Artist: Kanye West (feat. Vory)
Album: Donda (Deluxe)
Song Title: God Breathed
概要
本作「God Breathed」は、元々2019年の『JESUS IS KING』期に制作が開始され、『Donda』に向けて極限まで削ぎ落とされたインダストリアルなゴスペル・トラックだ。特筆すべきは、1981年のポストパンク・バンドLiquid Liquidの楽曲「Bellhead」からサンプリングされた、不穏でトライバルなベースラインである。タイトルは旧約聖書『創世記』において神が土塊(アダム)に「命の息を吹き込んだ」エピソードに由来し、Kanyeは自身の音楽と人生が神の息吹(インスピレーション)によって生かされていると宣言する。客演のVoryが亡き人への思いと悪魔との葛藤をエモーショナルに歌い上げ、暗闇の中で神の息吹だけを頼りに進むような、ヒップホップと宗教音楽の境界線を破壊する前衛的な一曲となっている。
和訳
[Chorus: Kanye West]
I know God breathed on this
神がこれに息を吹き込んだって、俺には分かってる
※breathe onは、旧約聖書『創世記』2章7節「主なる神は、土のちりで人を造り、命の息をその鼻に吹きいれられた」に由来する。自身のプロジェクト(アルバム『Donda』)や人生そのものが、神から直接命を吹き込まれた神聖なものであるという力強い宣言。
I know God breathed on this
神がこれに息を吹き込んだって、俺には分かってる
I know God breathed on this
神がこれに息を吹き込んだって、俺には分かってる
I know God breathed on this
神がこれに息を吹き込んだって、俺には分かってる
[Verse 1: Kanye West & Vory]
I know He got His hands on this
主の御手がこれに触れているって分かってる
I know we got a chance on this
これで俺たちにもチャンスが巡ってきたんだ
No, I never planned on this
いや、こんなこと計画しちゃいなかった
※Kanyeのこれまでの波乱万丈なキャリアや、世俗的なヒップホップからゴスペルへの劇的な転向が、彼自身の計画ではなく神の導きによるものだったという告白。
I might need a band on this
これにはバンド(大金)が必要になるかもな
※bandは「1000ドル札の束(大金)」と「楽器のバンド」のダブルミーニング。神の計画を実行するためには莫大な資金が必要であるという、Kanyeらしい現実的なフレックス。
This might get banned off rip
こいつは公開された瞬間に(オフ・リップ)バンされる(発禁になる)かもしれないぜ
※off ripは「最初から」「即座に」を意味するスラング。自分の放つ神の真理や過激なメッセージが、キャンセルカルチャーやメディアによって即座に封殺されるリスクを自覚している。
Gon' say somethin' for y'all quick
お前らに手短に言っておくぜ
Let me know something, who y'all with?
教えてくれよ、お前らは誰の味方なんだ?
Don't know nothing, I know this
何も知らねぇが、これだけは分かってる
[Chorus: Kanye West]
I know God breathed on this
神がこれに息を吹き込んだって、俺には分かってる
I know God breathed on this
神がこれに息を吹き込んだって、俺には分かってる
I know God breathed on this
神がこれに息を吹き込んだって、俺には分かってる
I know God breathed on this
神がこれに息を吹き込んだって、俺には分かってる
[Break: Vory]
Oh-oh, oh-oh
Oh-oh, oh-oh
Breathed on this, breathed, breathed, oh, oh
息を吹き込んだ、息を、息を、oh, oh
[Verse 2: Kanye West]
More than I can say for you
お前のために俺が言えること以上のものさ
Before the sons and the daughters
息子たちや娘たちが生まれる前から
Before the sun and the water
太陽や水が創られる前から
※旧約聖書『創世記』の天地創造のメタファー。神の存在と言葉が、宇宙のあらゆる物質や人類の歴史よりも先んじて存在していたという神学的な真理を説いている。
More than I can say for you
お前のために俺が言えること以上のものさ
But the truth still for you
それでも、真実は常にお前のためにあるんだ
Once I saw what the Lord do
主の御業を一度でも目の当たりにすればな
God, the Son, all the glory
神、その御子、すべての栄光
God, the Father, like Maury
父なる神、まるでモーリーみたいにな
※【Redditで話題のパンチライン】Maury Povichが司会を務める米国の長寿タブロイド番組『Maury』の有名なコーナー「DNAテスト("You ARE the father!"と叫ぶお決まりの展開)」を引用。天の「父なる神(God the Father)」と、番組の「父親」を掛けた不謹慎スレスレのヒップホップ的ワードプレイ。
Don't care what you say, nothin' on me
お前らが何を言おうと気にしねぇ、俺には何の影響もねぇよ
I don't care 'bout the lawyer fees
弁護士費用なんて知ったこっちゃねぇ
※キム・カーダシアンとの泥沼の離婚調停や、様々な訴訟を抱える中で発生する莫大な弁護士費用すら、神への信仰の前では些末な問題であるという強がり。
I don't care 'bout your loyalties
お前らの忠誠心なんてどうでもいい
God will solve it all for me
神が俺のために、すべてを解決してくれるからな
Trust man, he a failure
人間を信じてみろ、そいつは裏切る(失敗する)ぜ
Trust, and God'll heal ya'
信じるんだ、そうすれば神がお前を癒してくださる
Dustin, he a Hoffman
ダスティン、あいつはホフマンだ
※名優Dustin Hoffmanのこと。彼の代表作である映画『卒業(The Graduate)』などを引き合いに出し、「人間は所詮、映画の役者のように役割を演じているだけのフェイクな存在だ」と揶揄しているとする考察が有力。
Don't fall what they offerin', uh
奴らが差し出してくるものに、引っかかる(落ちる)なよ、uh
Fall far too often, yeah, call God but don't call enough
人はあまりにも頻繁に堕ちちまう、yeah、神を呼ぶが、その回数は全然足りてねぇ
Fall down but don't fall in love, I know God is all in us
転び落ちても、恋には落ちるな。神は俺たちすべての中にいるって分かってるからな
※fall(堕落する/転ぶ)とfall in love(恋に落ちる=世俗的な欲望や特定の他者に執着する)を掛けたワードプレイ。人間に依存するのではなく、自分たちの内なる神(God is all in us)に目を向けろというメッセージ。
[Chorus: Kanye West]
I know God breathed on this
神がこれに息を吹き込んだって、俺には分かってる
I know God breathed on this
神がこれに息を吹き込んだって、俺には分かってる
I know God breathed on this
神がこれに息を吹き込んだって、俺には分かってる
I know God breathed on this
神がこれに息を吹き込んだって、俺には分かってる
I know God breathed on this
神がこれに息を吹き込んだって、俺には分かってる
I know God breathed on this
神がこれに息を吹き込んだって、俺には分かってる
I know God breathed on this
神がこれに息を吹き込んだって、俺には分かってる
I know God breathed on this
神がこれに息を吹き込んだって、俺には分かってる
[Verse 3: Vory]
Devil on my shoulders, I can't let 'em breathe
両肩には悪魔が乗ってる、あいつらに息をさせちゃダメだ
※神の息吹(God Breathed)と対比させ、自分の心を蝕む悪魔には呼吸(breathe)を許さないという強い意志。
Brush 'em off my sleeve, I'm filled with memories
そいつらを袖から払い落とす、俺は思い出でいっぱいなんだ
Pray they remember me, oh, oh-oh
奴らが俺のことを覚えていてくれるように祈るよ、oh, oh-oh
And I know there's an angel watchin' over me
そして俺には分かってる、一人の天使が俺を見守ってくれてるって
※Voryの亡き友人や身内、あるいはKanyeの母Dondaを「守護天使」として見立てている。
(All times), I inhaled and breathed
(いつだって)、俺は息を吸い込み、そして吐き出した
They hearts are filled with greed
奴らの心は強欲で満たされてやがる
Okay, now they want the old me
Okay、今じゃ奴らは「昔の俺」を求めてきやがる
※成功して変わってしまった(あるいは信仰に目覚めた)現在の姿を受け入れず、昔のストリートの姿や音楽性を求めるファンやメディアへの不満。Kanyeの「I Miss The Old Kanye」という永遠のテーマとも共鳴している。
Not too big on peoples talkin'
連中の噂話なんて、大して気にしてねぇよ
Okay, now they gotta show me
Okay、それなら奴らは俺に証明しなきゃな
Okay, okay, Devil's talkin' to me, angel's talkin' to me
Okay, okay、悪魔が俺に話しかけてくる、天使も俺に話しかけてくる
But Angels start to tell me, "It's okay to not feel okay"
だけど天使が俺に言い始めたんだ、「大丈夫じゃなくても、大丈夫なんだよ」ってな
※【Voryのヴァースの核心】精神的に追い詰められ、完璧でいなければならないというプレッシャーに対し、弱さを認めること(Not feel okay)を許す天使からの救済のメッセージ。
I know that you'd be proud if you was here today
もし今日あなたがここにいてくれたら、俺を誇りに思ってくれたはずだって分かってる
But it's okay 'cause I'm okay
でも大丈夫さ、だって俺は大丈夫だからな
[Chorus: Vory]
I know God breathed on me
神が俺に息を吹き込んだって、俺には分かってる
※最後は"this"(これ/この曲)ではなく"me"(俺)に変わっている。神の息吹が作品だけでなく、傷ついた自分自身の魂に命を吹き込み、再生させてくれたというエモーショナルな帰結。
I know God breathed on me
神が俺に息を吹き込んだって、俺には分かってる
I know God breathed on me
神が俺に息を吹き込んだって、俺には分かってる
I know God breathed on me
神が俺に息を吹き込んだって、俺には分かってる
