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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Jonah - Kanye West (feat. Lil Durk & Vory) 【和訳・解説】

Artist: Kanye West (feat. Lil Durk & Vory)

Album: Donda (Deluxe)

Song Title: Jonah

概要

本作は、カニエ・ウェストと親交の深かった若き音楽関係者、ジョナ・ウェア(Jonah Ware)の急逝を悼むトリビュート楽曲である。アルバム『Donda』全体を覆う「喪失」というテーマが、極めてパーソナルな形で表現されている。プロダクションは徹底的に削ぎ落とされており、まるで病室の心電図モニターを彷彿とさせる冷たいビープ音と、重い808ベースのみが空間を支配する。この究極の引き算の美学は、余分な装飾を排してシルエットや構造の本質だけを提示する先鋭的なアパレルデザインにも通じる、カニエの特異なプロデュース手法の真骨頂と言える。客演にはジョナの親友であったVoryと、シカゴの後輩Lil Durkが参加。特にLil Durkのバースは、実兄DThangを銃撃で失った直後に録音されたものであり、絶望と怒りが入り交じる生々しいドキュメンタリーとなっている。カニエはシカゴの長老として暴力の連鎖を断ち切るよう諭しており、痛みを抱えた三者の魂が交錯する鎮魂歌である。

和訳

[Chorus: Vory]

Like who's here when I need a shoulder to lean on?
俺が寄りかかれる肩が必要な時、誰がここにいてくれるんだ?
※テキサス出身のシンガーVoryによる、亡き友ジョナ・ウェアへの痛切な問いかけ。成功を掴んでも、本当に辛い時に頼れる人間がいなくなっていく孤独感。

I hope you're here when I need them demons to be gone
俺の抱える悪魔どもを追い払いたい時、お前がここにいてくれればいいのに。
※"demons"は精神的な苦痛やトラウマ、あるいはドラッグへの依存などを指す。

And it's not fair that I had to fight 'em all on my own
この戦いを、俺一人で乗り切らなきゃならないなんて不公平だろ。
※共に戦ってきた友人を突然失い、一人で残酷な音楽業界やストリートの現実と向き合わなければならない理不尽さへの嘆き。

Like who's here when I need a shoulder to lean on?
俺が寄りかかれる肩が必要な時、誰がここにいてくれるんだ?

I hope you're here when I need them demons to be gone
俺の抱える悪魔どもを追い払いたい時、お前がここにいてくれればいいのに。

And it's not fair that I had to fight 'em all on my own
この戦いを、俺一人で乗り切らなきゃならないなんて不公平だろ。

[Verse 1: Vory]

Hard to keep my focus on what matters
本当に大事なことに集中し続けるのが難しいんだ。
※友人の死という悲報のせいで、音楽制作やビジネスに手がつかなくなっている心理状態。

Mandem hit my line like, "Some **** just got hit up on your block"
ダチから電話がかかってきて、「お前の地元のブロックで誰かが撃たれたぞ」って言うんだ。
※"Mandem"はUKドリル等でよく使われる「仲間、連れ」を意味するスラング。Voryの交友関係の広さや、ストリートの日常的な暴力の連鎖を示している。

You can rest assured it's not us
でも安心しろ、俺たちじゃねえよ。
※銃撃事件が日常茶飯事の環境において、自分たちのクルーが無事であることを確認し合う生々しいやり取り。

'Cause we been out the wavе catchin' waves
だって俺たちはストリートを抜け出して、ビッグウェーブ(成功)に乗ってるからな。
※"out the wave"(地元の波乱から離れて)と"catchin' waves"(音楽業界で波に乗る、またはリゾート地で波に乗る)のダブルミーニング。

They say, "We ain't seen you on thе block"
連中は「最近ブロックでお前の姿を見ねえな」って言うけど。
※地元を離れたことで、「フッドを見捨てた」と陰口を叩かれるラッパーの宿命。

'Cause I been out the way
俺はもう別の道を歩んでるからさ。
※無意味な暴力や抗争から物理的・精神的に距離を置いている。

Chasin' millions in my sleep, I found the better way
寝てる間もミリオン(何百万ドル)を追いかけてるんだ。もっとマシなやり方を見つけたのさ。
※ストリートでの犯罪(ハスリング)ではなく、印税やビジネスで合法的に富を築く「Better way」の提示。

Somewhere on an island, let me kick it, this my getaway
どっかの島でくつろがせてくれよ。これが俺の逃避行だ。
※トラウマやプレッシャーから逃れるための、孤島への逃避願望。

I pour up a drink for all my **** who ain't see the day
今日という日を迎えられなかった全ての兄弟のために、酒を注ぐぜ。
※"pour up"は、死んだ仲間のために酒(リカー)を地面に撒くストリートの追悼儀式(Pour out a little liquor)。

Tryna finish this with who I started with
最初から一緒にやってきた奴らと、最後までやり遂げたいんだ。
※ジョナのような初期からの仲間と共に成功のゴールテープを切りたかったという悔恨。

Way too many fallen soldiers, no, I can't forgot
散っていった兵士(仲間)があまりにも多すぎる。いや、絶対に忘れられねえよ。
※ストリートでの死者を、戦争で命を落とした「兵士(fallen soldiers)」と呼称する。

Hope they got headphones up in Heaven
天国にもヘッドフォンがあるといいな。
※亡きジョナが、自分たちが作ったこの曲(Donda)を天国で聴けるようにという純粋な祈り。

You can vibe out and just hear this ****
バイブスを感じながら、この曲を聴いてくれ。
※地上から天国へのプライベートなメッセージ。

It's just certain **** you can't forget
どうしても忘れられない奴らがいるんだよ。

[Chorus: Vory]

Like who's here when I need a shoulder to lean on?
俺が寄りかかれる肩が必要な時、誰がここにいてくれるんだ?

I hope you're here when I need them demons to be gone
俺の抱える悪魔どもを追い払いたい時、お前がここにいてくれればいいのに。

And it's not fair that I had to fight 'em all on my own
この戦いを、俺一人で乗り切らなきゃならないなんて不公平だろ。

Like who's here when I need a shoulder to lean on?
俺が寄りかかれる肩が必要な時、誰がここにいてくれるんだ?

I hope you're here when I need them demons to be gone
俺の抱える悪魔どもを追い払いたい時、お前がここにいてくれればいいのに。

And it's not fair that I had to fight 'em all on my own
この戦いを、俺一人で乗り切らなきゃならないなんて不公平だろ。

[Verse 2: Lil Durk]

Kanye and Jay still brothers, they both billionaires
カニエとジェイ・Zは今でも兄弟だ。そして2人ともビリオネア(億万長者)になった。
※Lil Durkのバース。かつて袂を分かったKanye WestとJay-Zが『Donda』で劇的な和解を果たし、共に億万長者として頂点に立っている姿へのリスペクト。

And we ain't see it, I lost my brother when we was millionaires
でも俺たちはその景色を見られなかった。ミリオネア(百万長者)になった矢先に、俺は実の兄貴を失っちまったんだ。
※KanyeとJayの「生きている兄弟」と、自分と亡き兄DThang(2021年6月にシカゴのクラブ前で射殺)という「死に別れた兄弟」の残酷なコントラスト。富を得ても命は守れなかった痛恨の極みである。

I wasn't scared to die, but him, that was my biggest fear
俺自身が死ぬことは怖くなかった。だが兄貴が死ぬこと、それこそが俺の最大の恐怖だったんだ。
※ストリートで生きるギャングにとって、自分の命よりも愛する家族の命を奪われることの方が恐ろしいという真理。

I got your son and your daughter like you still here
兄貴の息子と娘は俺が面倒を見るよ、あんたがまだここにいるかのように。
※残された遺児(甥と姪)を、父親代わりとして育て上げるという固い誓い。

Know how it feel to lose a brother, we got a bond still
兄弟を失うってのがどんな気分か分かるか? 俺たちの絆はまだ繋がったままだ。
※肉体が消滅しても、精神的な絆(bond)は決して断ち切れない。

Twenty-six years, pops got out to see his son killed
親父は26年間も服役して、シャバに出てきたと思ったら、自分の息子が殺されるのを見るハメになった。
※Lil Durkの父親(Dontay Banks Sr.)は、シカゴのギャング「Gangster Disciples」の幹部として1993年から服役し、2019年に出所した。26年ぶりの自由を得た直後に長男を殺されるという、言葉を失うほど凄惨な一家の悲劇を描写している。

And I don't give a **** if I hang with a Crip, I see blood still
俺がクリップスの奴らとつるんでようが関係ねえ。俺の目には今でも「血(ブラッド)」が焼き付いてるんだ。
※ロサンゼルスの二大ギャング「Crips」と「Bloods」をかけた高度なワードプレイ。Durk自身はシカゴのBD(Black Disciples)だが、業界で他都市のCrips(青色)と関わることがあっても、常に兄の流した血(Blood/赤色)や復讐心が消えることはないという殺意の表明。

I can be the cleanest millionaire, I'm from the mud still
どれだけクリーンなミリオネアになろうが、俺のルーツは泥(マッド)の中だ。
※高級なスーツを着て合法的に稼いでいても、メンタリティは常に「泥(貧困層のストリート)」にあるというギャングスタの矜持。

Died with his chain on, I call it blood diamonds
兄貴はチェーン(ネックレス)を着けたまま死んだ。俺はあれを「ブラッド・ダイヤ(血塗られたダイヤ)」って呼んでる。
※アフリカの紛争の資金源となる「ブラッド・ダイヤモンド」と、兄の血を浴びたジュエリーをかけた重いメタファー。

It's to the point I drop my own lo' so they could find us
奴らが俺たちを見つけられるように、俺自身の現在地(lo)を晒してやってるくらいだぜ。
※"lo'"はLocation(位置情報)。暗殺を恐れて身を隠すどころか、兄を殺した犯人たちに向けて「いつでも来い、返り討ちにしてやる」と挑発している狂気のライン。

And it's been months and they still hidin’
何ヶ月も経つのに、奴らはまだコソコソ隠れてやがる。
※犯人たちが報復を恐れて姿を現さないことへの嘲笑。

Kanye did it for the city, he co-signed
カニエはこの街(シカゴ)のために動いてくれた。彼が俺をフックアップ(保証)してくれたんだ。
※大御所であるカニエが、現行のシカゴ・ドリルの顔であるDurkをアルバムに起用(co-sign)したことへのシャウトアウト。世代を超えたシカゴの連帯。

[Chorus: Vory]

Like who's here when I need a shoulder to lean on?
俺が寄りかかれる肩が必要な時、誰がここにいてくれるんだ?

I hope you're here when I need them demons to be gone
俺の抱える悪魔どもを追い払いたい時、お前がここにいてくれればいいのに。

And it's not fair that I had to fight 'em all on my own
この戦いを、俺一人で乗り切らなきゃならないなんて不公平だろ。

[Verse 3: Kanye West]

Smoke a opp pack ain't funny like that
「敵(オップ)のパックを吸う」なんて、ちっとも笑えねえよ。
※カニエのバース。"Smoke a opp pack"は、ドリル・カルチャー特有の「殺した敵の名前を冠した大麻を吸う(死者を冒涜する)」という残虐なスラング(例:Tooka packなど)。Durkの周囲でもKing Vonの死などでこの言葉が蔓延したが、カニエはシカゴの先人として「そんなものはクールじゃない」と若者たちを厳しく嗜めている。

It get ugly like that, can't get no money like that
事態が醜悪になるだけだ。そんなやり方じゃ金だって稼げねえ。
※無意味な殺し合いはビジネス(ヒップホップ)の首を絞めるだけだという、経営者視点からの警告。

Holy Father, please, let me step in
聖なる父よ、どうか俺に介入させてください。
※暴走するストリートの若者たちを止めるため、神に許可を求めて自ら仲裁に入るという預言者的スタンス。

Can't talk to buddy like that, it get bloody like that
あいつにそんな口の利き方をするな、また血みどろの事態になっちまうぞ。
※SNSでの些細なディスや挑発が、すぐに現実の殺人事件(Bloody)に発展してしまう現代のドリル・シーンへの危惧。

Whole lotta steppers and they steppin'
ヤバいヒットマン(ステッパー)共がウヨウヨいて、あいつらは容赦なく踏み潰してくる。
※"stepper"は銃殺を実行する凶悪なギャング。ストリートの暴力が制御不能なレベルに達している状況。

And they sunny like that, and they comin' right back
白昼堂々(sunny)にやってきて、何度でも戻ってくるんだ。
※夜の暗がりだけでなく、真昼間から平然とドライブバイ・シューティングが行われるシカゴの異常な日常。

And when you on tour, I bet you check in
お前らがツアーに出る時は、必ず「チェックイン(筋を通す)」してるはずだろ。
※"check in"は、他都市に行く際にその土地を仕切るギャングに挨拶し、みかじめ料を払うこと。ストリートの掟がいかに業界を支配しているかを指摘している。

'Cause my guys back to work, it's a Monday like that
だって俺のダチらはまた仕事(ハスリング)に戻る。まるでいつもの月曜日みたいにな。
※暴力や抗争が、彼らにとってはただの「日常業務(Monday)」になってしまっていることへの虚無感。

And when you text, change the beginnin' of every word
お前ら、テキストを打つ時は単語の頭文字をいちいち変えてるよな。
※ギャング特有のタイピング・スラングへの言及。例えばCripsは「B」を嫌い、Bloodsは「C」を別の文字に置き換える(あるいはシカゴのGDsやBDsの固有の文字変換ルール)。

You will speak to me with only no cap
俺と話す時は、嘘偽り(キャップ)なしで真っ直ぐ喋れ。
※"no cap"は「嘘じゃない、マジで」というスラング。暗号めいたギャング用語や見栄を捨てて、本音で向き合えというカニエからの要求。

Me and your big homie go back
俺とお前らの「ビッグ・ホーミー(組織の大ボス)」は、昔からの付き合いなんだぜ。
※シカゴのストリートの頂点(ラリー・フーヴァーなど)と自分は直接繋がっているという、圧倒的な権力の誇示。だからこそ、若造たちに説教できるという立場。

And homie don't rap, you don't know me like that
しかもそのダチはラップなんてやらねえ(本物のギャングだ)。お前ら、俺がどういう人間か分かってねえだろ。
※単なるアーティストではなく、シカゴの裏社会の根本と結びついた「手出し不可能な存在」であることを匂わせ、若手たちを完全に沈黙させるパンチライン。

[Chorus: Vory]

Like who's here when I need a shoulder to lean on?
俺が寄りかかれる肩が必要な時、誰がここにいてくれるんだ?

I hope you're here when I need the demons to be gone
俺の抱える悪魔どもを追い払いたい時、お前がここにいてくれればいいのに。

And it's not fair that I had to fight 'em all on my own
この戦いを、俺一人で乗り切らなきゃならないなんて不公平だろ。

Like who's here when I need a shoulder to lean on?
俺が寄りかかれる肩が必要な時、誰がここにいてくれるんだ?

I hope you're here when I need the demons to be gone
俺の抱える悪魔どもを追い払いたい時、お前がここにいてくれればいいのに。

And it's not fair that I had to fight 'em all on my own
この戦いを、俺一人で乗り切らなきゃならないなんて不公平だろ。

[Outro: Vory]

Like who's here when I need a shoulder to lean on?
俺が寄りかかれる肩が必要な時、誰がここにいてくれるんだ?

I hope you're here when I need them demons to be gone
俺の抱える悪魔どもを追い払いたい時、お前がここにいてくれればいいのに。

And it's not fair that I had to fight 'em all on my own
この戦いを、俺一人で乗り切らなきゃならないなんて不公平だろ。

Like who's here when I need a shoulder to lean on?
俺が寄りかかれる肩が必要な時、誰がここにいてくれるんだ?

I hope you're here when I need them demons to be gone
俺の抱える悪魔どもを追い払いたい時、お前がここにいてくれればいいのに。

And it's not fair that I had to fight 'em all on my own
この戦いを、俺一人で乗り切らなきゃならないなんて不公平だろ。

 

Donda (Deluxe)

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  • Getting Out Our Dreams II, LLC / Def Jam Recordings
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