
来週には、このバカな男は「ウーマ」でも買うんだろうな。
※"Uma"はUma Thurman(ユマ・サーマン)のような固有名詞の可能性もあるが、文脈的には"Puma"(プーマスポーツ)の意図的な崩し、あるいは次々と企業(Uberに続く何か)を買収していく無軌道な金満行動への自嘲である。

Don't wanna come at me startin' with a rumor
噂話を鵜呑みにして、俺に突っかかってくるんじゃねえぞ。

Matter fact, ask me nothin' you can Google
実際のところ、Googleで調べられるようなことは一切俺に聞くな。

**** runnin' up a million being frugal
質素(フルーガル)に暮らしながらミリオンを稼ぎ出してる奴もいる。
※無駄遣いせず着実に富を築くハスラーへの言及。

**** I was at your mama house eatin' noodles ****
クソ、俺はお前のママの家でヌードル(安いインスタントラーメン)を食ってたんだぜ。

[Chorus: Kanye West]

And we all wanna be happy (Do I look happy, do I look happy to you?)
誰もが皆、幸せ(ハッピー)になりたいと願ってる。(なあ、俺が幸せに見えるか? お前には俺が幸せそうに見えるのか?)
※「幸せになりたい」という普遍的な願いと、「自分は幸せではない」というカニエの現実が残酷に交差するコーラス。

(Do I look happy to you? Do I look happy to you?)
(俺が幸せそうに見えるのか? 俺が幸せに見えるか?)

[Verse 3: Kanye West]

I'm the landlord, lil' boy, you a tenant
俺が家主(ランドロード)だ、坊うや、お前はただの借家人(テナント)に過ぎねえ。
※キム・カーダシアンと当時交際していたピート・デヴィッドソン(Skete)に向けた強烈なディス。彼女の過去も現在のステータスも全て俺が築き上げた(俺が所有している)ものであり、お前は俺の家を一時的に借りているだけの存在だという圧倒的なマウント。

She in all black, that's something I invented
彼女が全身黒ずくめの服を着てるだろ、あれを発明したのは俺なんだよ。
※『DONDA』期以降、キム・カーダシアンがBalenciagaの全身黒のルックを頻繁に着用していたことへの言及。彼女のファッション・アイコンとしての地位は、全てカニエがスタイリングし、プロデュース(発明)したものであるという主張。

You can have her back soon, she just gettin' rented
すぐにお前に返してやるよ、彼女はただ「レンタル」されてるだけだからな。
※家主の比喩の続き。現在の彼女の関係は一時的なもの(レンタル)に過ぎないと冷笑している。

She done went black, fool, shit is gettin' spented
彼女は黒(ブラック)に染まっちまったんだよ、バカ野郎。金が湯水のように使われていくぜ。
※全身黒のファッション、あるいは黒人文化(カニエ自身)に深く影響を受けたことのダブルミーニング。

Coolin' all out when I'm in it, hit it, flip it
俺が入れば(関われば)全てがクールになる。ブチ当てて、状況をひっくり返す(フリップする)んだ。

Goin' Scottie, Larsa Pippen
スコッティと、ラルサ・ピッペンのようにな。
※NBAの伝説的プレイヤー、スコッティ・ピッペンとその元妻ラルサ・ピッペンのネームドロップ。ラルサはかつてキム・カーダシアンの親友だったが、カーダシアン家と深刻なトラブルを起こし関係が断絶した。ドロドロのセレブ界隈のゴシップを意図的に引き合いに出している。

Could've came in a minute and did it
1分で現れて、そいつをやり遂げることだってできた。

Swift, but I'ma let you finish
スウィフト(迅速に)な。でも、「最後まで言わせてやるよ(I'ma let you finish)」。
※天才的なワードプレイ。迅速を意味する"Swift"から、2009年のMTV VMAでテイラー・スウィフト(Taylor Swift)の受賞スピーチをカニエが乱入して遮った伝説的事件「I'ma let you finish(最後まで言わせるけど、ビヨンセのビデオが史上最高だ)」というヒップホップ史に残るミームをセルフオマージュしている。

Pops came home to the city
親父(カニエ)がこの街に帰ってきたぞ。
※ヒップホップ界、あるいは家族の真の長であるカニエの帰還。

[Chorus: Kanye West]

And we all wanna be happy (Do I look happy to you? Do I look happy?)
誰もが皆、幸せになりたいと願ってる。(俺が幸せそうに見えるのか? 幸せに見えるか?)

And we all wanna be happy (Do I look happy, do I look happy to you?)
誰もが皆、幸せになりたいと願ってる。(なあ、俺が幸せに見えるか? お前には俺が幸せそうに見えるのか?)

And we all wanna be happy (Do I look happy to you? Do I look happy?)
誰もが皆、幸せになりたいと願ってる。(俺が幸せそうに見えるのか? 幸せに見えるか?)

And we all wanna be happy (Do I look happy, do I look happy to you?)
誰もが皆、幸せになりたいと願ってる。(なあ、俺が幸せに見えるか? お前には俺が幸せそうに見えるのか?)

And we all— (Do I look happy to you? Do I look happy?)
そして俺たちは皆—(俺が幸せそうに見えるのか? 幸せに見えるか?)

And we all wanna be happy (Do I look happy, do I look happy to you?)
誰もが皆、幸せになりたいと願ってる。(なあ、俺が幸せに見えるか? お前には俺が幸せそうに見えるのか?)

And we all— (Do I look happy to you? Do I look happy?)
そして俺たちは皆—(俺が幸せそうに見えるのか? 幸せに見えるか?)

And we all wanna be happy (Do I look happy, do I look happy to you?)
誰もが皆、幸せになりたいと願ってる。(なあ、俺が幸せに見えるか? お前には俺が幸せそうに見えるのか?)

[Outro]

Pass out, wake up with an IV
気絶(パスアウト)して、目が覚めると点滴(IV)に繋がれてるんだ。
※常軌を逸したワーカホリック、あるいは精神的な限界を迎えて病院のベッドで目覚めるという、ビリオネアの「幸福の正体」の虚無的な結末。