Artist: Kanye West (feat. The LOX & Jay Electronica)
Album: Donda (Deluxe)
Song Title: Jesus Lord pt 2
概要
本作は、カニエ・ウェストの『Donda』に収録された「Jesus Lord」の豪華リミックス・バージョンである。オリジナル版におけるカニエの私小説的かつストリートの悲劇を描いた長編ヴァースと、ジェイ・エレクトロニカによるオカルト・宗教・歴史を横断する神がかり的なヴァースに加え、ニューヨーク・ヨンカースが誇る伝説的ハードコア・ヒップホップ・トリオ「The LOX(シーク・ルーチ、ジェイダキス、スタイルズ・P)」が新たに参加している。The LOXは2021年の「Verzuz」での歴史的パフォーマンスで再評価の頂点にあり、カニエは彼らのストリートの叡智とゴスペル的な祈りを本作に見事に融合させた。さらに、シカゴの伝説的ギャング「ギャングスター・ディサイプルズ」の創設者であるラリー・フーヴァーの息子による、父の釈放を求める重厚なスピーチがアウトロを飾る。罪、暴力、制度的レイシズム、そして神への救済を求める声が、約11分半にわたって繰り広げられるヒップホップ史に残る壮大な叙事詩である。
和訳
[Chorus: Kanye West]
Tell me if you know someone that needs (Jesus Lord)
(主イエスを)必要としてる奴を知ってるなら教えてくれ。
※楽曲全体を貫くテーマ。救いを求める者への呼びかけである。
Now, we've been through a lot of things
俺たちはこれまで、あまりにも多くのことを経験してきた。
※黒人コミュニティが歴史的に受けてきた苦難や、カニエ自身の人生の浮き沈みを指している。
Tell me if you know someone that needs (Jesus Lord)
(主イエスを)必要としてる奴を知ってるなら教えてくれ。
We done seen a lot of things
色んなモノを見てきちまったんだ。
※ストリートの過酷な現実や、ショービジネスの暗部を目の当たりにしてきた経験。
Tell me if you know someone that needs (Jesus Lord)
(主イエスを)必要としてる奴を知ってるなら教えてくれ。
Been through a lot of things
本当に色んなことを乗り越えてきたんだよ。
Tell me if you know someone that needs (Jesus Lord)
(主イエスを)必要としてる奴を知ってるなら教えてくれ。
[Verse 1: Kanye West]
Sittin’ by myself, I'm just thinkin'
一人で座って、ただ考え込んでる。
※カニエの内省的なトーンから物語が始まる。
About all I’ve been through, I wish I was dreaming
これまでの経験全てについてな。いっそ夢であってほしかったよ。
※母の死、離婚、精神的崩壊など、カニエが経験した現実の痛ましさ。
Man, it's hard to be an angel when you surrounded by demons (Jesus Lord)
悪魔どもに囲まれながら天使でい続けるなんて、マジでキツいぜ。(主イエスよ)
※音楽業界やメディア、あるいは自身の内なる闘争。悪意の中で純粋な信仰や善性を保つことの困難さを吐露している。
I watched so many people leave, I see 'em change by the season
数え切れないほどの奴らが去っていくのを見た。季節が変わるように奴らも変わっちまうんだ。
※名声の周りに群がり、都合が悪くなると離れていく人々への冷徹な視線。
That's mama's sеasonin'
それがママの味付け(教え)だったよな。
※"season(季節)"と"seasoning(味付け・スパイス)"をかけたライム。亡き母ドンダが人を見る目について教えてくれたことへの言及。
God got you, the devil's watchin', he just peekin’ in
神はお前を守ってくれてる。悪魔はただ覗き込んで、隙を窺ってるだけだ。
※誘惑や破滅(悪魔)は常に近くにいるが、最終的な主導権は神にあるという信仰の確認。
I know I madе a promise that I’d never let the reaper in (Jesus)
死神(リーパー)を絶対に入り込ませないって、約束したのにな。(主よ)
※"the reaper"は死神、転じてドラッグや破滅的なライフスタイルを指す。母や神に対して健全でいることを誓ったが、それを守るのが難しいという葛藤。
But lately, I've been losing all my deepest friends (Lord)
でも最近、親友たちを次々と失ってるんだ。(主よ)
※精神的なすれ違いによる決別や、実際に命を落とした友人たちへの哀悼。
And lately, I’ve been swimmin' on the deepest end
そして最近の俺は、プールの底の一番深いところを泳いでるような気分だ。
※"deepest end"は絶望や鬱状態のどん底のメタファー。溺れかけている自身の精神状態を表している。
It's just drugs, it ain't no hugs, it ain’t no love there
そこにあるのはドラッグだけだ。ハグも、愛も何一つねえ。
※精神的な空白を薬物(処方薬やアルコール)で埋めようとする孤独なハリウッドの現実。
You've been down so much, you don't even know what's upstairs (Jesus)
底辺に落ちすぎちまって、上の階に何があるのかすら分からなくなってる。(主よ)
※"down(落ち込む、下の階)"と"upstairs(上の階、天国、神)"の対比。絶望が深すぎて、神の存在すら見失いかけている状態。
Suicidal thoughts got you wonderin' what's up there (Lord)
自殺願望のせいで、あの空の上に何があるのかばかり考えちまう。(主よ)
※死後の世界(天国)への逃避願望。カニエの双極性障害による極端な鬱状態の生々しい描写である。
And while they introduce a party, they say it's up there
奴らがパーティーを紹介する時、「あの場所は最高(up there)だぜ」って言うけどな。
※"up there"のトリプルミーニング(物理的な上の階、天国、最高に盛り上がっている状態)。世俗的なパーティーの享楽と、彼が求める精神的な救済(天国)の虚無的な対比。
Too many pills, so much potions, so much pain, too many emotions
クスリの量が多すぎる。得体の知れない液体、大きすぎる痛み、感情が多すぎるんだ。
※オピオイドや抗うつ剤への依存と、コントロールできない感情の波。
And everything that you do good, it just go unnoticed (Jesus)
お前がした良いことは全部、誰にも気づかれずに過ぎ去っていく。(主よ)
※慈善活動や純粋な芸術的貢献よりも、スキャンダルばかりが消費される世間への不満。
Then they tell you that you good and just stay focused (Lord)
そのくせ奴らは「お前は大丈夫だから、ただ仕事に集中しろ」なんて抜かすんだ。(主よ)
※カニエの精神的健康を心配せず、彼を単なる「金の生る木」としてしか見ない業界の人間たちへの批判。
Mama, you was the life of the party
ママ、あなたはパーティーの中心(命)だった。
※"life of the party"は「その場を最も盛り上げる人」の意。母ドンダの明るく社交的な性格を讃えている。
I swear you brought life to the party
誓って言うよ、あなたがその場に命を吹き込んでたんだ。
When you lost your life, it took the life out the party (Jesus)
あなたが命を落とした時、パーティーから命が消えちまったよ。(主よ)
※母の死によって、カニエの人生から純粋な喜び(パーティーの命)が永遠に失われたという痛切なパンチライン。
That woman rode with me like a Harley (Lord)
あの人はハーレーみたいに、いつでも俺に寄り添って走ってくれた。(主よ)
※どんな時でも息子を無条件で支持し、守ってくれた母の強さをハーレー・ダビッドソンに例えている。
Visions of my cousin in a cell really scarred me
従兄弟が刑務所の檻の中にいる光景は、マジで俺の心に傷を残した。
※黒人コミュニティに蔓延する大量投獄システム(Mass Incarceration)の現実。家族が刑務所にいるというトラウマ。
Movin' to the hood was like signin' up for the army
フッドに引っ越すことは、軍隊に志願するようなもんだった。
※治安の悪い地域(フッド)での生活は、常に死と隣り合わせの戦場と同じであるというメタファー。
'Cause they've been killin' **** since **** was watchin' Barney (Jesus)
だって奴ら、俺たちが『バーニー』を見てたガキの頃からずっと殺し合ってんだからな。(主よ)
※『Barney & Friends』は子供向けテレビ番組。物心つく前から身近に銃犯罪や殺人が存在している、スラムの異常な環境を指摘している。
You want dreams to come true? But I had nightmares (Lord)
夢を叶えたいかって? 俺が見てたのは悪夢の方だったよ。(主よ)
※アメリカン・ドリームへの強烈な皮肉。ストリートで育つ黒人の子供たちにとって、現実は悪夢でしかない。
'Cause if that come to life, then I might not be right here
だって、もしその「悪夢」が現実になってたら、俺は今ここにいないかもしれないからな。
※ストリートの抗争に巻き込まれて死んでいたかもしれないという恐怖。
Been in the dark so long, don't know if the light here
あまりにも長く暗闇にいたから、ここに光があるのかどうかも分からねえ。
※絶望のあまり、神の救い(光)を信じきれなくなっている心理。
But I'm just reaching for the stars like Buzz Lightyear (Jesus)
それでも俺は、バズ・ライトイヤーみたいに星に向かって手を伸ばし続けてる。(主よ)
※『トイ・ストーリー』のキャラクターの引用。"To infinity and beyond"(無限の彼方へ)というバズのセリフのように、限界を超えて高みを目指す姿勢。
And now I'm lightyears ahead of those nightmares (Lord)
そして今、俺はあの悪夢から何光年(ライトイヤー)も先に進んだ場所にいる。(主よ)
※"Buzz Lightyear"と"lightyears"の秀逸な言葉遊び。かつてのストリートの悪夢的状況からは完全に抜け出したという成功の誇示。
I deaded those night terrors when the night clears
夜が明けた時、あの夜驚症(ナイトテラー)を終わらせてやったんだ。
※名声や信仰を得ることで、過去のトラウマを克服したことの表現。
And if I talk to Christ, could I bring my mother back to life?
もし俺がキリストと話せたら、母さんを生き返らせることができるか?
※どれだけ成功しても、結局カニエが一番望んでいるのは亡き母の復活であるという、胸を締め付けるライン。
And if I die tonight, will I see her in the afterlife? (Jesus)
もし俺が今夜死んだら、死後の世界で彼女に会えるかな?(主よ)
※究極の孤独と死への希求。神への信仰の根底に、母との再会という個人的な願いがあることが示される。
But back to reality, where everything's a tragedy (Lord)
でも現実に引き戻される。ここでは全てが悲劇だ。(主よ)
※ここからカニエの視点は自身の内面から、架空(または実在)のストリートの若者とその家族の悲劇的な物語へとシフトする。
And better have a strategy or you could be a statistic
生き抜くための戦略を持っておかないと、ただの「統計の数字」になっちまうぞ。
※ストリートでの死は日常茶飯事であり、メディアや警察にとっては単なる「殺人事件の統計データ」の一つとしてしか扱われないという非情な現実。
Little boy dies, he just wanted a Mystic
小さな男の子が死んだ。あの子はただ「ミスティック」のジュースが飲みたかっただけなのに。
※"Mystic"はフルーツジュースのブランド。お使いに行っただけの無実の子供が、ギャングの流れ弾等で命を落とすという痛ましい情景。トレイボン・マーティン事件(スキットルズとアイスティーを買いに行って射殺された)などを強く連想させる。
And mama's steady crying 'cause she really the victim (Jesus)
そして母親は泣き続けてる。彼女こそが本当の被害者だからな。(主よ)
※子供を失った母親が背負う一生のトラウマ。
Now she's getting high and she's getting addicted (Lord)
今じゃ彼女はクスリでハイになって、完全に依存症になっちまった。(主よ)
※悲しみを紛らわすために麻薬に手を出し、貧困と堕落の連鎖に陥る描写。
And her older boy just stuck with the picture, painted vivid
そして上の息子は、その生々しく描かれた光景(記憶)から抜け出せずにいる。
※弟の死と、母親がドラッグに溺れていく姿を間近で見ている長男のPTSD。
That's a family portrait and her daughter just absorbed it
それがこの家族の肖像画だ。そして娘もその環境を吸収しちまった。
※機能不全家族の負の連鎖が、残された娘にも波及していく。
Sixteen, pregnant, baby daddy say she should abort it (Jesus)
16歳で妊娠。相手の男は「堕ろすべきだ」って言う。(主よ)
※10代の妊娠と、無責任な父親。黒人貧困層における典型的な社会問題の描写。
But we can't afford it, so she decides to move forward (Lord)
でも中絶する金なんてない。だから彼女は産む(前に進む)ことを決心した。(主よ)
※経済的な理由で中絶の選択肢すらなく、過酷な環境でシングルマザーになる決意。
Baby shower time, father didn't show up
ベビーシャワーの時間になっても、父親は現れなかった。
※完全な育児放棄。子供は生まれながらにして父親不在の環境を強いられる。
And she just feeling nauseous like she finna throw up
彼女はただ吐きそうなくらいの吐き気(絶望)を感じてる。
※つわりと、将来への絶望感が重なった生々しい表現。
The water flows down her legs, yeah, it's finna go up (Jesus)
羊水が脚を伝って流れ落ちる。ああ、いよいよだ。(主よ)
※出産の瞬間。しかしそこには祝福よりも、新たな苦難の始まりとしての暗い影が落ちている。
A year done went by, her daughter just turned one (Lord)
1年が過ぎて、彼女の娘は1歳になった。(主よ)
And she's still dependent on her mom
そして彼女(16歳の母)は、まだ自分自身の母親(ドラッグ依存症)に頼るしかないんだ。
※共依存と貧困の抜け出せないループ。
Big brother in the streets, he went and bought him a gun
ストリートにいる兄貴は、銃を買いに行った。
※弟の死のトラウマを抱えた長男が、ついに暴力のサイクルに足を踏み入れる。
He want revenge 'cause the pain feelin' numb (Jesus)
復讐したいんだ。痛みが麻痺して何も感じなくなってるからな。(主よ)
※深い悲しみが怒りへと変わり、報復行動へと駆り立てられる心理状態。
And her mom still doing drugs 'cause that's the only time she feel loved (Lord)
そして彼女の母親はまだクスリをやってる。ハイになってる時だけが、愛されてると感じられる唯一の瞬間だから。(主よ)
※ドラッグ依存の根本的な原因が、愛情の欠乏と社会的な孤立にあることを鋭く突いている。
But is it real love? Do the scars really heal up?
でもそれは本当の愛なのか? その傷は本当に癒えるのか?
※ドラッグによる一時的な逃避への疑問提起。
From all the pain that done built up, but they don't feel us (Jesus)
積み重なったあらゆる痛みから逃れたいのに、社会は俺たちのことなんて少しも理解しちゃくれない。(主よ)
※黒人コミュニティの苦しみを放置し、犯罪者としてのみ扱う白人中心の社会システムへの怒り。
A week done flew by, big bro ridin', then he see the guys (Lord)
1週間が飛ぶように過ぎた。兄貴が車を転がしてると、あの連中(弟を殺した奴ら)を見つけたんだ。(主よ)
※運命的な遭遇。復讐劇のクライマックスへと向かう。
Left his little brother on the side, bleeding from the side
自分の弟を道端に置き去りにして、あいつは脇腹から血を流して死んだんだ。
※フラッシュバック。弟が射殺された時の残酷な記憶が蘇る。
He seein' red, it's like he's bleeding through his eyes
兄貴は頭に血が上り(seein' red)、まるで目から血を流してるように見えた。
※極度の怒りと殺意のメタファー。
To see him dead, the only thing that'll help the grieving up inside (Jesus)
あいつが死ぬのを見ること、それだけがこの内なる悲しみを鎮める唯一の方法なんだ。(主よ)
※報復殺人によってしか魂が救われないという、ストリートの悲しき掟。
He even let him get they last meal (Lord)
兄貴はご丁寧に、奴らに「最後の晩餐」まで食わせてやったんだ。(主よ)
※ターゲットが食事を終えるのを待つという、冷酷で計画的な殺意。
He done with the streets after this, this his last kill
これを終わらせたら、ストリートからは足を洗う。これが彼にとって「最後の殺し」だ。
※犯罪者がよく口にする「これが最後」というフラグ。しかし暴力の連鎖はそう簡単に断ち切れない。
He gotta show him that it's that real
これがどれだけ現実(マジ)か、奴らに思い知らせてやらなきゃならない。
※弟の命の重さを、銃弾で教え込むという歪んだ正義感。
He ran up on him with the pipe like, "****, stand still" (Jesus)
パイプ(銃)を持ったまま奴に駆け寄り、「おいクソ野郎、動くな」って言い放った。(主よ)
※"pipe"は銃のスラング。
"You took my brother life, you made my mother cry" (Lord)
「お前は俺の弟の命を奪い、俺の母さんを泣かせた」。(主よ)
"Tell me one reason I shouldn't send you up to Christ"
「俺がお前をキリストの元(あの世)に送ってやらない理由があるなら、一つでも言ってみろ」
※死刑執行人のようなセリフ。神の裁きを自らの手で下そうとしている。
He said, "Go 'head, take my life, I've seen everything but Christ"
標的の男は言った。「やれよ、俺の命を奪え。俺はキリスト以外の全てを見てきたんだからな」
※殺される側の男もまた、ストリートの地獄(全て)を経験し、神の救い(キリスト)だけを見たことがないという絶望的な悟り。死を恐れていないストリートの虚無感。
Then big bro just blacked out and all you seen was the light (Jesus Lord)
その瞬間、兄貴の意識は飛び、目に映ったのは(銃の閃光という)光だけだった。(主イエスよ)
※ついに引き金が引かれた。銃の放つ「光(マズルフラッシュ)」と、死後の世界へ導く「光」、そして神の「光」が交錯する極めて映画的でトラウマティックなエンディング。
[Chorus: Kanye West]
Tell me if you know someone that needs (Jesus Lord)
(主イエスを)必要としてる奴を知ってるなら教えてくれ。
[Verse 2: Jay Electronica]
Uh-huh, in the name of the true and living God, the beneficent, the merciful
ああ、真の生ける神、慈悲深く慈愛あまねき御名において。
※イスラム教の祈り「バスマラ(In the name of Allah, the Most Gracious, the Most Merciful)」の引用。ジェイ・エレクトロニカはネーション・オブ・イスラム(NOI)の熱心な信者である。
Thank you for bringing me up the rough side of the mountain like Ertuğrul (Jesus)
エルトゥールルのように、山の険しい側から俺を引き上げてくれたことに感謝します。(主よ)
※"Ertuğrul"はオスマン帝国の基礎を築いた13世紀のトルコの指導者。ネットフリックス等で配信されたトルコの歴史ドラマ『復活:エルトゥールル』がムスリムコミュニティで大ヒットした背景を踏まえ、苦難を乗り越えて国(自身の地位)を築いた偉人に自身を重ねている。
Every knee bowed and every tongue confessed and paid homage (Lord)
すべての膝はかがみ、すべての舌は告白して敬意を払った。(主よ)
※新約聖書のフィリピの信徒への手紙 2章10-11節「すべての膝がイエスの名によってかがみ、すべての舌が『イエス・キリストは主である』と公に告白して…」からの引用。
To the monk who visit Rothschilds like Thelonious did Pannonica (Sheesh)
セロニアスがパノニカを訪ねたように、ロスチャイルド家を訪れる修道僧(モンク)にな。
※ジャズの巨匠セロニアス・モンク(Thelonious Monk)と、彼を熱心にパトロンとして支援したロスチャイルド家出身のパノニカ・ドゥ・コーニグズウォーター男爵夫人へのリファレンス。"monk(修道僧)"と"Monk(セロニアスの姓)"をかけている。Jay Elec自身が巨大な権力者(ロスチャイルド)とも関わりを持つ孤高の存在であるという自己誇示。
It's Jay Elec-entendre-nica comin' through your monitor
モニター越しに現れた、ジェイ・エレクト-アントンドラ-ニカだ。
※"double entendre(二重の意味、ダブルミーニング)"と自身の名前を掛け合わせた造語。自分のリリックには常に深い裏の意味があるという宣言。
Back from the great and yonder, the son of man and the son of Donda (Jesus)
偉大なる彼方(天界)から戻ってきたぜ、「人の子」と「ドンダの息子」と共にな。(主よ)
※"the son of man"は聖書においてキリストを指す言葉。「人の子(キリスト)」と「ドンダの息子(カニエ)」という神聖な存在と共に、Jay Elecがシーンに帰還したことを示している。
I never rode the GSXR or the R6 or the Honda (Lord)
俺はスズキのGSXRにも、ヤマハのYZF-R6にも、ホンダのバイクにも乗ったことはない。(主よ)
※ストリートのラッパーがよく自慢する日本製のスポーツバイク(ラフ・ライダーズ的な象徴)には興味がないという表明。
But I flew my Ducati through North America like Wakanda
だが俺は、ドゥカティをかっ飛ばして北米をワカンダみたいに飛んでやったのさ。
※代わりにイタリアの高級バイク、ドゥカティに乗り、マーベル映画『ブラックパンサー』の超高度文明国家ワカンダのように、黒人の誇りを持ってアメリカを駆け抜けるというアフロフューチャリズム的なライン。
Earthquakes'll strike this nation for what Bush did to Rwanda (Facts)
ブッシュがルワンダにしたことの報いで、この国に地震(天罰)が襲うだろう。(事実だ)
※1994年のルワンダ大虐殺において、当時の米クリントン政権(あるいは父ブッシュ政権の影響力)が介入を避け、悲劇を傍観したことへの強烈な政治批判。Jay Elecは陰謀論や反帝国主義的な思想を頻繁にリリックに織り込む。
What the Clintons did to Haiti and Downing Street did to Ghana (Jesus)
クリントン夫妻がハイチにしたこと、そしてダウニング街(英首相官邸)がガーナにしたことへの報いもな。(主よ)
※クリントン財団のハイチ震災復興資金を巡る疑惑や、イギリス(ダウニング街10番地)によるガーナ(旧英領ゴールドコースト)への植民地支配・搾取に対する告発。欧米列強の第三世界への抑圧を神の視点で断罪している。
In Tepoztlán, they call me Terremoto, El Negro Loco (Lord)
メキシコのテポストランじゃ、奴らは俺を「テレモート(地震)」「エル・ネグロ・ロコ(イカれた黒人)」って呼ぶぜ。(主よ)
※Tepoztlánはメキシコのスピリチュアルな町。"Terremoto(地震)"は前のラインの"Earthquakes"と掛かっており、彼が歩く先々でカルチャーに地殻変動(衝撃)をもたらす存在であることを意味する。
I shift the tectonic plates of the game if I lay one vocal
俺がひと声ラップを吹き込めば、このラップゲームの地殻(テクトニック・プレート)がズレるんだ。
※圧倒的なラップスキルにより、シーンの構造そのものを変えてしまうという自信。
The God is interstellar while you fellas remain local
神(俺)は星間(インターステラー)レベルだが、お前らはローカル(地元止まり)なまま。
※ファイブ・パセンターズ(NOIから派生した教派)の教義において、黒人男性は「神(God)」とされる。宇宙規模の視野を持つ自分と、ストリートの次元に留まる他のラッパーたちを対比させている。
My bars is like the pyramid temples of Pacal Votan (Jesus)
俺の綴るバースは、パカル・ヴォタンのピラミッド神殿みたいなもんだ。(主よ)
※"Pacal Votan(パカル大王)"は7世紀のマヤ文明パレンケの王。彼の墓(碑銘の神殿)は古代宇宙飛行士説などオカルト的な文脈でも有名。自身のラップが古代文明の遺産のように神秘的で永遠の価値を持つというメタファー。
As sure as the DOJ confirmed Ezekiel's Wheel (Lord)
米司法省(DOJ)が「エゼキエル書に記された車輪(UFO)」の存在を認めたように、確かなことだ。(主よ)
※近年、アメリカ政府(ペンタゴンやDOJ)がUFO(UAP)の映像を公式に認めたことと、旧約聖書「エゼキエル書」に登場する神の戦車(車輪)の記述を結びつける、Jay Elec特有の神学と陰謀論のミックス。
I could change the world like Yakub with two pieces of steel
俺は2つの鋼の欠片を持ったヤクブのように、世界を変えられる。
※"Yakub(ヤクブ)"はNOIの独自の教義に登場する古代の邪悪な黒人科学者。彼が遺伝子操作(磁石や鋼のメタファー)によって「白人」という人種を作り出し、世界に悪をもたらしたとされる。白人を創り出したヤクブのように、自分も世界を根底から変革できる力を持つという過激なライン。
My sword or my microphone, I swore to the Christ's throne
俺の剣、すなわち俺のマイクロフォン。キリストの玉座に誓ったんだ。
※ラップという武器を使って、神聖な真実を広めるという誓い。
But when you great, they wanna say you took an L, José Castillo (Jesus)
だが偉大な存在になると、連中はお前が「L(敗北)」を喫したと言いたがるんだ。ホセ・カスティーヨのようにな。(主よ)
※天才的ながら極端に寡作なJay Elecに対し、世間が「才能を無駄にした(took an L)」と批判することへの反論。"José Castillo"は2001年のフロイド・メイウェザーとの世界戦で、圧倒的に優勢に見えながら不可解な判定で敗北(L)を喫したボクサーのホセ・ルイス・カスティーヨを指しているとされる。不当な評価を下されていることの比喩。
I'm in the fight here, fight here, for what seemed like lightyears (Lord)
俺はここで戦い続けてる、戦い続けてるんだ。まるで何光年も続くような闘いをな。(主よ)
※カニエのバースに登場した"lightyears"をリプライズ。スピリチュアルな真理を探求し、悪と戦う果てしない道程。
My rugged cross and thorny crowns squeeze out Christ tears
俺の背負うゴツゴツした十字架と、茨の冠が、キリストの涙を絞り出す。
※自身が受ける批判や苦難を、イエス・キリストの受難(磔刑)に重ね合わせている。
Thirty pieces of silver clout, my Pierre price tier
銀貨30枚の薄っぺらい影響力(クラウト)。俺の価格帯(プライス・ティア)はピエール・ポン級だぜ。
※"Thirty pieces of silver"はイスカリオテのユダがイエスを裏切って得た報酬。金やSNSの数字(clout)のために魂を売る現代のラッパーたちをユダに例え批判している。"Pierre price tier"は、大富豪ジョン・ピエールポン・モルガン(J.P. Morgan)のような天文学的な価値が自分にはあるという主張。
It's a war outside, it's a war outside (Jesus)
外は戦争だ、マジで外は戦争なんだ。(主よ)
※ストリートの物理的な暴力だけでなく、情報や魂を巡る霊的な戦争が起きているという警告。
It's like the last days of Sodom and Gomorrah outside (Lord)
外はまるで、滅亡の日のソドムとゴモラみたいだ。(主よ)
※旧約聖書において、住民の退廃と不道徳のゆえに神の怒りに触れ、硫黄の火で滅ぼされた都市「ソドムとゴモラ」。現代のアメリカ社会や音楽業界のモラル崩壊を、終末論的な視点で嘆いている。
[Chorus: Kanye West]
Tell me if you know someone that needs (Jesus Lord)
(主イエスを)必要としてる奴を知ってるなら教えてくれ。
[Verse 3: Sheek Louch]
Donnie, Ye, what up, ****?
ドニー(カニエ)、Ye、調子はどうだ兄弟?
※ニューヨークのベテラングループThe LOXのSheek Louchのバース。"Donnie"はDondaとかけたカニエの呼び名、あるいはLOXのDon(ドン)としての自身のスタンスからの呼びかけ。
Get that money and **** forget 'em
あの金を稼いで、他の奴らのことなんて忘れちまえ。
※ヘイターや雑音を無視して、ただ成功を掴み取れというストリートの哲学。
I ain't meet Him, but my moms is with Him (Jesus)
俺はまだ主(神)に会ったことはねえが、俺の母ちゃんは神のそばにいる。(主よ)
※自身の亡き母が天国にいることを信じる心。カニエの「母の喪失」というテーマに寄り添っている。
Thirty-eight, look how the streets did him (Lord)
38口径のリボルバー。ストリートがあいつをどうしたか見てみろよ。(主よ)
※銃社会の残酷な現実。若者が銃弾によって命を落とすストリートの悲劇。
All these trophies, but where do I sit 'em?
トロフィー(成功の証)は山ほどあるが、こいつらをどこに置けばいいんだ?
※名声や富を得ても、心の中に埋まらない空虚さがあるという葛藤。
I was born to rock a crown, **** yeah, I knocked it down
俺は王冠を被るために生まれたんだ。ああ、障害は全部ぶっ倒してきたぜ。
※The LOXとしてヒップホップ界の頂点を極めたラッパーとしての誇り。
Holy water, , but out here, we turned it brown (Jesus)
聖水ねえ。でもこのストリートじゃ、俺たちがそれを茶色く(ヘネシーに)変えちまうんだ。(主よ)
※キリストが水をワインに変えた奇跡(カナの婚宴)のストリート版。教会にある純粋な聖水でさえ、ゲットーでは酒(コニャックやヘネシー)やドラッグのメタファーに変質してしまうという罪深さの表現。
Donnie, if you ain't loyal, you from a different soil (Lord)
ドニー、義理堅く(ロイヤル)ない奴は、俺たちとは育った土壌が違うんだよ。(主よ)
※The LOXの代名詞である「ストリートのLoyalty(忠誠心)」についての言及。
Your flame too low for that water to boil
お前の火力が弱すぎるから、その水は沸騰しねえんだ。
※覚悟やパッションが足りないフェイクな奴らへの痛烈なディス。
If I wasn't rappin', the calls would stop
もし俺がラップしてなかったら、電話なんて鳴らなくなるだろうな。
※成功している時だけすり寄ってくる周囲の人間関係の希薄さ。
You ain't really happy for me, you mad that I popped (Jesus)
お前は俺の成功を本気で喜んじゃいない。俺が売れたのがムカついてるだけだろ。(主よ)
※嫉妬(Envy)という罪に対する怒り。
a car, five houses like, "Look what I copped" (Lord)
「見ろよ、この車買ったぜ」なんてどうでもいい。俺は家を5軒持ってる。
※見栄を張るだけの車ではなく、不動産という本物の財産を手にしたというストリートでの「上がり」の証明。
Devil like, "Jesus Christ, he gotta be stopped"
悪魔すらも「ジーザス・クライスト、あいつは止めなきゃヤバい」って焦ってるぜ。
※自分が止められない勢いであることを、悪魔の視点から描くユーモアとボースト。
I don't say "What's up?" You basically blocked
俺は「調子どう?」なんて挨拶しねえ。お前は基本ブロックされてるからな。
※関わる価値のない人間は完全にシャットアウトする冷徹な態度。
You see it on my hip, just know that it's cocked (Jesus)
俺の腰のモノ(銃)が見えるだろ。撃鉄は起こしてあるってことだけ覚えとけ。(主よ)
※いつでも撃てる準備(サバイバルの警戒態勢)ができている。
Always look 'em in the face when I deal with my opp (Lord)
敵(オップ)と対峙する時は、必ず奴らの顔を真っ直ぐ見るんだ。(主よ)
※ストリートで培った、逃げない男の美学。
I'm from the bottom, but Lord knows it's better up top, ****
俺は底辺の出身だが、神様も知ってるぜ。頂上(アップトップ)の方がずっとマシだってな。
※苦労して這い上がった先にある成功の味の良さを再確認してヴァースを締める。
[Verse 4: Jadakiss]
Yeah, viral pictures (Viral), Bible scriptures (Yeah)
ああ、バズる写真、そして聖書の一節。
※Jadakissのバース。SNSで承認欲求を満たす現代の軽薄さと、聖書の重厚な真理という対極のものを並べている。
One thing 'bout the devil, he's liable to get you (Yeah, Jesus)
悪魔について一つ言えるのは、奴は常にお前を狙ってるってことだ。(ああ、主よ)
※油断すればすぐに誘惑に負けてしまう人間の脆さへの警告。
Long as my good days outweigh my bad days (Lord)
良い日が悪い日を上回っている限りはな。(主よ)
※人生は苦難の連続だが、少しでもポジティブな面が多ければ生きていけるというハスラーの達観。
I don't count the money, I just know how much the bag weighs (I know)
俺は札束の枚数なんて数えねえ。バッグの重さでいくら入ってるか分かるんだ。(分かってるさ)
※Jadakiss特有のマフィア/ドラッグディーラー的な比喩。大金を扱いすぎたベテランの余裕。
Broke down soon as I seen him bring the coffin in
奴らが棺桶を運び込んでくるのを見た途端、俺は泣き崩れちまった。
※ストリートで友人を失うことのリアルな悲痛。
Lord knows, I just really wanna see you walk again (Uh, Jesus)
神は知ってる。俺はただ、お前がもう一度歩く姿を見たかっただけなんだ。(主よ)
※死んだ友人、あるいは半身不随になった仲間への切実な思い。
Million-dollar cashier's check to the offerin' (Lord)
教会の献金箱に、100万ドルの小切手をぶち込む。(主よ)
※贖罪意識の表れ。違法な手段で稼いだ血塗られた金を、神に捧げることで魂を清めようとする矛盾と信仰。
They can talk about me all they want, I'ma talk to Him (Uh-huh)
奴らが俺の陰口をどれだけ叩こうが勝手だ。俺は神(Him)とだけ話す。(ああ)
※世間の評価よりも、神との対話を重視する姿勢。
Some **** get shot in they mouth, never talk again (Yuh)
口を撃たれて、二度と喋れなくなる奴らもいるんだからな。
※スニッチ(密告者)や口の軽い奴は、ストリートの掟によって物理的に口を塞がれるという恐ろしい警告。
After that, they go and get veneers or the porcelain (Jesus)
そのあと、奴らはベニア(差し歯)やセラミックの歯を入れるハメになるんだ。(主よ)
※撃たれて歯を失った後の情景。ブラックジョーク的な残酷さ。
We all need Him, is you ready to meet Him? (Lord, ready?)
俺たちはみんな神を必要としてる。お前は神に会う(死ぬ)準備はできてるか?(主よ、準備はいいか?)
※死は突然訪れる。常に魂を清めておくべきだという説教。
Doin' dumb ****, but keep cryin' for your freedom
馬鹿なこと(犯罪)ばかりやってるくせに、自由を求めて泣き叫んでる。
※自業自得で刑務所に入った若者たちの矛盾した行動への苦言。
Uh, if you don't die, then you try again (Yeah)
ああ、もし死ななかったなら、もう一度やり直せ。(ああ)
※失敗しても生きてさえいればセカンドチャンスがあるという力強いメッセージ。
You get your angel wings, then you fly again (Jesus, fly)
天使の羽を手に入れて、もう一度空を飛ぶんだ。(主よ、飛べ)
※罪から悔い改め、霊的に生まれ変わることのメタファー。
Ain't no "I" in "Team", it's an "I" in "Win" (Lord, win)
"Team"という単語に"I(私)"は無いが、"Win"という単語には"I"が含まれてる。(主よ、勝利だ)
※「チームワークに個人のエゴ(I)は不要だ」というスポーツの格言を逆手に取り、「でも勝つ(Win)ためには個の力(I)が必要だ」と言い換えるJadakissらしい見事なワードプレイ。
They got they eye on me, I got my eye on Him (What's up?)
連中は俺に目(eye)を光らせてるが、俺の目(eye)は神(Him)に向いてるぜ。
※"I"と"eye"の同音異義語。警察や敵の監視を気にせず、ただ神だけを恐れるという信仰の表明。
[Verse 5: Styles P]
Some fam died, some friends died
家族の何人かが死に、友人の何人かも死んだ。
※The LOXの最後を飾るStyles Pのバース。深い喪失感から入る。
I am feeling rage on the inside, where is mine? (Jesus)
俺の心の中は怒りで煮えくり返ってる。「俺の取り分」はどこにあるんだ?(主よ)
※不条理な喪失を経験し、神に対して「なぜ自分だけがこんな目に遭うのか」「自分が救われる番はいつ来るのか」と問い詰める生々しい怒り。
Love and hate is a thin line, get told for the tenth time (Lord)
愛と憎しみは紙一重だ。もう10回もそう言われてきた。(主よ)
※ストリートにおける人間関係のもろさ。
Dyin' on the eleventh, my ****
だが11回目に言われる時、ダチは死んじまうんだ。
※忠告を無視し続けた結果、最終的に命を落とすストリートの悲劇。
I'm just down here stuntin' on the seventh, my ****
俺はこのシャバ(地上)で、ただ派手にキメて(stuntin')生きてるだけだぜ、兄弟。
※"the seventh"は7日目、すなわち神が世界を創造し終えて休んだ安息日。あるいはマンハッタンの7番街。死の危険が迫る中でも見栄を張り続けるラッパーの業。
By the way, is a ghetto up in heaven, my ****? (Jesus)
ところでさ、天国にもゲットー(スラム街)はあるのか?(主よ)
※2Pacの『I Wonder If Heaven Got A Ghetto』へのオマージュ。ストリートの黒人たちが天国に行ったとき、そこでも肌の色や階級で分け隔てられるのかという深い問い。
If it is, keep the chariot revvin', my **** (Lord)
もしあるんなら、天国のチャリオット(馬車)のエンジンを吹かしといてくれよ。(主よ)
※"chariot"は黒人霊歌(Swing Low, Sweet Chariot等)で天国へ導く乗り物とされる。天国にゲットーがあるなら、そこで俺を迎えに来る準備をしておいてくれという、彼なりの神へのジョーク。
Yeah, that's what my momma be sayin'
ああ、それが俺の母ちゃんがいつも言ってたことだ。
And before you go to war, know it's honor in prayin'
そして戦争に行く前には、祈ることの中に「名誉」があるってことを知っておけ。
※暴力の前に神に祈るという、マフィア的な敬虔さ。戦士としての誇りと信仰。
There'll be vomit on the toilet after last night (Jesus)
昨日の夜のせいで、トイレには吐瀉物が散乱してるだろうな。(主よ)
※酒やドラッグに溺れた乱痴気騒ぎの後の、虚無感と自己嫌悪。
These **** ballin' they move, yeah, they gotta be playin', not the lottery (Lord)
あいつらは派手に動いて(ballin')遊んでる(playin')。宝くじ(lottery)で遊んでるわけじゃない。(主よ)
※"ballin'"(贅沢に遊ぶ)と"playin'"(ゲームをする/遊ぶ)。宝くじのような合法的なギャンブルではなく、ストリートでの命懸けの「ゲーム」で勝負しているという比喩。
I am in the flower, **** the pottery
俺は「花」の中(大麻の最高級の部位)にいるんだ。陶器(鉢)なんか知るか。
※"flower"は大麻(マリファナ)のスラング。Styles Pは自身が大麻ビジネスを展開していることでも知られる。鉢植えの土(制限された環境)から抜け出し、最高にハイな状態にあることの表現。
Jargon is angelic, you don't get it, then pardon me
俺の使う言葉(ジャーゴン)は天使の言語だ。理解できないなら、ごめんあそばせ。
※ストリート・スラングを「天使の言葉」へと昇華させている自負。理解できない部外者を突き放す。
Got coke from Jesús, now I'm talkin' to Jesús (Jesus)
俺はヘスースからコカインを仕入れていたが、今じゃイエス(ジーザス)と対話してるんだ。(主よ)
※メキシコのカルテルによくある名前「ヘスース(Jesús)」と、キリストの「ジーザス(Jesus)」をかけた神がかり的なワードプレイ。麻薬売人から神を語るラッパーへと魂が進化したことを表す。
Real shallow ****, probably pray for a gray coupe (Lord)
マジで浅はかなクソ野郎どもは、グレーのクーペ(高級車)が手に入るように祈るんだろうな。(主よ)
※神に物質的な富(車など)ばかりを求める物質主義的なラッパーたちへの痛烈な批判。
Maybe the Lykan or a mansion out in the Seychelles
ライカン(超高級スポーツカー)か、セーシェル諸島の豪邸かもしれないな。
※ライカン・ハイパースポーツは約3億円以上のスーパーカー。セーシェルはインド洋の超高級リゾート。そうした俗物的な願いに対する冷笑。
Ghost
ゴースト。
※Styles Pの有名な別名「The Ghost」によるサインオフ。まるで煙のようにヴァースから姿を消す。
[Chorus: Kanye West]
Tell me if you know someone that needs (Jesus Lord)
(主イエスを)必要としてる奴を知ってるなら教えてくれ。
And we done been a lot of things
俺たちはずっと、いろんなことを経験してきた。
Tell me if you know someone that needs (Jesus Lord)
(主イエスを)必要としてる奴を知ってるなら教えてくれ。
We done seen a lot of things
色んなモノを見てきちまったんだ。
Tell me if you know someone that needs (Jesus Lord)
(主イエスを)必要としてる奴を知ってるなら教えてくれ。
Been through a lot of things
本当に色んなことを乗り越えてきたんだよ。
Tell me if you know someone that needs (Jesus Lord)
(主イエスを)必要としてる奴を知ってるなら教えてくれ。
[Outro: Larry Hoover Jr. & Kanye West]
What up, Ye? This Larry Hoover Jr
調子はどうだ、Ye? ラリー・フーヴァー・ジュニアだ。
※アウトロは、シカゴの巨大ギャング組織「ギャングスター・ディサイプルズ」の創設者であり、終身刑で服役中のラリー・フーヴァーの息子によるスピーチ。彼の父の恩赦は、シカゴのストリートにおける長年の悲願である。
First and foremost, I wanna thank you for taking the fight for my father to the Oval Office
まず何よりも、俺の親父のための闘いを大統領執務室(オーバル・オフィス)にまで持ち込んでくれたことに感謝したい。
※カニエが2018年にホワイトハウスを訪れ、トランプ大統領(当時)にラリー・フーヴァーの恩赦を直接直談判した歴史的出来事への感謝。
You might not have been the only one that could've did that, but you were the one that did do that
それができたのはアンタだけじゃなかったかもしれない。だが、実際にそれを「実行」したのはアンタだけだった。
※口だけで行動しない多くの政治家やセレブと違い、激しいバッシングを受けながらも実際にトランプと面会したカニエの行動力を高く評価している。
And with your assistance, we can continue to let the world take part in this fight
そしてアンタの支援のおかげで、俺たちは世界中を巻き込んでこの闘いを続けることができるんだ。
You know, to me it kind of feels like, me, my mother, my brothers, and my kids have all been incarcerated through this journey and we haven't even been to jail
俺にとっちゃ、この長い闘いの中で、俺も、母さんも、兄弟も、子供たちも全員、刑務所にすら入ってないのに「投獄されてる」ような気分だったよ。
※家族の一人が終身刑になることは、残された家族全員の人生をも束縛し、社会から孤立させるという「Mass Incarceration(大量投獄)」の残酷な本質。
We have been looked at and treated as criminals for being a part of this family
この家族の一員であるというだけで、俺たちは犯罪者として見られ、扱われてきたんだ。
※「ギャングのボス」の家族に対する世間の強烈なスティグマ(烙印)と偏見。
My father's truth and the reality that he raised me in is that he wanted to make a change in this community (Tell me if you know someone that needs)
親父の真実、そして親父が俺を育ててくれた現実とは、彼がこのコミュニティに変革をもたらしたかったということだ。(教えてくれ、誰か救いを必要としているか)
Because the conditions in this capitalist society is what made him and it's what made the children of today
なぜなら、この資本主義社会の過酷な環境こそが親父をあのような人間にし、そして今の子供たちを形作っているからだ。
※ギャングの存在は個人の悪意だけでなく、黒人を経済的に搾取・隔離するアメリカの資本主義構造そのものが生み出したシステムの問題であるという社会学的指摘。
After twenty-five years of bein' locked down, twenty-three and one, my father has not called any shots from one of the most secure and segregated prisons in the world
25年間も監禁され、1日23時間は独房、1時間だけ運動という生活の中で、親父は世界で最も厳重に隔離された刑務所から「何の命令」も下していない。
※当局が「彼はまだ獄中からギャングを操っている」という理由で釈放を拒んでいることへの反論。
And will not, once released, call any shots for the Gangster Disciples
そしてもし釈放されたとしても、彼がギャングスター・ディサイプルズに命令を下すようなことは絶対にない。
If my father's intentions were to lead us to death, destruction, into the hell that he has had to live in for the past twenty-six years
もし親父の目的が、彼自身が過去26年間生き抜かなければならなかった地獄、死や破壊へと俺たちを導くことだとしたら。
Man, he would be dead to me
なあ、俺にとっちゃ親父は死んだも同然だ。
※父の本当の願いはコミュニティの平和と更生であり、もし彼が暴力の継続を望むなら親子の縁を切るという強烈な覚悟の表明。
I didn't sign up for that
俺はそんなことのために活動を始めたわけじゃない。
I didn't stay on this journey this long for that
そんなことのために、こんなに長い間この闘いを続けてきたわけじゃないんだ。
All my life, man, I've been waitin' for my father to come home
俺はこれまでの人生ずっと、親父が家に帰ってくるのを待ち続けてきた。
They told me when I graduate eighth grade, he would be home
奴らは、俺が中学(8年生)を卒業する頃には親父は帰ってくるって言った。
Then they told me when I graduate from high school, he would be home
それから、高校を卒業する頃には帰ってくるって言った。
I went away to Morris Brown, I graduated, and he still ain't home
俺は(アトランタの黒人大学)モリス・ブラウン大学に進学し、卒業した。それでも親父は帰ってこなかった。
※アメリカの司法システムがいかに黒人の希望を裏切り、時間を奪ってきたかという痛切な告発。
Now I'm an adult, and my daughter went away to college and graduated
今や俺は大人になり、俺の娘が大学へ行き、そして卒業した。
He still not home
それでもまだ親父は家に帰ってこない。
Now even more than that, my son, he graduated eighth grade and we still waitin'
今じゃさらに、俺の息子までが中学を卒業した。俺たちはまだ待ち続けてる。
Matter of fact, he hasn't hugged, kissed, or touched any of his grandchildren
実際のところ、親父は自分の孫たちを抱きしめたことも、キスしたことも、触れたことすら一度もないんだ。
And they haven't been able to touch they grandfather
そして孫たちも、自分たちの祖父に触れることができなかった。
Even though it is not seen that way for some of us, but for many of us, Larry Hoover is a beacon of hope for his community who deserves to breathe free air
一部の人間にはそう見えないかもしれないが、俺たちの多くにとって、ラリー・フーヴァーはこのコミュニティの希望の光(ビーコン)であり、自由な空気を吸う資格がある人間なんだ。
※シカゴのストリートにおいて、彼が単なる犯罪者ではなく、貧困から立ち上がろうとしたアイコン的側面を持つことを強調している。
Free my father (Jesus), Mr. Larry Hoover Sr. (Lord)
俺の親父を解放してくれ。(主イエスよ) ラリー・フーヴァー・シニアを。(主よ)
※法的な恩赦への訴えが、神への「祈り(Jesus, Lord)」と見事に同調してこの壮大な楽曲は幕を閉じる。
