Artist: Kanye West (feat. Young Thug)
Album: Donda (Deluxe)
Song Title: Remote Control
概要
本作は、カニエ・ウェストの10作目のアルバム『Donda』に収録された、アトランタの異端児ヤング・サグを客演に迎えたシンセ・ポップ調のトラップ・ゴスペルである。「Remote Control(リモコン)」というタイトルが示す通り、この楽曲の最大のテーマは「神が宇宙の全てをリモコンで操作するように完全に掌握している(God's in control)」という絶対的な信仰心だ。カニエ自身のSNSでの暴走や世間のバッシングさえも、最終的には神の壮大な計画の一部に過ぎないという達観が歌われている。特筆すべきは、アウトロで突如サンプリングされるネットミーム「Globglogabgalab(グロブグロガブガラブ)」の存在だ。インディーのキリスト教アニメ映画からの引用であるこの奇妙なキャラクターの声は、ミーム文化すらも神の計画の一部として取り込むカニエの圧倒的な批評性を帯びており、Reddit等でも「究極のトロールか、それとも深い神学の表現か」と激しい議論を呼んだ。
和訳
[Intro: Kanye West]
Please don't ask again, who's up in the van?
二度と聞かないでくれ、このバンに誰が乗ってるかって?
※執拗にプライバシーを探ろうとするパパラッチやメディアに対する苛立ち。
They my only fans
俺の「オンリーファンズ(唯一のファンたち)」さ。
※アダルトコンテンツのサブスクリプションプラットフォーム「OnlyFans」とのダブルミーニング。バンの同乗者を文字通り唯一の熱狂的なファンとしている説と、現代の歪んだ承認欲求やファンカルチャーへの皮肉を込めている説がある。
I was in my hovercraft, had another laugh
俺はホバークラフトに乗って、また笑ってた。
※「ホバークラフト」はYeezyブランドの未来的なビジョンや、俗世間から浮遊して下界を見下ろす「神の視点」のメタファー。
How you roll with them when you know I'm him?
俺が「選ばれし者」だって分かってるのに、なんでお前はあんな連中とつるんでるんだ?
※"Him"(大文字のHimは神を指すことが多い)は、ストリート用語で「本物・絶対的な存在」を指す。カニエの持つ強烈な自負心。
[Chorus: Kanye West]
Got it on remote control
全てリモコンで操られてるんだ。
※主語は「神(He)」。神が世界をリモコン操作のように完璧にコントロールしているという主題。
Got it on remote control
全てリモコンで操られてる。
Got it on remote control, like a CEO
CEOみたいに、リモコンで全てを支配してる。
※神を全宇宙の最高経営責任者(CEO)になぞらえている。
I thought you should know
お前も知っておくべきだと思ってな。
[Verse 1: Kanye West]
On my Instagram, it get outta hand
俺のインスタグラムは、いつも手に負えなくなる。
※カニエ自身のSNSでの頻繁な暴走、過激な発言、そして投稿の全削除といった奇行への自嘲的な言及。
Why you so mad?
なんでそんなにキレてんだ?
※炎上に対して怒り狂う世間やヘイターへの冷ややかな問いかけ。
[Pre-Chorus: Kanye West]
He got it on remote control, like a CEO
主(神)はCEOみたいに、全てをリモコンで支配してる。
Feelin' like the man, feelin' like the man
俺は最高の男だって気分だ。
※神の完璧な計画(Bigger plan)の中にいるという安心感からの全能感。
I was in my hovercraft, floatin' down the path
ホバークラフトに乗って、自分の道を浮かびながら進んでた。
God just grabbed my hand, had a bigger plan
そしたら神が俺の手を掴んでくれた。俺の想像より遥かにデカい計画があったんだ。
※カニエの人生における様々なトラブルや世間からの孤立も、最終的には神の壮大な導き(Bigger plan)であったという決定論的な救済。
[Chorus: Kanye West & Young Thug]
He got this on remote control
主は全てをリモコンで操っている。
He got it on remote control
全てリモコンで操られてるんだ。
'Trol
コントロール。
Woah-woah, woah-woah
Woah-woah, woah-woah
[Verse 2: Young Thug]
I just, oh, I owe you a load
ああ、お前には山ほど借りがあるよな。
Aaliyah on the Titanic (Oh), I can rock your boat (Spider)
タイタニック号に乗ったアリーヤみたいに、お前のボートを揺らして(楽しませて)やるよ(スパイダー)。
※伝説的なR&Bシンガー、アリーヤ(Aaliyah)の代表曲『Rock The Boat』と、沈没した豪華客船タイタニック号を掛け合わせたブラックジョーク的なワードプレイ。「Spider」はヤング・サグのブランド名「Sp5der」であり、彼自身のエイリアス(別名)でもある。
Hoppin' out the brand-new Rolls (Skrrt, skrrt)
ピカピカのロールス・ロイスから飛び出す。
Hoppin' out the brand-new Rolls (Skrrt, skrrt)
ピカピカのロールス・ロイスから飛び出す。
Jesus sent me brand-new clothes (Skrrt, skrrt)
イエスが新しい服を送ってくれたぜ。
※カニエ(クリスチャンでありYeezyのデザイナー)から提供された最新の衣装を、「神(Jesus)からの贈り物」と表現している非常にウィットに富んだライム。
Wrist still thirty-two below (Yeah)
手首の時計は氷点下32度(凍るほどダイヤが輝いてる)だぜ。
※"thirty-two below"は華氏マイナス32度。大量のダイヤモンド(Ice)がセッティングされた高級時計を指すストリート・スラング。
I want my rhyme to shine
俺のライムを輝かせたいんだ。
Might caress your mind within my time, might
俺が生きている間に、お前の心を撫でて(癒やして)やれるかもしれないな。
Don't you give your love up, this is the right sign (Woah), sign (Yeah, yeah)
愛を諦めるなよ、これが正しい兆し(サイン)だ。
I treat you lovely and righteous and kind (Hah)
お前を愛に溢れた、正しく優しいやり方で扱ってやる。
And we'll be next to one another 'til we die (Yeah)
死ぬまで隣にいるからな。
I'd give you kids at the drop of a dime (Dime)
ためらうことなく、お前に子供たちを与えてやる。
※"at the drop of a dime"は「即座に、ためらいなく」を意味するイディオム。
Oh-woah, told the **** fold my clothes (Fold my clothes)
ビッチに「俺の服を畳め」って言ってやった。
Take it to the light like a strobe (Yeah)
ストロボみたいに、こいつを光の元へ持っていく。
Taking me to court like O (Taking me to court like O.J.)
O.J.みたいに、俺を裁判所に引きずり出す。
※元アメフト選手O.J.シンプソンの歴史的な殺人事件裁判(世紀の裁判)への言及。黒人の成功者がメディアや司法の標的になりやすい現実への皮肉。
Paparazzi sleep at my door
パパラッチどもが俺の家のドアの前で寝張ってる。
I just thought that you should know (Sleep at my door)
お前も知っておくべきだと思ってな。
Pockets frozen like the North Pole
ポケットの中は北極みたいに凍結してる(金でパンパンだ)。
Don't you freeze up on a pole
ポールダンス中にフリーズするなよ。
※ストリッパーへの声がけ。前のラインの「Pole(極地)」と「Pole(ポールダンスの棒)」をかけている。
[Pre-Chorus: Young Thug]
He got this on remote control like a CEO
主はCEOみたいに、全てをリモコンで支配してる。
He got it, no fight, no more meds, they twilight in the game
主が掌握してる。争いも向精神薬(meds)ももういらない。奴らはゲームの黄昏時(トワイライト)にいるんだ。
※カニエが抱える双極性障害の薬物治療(meds)からの脱却と、精神的な平穏の獲得。後半は、業界の古いルールに縛られた連中が終わり(黄昏)に向かっていることの示唆。
He got it on my hovercraft, have another laugh
主は俺のホバークラフトも操ってる、また笑っちまうよ。
Pop on a handstand, twilight in the man
逆立ち(ハンドスタンド)を決めてみせる、男の中の黄昏時。
※アクロバティックな成功と、人生の成熟期(黄昏時)を迎えた心境の交錯。
[Chorus: Young Thug & Kanye West]
He got it on remote control
主は全てをリモコンで操っている。
He got it on remote control
全てリモコンで操られてるんだ。
He got it on remote control, like that's to know
リモコンで操られてる、知っておくべきことさ。
Should know
知っておくべきだ。
[Outro: Tony Halstead as The Globglogabgalab]
Ooh, ha-ha-ha, mmh, splendid
おお、ハハハ、素晴らしい。
Simply delicious, oh, ha-ha-ha
実に美味だ、おお、ハハハ。
I am the Glob-glo-gab-galab
私はグロブ・グロ・ガブ・ガラブ。
The shwabble-dabble-wabble-gabble flibba blabba blab
シュワブル・ダワブル・ワブル・ガブル・フリバ・ブラバ・ブラブ。
※2012年のインディー・キリスト教3Dアニメ映画『Strawinsky and the mysterious house』に登場する、本を貪り食うキャラクター「Globglogabgalab」の音声をサンプリング。この不気味なキャラクターはインターネット上でカルト的なミームとなっており、Redditの考察では「カニエの子供たちがこのミームにハマっていたためサンプリングした」という説が有力視されている。同時に、意味不明なスキャット(言葉)をしゃべることで、「人間の浅知恵(言葉)よりも、神の采配(リモートコントロール)の方が上位にある」ことを風刺しているとも解釈される。ヒップホップ史上、最も奇妙で物議を醸したアウトロの一つである。
