Artist: Kanye West (feat. DaBaby & Marilyn Manson)
Album: Donda (Deluxe)
Song Title: Jail, Pt. 2
概要
本作は『Donda』において最も物議を醸し、同時にアルバムの根底にある「赦し」という神学的なテーマを極限まで押し広げた問題作である。ジェイ・Zが客演したパート1の対となる本作では、性的虐待疑惑の渦中にあったマリリン・マンソンをバックコーラスに、そして同性愛嫌悪発言で音楽業界から「キャンセル」されていたダベイビー(DaBaby)をヴァースに起用している。カニエは社会から糾弾され「キャンセル・カルチャーの牢獄(Jail)」に囚われた彼らを意図的に招き入れることで、「神の前では全ての人間が罪人(We all liars)であり、赦しを与えることができるのは世間ではなく神のみである」という強烈なメッセージを提示した。世間の道徳的裁きに真っ向から中指を立て、絶対的な信仰による保釈(救済)を歌い上げた、ヒップホップ史上類を見ないほど挑戦的でダークなゴスペル・トラックである。
和訳
[Intro: Kanye West]
Take what you want
欲しいものは何でも持っていけ。
※離婚騒動や世間からのバッシングにより、財産や名声を失うことへの虚無感と諦念。
Take everything
全て持っていけ。
Take what you want
欲しいものは何でも持っていけ。
Take what you want
欲しいものは何でも持っていけ。
[Verse 1: Kanye West]
Better that I change my number so you can't explain
お前が言い訳できないように、電話番号を変えた方がマシだ。
※元妻キム・カーダシアン、あるいは裏切った業界関係者との決別。
Violence in the night, violence in the night
夜の暴力、夜の暴力。
※精神的な葛藤、あるいはストリートの現実的な暴力。
Priors, priors, do you have any product?
前科、前科、お前は何かブツ(麻薬)を持ってるか?
※警察からの尋問のメタファー。転じて、過去の罪(Priors)を神や世間に問われている状況。
Well, that one time, I'll be honest
まあ、あの時はな。正直に言おう。
I'll be honest, we all liars, let it go
正直に言うぜ、俺たちはみんな嘘つき(罪人)だ。もう水に流そうぜ。
※新約聖書ローマの信徒への手紙3章4節「神は真実な方ですが、人は皆、偽り者です」という教義に基づく。この思想こそが、世間から見放されたマンソンやダベイビーをカニエがフックアップした最大の神学的根拠となっている。
[Pre-Chorus: Kanye West with Marilyn Manson]
I'll be honest, we all liars
正直に言うぜ、俺たちはみんな嘘つきだ。
※ここで告発の渦中にあるマリリン・マンソンの重低音コーラスが加わる。社会的な「罪人」の声をあえて重ねることで、楽曲のテーマが異常なほどの説得力と気味悪さを帯びる。
I'll be honest, we all liars
正直に言うぜ、俺たちはみんな嘘つきだ。
I'm pulled over and I got priors
車を止められた、俺には前科がある。
Guess we goin' down, guess who's goin' to jail?
捕まるみたいだな、誰がムショ行きになると思う?
[Chorus: Kanye West with Marilyn Manson]
Guess who's goin' to jail tonight?
今夜、誰がムショ(牢獄)行きになると思う?
※ここでの「Jail」は物理的な刑務所だけでなく、世間からのキャンセル(社会的抹殺)や、罪に囚われた精神的牢獄のメタファーである。
Guess who's goin' to jail tonight?
今夜、誰がムショ行きになると思う?
Guess who's goin' to jail tonight?
今夜、誰がムショ行きになると思う?
God gon' post my bail tonight
今夜、神が俺の保釈金を払ってくれる。
※世間がどれだけ自分たちを「牢獄」に叩き込もうとも、神の赦し(保釈金)によって救済されるという究極の信仰宣言。
[Verse 2: Kanye West & Dem Jointz]
Don't you curse at mе on text, why you try to hit the flex?
メッセージで俺を罵るなよ、なんで強がろうとするんだ?
I hold up, likе, "What?" I scroll, I scroll up like, "Next"
俺は立ち止まって「は?」ってなる。スクロールして「次」って感じだ。
※SNSやテキストでの不毛な言い争いをスワイプして無視する現代的な描写。
Guess who's getting X'ed? Like, next
誰がバツ(キャンセル)を食らうと思う?「次」って感じにな。
※"X'ed"はSNSでのブロック、あるいはキャンセル・カルチャーの標的にされること。
Guess who's getting X'ed?
誰がバツを食らうと思う?
You made a choice, that's your bad
お前が選んだ道だ、お前の責任だろ。
Single life ain't so bad
独身生活もそう悪くねえ。
※キム・カーダシアンとの離婚に関する強がり。
But we ain't finna go there
でもその話はしないでおこう。
Something's off, I'll tell you why
何かがおかしい、理由を教えてやるよ。
Guess who's goin' to jail tonight
今夜、誰がムショ行きになると思う?
What a grand plan to sell you out
お前を裏切る(売り飛ばす)ための、なんて壮大な計画なんだ。
※メディアや業界が結託して自分を破滅させようとしているというパラノイア。
I could scream and shout, let it out
大声で叫んで、全て吐き出してもいいんだぜ。
[Pre-Chorus: Kanye West with Marilyn Manson]
I'll be honest, we all liars
正直に言うぜ、俺たちはみんな嘘つきだ。
I'll be honest, we all liars
正直に言うぜ、俺たちはみんな嘘つきだ。
I'm pulled over and I got priors
車を止められた、俺には前科がある。
Guess we goin' down, guess who's goin' to jail?
捕まるみたいだな、誰がムショ行きになると思う?
[Chorus: Kanye West with Marilyn Manson]
Guess who's goin' to jail tonight?
今夜、誰がムショ行きになると思う?
Guess who's goin' to jail tonight?
今夜、誰がムショ行きになると思う?
Guess who's goin' to jail tonight?
今夜、誰がムショ行きになると思う?
God gon' post my bail tonight
今夜、神が俺の保釈金を払ってくれる。
[Verse 3: DaBaby]
Man, tell them haters open up the jail (Open up the jail)
なあ、あのヘイターどもに「牢屋を開けろ」って伝えてくれ。(牢屋を開けな)
※ここからダベイビー(DaBaby)のヴァース。世間からのキャンセルという「牢獄」に入れられた彼が、正面から反撃を開始する。
And you can tell my baby mamas get the bail money (Bail me)
それから俺のベイビーママたちに、保釈金を用意しろって伝えてな。(保釈しろ)
I said one thing they ain't like, threw me out like they ain't care for me
奴らが気に入らないことをたった一つ言っただけで、俺のことなんかどうでもいいみたいにゴミ箱に捨てやがった。
※2021年7月のRolling Loud Miamiフェスでの同性愛嫌悪・HIVに関する不適切発言により、Lollapaloozaなど多数のフェスから即座に出演キャンセルされた事件への直接的な言及と恨み節。
Threw me out like I'm garbage, huh?
俺をゴミみたいに捨てたんだろ?
And that food that y'all took off my table
お前らが俺のテーブルから奪ったそのメシ(仕事)が、
You know that feed my daughters, huh? (Mmm)
俺の娘たちを養ってるって分かってんのか?(Mmm)
※ポリコレによる制裁が、結果的に自分の家族の生活を脅かしているという家長としての主張。
But I ain't really mad, 'cause when I look at it
でもマジで怒っちゃいねえよ。だってよく見りゃ、
I'm getting them snakes up out my grass and, ****, that's a good habit
草むらから蛇(裏切り者)を追い出せたんだ。クソ、いい習慣じゃねえか。
※炎上した途端に離れていった偽物の友人やスポンサーたち(蛇)を、人生から排除(草刈り)できたと強がるストリートの論理。
I'm ready for war, let's get at 'em
戦争の準備はできてる、奴らをブチのめそうぜ。
And teaming up ain't gon' help 'em
奴らが束になっても無駄だ。
'Cause beating the odds too deep
逆境を跳ね返すことにかけては、俺は深すぎる(最強だ)からな。
Just me and God, ****, ****, I'm good at it
俺と神だけで十分すぎる。クソ、俺はそれが得意なんだ。
※社会全体が敵に回っても、神と自分の実力があれば復活できるという絶対的な自信。
Matter of fact, I'm great at it, my cell phone back at it
実際のところ天才的だね。俺の携帯がまた鳴り出してるぜ。
※カニエに起用されたことで、業界から再びオファーが来始めている状況のフレックス。
I know these people gon' try to tell me how to talk
世間の連中は、俺に「口の利き方」を教えようとしてくるんだろうな。
Don't know what I seen or what I was taught
俺が何を見てきたか、何を教わって育ったかも知らねえくせによ。
※中産階級的なポリコレ基準を、ゲットーで育った自分に押し付けることへの反発。
My mama worked two or three jobs to take care of three of her kids, my uncles watched
オフクロは2つも3つも仕事を掛け持ちして3人の子供を育て、叔父さんたちが面倒を見てくれた。
Yeah, we was raised by the crack addicts
ああ、俺たちはクラック中毒者たちに育てられたんだ。
※ストリートの底辺のリアルな生育環境の描写。
Mmm, raised by the drug dealers, killers, and the junkies (Junkies)
ドラッグの売人、人殺し、ジャンキーたちに育てられたんだよ。(ジャンキー)
Mama couldn't save us 'cause she had to get the—
ママは俺たちを救えなかった、だって彼女は稼がなきゃ—
Mama couldn't save us 'cause she had to get the money
ママは俺たちを救えなかった、生きていく金を稼がなきゃならなかったからな。
※道徳的な教育よりも、その日を生き延びることが最優先だった過酷なルーツを提示し、表面的な言葉狩りを行うメディアに「お前らに俺の背景が分かるか」と突きつけている。
Feel like your world falling, getting too hard to catch it, ain't it?
世界が崩れ落ちて、受け止めるのが難しくなってるように感じるだろ?
※ここからダベイビーは視点を変え、自身の境遇からカニエ(Ye)の離婚問題へのエンパシー(共感)へとラップの矛先を向ける。
You and your girl arguin', you don't like how she actin' lately
彼女と喧嘩して、最近の彼女の態度が気に入らないんだろ。
Giving it everything that you can give and you don't get half the patience
与えられるもの全てを与えてるのに、その半分の我慢すらしてもらえねえ。
You was busy hustlin', the things come with your hustle
お前はハスリング(音楽やビジネス)に忙しくて、その代償が付きまとった。
They got in her head, corrupted her
連中が彼女の頭に入り込んで、彼女を堕落させたんだ。
※"They"はメディアやカーダシアン家の取り巻き。業界がキムを洗脳し、カニエから遠ざけたのだという同情的な見解。Redditのリスナー達も、ダベイビーが自分の弁明だけでなくカニエの側に立って擁護したこのラインを高く評価している。
Yeah, that's probably what happened, ain't it?
ああ、多分そういうことだったんだろ?
Large amount of capital, invested in myself
莫大な資本を、自分自身に投資した。
Underground, I ain't even have a basement, I read the affidavit
アンダーグラウンド、俺には地下室すら無かった。宣誓供述書を読んだよ。
※どん底から這い上がり、今や弁護士と共に法的文書(宣誓供述書)を読み解くほどの大物になった。
Let's see what it is with you
お前がどういうつもりか見てやろうじゃねえか。
Only thing I did to you
俺がお前にした唯一のことは、
Was always keep it real and true
常にリアルで、真実であり続けたってことだけだ。
※社会が求める建前を無視して本音(リアル)を貫いた結果、キャンセルされたという主張。
Guilty, guess they gon' have to take me
有罪だ。奴らは俺を連行(キャンセル)しなきゃならないみたいだな。
※自分が「リアルすぎる罪」で有罪なら喜んでムショに入ってやる、という開き直りと不屈の闘志でヴァースを締める。
[Chorus: Kanye West with Marilyn Manson]
Guess who's goin' to jail tonight?
今夜、誰がムショ行きになると思う?
Guess who's goin' to jail tonight?
今夜、誰がムショ行きになると思う?
Guess who's goin' to jail tonight?
今夜、誰がムショ行きになると思う?
God gon' post my bail tonight
今夜、神が俺の保釈金を払ってくれる。
